2007年3月22日木曜日

格差社会について


 格差社会という言葉がいろいろな場面でいわれています。労働組
合の連合も格差是正が最も重要であるとの認識を示しているようで
す。
 確かに私もいろいろな格差を感じますし、その是正は社会正義の
実現、社会の安定にとって大変重要な課題だと感じています。

 ただ、格差にもいろいろあります。格差とは何か、是正すべき格
差とは何かということを、はっきりさせておかないと、悪平等主義
(個性や特質を無視して、一律同じ扱いにするため、かえって不平
等になること)に陥る危険があるのではないか?と感じています。
そうなれば社会全体が活力を失うことになるかもしれません。

 考えられる格差を挙げてみました。
 一般的には、経済格差、情報格差、所得格差、地域間格差などが
いわれていますが、具体的には、身分(正社員、嘱託、臨時社員)
による所得・待遇・年金格差、大都市と地方都市の財政力の差によ
る都市基盤格差、企業の収益性の差による従業員の福利厚生面での
格差、先進国と開発途上国の医療、教育など生活水準格差など・・
・数え挙げれば切りがありません。

 戦後日本の高度成長を支えてきた中間層が崩壊しつつある、この
ことが一番問題であると主張されている人もいらっしゃいますが、
逆に世界的に比較すると、日本の社会は格差が少ない方だというデ
ータを示す人もいらっしゃいます。

 一方で、よく考えてみれば“違い”は昔からあったのでしょう。
学校での勉強が「得意」と「不得意」、足が「速い」と「遅い」な
ど、でもこれは個性であって、それによって生じてくる利益、不利
益を格差というのではないでしょうか?

 30年ぐらい前だったと思いますが、高校の入試改革で総合選抜
方式を導入しようという県教委に対し、私は当時のPTAを代表し
て、教育の機会均等か、結果の平等か・・・随分議論したことがあ
ります。結局機会が均等であれば、結果の平等は問うべきでないと
いう結論になったように記憶しています。でもこれも格差是正とい
う話なら、総合選抜にすべきだったかもしれません。

 根底に横たわっている問題は、自由主義か、全体主義かの選択だ
ったようにも思いますし、人間は、建前の平等だけでは満足しない
という問題だったと思います。個々の能力の違いを認め合うこと、
個々の適性を伸ばすこと、一流大学への進学だけが道ではないと言
いながら、うちの子だけは・・・そんな意識が皆さんの本音だった
と今思い出しています。そこにはある程度の格差は、認めようとい
う気持ちもあったのではないでしょうか。

 連合の皆さんが格差是正を主張しているのは、正規職員と臨時職
員の身分格差、所得の格差の問題であろうと思います(このことに
ついては、企業だけでなく、行政も関係があります。正規職員と臨
時職員の格差については、前にもメルマガで取り上げました)。

 冷戦が終焉(しゅうえん)、グローバルスタンダード(世界基準)
が幅を利かせる時代になって、格差を否定するのは極めて困難にな
ってきていると感じています。外国から安いモノがどんどん入って
きて、それを阻止することはできない、特に農産物などについては、
どうしようもないと悲鳴が上がっていますし、安い賃金を求めて企
業は海外進出(国内の空洞化)・・・。そして、一般市民にすれば
安いモノが手に入るならありがたいと感じている・・・一方、企業
は世界と競争するには、人件費はなるべく抑えて、企業をフレキシ
ブル(柔軟)な状態に保ちたい、今利益が上がっていても、来年の
ことは分らない・・・これも無理のない話だと思います。

 グローバル社会が徹底すれば、私は「一物一価」の社会に向かっ
て進んでいくのだと感じています。モノの値段もそうですが、人件
費についても、日本企業が中国や東南アジアへ進出している一番の
理由は人件費の安さであることは明白です。そして進出した地域の
人件費が日本企業の進出によって上がってくれば、またほかの地域
に移動していく・・・そんなことの繰り返しでグローバル化が進む、
そして日本国内の人件費も抑えられる・・・一物一価に向かって進
んでいくのでしょう。

 格差は少なくすべきだと思います。ただ単純に格差是正といって
も難しいですし、社会の活力を奪うことになりかねません。すなわ
ち、何事も徹底してはいけないのです。是正すべき格差を、ある程
度明確にして、その解消に向かってみんなが努力する・・・そのこ
とが大切なのではないでしょうか。

 最近、景気の拡大に伴って、長野でも有効求人倍率がかなり高く
なっているとのことで、新規学卒者も売り手市場になっているとの
ことです。長野職業安定所管内の今年1月の求人について内訳を調
べてみますと、正規社員は40.1%で、契約・嘱託社員15.6
%、パート労働者30.1%、登録型派遣労働者9.0%など、非
正規社員は59.9%だそうで、現段階では非正規社員の求人がか
なり高いことは事実です。

 ただ、有効求人倍率は1.43倍だそうですから、こういう状況
が続けば、企業は正社員を多く採用する方向を打ち出さないと、優
秀な社員の確保が難しくなりそうですから、景気回復によって徐々
に格差は是正されていくのではないかとも考えられます。

 現実に大手の企業では、パート社員や契約社員を正社員化する動
きが始まっているようです。景気の上昇はいろいろな場面で良い方
向に向かっているように思います。