2009年5月28日木曜日

大豆島公園がしゅん工しました


 5月9日に大豆島公園のしゅん工式が行われました。
 この公園は、平成15年度から事業化し、平成22年度までの8
年間で整備する予定だったのですが、地権者の方々や建設委員会を
はじめとする地元の方々のご協力により、計画より2年前倒しをし
て、本年3月に完成させることができました。

 この公園の大きな特徴は、計画案を地元の皆さんが作られたこと
です。
 大豆島地区では、建設委員会をつくり、地区の皆さんや小学生を
対象としたアンケートを実施したほか、ワークショップ形式で計画
づくりを行ってきました。そして、ワークショップなどに参加でき
ない地区の皆さんへは「大豆島公園ニュース」として情報を伝え、
工事完了まで6号ほど発行するという、今後の公園づくりの手本と
なるような活動であったとお聞きしています。
 この間、市はサポート役で参加してきました。このような方法で
公園をつくるのは、市内では初めてのことです。

 そのほかの特徴としては、災害発生時に備えた機能の充実が挙げ
られます。
 広いスペースが確保されている交流広場は、一時的な避難地にす
ることが可能で、地下には容量60トンの耐震性防火水槽が設置さ
れています。
 防災トイレも4基設置しました。このトイレは、地震により水道
管や下水道管が破断してしまった際に使用することを想定したもの
で、いわゆるくみ取り式です。平時はマンホールのふたが見えてい
るだけですが、この下に埋設されているタンクの中には、テントが
収納されており、これを地上に出して設置するとトイレとして使用
できるようになります。
 東側の入り口付近には、非常食や毛布などを備蓄した防災倉庫も
設置しました。

 さらに、公園整備に併せ、大豆島小学校に連絡する道路を拡幅改
良して、学校からの利用をしやすくしたほか、外周道路を整備して
利便性や防災機能の向上を図りました。地区の皆さんが集まりやす
いという面でも適地であり、より良い公園になったと思っています。

 また、大豆島小学校では、これから校舎の増築工事が始まります。
そうしますと、校庭が一時的に狭くなってしまうことから、補助的
にこの公園の広場を利用することも考えています。

 公園は、地域のスポーツ、レクリエーション、コミュニケーショ
ン活動の場だけではなく、地震などの災害時には避難地としての役
割を持っていることから、安全でゆとりのある市民生活には欠かせ
ない施設です。このたびの開園を機に、大豆島公園が地域の皆さん
に愛され親しまれる公園になることを願っています。

 以上は、しゅん工式の当日、私が大豆島地区の皆さんへ申し上げ
たあいさつの概要です。
 この日、完成した公園を一回りしてみましたが、この地域の以前
の姿を知っている私にとって、見違えるほど、本当に奇麗になって
びっくりでした。

 大豆島公園しゅん工のことを考えていたところ、以前、朝日新聞
夕刊の「窓~論説委員室から」という囲み記事を読んだことを思い
出しました。保存していたこの記事のメモをパソコンから引っ張り
出してみましたので、以下にご紹介します。

**********
 米国テネシー州のチャタヌーガ市を取材で訪れた。アメリカ一住
みやすい、と全米市長会が折り紙をつけたところだ。
 人口は16万人ほど。市会議員は女性2人を含むたった9人だ。
ほぼ同じ人口をもつ佐賀市、津市、北海道小樽市などの4分の1し
かいない。
 議員が少ない理由のひとつは、市の計画策定や問題の解決に、最
初の段階から住民が直接かかわっていることである。

 市内のあちこちで、毎日のように小さな集会が開かれている。市
議会議長の案内で、ある地区の住民集会を見に行った。
 午後7時、教会に20人あまりの人々がやってきた。テーマは、
新しくできる地域の公園をどうするか。
 「ローラースケートの若者を追い出さない方がいい」
 「歩道は舗装しないで、立ち話ができるようにしよう」
 公園専門のコンサルタント会社社員と市の職員が、住民の意見を
まとめて図面にし、次の集会で見せる。それをもとに、さらにみん
なで計画を練る。

 公園ができるのは2008年のことだという。「たしかに時間は
かかる。でも、自分たちの公園という意識は確実に高まります」と
議長は言った。自分たちの公園だから、大切にもされるにちがいな
い。
 効率が優先される国で、こんな愚直な手法がとられていることは
驚きだった。しかし、このやり方で、もっとも公害がひどかった町
を再生させることができたのだ。
 市議会は毎週火曜の夜に開かれる。だれでも傍聴できる。
 市長も毎月一回、住民との対話集会を開いている。子どもがとき
どき参加する。
 市長室と市議会議場はどちらも市役所の一階、玄関を入ったすぐ
右手と左手にある。訪れる市民にとって、これ以上の場所はない。
**********

 この文章を読まれて、どう思われますか?
 この記事によれば、全米市長会は、この小さな市「チャタヌーガ」
をアメリカ一住みやすい町だと折り紙を付けたということですが、
今回の大豆島公園の建設経過と比べてどうでしょうか。
 確かにチャタヌーガが素晴らしいことは認めますし、おそらく、
全米一と評価した基準は、このほかにもいろいろあるはずでしょう。
しかし、大豆島公園については長野市だって決して負けてはいない、
大豆島地区での経過は決して劣るものではない・・・と、私は誇ら
しく思っています。

 ただ、これまでも、公共事業を行う際には、関係する地域の皆さ
んにはご相談させていただいてきました。しかし、それは、行政側
が提示した案についてご意見を頂くことが中心で、必ずしも大豆島
公園のように、市民の皆さんが主役という姿ではありませんでした。
 これからの長野市が行う公共事業では、今回のようなシーンが数
多く見られるようになるのではないでしょうか。また、平成22年
度からは住民自治協議会が本格稼働しますので、地区全体にまたが
る大きな課題を解決するために、各地区でこのような方式が展開さ
れるかもしれません。

 しかし、このような過程を経る中では、さまざまな考え方が出さ
れると思いますし、反対意見を持つ方もいらっしゃいます。合意を
頂くまでには、なかなか難しいこともあるでしょうし、それなりに
時間を要することは事実でしょう。

 ですが、行政として何かをしようとする場合、初期の段階から市
民の皆さんにかかわっていただき、完成までの過程を市と共有して
いただくことができれば、市民の皆さんにとってより満足度の高い
事業になると思いますし、市政に参加していただく良い機会にもな
ると考えています。そして、何よりも、市民の皆さんに喜んでいた
だけると思っています。