2006年8月10日木曜日

県知事選挙が終わって


 長野県知事選挙がようやく終わり、結果は村井仁氏の勝利、すな
わち新知事が誕生しました。田中知事体制からの転換、県と市町村
が話し合いをしながら、それぞれの役割を務めていく、まさに新た
な信頼関係を「創る」ことから始まります。

 私自身、長野県、そして長野市のためにとの強い思いがあったの
で、精神的には自分の選挙(市長選)より大変でしたし、長野市内
に限って言えば、悔いの無い選挙運動(公職選挙法の制約の中で)
ができたと思っています。

 「輝く長野県を考える会」の近藤会長を中心にした動き、県議会
議員の活躍、長野市では市議会議員の活躍が原動力になったと思い
ます。文字通り組織選挙でした。そして、組織選挙の中から市民団
体が段々結集して、大きな輪になったと信じています。

 田中知事の県政については別の機会に書かせていただきますが、
今週のメルマガでは、私が選挙運動の中で重点的に皆さんに訴えて
きた二つのことを書かせていただきます。

(1)景気を良くすることが肝要であり、そのためには資金を県内
に流すことが重要であると私は思います。田中知事はまったく逆の
手法をとり、国の補助金を断って、借金を減らしたことのみを強調
してきました。子供たちに借金の山を残してはいけないという言葉
の美しさに、反対はしにくいし、大切にしなくてはならないことで
すが、やるべきことをやらずに、借金を返したというのは、いかが
なものでしょう。周辺の県の経済が少しずつ上昇を始めているのに、
長野県の場合は、まだ良くなってこない・・・。
 借金の返し方にも問題があります。県の預金を取り崩したり、優
良資産を売却したりした資金で返済していますが、それ自体は県の
スリム化ということで非難すべきことではありません。しかし、先
輩たちが過去に苦労して築き上げたモノを使っているわけで、少な
くとも自慢することではなく、むしろ先輩の皆さんに感謝すべきで
はないでしょうか。あわせて借金返しのもう一つの方法論はやるべ
き仕事をしていないという点も強調しておきます。社会全体がシュ
リンク(注)していく中で借金を返すことのみに熱心では、結局借
金の重みに耐え切れなくなってしまう・・・。

(2)組織を動かしたことが無い人であるがゆえか、時間の経過と
ともに、県組織がどんどん壊れてしまった。県職員労働組合のアン
ケートで、知事の支持率が3.6%という数字にはびっくりしまし
たし、信じられない数字でした。私には長野オリンピックのころか
かわった県職員は優秀だったという印象があります。それに比べ今
の職員は走り使いに見えて仕方ありません。自分の意志を表現して
いないように感じます。
 市町村の職員も地方分権一括法が出来るまでは、「国の機関委任
事務」をきちんとすることが本務であり、創意工夫は求められなか
った。そういう意味では、市町村職員は国の走り使いだったかもし
れません。しかし、法律が変わったことで市町村職員は自ら提案、
工夫をすることが求められ随分変わってきています。
 その意味では県の職員が昔の市職員のように、「知事の委任事務」
の走り使いになってしまった、すなわち県の重要な財産の無駄使い
をしていると思うのです。

 5年前、私が長野市長に就任したとき、ひそかに抱いていた目標
が三つありました。
①行政はすべてをやることはできない。市民の協働の力が必要だ。
②民営化は時の流れ。徹底的にやろう。
③きちんとした政治。田中知事が誕生して一年、これでは無理だ。
 変えなくてはならない。
 この三つの目標は、あまり公にはできませんでしたが、私の信念
と言ってもよいと思います。そして①は都市内分権が始まり、少し
ずつ形になってきました。②は指定管理者制度などが誕生し、追い
風が吹いてきました。そして③は今回の選挙で実現されました。

 県民が選択した村井新知事が誕生して、私の政治的判断が間違っ
ていなかったことが確認できたと考えています。市町村長が県知事
選にあまり首を突っ込むべきでない、もし負けたらどんな責任をと
るのか・・・とメディアの方に聞かれ、負けるとは思っていないか
ら考えていないと言いながら、投票日が近づくにつれ、胃が痛くな
る毎日でした。

 これからは村井新知事とじっくり話し合いながら、新たな信頼関
係の構築に努めていきたいと思います。
 村井さんは選挙に当たって、具体的な事柄についてはあまり踏み
込んだ発言をされませんでした。これは当然です。県民世論に推さ
れて、政策作りの時間の無い中での立候補ですから、県全体のこと
はこれから勉強されるのでしょう。この段階で踏み込んだ発言はで
きないし、すべきではないと思います。県職員、県議会、市町村と
じっくり話し合い、それから施策を打ち出していく、その姿勢が大
切だと思っています。村井さんはそれができる方です。村井新知事
に大いに期待したい、ざっくばらんに、腹を割った話をしたいと思
っています。

(注)シュリンク(Shrink)とは「小さくなる」の意。