2007年11月15日木曜日

中山間地域活性化への方策


 11月11日、市長就任以来7年目に入りました。
 この6年間、随分長かったような気もしますが、一瞬の間であっ
たような気もしています。時間のたつのがこんなに早く感じるのは、
市長という役職に就いた忙しさからでしょうか、それとも「年を取
ると時間が早く過ぎる」と多くの先輩が話されていた、そんな共通
の思いを感じる年代に、私もなったからでしょうか・・・

 残された任期、第四次長野市総合計画に示した長野市の未来図に
向かって全力を尽くすことは当然ですが、中でも私は中山間地域の
活性化に特に力を入れたいと考えています。
 なぜなら、6年前市長選に立候補して「長野市は広い、ここも長
野市か」と感じ、以来都市部と中山間地域の格差是正(当時はこう
いう表現はしませんでした)の必要を強く感じ、いろいろな施策を
行ってきたつもりですが、限界集落といった言葉が言われるように
なってきており、事態は少しも良い方向に進んでいないことは、残
念ながら事実です。4町村との合併も、そんな時期に重なってしま
ったのかもしれません。

 中山間地域は、長野市域の70%を占めています。
(1)若者が都市部に転出し、地域の高齢化が進み、後継者が少な
くなってしまった。
(2)生活の手段としては、農業と林業が主であるが、いずれも稼
ぐための条件は厳しく、将来への夢をなかなか持ちにくい。
(3)長野市近郊の場合、都市部へ通勤することによって生計を支
えることが可能ではあるが、東京のように1時間ぐらいの通勤時間
は普通という地域に比べ、道路が狭い上に急坂、冬の積雪問題があ
る。公共交通機関も減退している。
(4)交通・道路問題だけでなく、都市のインフラが全般的に不足
している。農業集落排水事業などによって下水道整備は前進してい
ますが、買い物をする商店、医療や介護の施設、通信インフラ・・・
都市部の人には考えられないような不便さがあります。
(5)人口が減り、コミュニティが崩壊しつつある。長野市にも限
界集落が発生している。

 中山間地域活性化ということで、いろいろな施策を行うのはもう
遅いという方もいらっしゃいます。確かに日本中が困っている問題
ですから、簡単にいかないことは事実です。しかし、本当に人が住
まなくなったら・・・そこで生活の根拠を置けなくなったら・・・
山は荒れて災害が起こるでしょうし、河川の整備もできない、あの
日本の原風景ともいうべき美しい農山村が消えてしまったら、どん
な社会になるのでしょうか?

 難しいことは承知の上で、都市部に多少の負担を払ってもらって
も、何としても中山間地域の再興はしなくてはならない事業である
と、考えています。

 マクロ的な視点で考えなくてはならないのは、県・市町村レベル
の話ではなく国家的なプロジェクトとして取り組む必要があるとい
うことです。
(1)森林環境税が今話題になっていますが、これを全国レベルの
プロジェクトにしたいものです。県レベルでは十分な税収は望めな
い、ましてや市町村レベルではなく、東京、大阪、名古屋など、人
口集中地域を巻き込まなくては、効果は薄いと思います。大都市は
地方の恩恵を受けている。地方(特に中山間地域)はきれいな水、
きれいな空気を都市に売っているのだという発想が必要です。そし
て地域間格差を埋める絶好の税制だと思いますが、いかがでしょう
か。
(2)ひとつ素晴らしいニュースがありました。県知事から福田内
閣で総務大臣に就任された増田さんが「限界集落に交付金を渡す」
と発言されたことです。これは(1)の発想と同じ効果が望めると
いうことです。現在「中山間地域等直接支払制度」がありますが、
これを充実させることにつながると思います。市町村が単独で取り
組むだけでは効果が薄い。国の政策の中で大きな投資先の変革を起
こさないと・・・単なる発言に終わらないよう、願っています。
(3)地域に人が住む、生活できる、ということが基本でしょう。
ただ地域はすべて違います。それぞれの土地での必要性は、すべて
違いますし、時間の経過でも変わっていくと私は思います。要はそ
この生活に魅力があり、移り住みたいと人が感じる、そんな施策が
必要です。

 そこで、長野市ではどうするか、現段階、まだ私の構想段階です
が、
(1)本年度に創設した農業公社や住民自治協議会、農協、森林組
合、そして行政は全庁挙げて協働して課題に取り組む。
(2)公共交通は都市のインフラと位置付け、整備する。
(3)中山間地域の住民自治協議会などで、生活支援要員の採用を
考える(できれば地域に住める人が望ましいが、場合によっては地
域外から通う人もあり得るかもしれない)。人数、仕事の内容など、
詳細は今後検討する。各地域の農林産品などの生産高や人口増への
目標値を決め、行動する。
(4)素晴らしい自然を活用して中山間地域の活性化を図るための
「(仮)いいとき(飯・戸・鬼)エリア構想」(飯綱・戸隠・鬼無
里の頭文字)をつくり、中山間地域活性化のモデル事業として実施
する。

 あまり項目を多くしても実行できないでしょうから、この4項目
を確実に実行し、常に検証しながら、国の支援策も受け入れながら
新しい中山間地域活性化の長野市モデルを構築するという意欲を持
って、取り組んでいきたいと考えています。
 中山間地域の自然・景観は本当に素晴らしい。そこでの生活は、
忙しい都市部の生活とは根本的に違っている。どこかで価値観の逆
転が起こるのではないか・・・私はそんな希望を持っています。

 先日、長野オリンピック記念長野マラソンがアテネクラシックマ
ラソンと姉妹提携して10周年ということで、アテネを訪問しまし
た。そのときイギリスに立ち寄り、自治体国際化協会の方々と懇談
したのですが、イギリスの農村が豊かだということが話題になりま
した。私は、その原因を知りたい・学びたいと強く思いました。