2007年6月7日木曜日

映画「不都合な真実」を見て


 4月21日、環境保全協会にいる友達から薦められて、久しぶり
に映画を見ました。環境問題、なかんずく地球温暖化阻止に向けて
二酸化炭素削減の重要性を強調した映画「不都合な真実」で、アメ
リカ合衆国のアル・ゴア元副大統領が、正面からこの問題に取り組
み、世界中に警告を発するという内容でした。
 そして真実を明らかにすることは、為政者にとって(もちろん一
般市民にとっても)不都合であるが故に、あえて「不都合な真実」
という題名で世に問うた映画で、私には、特に京都議定書から離脱
しているアメリカの政治家・世論に対し警鐘を鳴らしているドキュ
メンタリー映画と感じました。

 「人類唯一の故郷(ふるさと)、それが今、危機に瀕(ひん)し
ているのです。それは人道的な問題なのです。それを解決するのは
あなたです。」「世界貿易センターの記念碑が建てられる場所は、
やがて水底に沈む。世界の問題はテロだけではありません。」
 為政者が問題を先送りしているが、もうそれは許されないという
ことでしょうか。

 そしてパンフレットには「私にできる10の事」が書いてありま
した。
(1)省エネルギー型の電化製品や電球に交換しましょう。
(2)停車中は、エンジンを切り、エコ・ドライブしましょう。
(3)リサイクル製品を積極的に、利用しましょう。
(4)タイヤの空気圧をチェックしましょう。
   車の燃料基準を上げれば、無駄なエネルギー消費を防げます。
(5)こまめに蛇口をしめましょう。
   水道の送水に使用されるエネルギーを削減することが出来
   ます。
(6)過剰包装、レジ袋を断りましょう。
   買い物は、このリサイクル・エコ・バッグを使いましょう。
(7)エアコンの設定温度を変えて、冷暖房のエネルギー削減をし
   ましょう。
(8)たくさんの木を植えましょう。
   一本の木は、その生育中に1トン以上の二酸化炭素を吸収す
   ることが出来ます。
(9)環境危機について、もっと学びましょう。そして学んだ知識
   を行動に移しましょう。
   子供たちは、地球をこわさないで、と両親に言いましょう。
    に勧めましょう。

 「人類唯一の故郷うんぬん・・・」の文章と「私にできる10の
事」の内容の差に、若干の戸惑いを感じていますが、地球は危機状
態にある、しかし私たちにとっては、一つ一つの小さなことの積み
重ねが重要なんだ、ということを主張しているのだろうと感じてい
ます(ただ、ゴア元副大統領が警鐘を鳴らすのなら、もう少し大き
な・・・例えば戦争をやめようとか、環境重視の「持続可能な経済」
にシフトしようとか、化石燃料を減らすための具体的な大きな政策
を打ち出してほしかったという感じなのですが・・・・)。

 アメリカが、なぜ京都議定書から離脱したのか・・・アメリカ経
済に悪い影響があるということだそうですが、ゴア元副大統領はそ
れではいけないと言っているのでしょう。
 そのことは、日本にとって、あるいは長野市にとっても同じこと
が言えると思います。経済を犠牲にしても地球を救わなくてはなら
ない、この映画はそんなことを主張しているのだと思いました。第
79回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞と歌曲賞の2部
門を受賞したとのことです。

 行政として地球温暖化対策を考えると、省エネルギーを進めるこ
とや、化石燃料に替わる太陽光や風力、水力、バイオマスエネルギ
ーなどの新エネルギーを積極的に活用していくこと、この二つを両
輪とした施策を推進する必要があります。
 
 具体的には、以前に第219号のメルマガでも紹介しましたが、
長野市では民間のノウハウや資金を活用し、省エネルギー化を実現
しようとする「ESCO事業」を長野運動公園総合運動場で導入し
ています。年間800トン余りの二酸化炭素の削減を見込んでおり、
これは、約570人の長野市民が1年間に家庭(自家用車を除く)
で排出する量に相当します。
 ここでの導入効果を見極めながら、ほかの公共施設への導入を推
進していきたいと考えています。また、効果をPRすることで、民
間のビルや工場などへも普及してほしいと期待しています。

 新エネルギーの活用では、既存の砂防ダム放流管を利用した小水
力発電施設の事業化を進めています。モデル事業として、発電電力
を小・中学校へ供給するとともに、環境教育の場としても活用を考
えています。公共施設にも、施設ごとに、どういった新エネルギー
設備を導入することが可能なのか、具体的な調査・検討も始めます。

 全国で、NPO法人などが主体となり市民ファンドを活用した風
力発電や太陽光発電などの新エネルギー設備設置の活動も起きてお
り、地球環境保全の意識も高まってきているのではないでしょうか。

 ただ、環境問題で有名なレスター・ブラウン博士は、バイオ燃料、
特にバイオエタノールをガソリンの代替品として使うことは(ブラ
ジルをはじめ、日本でも首都圏で使われ始めています)、現に食料
価格の高騰を招いており、より大きな問題を引き起こしかねないと
警告していました。
 また、風力発電について長野県内でも、景観上あるいは渡り鳥な
どへの影響から反対の動きもあります。
 化石燃料を減らす取り組みもすべてがうまくいくとは限らないこ
とを示しているのでしょう(市長就任前のことですが、アメリカの
サンフランシスコからヨセミテ国立公園へ行く途中、見渡す限りの
大草原で、数え切れないほどの風力発電の風車が稼働していた景色
を思い出します)。

 最近、日本の安倍首相は、2050年までに二酸化炭素などの温
室効果ガスを現在の半分にしようと国際社会に提案していますが、
世界中が歩調を合わせ、自国の利害を抜きにして取り組む必要を感
じています。
 先ほども触れましたが、「世界市民の一人」という気持ちをもっ
て、いかに二酸化炭素の排出を減らすか、エネルギー消費量を減ら
すか、経済活動や生活習慣を徹底して変えることは、現実にはなか
なか難しいことかと思いますが、できることから協力していく「自
発的協力」の積み重ねが大切だろうと思います。

 長野市でもこの6月1日から4カ月間、夏の軽装いわゆるクール
ビズが始まりました。今年で3年目を迎えたクールビズですが、年
々浸透してきていると感じています。ささいなことかもしれません
が、ライフスタイルを変えていくきっかけとして定着させていきた
いと思っています。

 今後も、エネルギー消費の抑制や二酸化炭素の排出削減に向けた
施策を推進し、本市の消費エネルギーを2010年までに1990
年レベルに戻すという目標に少しでも近づけるよう取り組んで参り
ます。