今回の話題は少し前の話で恐縮ですが、5月に北海道へ行ってき
た報告をします。
皆さん、DMV(デュアル・モード・ビークルの略)をご存じで
すか?少し前にテレビで放映されましたから、ご存じの方も多いと
思いますが、線路と道路の両方を走ることができる乗り物(黄色い
車体で、ボンネットがある形)です。
JR北海道が開発した乗り物ということで、私はテレビで見て以
来、ぜひ一度乗ってみたいと考えていました。理由は
(1)線路と道路、両方を走るという発想は素晴らしいが、開発し
たJR北海道の意図を知り、どんな利用方法があるのか、調べて
みたい。
(2)すぐには無理でも、将来の可能性を考えてみたい。
(3)乗り心地は・・・そして経営的に成り立つ乗り物か。
(4)長野市にとって、並行在来線問題、あるいは長野電鉄の屋代
線問題等に、何らかのヒントがないか?
実際に試乗してみて、開発者の話を聞きたい・・・こんなことを
考えて出掛けました。
視察日程は
5月12日(土)羽田空港から女満別(めまんべつ)空港へ行き、
その日は網走に一泊。
5月13日(日)釧網(せんもう)本線で試験的営業運行をしてい
るDMVに、浜小清水(はまこしみず)~藻琴(もこと)(約
11キロメートル)間で体験試乗。線路と道路の両方を経験し、
札幌へ移動し、テイネスキー場を視察しました。
5月14日(月)札幌のJR北海道本社を訪問。技術開発部長、D
MV推進センター所長ほか技術開発者にお会いし、話をお聞きし
ました。午後の飛行機で東京経由、新幹線で長野に戻りました。
網走での試乗体験は、現段階では、正直言ってあまり乗り心地が
良いとは思いませんでした。スピードは時速50キロメートルぐら
いで、まずまずなのですが、車両がマイクロバスの改造なので軽く、
また、車輪が鉄道車両に比べて小さいからでしょうか、レールの継
ぎ目のゴトン・ゴトンという響きが気になりました。それと、現段
階では乗車定員が、乗務員を含めて17人というのは、ちょっと小
さいと感じました(これについては30人弱ぐらいにはしたい、ま
た2両編成は可能ということでしたが)。今のままであれば営業的
に採算をとるのは厳しい、というのが感想でした。
しかし、線路と道路の乗り換えはわずか10~15秒、鉄道と道
路のインフラ(交通等の基盤)をそのまま活用可能で、走行安定性
の向上、ゴムタイヤの寿命の延伸など・・・いろいろ工夫がなされ
ており、特に切り替え時間の短縮は大変な発明に思われました。
JR北海道の本社で、技術開発部長の佐藤氏、DMV推進センタ
ー所長の横井氏等と懇談。DMVの可能性、将来性等について色々
お聞きしました。
開発意図は、JR発足以降、さまざまな地方閑散線区の収支改善
施策を行ってきたが、出尽くしの感がある(ワンマン列車化、駅業
務の委託、地方交通線のバス転換等)とともに、車両の更新時期を
控え、地方閑散線区のために高額な鉄道車両を購入することが難し
くなってきた。
このため、輸送量の少ない線区に見合った輸送力の車両を安価に
製造するため、バスをベースに、鉄道車両を開発することとし、道
路も走行可能な車両を目指して開発を進めてきたとのことでした。
また、ディーゼル車両での開発も、北海道全域でディーゼル車両が
運行されている実情に合わせたものとのことでした。
北海道は全般に過疎地域が多く、鉄道輸送は採算的に合わない地
域が多いようです。1日の客数が500人以下、極端に言えば三桁
にならない路線もあるということで、会社とすれば、地元の意向か
らすぐには廃線にできないので、何とかコストを下げるために、開
発をしたものである、列車というよりバスとして考えてほしいとの
ことでした。
ただ、技術的な話をお聞きしているうちに、課題だけではなく、
将来もしかすると大きく飛躍する可能性も感じました。
例えば、道路面を走るときはゴムタイヤで走り、線路に入ると鉄
の車輪が下りてくるのですが、車両を動かす動輪は、ゴムタイヤの
方なのです。その重量配分が絶妙になっているようですからいろい
ろな状況への対応も可能のようですし、また維持費などはかなり減
額できそうです。
価格も魅力です。電車の車両価格は1台約1億円ですが、DMV
は改造費込みで約2千万円とのことですから、有利です(しかし乗
車定員から考えると厳しいですが)。ですから将来的に大型バスぐ
らいの乗車定員になれば、十分実用になると思いました。
観光用に使う手もありそうです。旅館へお客さんのグループをお
迎えに行って、道路を走り、駅まで行って線路上へ・・・そのまま
観光スポットへという使い方はどうでしょうか。でも現在は、バス
と電車の運転手がそれぞれ必要とのこと・・・これは、法の問題で
すから、いろいろな課題が解決していけば可能でしょうが・・・。
長野の並行在来線や長野電鉄屋代線については、まだまだ相当の
乗車人員があって、朝夕のラッシュ時はとても無理ですが・・・昼
間だけ、観光用なら・・・でも普通の電車車両と混在することは、
信号機などの設備の安全性をきちんと確保するなど、難しいことも
あるようです。
今すぐの可能性として私が考えたのは、復活したいとの声がある
軽井沢以遠の廃線になった碓氷峠なら使い方を工夫すれば・・・。
あるいは、信越線の北長野駅から長野電鉄の信濃吉田駅へつながる
というのもあるかなあと思ったりしています。
皆さん、夢が膨らみませんか。私は北海道へ行って実際に見るこ
とができたこと、大変良かったと思っています。JR北海道の今後
の開発力に期待したい・・・。
DMVは、これまでに無かった新しい交通機関としての可能性を
持っています。導入に当たって既存の鉄道、道路といったインフラ
を活用でき、その双方を行き来できることで、乗り換えを無くすと
いう利便性の向上が図られ、これまで鉄道やバスが想定していなか
った需要を取り込んでいくことが可能になると考えられます。これ
からもDMVの動向には注目していきたいと思います。