2009年11月26日木曜日

松山市と「坂の上の雲」


 11月5日、中核市サミットが愛媛県松山市で開催されました。
選挙が終わった直後でしたが、政権交代後の国と地方の関係を知る
上で重要と考え、私も出席してきました。

 サミットに先立って行われた、中核市財政基盤確立検討、中核市
制度研究、地域活性化施策検討、地域公共交通(生活バス交通)活
性化の各中核市市長会プロジェクト会議では、国への提言、プロジ
ェクトの今後の活動について議論がされました。政権交代がなされ
てから時間の経過が少ないためか、総じて今後の国の動向を見極め
ていく必要があるという趣旨の意見が多かったように感じています。

 サミット開会式の後、「中核市から日本を変える」というキャッ
チフレーズの下で、四つの分科会に分かれて討議しました。各分科
会のテーマは、第1分科会「健全な財政運営に向けた取り組み」、
第2分科会「住民主体のまちづくり」、第3分科会「地球温暖化対
策への取り組み」、第4分科会「スポーツを通じたまちづくり」で
す。
 私は第4分科会に出席し、オリンピックを開催した都市としての
責務について持論を述べさせていただきました。景気の影響もあっ
て企業チームが撤退し、クラブチームに移行している現状を考える
と、資金問題がスポーツの在り方を大きく変えていく時代なのだと
感じています。

 そして、各分科会での議論も踏まえ、最後に、次のような「中核
市サミット松山宣言」を採択して終了しました。

**********
 これまで中核市は、制度発足以来、地方分権の進展を目指し、そ
の先導者として大きな役割を果たすとともに、自らの行政改革にも
積極果敢に取り組んでまいりました。
 現在、国においては、歴史的な政権交代を機に、国と地方の役割
分担や国の関与のあり方について、抜本的な見直しが行われようと
しており、地方分権は、新たなステージへ進みつつあります。

 一方、地方では、世界同時不況による景気の低迷、少子化による
労働力人口の減少、地球温暖化による異常気象などの厳しい状況の
下、複雑・多様化する住民ニーズに対応しつつも将来に亘(わた)
って持続可能な行政運営を目標に更(さら)なる改革を進めていま
す。
 こうした中、中核市は市民に最も身近な基礎自治体として、また、
地域の拠点都市として、中核市特有の課題にも積極的に取り組み、
市民満足度の向上を目指したクオリティの高い行政サービスを展開
することにより活力に満ちた地域社会づくりに邁(まい)進してお
ります。

 私たちは、将来世代が夢や希望を共感し、安全・安心で快適に暮
らせる社会を構築するため結束し、地方分権の流れを更に大きなう
ねりとし、地域主権の確立を目指し全力で取り組むことを全国にア
ピールするため次のとおり宣言します。

1 中核市は、今後も行財政改革を推進することで健全な財政運営
 に努めるとともに、国と地方の役割の見直しを通じて市民に最も
 身近な自治体として地域主権の確立を目指します。

2 中核市は、地域住民の主体的で自立したまちづくりを推進する
 ため、住民を対等なパートナーとし、協働のまちづくりを推進し
 ていきます。

3 中核市は、市民・事業者・行政の協働の下、地域の特性を活
 (い)かした温暖化対策に積極的に取り組み、誰もが安心と豊か
 さを実感できる低炭素社会の実現を目指します。

4 中核市は、スポーツを「する」「みる」「支える」すべての人
 たちを応援し、スポーツの振興を通じ、「ひと」と「ひと」をつ
 なぎ、「まち」の元気と活力を創出します。

平成21年11月5日
中核市市長一同
**********

 松山市には以前にも行ったことがあったのですが、あらためて素
晴らしい都市だと感じました。人口は51万人強だそうですから、
長野市より一回り規模が大きな都市です。松山空港、松山城、道後
温泉・・・前に訪れたときの記憶はあまり鮮明ではないのですが、
とても落ち着いた街、というのが今回あらためて感じた印象です。
早朝、市内電車に乗って道後温泉にも行くことができました。

 私が松山市に好感を持つようになったのは、小説の影響、特に夏
目漱石の「坊っちゃん」と司馬遼太郎の「坂の上の雲」の影響が大
きいように思います。
 「坊っちゃん」は、中学生のころ「吾輩は猫である」などと一緒
に読んだことがあり、主人公の同僚の先生である赤シャツが痛烈に
やっつけられる場面を楽しく読んだことを思い出します。

 「坂の上の雲」は私の愛読書の一つです。秋山好古・真之兄弟と
正岡子規の物語、そして日清戦争、日露戦争・・・明治の時代、新
しい日本が右肩上がりで上っていく時代を司馬さんは素晴らしいタ
ッチで描いておられますよね。日露戦争で日本はどうして勝利でき
たのか・・・大山巌・児玉源太郎の中国での戦い、そして日本海海
戦、その背景にあるマダガスカル島でのバルチック艦隊滞留、日英
同盟の意義、対馬での決断・・・。日本は、この成功体験が仇(あ
だ)となり、昭和の時代に入って軍部が台頭し、太平洋戦争に突入
してしまった・・・司馬さんの「明治という時代」への思いがよく
表れていると私は思っています。戦争が題材ですから、ただ楽しい
小説だと言ってしまうには抵抗がありますが、この小説は日本の誇
りと言えるのではないでしょうか、私はそう思うのです。

 今月29日からNHKのスペシャルドラマで「坂の上の雲」が放
映されます。存命中、司馬さんはドラマ化を断っていたのだそうで
すが・・・でも期待は大きいですね。ここ最近、毎回欠かさずに見
るようなテレビドラマは無かったのですが、このドラマは、ぜひ全
部見たいと思っています。

 サミット翌日は、朝から会議が行われたり、夕方までに長野に着
かなければならなかったりで、少し忙しかったのですが、サミット
会場のすぐ近くの「坂の上の雲ミュージアム」を視察できました。
 この施設は、建築家・安藤忠雄氏の設計なのだそうですが、建物
の平面が三角形で、とてもユニークな形です。内部の展示は、「坂
の上の雲」の主人公である秋山兄弟と正岡子規の3人の生涯を中心
に構成されています。そして、そこからは「明治」という時代を生
きた人々の高い志や気概が伝わり、近代国家として成長した「明治
の日本」の空気を強く感じることができました。
 短い時間でしたが、松山市の魅力を知る、とても有意義なひとと
きでした。