2006年8月17日木曜日

天下りについて


 少し前の話ですが、防衛施設庁の官製談合が表面化し、相変わら
ず高級官僚の天下りとゼネコン等の癒着が問題になっています。天
下りが禁止されても、それは一定期間のことで、何年か別の組織で
過ごして、禁止期間が過ぎてから天下りすれば、防ぎようがないの
が実態のようです。加えて「職業選択の自由」という憲法上の規定
がある以上、「終身の天下り禁止」ということは難しいと言われて
いるようです。

 私は防ぎようが無いならば、天下りを禁止するより、観点を変え
て、天下りを積極的に認め、そのことが悪いことにつながらない、
すなわち談合や癒着にはならない方法を考えるべきと思います。

 例えば、国の高級官僚が民間企業に転職する場合は50歳(仮の
数字です、場合によっては45歳とするべきかもしれません)以下
に限ると法律で決めるのはどうでしょうか。50歳以下ならそれほ
ど大きな権限が在るわけではなく、癒着が起きるとは考えにくいと
思いますし、憲法上の規定からも許される範囲であろうと思います。
そして50歳になった方には、天下りを禁止し、その代わり退職後、
働く場を国が用意し、65歳~70歳ぐらいまでは国が管理してい
くことにしたらどうでしょうか。
 人数にもよりますが、国にとって必要な人材は当然あるはずです。
年金問題(65歳支給開始)もありますから60歳定年制はそろそ
ろ考える時期だと思います。

 一生懸命働いて定年を迎えたのだから、転職はいやだ、悠々自適
の生活を楽しみたい、そんな方ももちろんいらっしゃるでしょう。
何かの事情で勤めをやめる方もいると思いますが、そういう方は関
連した業界への再就職はしないという誓約書を出して退職し、1年
に1回国に報告するシステムを確立すればよいと思います。

 ただ幾つか条件が必要だと思います。報酬をどうするか、退職金
をどうするか、整理しなくてはならない問題はたくさんあると思い
ます。猪瀬直樹氏の本で知ったことですが、赤字公団の理事長の年
収が2,000万円を越すこと、そして退職金も相当な額になるこ
とに、あぜんとしたことがあります。こういう話が理解できないの
です。少なくとも2度目の勤めでしょう。ボランティアとは言いま
せんが、節度が必要です。

 いずれにしろ天下りを良い意味で活用することは、国家の資源の
有効活用です。希望があるなら地方公共団体に派遣するというのも
あるかもしれません。経験を生かし、活躍の場があれば、素晴らし
いことではないですか。出身地へ戻って働く場が得られれば理想か
もしれません。今でも中央官僚から知事や市長に出馬する人はいく
らもいるのですから、別に不思議ではないでしょう。

 退職後の人材派遣ではありませんが、長野市では歴代財政部長に
総務省から来てもらっています。市職員には良い意味で刺激もあり、
国の考え方を知って、政策の方向性を示してもらえる、あるいは地
域のしがらみにとらわれない見方ができる等々、その必要性は大き
いと思っています。

 話は少し変わりますが、国家公務員を減らすという話が現実性を
持って語られています。小さな政府を目指す意味で、それは必要な
施策であるとは感じていますが、ひとつ注意しなくてはならない面
があります。それは研修派遣と称して、地方自治体から国の省庁等
へ職員派遣が行われているのです。

 長野市からも環境省、総務省・・・計7人を派遣しています。長
野市とすれば、職員の能力を高めるため、又国の政策の方向性を知
るため、今後も要請があれば、あるいは機会があれば派遣するつも
りですが、実際には単なる研修生ではなく、各省庁等では戦力にな
っていると思っています。それだけ優秀な職員を選抜しているつも
りです。
 もちろん長野市だけの話ではなく、いずれの県や市町村も派遣し
ているのではないでしょうか?トータルすればかなりの人数になる
と思います。ですから単に国家公務員を何%減らすと言っても、こ
ういう派遣職員数のことも考慮しなくてはならないと思います。た
だそうは言うものの、地方自治体職員の受け入れはやめると言われ
ても困りますが・・・。

 こんなメルマガを書いているうちに、行政関係の雑誌を読んでい
たら福島大学教授の今井照氏の以下のような記事に出会いました。
一部ご紹介しますと、
『中央省庁に勤務する私の友人の職場では、管理職を除く12人の
課員のうち、6人が自治体からの出向者らしい。このうち、2人は
正規の手続きを取り、一時的に国の職員に身分を切り替えているが、
残り4人は、あくまでも市町村や都道府県の職員のまま国の業務に
携わっているという。つまり、人件費は自治体が持っている。』
 同じ記事の中で、総務省の発表したまとめによると、『国から自
治体へは1613人、自治体から国へは1764人が出向している』
とあるのですが、長野市の実態からするととても信じられない数字
です。ひょっとしたら、広く行われている自治体からの研修派遣が
カウントされていないかもしれないと教授は述べておられます。

 正確な情報はありませんので、よく分からない話ですが、単純に
国家公務員を5%減らすと言っても、地方自治体の研修派遣や外郭
団体への派遣人員についても考えなくてはならないはずですから、
簡単ではないはずです。

 長野市でも市の外郭団体に職員を派遣しています。具体的には長
野市社会福祉協議会、長野市開発公社等へ正規職員を派遣していま
すが、その人件費は実質的には長野市から補助金として組織に支払
い、組織が市の規定に基づいて支払っています。もちろんその必要
性については当然良く検討した上で行っていますし、予算書にすべ
て載っている話ですから問題はないのですが、市民の皆さんから見
れば分かりにくい話だと思います。

 それとは別に、退職後の管理職の人に長野市の施設の所長等をお
願いしています。以前にもメルマガに書いたことですが、賃金はか
なり低くなっており、私としては申し訳ない気持ちでお願いしてい
ます。

 いずれにしろ人口減の時代、そして高齢者が増加している時代で
す。60歳の定年制はどんなものでしょうか?国の資源の無駄遣い
をしないよう・・・そして公平感を失わないよう・・・小さい政府、
行政改革、そして雇用率との絡みでも難しい問題です。

 もうひとつ、最近これは不合理だなあと感じていることがありま
す。それは公職の選挙に立候補する場合、一般職の公務員、議員、
首長などは、職を辞してから出馬しなくてはならないということで
す(例えば、市長は任期満了の市長選であれば現職のまま立候補で
きますが、市議会議員が市長選に立候補した場合には立候補と同時
にその職を失います)。民間企業の場合、在職のまま立候補する事
例が見られます。あるいは農業、医師、弁護士等のいわゆる個人事
業主の場合も、別に職を辞してからという必要がないわけで、これ
は著しく不公平だと思います。

 自由な立場で選挙に出る人、自分の職をかけて(大げさに言えば
負けたら無一文になる覚悟をしなくてはならない人)必死の思いで
出る人・・・・この競争は少なくとも公平とはいえません、考える
べき問題です。兼職ということももっと自由に許されるべきではな
いでしょうか。行政職の中に市長、あるいは議員に出てほしい人が
いる、でも負けたら生活に困るだろうから推薦しにくい・・という
人はたくさんいそうですし、人材の有効活用という意味でももった
いない話です。

 当選後どうすればよいかは研究する余地(給与・報酬の二重取り
防止など)はありそうですが、一般職の公務員の政治的中立の確保
・職務専念義務という原則がありますので、何らかの制度を整えた
うえで、少なくとも現職のまま、選挙に立候補できるようにすべき
ですし、極端かもしれませんが、議員で職員という人が居ても良い
のではないか、県議と市議の兼職だって意義があるかもしれません。

 いずれにしても、貴重な人材、財産ともいえる人材を十分に活用
できるシステムを構築する必要があると思います。