2009年9月29日火曜日

長野市の福祉・医療について



長野市の人口は平成19年にピークを迎え、その後、わずかずつで
はありますが減少し続けています。合計特殊出生率は1.43で、
県下80市町村の中で65番目です。全国平均の1.37を上回っ
てはいますが、確実に若年層が減り続ける傾向にあります。
先日のブログでもご紹介させていただきましたが、「第4回 次世
代育成環境ランキング」において、長野市が子育てしやすい都市と
して3位に評価されたことは、とても嬉しいことで喜んでいます。
しかし、少子高齢社会の中で若年層が減り続ける傾向をみますと、
この評価だけで満足してはいけないとも思っています。

まず、子育ち・子育て支援施策について幾つか考えを申し上げます。

今年度から、市内の全54小学校区のうち、17校区で「長野市版
放課後子どもプラン」を実施しています。この事業は、放課後の安
全で安心な居場所を子どもたちに提供するとともに、遊び・学習・
各種体験活動をするための場として、地域の皆さんと協働して既存
の児童館・児童センターと小学校施設を活用して実施しているもの
です。
安心して子育ち・子育てできる環境を整備することは、少子化対策
の第一歩だと思っています。かつて地域には、「地域の子」という
概念があり、地域の子は地域が護り育てるという考え方が、無意識
のうちに浸透していました。「長野市版放課後子どもプラン」は、
地域の皆さんと協働して子育てのためのより良い環境を整備する事
業であり、現代版の「地域の子」育成支援体制づくりでもあると思
っています。できるだけ早く、全校区で実施体制を整備しなければ
いけないと考えています。

なお、「放課後子どもプラン」の利用料についてですが、検討をお
願いした審議会の意見では「有料にすべき」という答申を頂いてい
ます。しかし、各地区の市民会議や、市議会でいただいたご意見か
ら、有料化することにかなり強い抵抗感があることが理解できまし
た。さらに、現在17校区で先行実施している「放課後子どもプラ
ン」が無料だということもあり、散々迷った末ですが、私としては、
少子化対策の重要な施策として、利用料は無料とすることが良いと
いう結論を出すに至りました。このことは、マニフェストにも記載
しています。

今年の12月から長野市版ブックスタート「おひざで絵本」事業を
始めることにしています。これは、絵本を読み聞かせながら、赤ち
ゃんと向かい合うひとときを持っていただくために、絵本をプレゼ
ントする事業です。絵本は、7~8カ月児健康教室の際にお渡しす
ることにしています。その際には、読み聞かせの大切さなどについ
てもお話もさせていただき、選定委員会で選定した5冊程度の本の
中から1冊選んでいただくことにしています。対象となる保護者の
方にはぜひお受け取りいただき、赤ちゃんの豊かな心の成長を促す
とともに、親子の絆を深めていただきたいと思っています。

妊婦健康診査についても今年の4月から公費負担回数を拡大してい
ます。妊婦健康診査は、妊娠中のお母さんの健康状態や赤ちゃんの
発育状態などを定期的に確認する大切な健診です。これまでも妊婦
健康診査費用の一部を公費で負担してきましたが、医師会など関係
機関との連携により、これまでの5回を14回に拡大しました。安
心して出産を迎えていただきたいと思っています。

このほか、こども広場、子育て支援センター、ファミリーサポート
センター、一時保育、休日保育、病後時保育などによる子育て支援、
協賛店拡充による「ながの子育て応援カード事業」など、長野市独
自の施策を充実していくことはもちろんですが、税制面や諸手当の
面でも、子どもが多いほど優遇される社会システムを構築すること
も必要だと考えています。また、保護者の労働環境に子育てに関す
る十分な配慮を加え、安心して子育てができる環境づくりにも力を
入れていきたいと考えています。
また、新政権の誕生により、国の新たな子育て支援策が具体化して
くることになるでしょう。こちらも大いに期待したいと思っていま
す。

福祉というよりは教育分野ですが、子どもに関することで少し付け
加えさせていただきます。
先日の新聞報道などにもありましたが、残念ながら長野市では、児
童・生徒の不登校が小・中学校ともに増加傾向にあり、国・県の平
均を上回っている状態です。引き続き、不登校児童・生徒の受入れ
施設である中間教室の充実を図るとともに、不登校を予防するため
に必要な手立ては積極的に実施していきたいと考えています。
特に、今年度からは、全小・中学校で「Q‐U(楽しい学校生活を
おくるためのアンケート)」を実施しています。このアンケートを
実施すると、児童・生徒の意欲や満足感、学級集団の状態などを診
断することができ、不登校の予防に活かせるそうですので、大いに
期待しています。
いずれにしましても、教育現場を預かる先生方と力を合わせ、教育
環境の改善に努めていきたいと思っています。

青少年の健全育成という視点も大事にしていきたいと考えています。
インターネットや携帯電話などの普及により、今の社会は、大変便
利になりました。
しかし、子どもたちを取り巻く環境にもたらしているものは、有害
な情報の氾濫や、事件に巻き込まれるきっかけとなるなど、必ずし
も良いことばかりではありません。犯罪が低年齢化しているとも言
われています。次代を担う青少年を健全に育成することは、私たち
大人に課せられた大きな課題です。これまで以上に、学校や地域、
ご家庭とも連携を図れるようにしながら、青少年の健全育成、非行
防止に努めていきます。

次に、高齢者、障がい者施策について申し上げます。少子高齢社会
なのですから、子どもたちだけではなく、高齢者、そして障がいを
持つ方にとっても、安心して健やかに暮らせる社会を維持していく
ことが市政運営の基本だと思っています。
人口総数に占める65歳以上の割合を示す高齢化率は、長野市全体
で23%に達しています。これは、超高齢社会と言われる状況です。
また、中山間地域においては高齢化率34%で、3人に1人が高齢
者という著しい高齢化が進行しています。20年後には、長野市全
体が現在の中山間地域とほぼ同じレベルの超高齢社会を迎えるとの
予測もありますので、長野市にとって高齢者、障がい者施策はとて
も大事な施策です。

基本とすべきは、高齢者も障がいを持つ方も、健康で生きがいのあ
る、その人らしい生活を住み慣れた家庭や地域で送れるよう、環境
を整えていくことだと考えています。そのためには、保健・医療・
福祉の連携を強化するとともに、地域で支え合い、ともに生きてい
く仕組みを皆でつくっていくことが必要です。
また、いきいきと自分らしく暮らすため、生涯学習・スポーツ環境
の充実、積極的な社会参加を促進することも不可欠だと思っていま
す。お一人お一人の元気が長野市の元気をつくっていくはずです。

個別の高齢者、障がい者施策は、大変多岐にわたっており、とても
ここだけでご紹介することはできませんので、ベースとなる考え方
を幾つか申し上げます。

まず、高齢者、障がい者をはじめ、すべての人に優しいバリアフリ
ー、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めることは、行政の基
本的な役割だと思っています。公共交通を維持することはもちろん
ですが、進展する高齢化社会に対応するためには、日常的なことは
近い範囲の移動で済むコンパクトシティの実現も重要です。その意
味では、歩いて行ける近所のお店・商店街を守ることも福祉施策の
一環と言えるでしょう。

地域医療を維持することも重要です。長野市の医療体制は、行政と
長野市・更級・上水内・須高の各医師会の皆さん、そして長野赤十
字病院などの基幹となる病院との協力関係を柱に、市民の皆さんの
けがや病気を治療したり、健康を守ったりすることに万全を期して
います。

市内の医療体制は、大規模な病院としては、長野市民病院、長野赤
十字病院、そして厚生連の篠ノ井・松代・若穂の各病院(来年1月
の合併で新町病院も入ります)、国立東長野病院、NTT病院、長
野中央病院などがあります。開業医の先生方には、大病院と連携し、
良き協力・補完関係をもって、長野市の医療を支えていただいてい
ます。
中山間地域については、信更・小田切・信里・戸隠・鬼無里・大岡
地区に長野市として診療所を設置しており、先生方に辺地医療に取
り組んでいただいています。

地域の中の助け合い体制を維持することも大切だと考えています。
この一環として、昨年度から七二会地区など3つのモデル地区で
「中山間地域自治活動支援事業」を始めました。平成22年度から
は、中山間地域の11地区すべてで実施したいと考えています。
この事業は、そう遠くない将来、市内全域で実施する必要性が生じ
るのかもしれません。まず、中山間地域で実施することで、さまざ
まなノウハウを蓄積していきたいと思っています。

高齢者の皆さんの“元気”も応援していきます。「ながのシニアラ
イフアカデミー」の拡充、「おでかけパスポート事業」の継続、人
気の高いマレットゴルフ場整備など、社会とのつながりを保ち、生
きがいを持って健康で自分らしく生きるための環境整備にも積極的
に取り組んでいく必要があると考えています。

そもそも、市町村行政が目指す根本的な目標は、市民の皆さんの幸
せを実現することです。そして、その実現のために必要なことは、
「福祉」と「教育」であると、ある方から教えていただきました。
その通りだと思います。加えて、両者の共通項として、“心のケア”
ということがこれまでにも増して大切になっていると感じています。
幅が広く、画一的な施策だけでは実現できないテーマですが、あら
ゆる場面を想定して、市民の皆さんの幸せを追求したいと考えてい
ます。

2009年9月29日

2009年9月25日金曜日

教育について



教育に関する分野は幅が広く、また、法的には教育委員会制度によ
って市長部局とのすみ分けがなされていますので、市長があまり差
し出がましいことを言うことは、好ましいことではありません。全
般的なことは、教育委員会に任せています。
ただ、教育委員の選任や教育予算の編成もありますので、長野市教
育のあり方について責任を持つ立場にあることは当然です。

教育分野については、快適で安全な教育環境を整備することや、不
登校対策、特別支援教育、学力向上への取り組みなど、さまざまな
思いがありますが、今回は、四年制大学を長野市に誘致したいとい
う私の思いを申し上げます。
長野市にある高等教育機関は、
・四年制大学・・・信州大学工学部、同教育学部、清泉女学院大学
・高等専門学校・・・長野工業高等専門学校
・短期大学・・・長野県短期大学、清泉女学院短期大学、長野女子
短期大学
(順不同です。そのほか、性格は違いますが、専修学校・各種学校
は数多くあります。)

これらの大学・短大に在籍する学生さんの数は、約5千人です。こ
の数字は、全国の中核市など、類似都市に比べ、非常に少ないと私
は感じています。
例えば、同じ中核市で、長野市より人口が少し多い金沢市(人口約
45万人)の学生数は、約2万人と言われています。熊本市(人口
約68万人)では、もっと多く、2万6千人ということですし、長
野市より人口が少ない高崎市(人口約37万人)でも、大学数、学
生数ともに長野市より多いようです。

また、長野市内の高校の卒業生で、大学進学を志す学生さんの多く
は、関東、中京圏等へ流出していますので、市内の20歳前後の人
口が少ないことも事実です。このことは、市内に活気がないと言わ
れる要因の一つになっているようにも思います。
東京へ学生を送り出すと、親御さんの負担は大変です。4年間で授
業料を含めれば、1千万円以上は掛かるでしょう。

私は、少なくとも長野市には四年制大学がもう一つ必要だと思うの
です。親御さんの負担の話だけではなく、学ぶために長野を目指す
学生さんがもっと増えてほしい、若い人にとっての長野の存在感も、
もうひとまわり大きくしたいのです。

「大学冬の時代」と言われています。学生数が減って、募集停止に
追い込まれている私立大学もあると聞いています。それは承知の上
で、あえて長野市のために、長野市の子どもたちのために、そして、
長野市に夢を求めてやってくる若人のために、さらには、優秀な人
材を求める長野市の企業のために・・・一流の学者を招き、小さく
ても良いので素晴しい大学をつくり、長野市で有為な青年をもっと
育てたい・・・私の強い想いです。

以上が、私が四年制大学を求める理由です。ただ、前述の「大学冬
の時代」を意識しますと、大学の数を増やすことは無理でしょうし、
厳しい状況が待っているように感じます。
そこで、「長野県短期大学を、四年制大学にしたらどうでしょうか」
と、長野県にお願いしています。「独立行政法人にしていただけれ
ば、長野市も相応の応援をさせていだきます」ということも申し入
れてあります。県で実施した包括外部監査にて、短期大学のままで
は将来性に疑問がある、との報告がされていることも、追い風にな
ると考えています。県短の良き伝統を活かしながら、新しい出発を
することが大切だと思っています。

2009年9月25日

2009年9月18日金曜日

産業政策について考えていること



産業政策は、都市経営に必要不可欠な政策です。
産業政策とひと口に言いましても、農業、林業、商業、工業、観光
など、さまざまな分野がありますが、それぞれ雇用の確保、食料や
生活用品の生産・流通・販売・・・と、欠くことができない大切な
役割があります。そして、都市活力の源でもあり、産業のないとこ
ろでの私たちの生活はあり得ません。
市民の皆さんの生活を護るうえで、欠くことができない産業を振興
していくことは、行政政策として、当然、重要な要素になりますし、
行政の側としては、税収確保という側面もあります。
今回は、企業立地という視点から、長野市の産業政策を考えてみた
いと思います。

地方都市では、大都市に比べて企業数が多くはありませんので、そ
れだけ、一つ一つの企業が大切な存在になります。つまり、地方都
市では、一つの企業の存在感が大きく、地域社会そのものの中で大
きな役割を果たしていると言ってよいでしょう。

ただ、最近では、「企業の社会的責任」ということが、当然だと考
えられるようになってきました。企業の最大の目的は、利益を上げ
ることですが、そのほか法令遵守はもちろん、社会貢献活動をはじ
め、情報公開や地球温暖化対策などの社会的責任も果たすべきだと
いうことです。それゆえに、ただ利益を上げることだけに徹してい
る企業は、地域の中で信頼を得られず、浮き上がった存在になって
しまう傾向もあるように感じます。結果的には、本来の利益追求活
動にも、支障を来たす可能性、つまり、社会的な制裁が加わり、企
業が倒産・整理されることもあり得るわけです。

このように見てきますと、地方行政の産業政策の柱は、以下の三つ
になると考えています。
(1)市内の既存企業や個人経営者の活動を検証・支援し、育てる。
(2)新たに長野市へ優秀な企業の誘致をはかる。
(3)新たに市内で起業しようとする人の支援に取り組む。

この三本の柱を実現するために、具体的には次のような施策が重要
だと考えています。

(1)企業の研究開発・販売促進を支援する体制の構築
長野市ものづくり支援センター(UFO)などを利用して、産・学・
官が協力して企業の研究開発・販売促進を支援する体制の構築、充
実が必要だと思っています。

(2)資金支援体制の充実
金融機関・自治体などの制度資金やエンジェル税制(ベンチャー企
業投資促進税制)などを活用できる体制の充実も必要です。同時に、
信用保証協会などと連携し、雇用を護り、創出するための緊急融資
体制の充実も大切だと思っています。

(3)新たな企業の誘致
具体的には、工業系を中心とした企業団地の造成が急務になってい
ます。長野市は、過去に造成した工業団地をすべて売り切ってしま
い、企業を誘致したくてもできない状況でもあります。国の方針に
より、農業用地の転用が難しい中で、あまり広大な面積の工業団地
はできませんが、7ヘクタールの用地を確保しました。すでに、幾
つかの企業からの打診があるようです。市内には空きビルもかなり
あります。これも誘致という面では紹介していきたいと考えていま
す。

(4)進出企業への支援
進出企業のスタートが順調にいくように、いろいろな補助金を用意
することも大切です。長野市では、必ずしも土地を買っていただか
なくても良いように、市有地をリースする制度も整備しています。

(5)誘致する企業の検証
どんな企業なのか、経営者の理念、行動についても調査する必要が
あると思います。ただこれは、経営者などが変わることもあり、経
営環境も変化するものですから、決定打にはなりませんが、企業風
土が長野に合うか、将来性はどうかなど、調べておきたいものです。

100年に一度の不況と言われるこの時代、新しい企業を誘致する
のは、なかなか難しいテーマだとは思いますが、長野の強みを生か
して努力していきたいと思っています。

強みは、交通手段、特に関東圏との近さ、穏やかな人の気持ち、そ
して、高原特有の空気の良さ、UFO、信州大学工学部、長野高専
等の存在をあげることができるでしょう。文化・歴史・美しい自然、
暮らしやすさ・・・こんな点が挙げられます。中山間地域が多い点
も将来のプラスになる可能性を感じています。

弱みは、土地利用の制約です。平地が少ないところから、あまり大
きな工場団地は無理。それと上越市が近いとはいえ、海が無い(大
量輸送を必要とする企業には向かない)ことも弱点でしょう。また、
道路、通信網などのインフラもまだまだ整備する必要がある・・・
そんな点も弱点です。

それら、長野の弱点を克服する努力は続きますが、利点・欠点を承
知して進出してきていただける企業、特に今、弱点を利点に変える
産業が求められると思っています。その一番の候補は、農業、食の
産業、林業を利用した新エネルギー産業のような予感があるのです
が・・・。

2009年9月18日

2009年9月14日月曜日

安心・安全のまちづくり



行政としてこのテーマを考える場合、大変幅が広くなります。昔か
ら言われてきたことに、“地震・雷・火事・親父”という言葉があ
りますが、現代では災害の領域、考え方はかなり変わってきていま
すし、市町村の対応もそれに応じて広がっています。今回は、安心・
安全のまちをつくるための考え方を整理してみました。

「安全」という面から考えますと、まず、災害を防ぐ、災害が発生
したときの被害を最小限にするということが大切です。長野市で起
こる頻度が高い自然災害は、家屋などへの浸水被害と、山間部での
土砂災害でしょう。

梅雨の時期から秋にかけて、長雨が続くと道路の冠水や住宅の浸水
被害が起こりやすくなり、消防団の皆さんには、土のうを設置する
など、一生懸命努力していただいています。大きな被害にはならな
い場合が多いのですが、雨量が多くなると、雨水を飲み込みきれな
くなる用水路や道路側溝があり、市民の皆さんにご迷惑をお掛けし
ています。このような場所の改修も毎年実施しているのですが、ま
だまだ追いついていないのが実情です。
こうした都市型水害を防止するため、都市排水路の整備や排水機場
の建設、雨水調整池の整備、各戸貯留施設の設置促進などの対策を
行っています。大規模な対策として現在は、長野運動公園の地下に
大きな雨水調整池をもう一つ建設中です。これが完成すると、長野
運動公園の地下では、これまでの約4.6倍にあたる2万8,000
トンの雨水を貯めることができるようになりますので、下流域の水
害を減らせると期待しています。

このほか、ハザードマップの作成や人的な水防態勢の整備など、ソ
フト面での対策も行っています。水防態勢の整備ということでは、
市主催の水防訓練を毎年実施し、消防局が中心となり、消防団、地
域の皆さん、建設業協会の皆さんなどに参加していただき、水防技
術や知識の向上を図っています。地域の防災組織と連携した訓練や、
県の消防防災ヘリも参加する訓練も行い、いざという時に慌てない
ように、そして安全意識の高揚に努めています。

都市部の洪水とは違う危険性があるのは、山間部に降った雨により
起きる土石流やがけ崩れなどの土砂災害です。土石流被害が発生し
ないよう、危険な箇所には、主として県に砂防堰堤をつくっていた
だいていますが、これも完全ではありません。特に長野市の西部、
昔から西山と言っている地域ですが、ここは崩れやすく、急しゅん
な山地であり、地すべりや斜面崩壊、土石流など、土砂災害が発生
する危険性が高い地域です。

西山地域ではありませんが、今年は、鬼無里地区と戸隠地区で相次
いで土砂災害が発生してしまいました。先日の7月末の大雨で、鬼
無里地区の大川林道では、約20カ所の崩落が起きて通行止め、8
月6日には戸隠地区の大雨により、道路決壊や住宅被害が生じてし
まったのです。
まだまだ砂防堰堤を入れなくてはならない場所はかなり多い、自然
のままにしておくことは、下流部に住んでいる方にとってはまさに
恐怖と聞いています。ですが、国の公共事業予算の削減もあってな
かなか追いつかない・・・お住まいの方々の安心度を高めるために
も、必要な事業が実施できるよう、国・県に要請していきたいと思
っています。

次は地震です。国全体では、発生の可能性が高いと言われる東海地
震、東南海地震、南海地震をはじめとした地震対策が行われていま
す。いずれも大変な被害が想定されている大きな地震です。
長野市では、過去一番大きかったと言われる弘化4(1847)年
の善光寺地震を想定して、防災倉庫や中山間地域での保存食糧など
の備蓄、避難所の指定、避難支援体制の整備、庁内外の危機管理体
制の構築などの対策を練っています。

建物の耐震化も行政の地震対策として重要な項目です。阪神・淡路
大震災では、犠牲者の約9割が建物の倒壊により犠牲になったとの
ことですので、建物の耐震化を進めることで、人命被害はかなり軽
減することができるでしょう。

最優先して進めているのは、学校施設の耐震化です。子どもは宝で
すし、いざ、というときに学校は、市民の避難所にもなることから、
国も予算を投入して頑張っています。長野市でも可能な限り早く耐
震化を完了すべく努力していますが、学校施設全400棟のうち、
何らかの耐震対策が必要な施設が今年4月の時点で138棟もあり
ます。これだけの建物の工事を一斉に実施することはできませんし、
耐震性にも差がありますので、危険度に応じて耐震化を進めていま
す。

具体的には、構造耐震指標(IS値)が0.3未満の施設は、平成
24年までに耐震化工事を終わらせることにしています(構造耐震
指標とは、建物が地震にどのくらい耐えられるかを表す指標で、学
校施設については0.7以上を確保する必要があります)。より危
険度が高い施設から対策を実施し、平成26年度には、9割の耐震
化を完了させる予定です。ただ、耐震補強工事を実施しても建物の
寿命を延ばすことにはなりませんので、古い施設は建て替えていま
す。

そのほかの耐震対策としては、昭和56年以前に建築した個人所有
の木造住宅の耐震診断を無料で行っています。診断により補強が必
要と判定された場合には、補強工事にも補助金を用意しています。
これまでに、約2,000戸の診断を行い、約100戸の補強工事
を補助しました。
また、病院やお店など、たくさんの人が利用する特定建築物の耐震
診断に対しても、今年度から補助金を用意しており、市内の建物の
耐震化を促進し、安心して住めるまちにしていきたいと考えていま
す。

市役所第一庁舎や長野市民会館の建て替えもこの延長線上にありま
す。
長野市民会館は昭和36(1961)年、市役所の第一庁舎は昭和
40(1965)年の建設で、第一庁舎のIS値は0.23という
ことで、極めて危ないとのことです。市民会館はそれより5年も古
いことから、耐震診断はせずに劣化診断だけにとどめました。

“ハコモノ行政”に対する批判的なご意見や、自治体の財政が厳し
いということで、この建て替えについてはさまざまなご意見がある
かと思いますが、多くの方々が利用する施設ですから、問題を放置
しておくことはできません。
前回のブログでも書かせていただきましたが、合併特例債を利用す
ることで、建設費の約7割を国にみてもらえるというチャンスは、
この先まずないでしょう。建設時期を先送りすることにより、合併
特例債を利用しないとすれば、建設費の捻出は今以上に困難になる
と思っています。

いずれにしろ、昭和56年以前に建築した建物は、耐震補強工事が
必要ですし、耐用年数からすると、あと5~10年後には建て替え
をせざるを得ないのが実情です。市民の皆さんのご意見を踏まえて
さまざまな面から考え、建て替えるか否かを含め、ここで結論を出
さざるを得ないと思っています。

「安心・安全のまち」ということで、主として水害、土砂災害、耐
震対策について述べてきましたが、そのほかにも、考えなくてはな
らないテーマがいろいろあります。
気象面では、最近の報道によると、雷や竜巻が頻繁に起きている、
台風も停滞気味で大きな降雨災害を起こしているようです。大規模
な台風が長野市を直撃したのは、昭和34年の伊勢湾台風だけとい
う印象なのですが、いざ本当に来襲したら、慣れていないだけに被
害は大きいと思います。台風の来襲を防ぐことは困難ですが、情報
を早くお伝えするようにして、危険から身を守っていただけるよう
にするしかないと思います。

安全を求める以上、農業被害も無視できないことだと思います。冷
害、ひょう、有害鳥獣、いずれも農家の仕事の意欲を奪う災害です。
雪害も、暖冬で少なくなっているとはいえ、大雪となれば深刻な被
害が発生します。雪にはプラス面もあるのですが・・・過ぎたるは
及ばざるがごとしです。

以下に列記した項目も「安心・安全のまち」には大切なものでしょ
う。行政としては、これらすべての撲滅に、全力を挙げなくてはい
けないと感じているところです。
・交通事故・・・市内では、年間の死者が一番多い項目です。
・犯罪・・・振り込め詐欺、暴力団犯罪、覚せい剤など、あらゆる
犯罪防止に努めることは市民社会の義務でしょう。
・疫病(新型インフルエンザ)・・・保健所も持つ長野市としては、
とても重要な項目のひとつになります。
・火事・・・安心・安全のまちにするためには、これも重要な項目
です。
・構造物・建造物の欠陥や劣化による事故・・・設計ミス、経年変
化の確認やメンテナンスの不足など、安心・安全のためにぜひとも
事前に防ぎたい事項です。

まだまだ、たくさんあるとは思いますが、安心・安全は市民生活の
中の一番の原点でしょう。あらゆることに目配りしなくてはならな
いのが、市町村行政です。

2009年9月14日

2009年9月9日水曜日

市民会館・市役所第一庁舎の建て替えについて



長野市民会館は、昭和36年に完成、築48年、市役所第一庁舎は
昭和40年に完成、築44年です。いずれの建物も耐用年数は60
年ですから、もうしばらく使用できるはずでした。ところが、平成
18年に第一庁舎の耐震診断を実施した結果、震度5強以上の地震
で倒壊の恐れがあることが分かったのです。市民会館は、それより
5年も古いことから、耐震診断を実施してもお金の無駄ということ
で、劣化診断だけにとどめました。

対策としては、耐震補強工事をするという選択肢もあるのですが、
高額な費用を掛けてこの工事をしても、建物の寿命を延ばすことは
できません。結局は、5~10年後に建て替えの検討をしなければ
ならないということで、無駄な投資になってしまうのです。
また、建設から50年近く経過していますので、老朽化が著しい上
に使い勝手も悪く、維持費も割高になるなど、マイナス面も多く抱
えています。
このようなことから、現在、この二つの施設の建て替えを検討せざ
るを得なくなっています。

このことについては、市議会でもご意見を頂いていますが、“ハコ
モノ行政”に対して批判的な世論の流れもあり、議論が分かれると
ころです。論点は、市民会館の建て替えの是非で、意見は大きく二
つだと思っています。

一つは、第一庁舎も市民会館も建て替えが必要だ、というご意見で
す。
市役所の庁舎は、日常的に多くの市民の皆さんが訪れる場所であり、
かつ、災害発生時には、市民の安全・安心を守る拠点となる場所で
もあるので、耐震強度が万全な施設として建て替えるべきである。
市民会館は、完成以来、長野市民の文化芸術の振興や大きな会議の
開催に重要な役割を果たしてきており、今後とも必要である。市民
会館を廃止した場合、その他の施設では十分な利用の代替はできな
い、というご意見です。

それに対してもう一つは、第一庁舎の建て替えは仕方ないが市民会
館はいらない、というご意見です。
長野市には、ホクト文化ホール(県民文化会館)やオリンピック関
連施設もあるので、市民会館は不必要。将来の負担になる“ハコモ
ノ”は極力少なくすべきであり、建て替える必要はない、というご
意見です。

この二つのご意見に対し、私が考えていることを申し上げます。
第一庁舎の建て替えについては、おおむね多くの方の賛同を得たと
感じています。市民会館についてですが、私は、「建て替えは必要
である」と考えています。具体的に幾つかの理由を申し上げます。

(1)オリンピック施設は、建物の主たる利用目的が違いますので、
音楽会、舞踊、演劇、講演会などに使用するには不向きです。そし
て、音響が悪いこと、あるいはその都度、舞台装置を設置するのに
手間とお金が掛かり、市民の皆さんに手軽に文化芸術を提供する施
設とは言えません。すなわち、市民会館の代替施設にはならないと
いうことです。

(2)ホクト文化ホール(県民文化会館)の大ホールの収容人員は
約2,000人、中ホールは約1,000人です。1,000人程
度以下のホールは市内に幾つかありますが、約1,700人収容の
長野市民会館がなくなると、1,000人を超える人数を収容する
施設は、ホクト文化ホールの大ホール以外には無くなってしまうの
です。長野市の文化芸術を推進する立場から、また、学術会議など
を誘致する立場からも、そして、長野市民が利用する成人式や消防
出初式などでも使いたいと考えていますので、ホクト文化ホールだ
けではどうしても需要に応じられない、複数の施設が必要だと考え
ています。興行的な催しを開催する立場の方々からも、同様の申し
入れを頂いています。

(3)市内の文化団体、舞踊団体、音楽団体等々から、必要性につ
いて多くのご意見を頂いています。もちろん、意見は同じではなく、
例えば音楽団体などからは、音響効果の良い音楽専用ホールを・・・、
といったご意見です。ただ、これは、建設が決まってからの問題で、
どの分野に重点を置くかという議論だと思っています。結局、多目
的ホールにせざるを得ないのかなと感じてはいるのですが・・・。

(4)もう一つは、財政的な理由です。いずれの地方自治体も財政
が苦しいことは皆さんご存じだと思いますが、この建て替えには別
の要素もあります。長野市は平成17年1月1日に、豊野・戸隠・
鬼無里・大岡の4町村と合併しました。その合併により、市庁舎・
市民会館に「合併特例債」という有利な起債を利用できることにな
っているのです。
「合併特例債だって借金ではないか」とおっしゃる方もいますが、
そのご指摘は正解だと思っています。ですが、この借金に限っては、
国が7割を交付税で面倒をみてくれるということですから、地方自
治体にとっては大変有利で、利用しない手はないと思っています。
今後、このようなチャンスは、まずあり得ません。そして、地方自
治体にとっては、合併をすることで得た国からの支援ですから、利
用することをためらう必要はないとも思っています。

ただ、この支援には、平成26年度までに建設を完了しなくてはな
らないという制限事項が付いていますので、今、検討を進める必要
があるのです。何年か後に建て替えを検討すればいいとした場合に
は、財源確保のタイミングを逃してしまうことになり、市の健全財
政を堅持するという観点からすると厳しいと思っています。「合併
特例債」が無いとすると、費用をどこからひねり出してくるか、か
なり難しい問題です。

以上、私が市民会館の建て替えが必要だと考える4つの理由を申し
上げました。ぜひご理解いただきたいと思います。
このほか、長野市民会館と第一庁舎の建て替えに関して考えている
ことを申し上げます。

(1)街の中心施設として、市民会館をぜひ誘致したいという声が
複数の地区から上がっており、調整が難しいと感じています。市と
しては、可能性のある10カ所の候補地から、現実的に建設が可能
な3カ所に絞り、検討しています。

(2)高齢化が進む状況において、さまざまな手続きがワンフロア
で完了できる体制が必要になってきています。建て替えに当たって
は、住民サービスの充実を主眼に、また、防災面にも配慮した人に
優しい建物になるようにしたいと思っています。

(3)長野市では、環境に配慮した都市になりたいということで、
あらゆる対策を行っています。そして、今後つくる全ての公共施設
に加え、既存施設であっても比較的新しく設置可能な施設には、全
て太陽光発電システムを導入することを決めています。
残念ながら、現在の市民会館は、エネルギー効率が悪く、維持コス
トも高いことから、環境にやさしい施設ではないことは事実です。
新施設は、徹底的な環境対策を行い、現段階で考えられる理想的な
施設とすることで、維持費を40~50%カットできると見込んで
います。第一庁舎も、環境配慮型の建物のモデルになるような省エ
ネ施設にしたいと思っています。

以上、市民会館の建設と市役所第一庁舎の建て替えについての考え
方を説明させていただきました。環境対策ということも含め、長野
市の将来にとって大変有効であり、市民の皆さんのためになる施策
だと思っています。
いずれにしても、できるだけ次の世代の負担を軽くし、負の資産を
残さない、という観点でのご判断をお願いします。

2009年9月9日