長野県知事選挙が告示になった7月20日、滋賀県の嘉田由紀子
新知事が就任されました。「もったいない」を合言葉に、東海道新
幹線の新駅建設反対を唱えて、現職知事を破っての当選(7月2日
投票日)でした。無党派の風が吹いたようですがそのわりには投票
率が約45%ということで意外に低かったというのが印象です。私
は、この選挙結果が長野県知事選挙にどういう影響があるか心配し
たのですが、長野県民の判断は先日の結果のとおりでした。
私はお盆の最中、インターネットで滋賀県のホームページなどを
見ながら、その後の流れを調べ、考えてみました。
嘉田知事は京都精華大学の教授(56歳)で、琵琶湖の環境保全
運動に取り組んできた方で、きちんとした学問の裏付けを持ってい
ること、初議会でご自身のマニフェストに書かれた4項目を達成は
困難との見通しを示すなど、良い悪いは別にして、大変柔軟な思考
のできる方であること、映像等で見る限り大変誠実そうな方と感じ
ました。この方なら当初は議会や市町村との関係で苦労されるでし
ょうが、段々に理解されていく可能性はあるのではないか・・・直
接お会いしたこともありませんし、ホームページを見ての感想です
が、そんな思いを持ちました。
就任後、計画通り実行できない見通しを示したマニフェスト4項
目は、新聞記事によると次のとおりです。
(1)約2万人の県職員を2010年度までに1割削減。(1割と
は、人員でいうと2千人ということですが、どの部分を減らすのか、
定員の決まっている部門もあり、職種によっては増員しなくてはな
らないところもあって、良く調べ、検討しなくてはならないことが
分かったのでしょう。)
(2)小・中学校の35人学級を来年度から行う。(これは無茶な
話です。まず財政的問題が考慮されていないのではないか。さらに、
単なる先生の数と人件費だけの問題ではなく、先生の質の問題、一
挙に良質の先生を採用することは困難です。そして、教室等の施設
負担等がすべての市町村にかかってしまいます。)
(3)治水ダムの代わりに2015年度までにダム建設予定の河川
の改修工事を実施。(「脱ダム宣言」みたいなものでしょうが、6
カ所のダムを一律にすべてやめるというのは、地域の実情から見て
も、学問的、技術的にも無理ということに気がついたのでしょう、
それぞれの地域ごとに検討することになったようです。)
(4)1千億円を超える負担軽減のため、県造林公社、びわ湖造林
公社の統合。(これは事情を知らない私にはコメントしようがあり
ませんが、統合してコストが下がるなら当たり前のことなのでしょ
うが・・・)
東海道新幹線の新駅問題は、達成は困難との見通しを示した4項
目に入っていないのは当然なのでしょうが、県外の私たちには分か
りにくい部分もあります。議会や評論家は、「実現可能であっても
無くても、言った方が勝ち」「マニフェストは有権者との契約であ
り、変えるならその説明をきちんとしなくてはならない」・・・い
ろいろな批判が出ているようですが、その内容を読む限り、この件
に関する批判はおだやかな感じがするのですが・・・。
嘉田知事は議会答弁で、新人立候補者には情報が少ないことを理
由にあげ、知事就任以降、精査した結果、達成は困難などの見通し
を示されました・・・。強引に間違った自説を正当化するより数段
勝っており、柔軟だし、話し合いの精神もあるし、理屈は通ってい
ると私は感じています。ただ長野県民なら猛反発かもしれません・
・・県民性の違いもあるかもしれません。
評論家的な言い方で失礼ですが、嘉田知事には時間をかけ、誠意
を示し、代替案と手順、スケジュールを示して、きちんと反対論と
向き合っていただき、柔軟な姿勢を持ち続けていただきたいと思い
ます。
新駅賛成派の県議、市町村長の皆さんはこれから長い闘争が待っ
ているかもしれませんが、新駅問題にからむ本年度の県の負担金は、
先日市へ支払ったそうです、順法精神には富んでおられるようです
から、大いに議論していただきたいと思います。
滋賀県と長野県との比較は別にして、これらの問題を通して今後
大きなテーマになりそうなことが3つあります。
(1)県知事も県会議員も、どちらも県民に選ばれた人です。両者
の意見が対立したとき、「どのような解決策を見いだすべきなのか」
についてです。県知事が新規事業を行う場合は、予算を伴いますの
で、県議会の議決が必要になり何らかの決着はつくのですが・・・
長野県の浅川ダム建設問題や滋賀県の新駅建設問題のように、継続
事業の場合は知事の執行権の問題ですから、議会で決定されたとし
ても執行しないことは法的には可能であるということですので、問
題は複雑です。
(2)「行政の継続性」ということは、今後どうなるのでしょうか。
前政権が約束し、実行してきたことを、いとも簡単にやめますとい
うことは、行政の信頼を間違いなく失うことだと思います。私も市
長就任後、幾つかそういうテーマに出会っています。一つの例とし
ては、長野駅東口の整備計画です。ある会派の方々は止めるべきと
主張されました。膨大な資金が必要な事業でしたので、私もやめら
れるものなら・・・と考えた時期もありましたが、事業の必要性を
理解する中で、継続して実施していますが、事業完了までにはまだ
まだ時間がかかります、次の市長にも引き継がなくてはならないテ
ーマであると覚悟しています。下水道の全戸水洗化の事業や浅川治
水事業もこの系列に入る事業です。
(3)マニフェストという「候補者と有権者の契約」を、当選後に
一方的に破棄することが許されるのか。新人候補者には情報量が少
ないから、当選後撤回は仕方がないというのは、何となく理解はで
きますが、そのマニフェストを読んで投票した人のことを考えると
複雑です・・・。
以上、お盆に少し余裕ができたので、滋賀県のホームページなど
を見ながら感じたことを書いてみました。地方の時代が来て、地方
の権限が大きくなって、国、県、市町村の役割がドンドン変わって
きています。国、道州、市町村に変わるということも想定されてい
ますが、まだ議論は始まったばかり、詳細は分かりません。いずれ
にしろ、それぞれの役割分担、かじ取りが本当に難しい時代になっ
たと感じています。