少し前の話で恐縮ですが、7月20日に開催された第3回「長野
県行政機構審議会」に出席しました。私は長野県市長会会長として
審議委員に任命されていましたので、その立場での出席でした。た
だ市長会会長としての審議委員ではありますが、必ずしも市長会の
了解を得ているものではないので、述べて良いものかどうか迷いま
したが、日ごろ考えていたことでありましたので、私見、あるいは
長野市長としての立場であることを明確にした上で、発言させてい
ただきました。
すなわち、県の行政機構改革の目玉になると信じ、県の現地機関
と広域連合について、私の考えていることを述べさせていただいた
ものです。
その後、県市長会でも同趣旨の発言をさせていただいていますの
で、今回はそのことを報告させていただきます。
現在、国では、将来の道州制などを見据え、本年7月に発足した
第29次地方制度調査会において、地方自治の一層の推進を図る視
点から、小規模市町村に対する方策を含め、基礎自治体の在り方な
どについて議論されています。また、地方分権改革の進展、広域的
な調整を要する案件の増加など市町村を取り巻く環境に変化が生じ
ています。このような状況から、私は広域行政を担える新たな自治
組織を構築する必要があると考えていました。
一方で、相当の広域行政を推進できる強い行財政基盤を有する基
礎自治体を整備するための市町村合併については、今後、県内で大
きく進展するのは、なかなか難しいのではないかと認識しています。
そのために、まず、さまざまな県の現地機関の統合を提案しまし
た。これまで県の本庁組織の系列で設置されていた分野ごとの現地
機関を統合していったらどうかということです。長野地域でいえば
仮に「長野広域事務所」として、ここに「地方事務所」「福祉事務
所」「建設事務所」「教育事務所」などを統合したらと考えていま
す。
次は、管轄区域の問題ですが、前述の「広域事務所」を県内の4
ブロック「北信」「東信」「中信」「南信」に再編するということ。
ブロック分けについては、さまざまな意見があると思いますが、人
口・面積など県内の地域バランス、また、県歌「信濃の国」でも
「4つの平」と歌われているように、歴史的な背景や県民意識など
を考え合わせてみると有力な考え方ではないかと思っています。
ただし、管轄区域が現在と比べ広範囲となるため、現地機関の統
合と併せて、区域内の各地にその出張所を設置する必要があると考
えられ、そういう意味では、現在の現地機関の再編成という形にな
ろうかと思います。
最後は、この広域事務所の再編に併せ、現在県内に10ある広域
連合をこれに統合するということ。つまり、現在市町村が構成する
広域連合に県も参画していただき、県と市町村が連携することで、
県の事務や現状ではなかなか進まない権限移譲の受け皿にするとと
もに現在、市町村が担当している相当な部分の事務を移管できるの
ではないかと考えます。市町村での事務は、極端にいえば、住民に
直結している窓口サービスや地域おこしなど、独自色の出せる分野
に特化していくことで、小規模自治体でも自立していける道が開か
れるのではないかと思います。
なお、4ブロックに再編することが先か、まずは現状の枠組みの
中で、「広域事務所」と「広域連合」との一体化を図ることが先か
については議論のあるところだとも考えています(広域連合に県が
参加することは、法的に可能です)。
また、この「広域連合」については、こうした多くの機能を担え
るはずと思っていますが、一方、合意形成の困難さや財源の問題な
ど、課題が多く現状に対する不満も感じています。その意味でも、
住民に近い立場で広域行政サービスを提供している県の現地機関と
統合することで、県のリーダーシップも期待できるし、よく言われ
る二重行政の弊害などを解消する一助ともなるのではないかと思い
ます。
具体的な例で言えば、現在、消防組織法の改正に伴い県内消防本
部の広域化が計画されていますが、これの運営主体・組織として検
討される可能性があり、この議論のきっかけになるのではとも考え
ています。ほかにも福祉分野、ごみ処理、土地利用計画など、広域
で解決すべき課題への対応も、よりスムーズになるのではと思いま
す。
県と市町村の役割分担や財源の問題、組織のリーダー、あるいは
議会等の在り方など、課題も多いのですが、現行の制度の中で実現
できると考えており、「長野モデル」として検討すべき価値がある
と考えています。
地方自治の大きな変革期に当たり、これまで私は、これからの新
しい地方自治の姿をイメージするとき、「連邦都市」という言葉を
使って表現してきました。県の現地機関である広域事務所と広域連
合とが一体となった組織を仮に「広域自治体」と呼ぶとすると、域
内の各自治体は、この「広域自治体」との関係を強化し、各「広域
自治体」同士は緩やかに連携しながら地方自治を進めていくという
考え方です。
いずれにしても、県、市町村、広域連合等、県内自治体全体にか
かわる大改革であり、また法律改正の必要性なども考えられ、短期
間に実現できるとは思っていませんが、県の行政機構の見直しに当
たって、新たな地方自治制度や地方分権改革の観点からも多角的に
検討していただきたいと考え、行政機構の在り方についての議論に
一石を投じるつもりで提案したものです。
今後、前述の「長野県行政機構審議会」では、現地機関問題は来
年度検討するということですので、その時点で改めて提案しようと
考えています。もちろん市長会においても忌憚(きたん)のない意
見をお聞きしたいと考えていますし、また、機会があれば、町村会
の皆さんの意見もお聞きしたいと思っています。
審議会でこの提案をしたとき、同席しておられた板倉副知事が
「長野市長の意見は、われわれには思いも寄らない意見」と表現さ
れたことが印象的でした。