2006年5月18日木曜日

長野市の道路状況


 最近、国の予算を論じる場合、ガソリン税等の道路特定財源を、
一般財源(注1)にするとか、しないとか、いろいろ論じられてい
ます。理由は財政が厳しい折、特定財源を用途を決めずに自由に使
える財源にしたい・・・言い換えれば道路予算を減らしていこうと
いうことでしょう。

 確かに国の財政が火の車の折、財政運営上は、特定財源というこ
とで縛られたくない、自由度を高めておきたい・・・ということは、
理解できます。
 しかし、二つ問題があるようです。一つはこの税金を払っている
のは、自動車関連業界や自家用車の使用者が多い。すなわち道路を
整備することでメリットを受ける人達ですから、高い税金の支払い
を甘受してきた、道路に使わないなら、減税すべきだという論理で
す。正論でしょう。しかし、減税してしまえば、財源は無くなって
しまう。
 もう一つは、道路はまだ足りない、もっと道路予算が欲しい・・
特に地方の場合はこの要望は痛烈です。長野市が毎年30地区で行
っている市民会議でも、道路問題について意見・要望が出ない地区
が少ないぐらいです。地域の生活道路の整備はまだまだ必要という
のが、実態でしょう。

 そこで今回は、長野市の道路事情について書いてみました。
 道路には、道路管理という区分から国道、県道、市道とあること
は、既に何度か書いています。
 長野市が行っている道路整備には、都市基盤施設として、市が何
十年という長期的視野を持って広域にわたる都市像を検討し、都市
計画法に基づいて、あらかじめ位置・経路・幅員などを決定し、計
画的に整備していく道路(都市計画道路)と、地域の課題に対応し、
皆さんの要望をお聞きしながら、実情に応じて整備していく道路(
都市計画道路以外の道路)があります。

 長野市は毎年40~50億円くらいを都市計画道路以外の市道の
整備に充てています。大変大きな数字ですが、整備が完了するまで
には程遠いというのが実感です。そこで、あとどのくらいの年月、
予算を道路事業に充てていけば良いのか、特に今回は市民の皆さん
からご要望の多い地域の生活道路(都市計画道路以外の道路)につ
いて、概算の数字を作ってもらいました。

 長野市の市道の総延長は、3,729.8kmです。そのうち改
良済みの(注2)市道は1,763.9kmで47.3%、未改良
市道は1,965.9kmで52.7%です。実に半分以上が未改
良なのです。

 次にその未改良市道1,965.9kmの内訳を見てみますと
(1)現況道路幅員4.5m以上のものは、
                 64.7kmで 3.3%
(2)現況道路幅員1.8~4.5m未満のものは、
              1,578.1kmで80.3%
(3)現況道路幅員1.8m未満のものは、
                323.1kmで16.4%
となっています。

 (3)の現況道路幅員1.8m未満のものは建築後退義務もなく、
里道(赤線)あるいは飯綱山の頂上までの登山道も入っているので、
当然整備すべき道路ではないでしょうから、これは整備対象外とし
て計算してみました。

(1)の現況道路幅員4.5m以上のものは、
 全幅7m、有効幅員6mの幹線道路として整備すると仮定し、
 工事費1m当たり約30万円の工事費がかかるものとして計算す
 ると、194億円。
(2)の現況道路幅員1.8~4.5m未満のものは、
 全幅5m、有効幅員4mの生活道路として整備すると仮定し、
 工事費1m当たり約25万円の工事費がかかるものとして計算す
 ると、3,945億円。

(1)+(2)の合計事業費は、1,642.8kmで、
4,139億円となりました。

 気の遠くなるような数字です。現在のペースでいけば、100年
近くかかる話です。生活道路をすべて改良しなくてはならないかど
うか疑問は残るところですが・・・でもこの数字には用地費も入っ
ていますから、それほど的外れの数字ではないと思います。長野市
としては、過去にはこういう数字を作ったことが無いようでしたか
ら、概略とはいえ、分かっただけでも進歩かもしれません。

 道路整備と話は違いますが、同じインフラである下水道について
は、市民の公平感を満たすためにも、とにかく早くやりたいと考え、
年次計画を立てて進めてきました。そのため、かなり整備計画が明
瞭になり、平成15年度を初年度として15年計画、すなわち平成
29年までには完了するということになりました。現在、さらに短
縮することを検討中というところまで進み、当初の漠然とした20
年計画なるものより、かなり早くなりそうです。

 その前例を道路にも適用できないかと考えたのですが・・・しか
し道路整備については、以上の数字からみても、とても年次計画を
立てられる状況ではない実態が分かりました。

 ちなみに、合併市町村別に地区別事業費を試算してみますと、
長野地区は1,207.6kmで 3,018億円、
豊野地区は   64.5kmで   163億円、
戸隠地区は  217.6kmで   550億円、
鬼無里地区は  61.7kmで   154億円、
大岡地区は  100.8kmで   254億円
となっています。

 長野市では、(1)の幹線道路と(2)の生活道路のうち地域の
骨格となる道路を当面の整備対象と考えていますが、それだけでは
市民の皆さんが納得してくださるとは思えません。その他の生活道
路についても整備していかなければならないと思います。

 国の道路特定財源問題についての議論は、無駄な高速道路の建設
をやめようという議論に片寄っているのではないか?と心配してい
ます。
 確かに長野市にとっては、高速道路問題についてはオリンピック
のおかげもあって一応満足すべき状況といえるのですが、だからと
いって高速道路予算は減らしてもよいというのは、長野のエゴと言
われても仕方ありません。時間がかかっても、それぞれの地域住民
が必要としているのであれば、いずれは計画通りの道路を整備する
べきだと思っています。

 私の申し上げたいのは、高速道路だけではない、生活道路を含め
た道路予算は、まだまだ必要なのだということです。

(注1)一般財源と特定財源・・・一般財源とは、歳入のうち市民
 税・固定資産税などのように使途が特定されず、どのような経費
 にも使用することができる資金のことをいいます。特定財源とは、
 一般財源とは異なり、道路整備事業等に対する国・県補助金など
 のように使途が特定される資金のことをいいます。

(注2)改良済み・・・有効幅員が4メートル以上確保されていて、
 両側に側溝が設けられているものをいいます。