2008年10月16日木曜日

「ふるさと納税制度」のご案内


 本年4月の地方税法の改正により、「ふるさと納税制度」がスタ
ートしました。この改正を受け、いずれの地方自治体も受け入れ態
勢を整えたり、寄付をしていただくためのさまざまな工夫をしたり
しています。

 「ふるさと納税制度」は、「ふるさと」を応援したいという納税
者の皆さんの思いを実現するため、応援したい市町村などに寄付を
していただくと、所得税と個人住民税から寄付額のうち5,000
円を超える額が軽減されるという制度です。つまり、本来はお住ま
いの自治体などに納めていただく税金の一部を、応援したい市町村
などに「寄付金」として“納税”していただくことができるのです。
 ここで言う「ふるさと」とは、現住所や戸籍などとはまったく関
係がありません。本市で言えば、長野市出身の方、転勤や就学など
で長野市に住んでいた方、観光で長野市を訪れたことのある方など、
どなたでもお申し込みいただくことができます。もちろん、現在、
長野市にお住まいの方でも良いのです。

 「ふるさと納税制度」の仕組みは、少し複雑ですが、具体的な例
として、総務省の公表資料によりご説明します。夫婦と子ども2人
の家族で、給与収入が700万円ある方が、仮に4万円の寄付をし
たとします。この場合は、所得税から3,500円、個人住民税か
ら3万1,500円、つまり5,000円を超える寄付金相当額で
ある3万5,000円の税金が軽減されることになります。
 ただし、税金の軽減を受けるためには、寄付をした翌年の3月
15日までに確定申告をしていただくことが必要です。また、軽減
される個人住民税は、税額のおおむね1割までとなっています。

 次に、長野市にいただいた寄付金の活用方法についてご説明しま
す。長野市では、昨年度からスタートした第四次長野市総合計画を
基に、次のとおり、7つの活用先メニューを用意しています。この
ようなメニューを用意したのは、いただいた寄付金の使途を明らか
にし、透明性を確保したいと考えているからです。

 7つの活用先メニュー
・「めざせ!金メダル!」
  長野オリンピック記念長野マラソン大会などスポーツ大会の開
  催や、地域のプロスポーツクラブの育成など、スポーツを軸と
  したまちづくりへの支援として活用させていただきます。
・「牛に引かれて善光寺参り」
  国宝善光寺と門前町の世界遺産登録に向けた取り組みや、城下
  町松代の歴史的な景観・街並みの保全など、歴史や文化財を生
  かしたまちづくりへの支援として活用させていただきます。
・「山あおく・水清き・ふるさと」
  豊かな森づくりと水源の保全、太陽光発電などの自然エネルギ
  ーの活用など、森林保全や環境にやさしいまちづくりへの支援
  として活用させていただきます。
・「おらほうへ、よってけさ!」
  都市と農村の交流活動の促進や、りんご・おやき・そばの特産
  品づくりなど、中山間地域での交流活動・魅力づくりへの支援
  として活用させていただきます。
・「世界に羽ばたけ!長野っ子」
  特色ある教育内容の充実や地域でのびのび育つ環境づくりなど、
  未来を担う子どもたちの人材育成などへの支援として活用させ
  ていただきます。
・「ふるさとの父・母へ」
  介護予防や介護サービスの充実、高齢者の生きがい・健康づく
  りなど、高齢者が地域で安心して暮らせる環境づくりへの支援
  として活用させていただきます。
・「市長におまかせ」
  上記の6つの応援メニュー以外で、市長が選定する政策などに
  活用させていただきます。

 この「ふるさと納税制度」が創設された経緯なのですが、この制
度は、昨年5月に当時の菅総務大臣が提案したことに始まっていま
す。当時は、大きく報道されていましたので、ご存じの方も多いと
思います。制度創設の理由の一つには、法人二税を中心とする税収
が、企業活動が活発な東京をはじめとする大都市に集中し過ぎたこ
とにより、地方間の財政力格差が拡大していることから、それを是
正するために税源調整を図るという目的がありました。

 また、従来から言われてきたことですが、地方では多額の公的負
担をして子どもたちを育てているが、いざ納税の段階になると東京
などの大都市に出て行ってしまう。この子どもたちが大都市で納税
した分を地方へ還元する何らかの対策が必要だ、との議論も行われ
たようです。
 このようなことも、今回の制度には織り込まれています(ただ、
長野市も含めて、自分の市からほかの市へ寄付金が行ってしまうこ
ともあるわけで、市町村の競争を引き起こす可能性もあります。そ
ういう意味では自治体のイメージも重要になるのでしょう。正直に
言えば、私は、この競争をあまりやりたくないと感じているのです
が・・・長い目で考えていくテーマかも知れません)。

 なお、この制度の名称は「ふるさと納税制度」となっていますが、
実際には、いわば寄付税制の改正です。日本人は、寄付という行為
に対してあまり積極的とは言えない、と以前から私は感じていまし
た。事実、日本の成人一人当たりに換算した寄付額は、英国の16
分の1、米国の50分の1という調査結果もあるようです。特に、
米国では寄付が多く、そのための制度も充実しているようですが、
これは、もうけたお金は社会に還元するという価値観、文化が浸透
していることの表れであるといわれています。

 今回の「ふるさと納税制度」の創設を契機に、日本でも寄付行為
に対する理解が進み、いわゆる寄付文化というものが育ってくれる
ことを大いに期待しているところです。そのためには、日本の税制
における寄付の考え方も大きく変えていく必要があり、この制度の
創設がそのきっかけになってほしいと思っています。

 ただ、一方では、納税者(寄付者)の自己負担となる5,000円
相当の地元特産品を贈っている自治体もあるようです。特典などを
付けて、より多くの寄付金を集めようというのは、それはそれで一
つの考え方だとは思います。しかし、制度の趣旨が、「ふるさと」
を思う心に根差した善意を期待していることを考えると、先ほどの
話のとおり、いくら都市間競争の時代とはいえ、私としては、こう
した形をとってまで競争したくないというのが本音です。
 5,000円という適用下限額を定めた本来の趣旨は、寄付金額
の多寡にかかわらず、市町村などがふるさと納税の手続きをする際
に事務経費が掛かることから、その分を配慮したということのよう
です。

 余談ですが、「エンジェル税制」という制度をご存じでしょうか。
 この制度は、今後、発展が期待されるベンチャー企業への投資環
境を整備し、企業を育成するために設けられたもので、国民のお金
を貯蓄から投資へ向けたい、という国の方針の一環として整備され
ました。
 現在、米国発の金融不安が世界を席巻し、大きな混乱を引き起こ
していますが、これは実体経済から乖離(かいり)した各種の金融
商品が開発され、破たんしたことが原因の一つと言われています。
 一方で、戦後、日本の経済成長を支えたソニー、ホンダ、松下
(現パナソニック)といった多くの企業のスタートがベンチャー企
業であったことを考えますと、ベンチャー企業を育てていくことは、
これからの着実な経済発展のためには非常に重要なことであると思
っています(実は、この制度にも大いに関心を持っていただきたい
のですが・・・)。
 この「エンジェル税制」では、投資家のリスク軽減を目的に、投
資額をその年の総所得金額から控除するという優遇措置が設けられ
ているのですが、この場合も5,000円を適用下限額としていま
す。恐らく「ふるさと納税制度」と同じ考え方での制度設計なので
しょう。

 いずれにしても、この「ふるさと納税制度」によって今後もより
長く、より多くの皆さんに長野市を支援していただくためには、応
援したくなるような魅力的な「ふるさと」にしていくこと、そして、
共感を得られるような施策を企画・実施していくということが、一
見、回り道のようでも、長野市にとっては、最も重要なことになる
のだと、私は思っています。

※「ふるさと納税制度」の概要や、長野市へのご寄付の方法など、
 詳細につきましては、
 長野市ホームページ(http://www.city.nagano.nagano.jp)の
 「ふるさと納税のご案内・ながのふるさと応援サイト」でご覧い
 ただけます。

  ご寄付のお申し込みや「ふるさと納税制度」についてのお問い
 合わせは、
  長野市企画課 電話番号026-224-5010
         ファクス番号026-224-5103
         Eメール=kikaku@city.nagano.nagano.jp
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