官僚の天下りについては、かなり以前から議論が盛んです。また、
今年の4~5月には、国の事業仕分けも行われましたので、関連す
る記事を目にする機会も多くなったように思っています。
これまで私は「天下り禁止」なんて当たり前だと単純に考えてい
たのですが、詳細な調査記事などを読んだ結果、そう簡単な話では
ないことを痛感させられました。そして、細かく見れば見るほど、
日本社会に深く浸透しているシステムだということもよく分かって
きました。一首長の立場でうっかり口を出せるほど、簡単なことで
はないようです。
あくまでも報道を通じて知った範囲ですから、どこまで事実を反
映しているのかは分かりません。ただ、あまり正確でないとしても、
国民目線、市民目線に立った場合、どうしても納得できないことが
あると私は感じています。
高級官僚の方々には、多くの場合55歳前後で退官せざるを得な
い暗黙のルールがあるそうです(昇任競争があって、そういう方々
のモチベーションの維持を考えると無理もないのかもしれません)。
市町村などでは、60歳の定年まで勤め通すことがほとんどですか
ら、国でもそうなると良いのですが、国の現状を考えると、再就職
先が必要になるのは仕方ないことなのでしょう。
天下り先には大きく分けて、営利目的組織(企業)と非営利組織
(公益法人など)があるようです。
営利目的組織は、民間企業が主体でしょうが、民間企業がその人
の能力を買って採用するのですから、問題ないはずです。
ただ、談合に介在することや、コネを使って仕事を取ることは厳
禁すべきでしょう。入札がルール通りに行われていれば、あるいは
政治家の不当な口利きや介入さえなければ、それほど大きな問題は
ないと思います。官僚の方々の能力を民間企業が買っているのです
から、むしろ歓迎すべき状況です。
問題は、非営利組織への天下りとその報酬です。天下り先の組織
には、研究機関、大学、社団法人、財団法人、独立行政法人など、
いろいろあるようですが、根本的には、まずその組織が社会にとっ
て必要なものかどうかの検証が重要だと思っています。そして必要
な組織だと検証されたなら、優秀な人が天下ることは歓迎すべきこ
とです。
ただ、国の補助金や発注で成り立っているような組織では、天下
りの人の報酬額を厳密に監査する必要がありますし、退職金は廃止
すべきでしょう。
天下り先での報酬額は、本当にその職責や職務に見合ったものな
のでしょうか。60歳までの現役並みの報酬は理解できますが、そ
れ以降の高額報酬には疑問に感じます。ましてや著しく高額な退職
金や、退職金の二重・三重取りは許せないと思います。その組織に
は、当然ですがプロパー職員もいるわけで、その人たちの士気も大
切にしなくてはなりません。
いずれにしろ、退職後も、能力の高い方々が社会のために尽くす
ことは、重要なことだと思いますし、当然、社会のためになること
です。公務員にも優秀な人がたくさんいますから、有効に使わなく
ては国家の損失だと思います。もっと活躍の場をつくる必要がある
と感じています。
そこで、私は次のような提案をしたいのです。
一つは、退官した官僚を政策秘書として公費で国会議員全員に付
けたらどうか、ということです。新人議員が増えている状況で、優
秀な元国家公務員がお手伝いすれば、議員としての実力がはるかに
発揮しやすくなるのではないでしょうか。もちろん決定権は議員に
あります。公務員としての心構えがきちんとしていますから、不正
にはくみしないと思います。
もう一つは、地方自治体へ派遣するというのはどうでしょうか。
人材が不足している小さな自治体もあるようですから、国がある程
度の報酬を出すことにすれば、自治体は喜ぶのではないでしょうか。
国の統制を心配する人、政策や事業に精通した人をうっとうしく思
う人もいるでしょうが、それは首長・議会の能力と受容力の問題で
す。国の政策を理解してもらうためにも、有効な手段だと思います。
国家公務員の天下りは、全部が悪いわけではないと思います。
「小さな政府」をつくるためには、少数精鋭、適材適所の職員配置
の中での天下りは必要だと思います。一方、退職した優秀な人の経
験を生かすことは大切ですし、高いモチベーションを保てるような
仕組みも必要です。
60歳の定年でみんな引退してしまったら、もったいないだけで
なく、国家的な損失になる可能性もあります。年金支給が65歳か
らになったこともあり、次のステージを用意しなくては、生活に困
るということもあるでしょう。さらに、社会も天下りを必要として
いる面があると私は感じています。
ここまでは、随分前に書いていたのですが、7月21日付けの産
経新聞に曽野綾子さんの『「天下り」の活用』という文章が載って
いました。有名な方と同じ意見と申し上げるのは失礼ですが、まさ
に私の考えていることと同じなのです。少し長くなりますが、以下
に転載させていただきます。
**********
世論というものは同調する人が多いから世論になるのだろうが、
私はいわゆる官僚の「天下り」について少し別の感じを持っている。
官僚だって、再就職して老後の生活を成り立たせなければならな
い。
(中略)
「天下り」が悪いのは、それが法外な高給で遇されるからである。
原則として妻と自分の生活費が出せればいいのが老後だ。(中略)
まず貯金を減らさずに食べられて、月に数回女房に気兼ねせずに、
仲間と赤提灯(あかちょうちん)に行ける程度の金銭的自由が確保
されればいいはずである。
だから「天下り」はむしろうんと安い給与にして堂々と採ればい
いと思う。地位の名称としては「理事長」でも「会長」でもなんで
もいい。ただ外部調査があった時、はっきりと次のことが明確にな
ればいいのである。
退職金など一切なし。
給与の額は(今の感覚で言うと)30万円前後でよろし、である。
通勤用の専用の自動車などなし。年を取ったら歩いて通うほうが、
体と、何よりも精神的な訓練にいい。
(中略)
「天下り」をする人たちの中には、やはり長い経験による知識と
人脈の蓄積を持つ人が多いのだ。それを利用しない法はない。本当
に役に立つ人材が、払う金に見合う仕事をしてくれるなら、私企業
も歓迎するはずだ。
(中略)
「天下り」を一概に悪いとする論は、今後高齢化社会に向って、
誰もがもっと長く働かねばならなくなり、人材もとことん使わねば
ならなくなる「モッタイナイ」の大原則にも反する。もちろん霞が
関時代、恐ろしく権力的だった悪名高いトップが、堂々と国際機関
などに就職している話を聞くと、私のような甘い話は一笑に付され
るのだろうが、「退職金なしの低給与」の原則を維持すれば、半分
ボランティア精神で働いてもらって少しも悪くはない。それができ
ることこそ、エリートの証明なのである。
**********
以上、略した部分も含めて、曽野さんの意見、私はおおむね賛成
です。
違うのは、長野市では30万円も払えません。それと、給与は全
員一律ではなく、自己責任での判断が求められ、重い責任を負う役
職であれば、ある程度は高くても良いかなと感じています。
2010年7月29日木曜日
天下りの善しあし
2010年7月22日木曜日
長野市の子育ち・子育て支援施策
少し前になりますが、長野市民会館で「長野市幼稚園・保育所職
員研修会」を開催しました。
幼稚園と保育園(所)の統合は、国でも前から言われていること
ですが、最近では両者を統合する形の「認定こども園」と呼ばれる
制度もできたことにより、かえって複雑になってしまいました。
幼稚園の根拠法は学校教育法で、必要な資格は「幼稚園教諭」、
保育園は児童福祉法で「保育士」というように、両者は基づく法律
や必要な資格が違います。ただ、実際に幼稚園や保育園を見学させ
ていただくと、基本的に子どもを育てるということでは同じではな
いか・・・と私には考えられるのです。
今後、本当の意味での統合に向けた検討が国で始まるようですが、
私は一足先に合同で研修会を行うことを主張し、それまでの保育園
職員に幼稚園職員を加えた研修会を平成18年度から開催してきま
した。
いずれにしても、就学前の子どもたちの保育と教育を充実させ、
すべての子育て世帯への支援を充実するためには、幼稚園・保育園、
公立・私立の連携が大変重要です。事業の推進に当たっては、今後
も一緒になって取り組んでいきたいと考えています。
就学後の施策の一つとして、平成20年度から長野市版放課後子
どもプランを無料で実施しています(ただし、おやつ代などの実費
負担があります)。
放課後子どもプランというのは、核家族化、共働き世帯の増加な
どを受け、希望する児童に安全・安心な放課後などの居場所を確保
するとともに、遊びや学びの場などを提供している事業です。有料
にすべきかどうか、市の負担も考えると判断が難しかったのですが、
昨年の市長選の時に市民の皆さんからの強い要望を受け、思い切っ
て無料のままとすることにしました。
この事業では、希望する全児童を受け入れるために、これまでの
児童館・児童センターに加えて、小学校の施設も活用しています。
そのため、事業の実施には、学校施設を使用することが必須条件と
なります。また、事業の運営には地域の皆さんのご協力が欠かせま
せん。
しかし、これらの事情は、小学校区によって異なることから、準
備が整った所から順次実施することにしており、これまでに開設で
きたのは、対象学年を限定しているところも含めて34校区です。
来年度以降は毎年10校区程度の開設を目指し、できるだけ早く全
56校区で全学年を対象に実施できるようにしたいと考えています。
国の補助事業として実施しており、本年度の予算額は約5億4,
480万円です。このうち施設運営人件費などが補助対象となり、
その3分の1を補助金として支出していただける予定です。
このほか、子育ち・子育て支援施策を講じるには、とても幅広い
取り組みが必要で、関係事業の本年度当初予算総額は113億22
0万円余りです。以下、一部ではありますが、長野市が実施してい
る施策を紹介させていただきます。
(1)おひさま広場
こども広場“じゃん・けん・ぽん”と“このゆびとまれ”、市
内14カ所の子育て支援センターだけでなく、身近な地域で子育
て支援を受けられるようにするために、本年度から拡大させた事
業です。
これまでは、公立保育園を中心に、一部の私立保育園・幼稚園
で園開放や育児相談などを行ってきましたが、本年度からは“お
ひさま広場”として市内すべての幼稚園・保育園で実施できるよ
うにしたいと考えています。まだ実施していない園もありますが、
今後さらに充実させていく予定ですので、お気軽にお近くの幼稚
園・保育園にお出掛けください。
本年度の予算額は約2,260万円で、全額市費で賄う予定で
す。
(2)はじめまして!赤ちゃん事業
生後3カ月までの乳児のいる世帯全戸を市の助産師・保健師が
訪問して、子育ての不安や悩みをお聴きし、相談に応じる事業で、
平成20年度から始めています。子育てに強い不安や孤立感を感
じる人には、継続的に相談に応じたり、訪問したりして、乳児の
健全な育成環境の確保を図っています。
本年度の予算額は約1,140万円で、出生数に応じて交付さ
れる国の交付金で賄う予定です。
(3)妊婦健診の公費助成の拡大
これまでも妊婦の定期健診費用の一部を公費で負担してきまし
たが、国(県)の補助制度を活用することで、平成21年度から
公費で負担する回数をこれまでの5回から14回に拡大しました。
さらに本年度からは、公費で負担する検査内容、超音波検査の
対象者・回数を拡大しています。
本年度の予算額は約3億8,080万円、うち約4分の1を補
助金として支出していただける予定です。
(4)乳幼児等の福祉医療費給付制度
この制度は、乳幼児等、障害児や障害者、母子・父子家庭の母
子・父子などを対象に、病院、薬局などで支払った保険診療費の
自己負担分の一部を市が給付する制度です。
この制度の対象のうち、これまで小学校就学前としていた乳幼
児を、今年の4月から小学校3年生まで拡大しています(入院の
み。通院も含めて拡大するのは10月診療分からです)。
県の補助事業として実施しており、本年度の予算額は約17億
7,750万円、市が独自に給付している対象分などを除き、給
付額の2分の1を補助金として支出していただける予定です。
(5)子ども手当
従来の児童手当に代わり、本年度から支給が始まりました。子
ども手当の対象者は、中学校修了前までの子どもを養育している
人で、所得に制限はなく、支給額は子ども1人当たり月額1万3,
000円です。
児童手当に比べて1人当たりの支給額が増えましたし、支給年
齢が中学生まで引き上げられ、対象者数も大きく増えましたので、
本年度の予算額は約81億1,480万円に膨らみました。この
額は、児童手当を支給していた昨年度の約3倍です。必要な費用
は国が支出することが基本ですが、県と市で約1割ずつ負担して
います。
来年度以降、この手当がどうなるかはまだ決まっていません。
今後、国会などで検討されることになっています。
(6)公立保育園の民営化
これは、施策というより方針ですが、市では、公立保育園を順
次民営化していきたいと考えています。長野市には現在88の保
育園があり、うち公立が46園で在園児が3,277人、私立は
42園(うち2園は休園中)で在園児が4,705人です。今後
も引き続き、すべての公立保育園を対象に、民営化の可能性を検
討していくことにしています。
いずれにしても、公立・私立どちらも国の保育指針や基準によ
って運営していますし、すべての保育園に対する指導・監督は市
の責務です。ご心配される向きがあるようですが、民営化によっ
て保育の質が低下するというようなことは一切ないことを付記し
ておきます。
子育ち・子育て支援施策には、「子ども手当」のように国の政策
に左右される事業もあり、難しいことが多いのも事実ですが、今後
とも積極的に事業を展開していきたいと考えています。
2010年7月15日木曜日
長野電鉄屋代線に乗ってみました
7月7日、千曲市の屋代駅から、長野電鉄屋代線の電車に乗って
きました。この日は、みどりの移動市長室で、若穂地区の住民自治
協議会を訪問し、屋代線の存続について意見交換することになって
いましたので、ぜひその前に乗っておきたかったのです。
屋代線の平成21年度の経常損益は、1億7,000万円の赤字。
加えてこれまでの累積赤字は50億円を超えているそうで、非常に
厳しい経営状況になっています。
大正11年に開通した屋代線は、長野電鉄の中で一番古い鉄道路
線です。もともとこの路線を敷設した目的は、須坂の繭・絹糸を国
鉄の駅へ輸送することだったとお聞きしています。最盛期の昭和
40年度には、年間330万人もの乗客があったそうです。
昭和30年代中ごろのことですが、私にとって屋代線(当時は河
東線)といえば、こんなことがありました。上野駅から信越線の列
車に乗って帰郷する際、間違えて私は湯田中行きの車両に乗ってし
まい、気が付いたら須坂の手前。慌てて降りて、須坂駅で長野行き
に乗り換えた・・・こんなことを思い出しました。
以前は、国鉄が屋代駅から長野電鉄へ乗り入れていたのです。そ
して、このころの車内は、かなりにぎやかだったと記憶しています。
そのピークから、毎年のように乗客が減り続け、昨年度は46万
人(ピーク時の約14%)にまで減少してしまいました。特にショ
ックなのは、昨年度は屋代線を何とか存続させたいという地域の皆
さんの努力がすでに始まっていましたから、増えないまでも一昨年
度に比べて同等の数字にはなると考えていたのですが、さらに1万
人減ってしまったことです。
本年度は、若穂地区の皆さんを中心にさらにいろいろなイベント
に取り組んでおられますから、乗客は増えると思っていますが、ど
んな数字になるか・・・期待しています。
7月に入って、屋代線の活性化・再生を目的に、国の法律に基づ
いて策定した「長野電鉄屋代線総合連携計画」および「活性化・再
生総合事業計画」による実証実験が始まりました。電車やバスによ
る増便、終発時間の繰り下げ、サイクルトレイン、割引回数券の発
行など、さまざまな事業を実施しています。
私もその実態を確かめたいという思いもあり、屋代駅から乗車し
たわけですが、私と同行した市職員、テレビカメラで取材をしてく
れたメディアの皆さんを別にすると、2両編成の電車に乗っていた
お客さんは2人だけでした。まあ、7月から実験的に増やした臨時
運行の電車ですから、仕方ないのかなと思いますが・・・お客さん
が少ないのは厳しいことです。
松代駅からは、若穂地区の住民自治協議会の皆さんや「プロジェ
クト・チーム屋代線」の皆さんがこの電車に乗ってこられましたの
で、車内は一気にとてもにぎやかな雰囲気に変わりました。若穂の
綿内駅まで、説明をお聴きしたり、質問させていただいたりしなが
ら皆さんとご一緒しました。
皆さん大変な意気込みで、沿線の風景を写真に撮り、市の「地域
やる気支援補助金」をフル活用して、パネルを作って若穂地区の各
駅に飾ったのです。とてもきれいな写真ですので、注目度は一気に
上がるでしょう。皆さんもぜひご覧になってみてください。
駅舎を利用した学習塾についても、説明がありました。
もしかすれば、廃線になるかもしれないという危機感を持ちつつ
も、明るく頑張っているという印象を強く感じた次第です。これは、
住民自治協議会長のお人柄の影響かもしれません。
綿内駅で電車を降り、若穂地区の綿内中町区公民館で懇談会を開
催しました。この公民館は、綿内中央土地区画整理事業で施工した
大きな住宅地の中にある地域公民館です。10年前に事業が終わっ
たばかりで、新しく、すてきな家が建ち並ぶ快適そうな住宅地でし
た。
懇談では、住民自治協議会の中の「プロジェクト・チーム屋代線」
のメンバーを中心に、屋代線の存続に向けたさまざまな活動につい
てお話をお聴きしました。私のあいさつ、住民自治協議会長のあい
さつに続いて、住民自治協議会の役員の皆さん、「プロジェクト・
チーム屋代線」のメンバーの皆さん全員が発言されました。
屋代線の話題では、住民自治協議会で企画した「電車にゆられて
たっぷりと古代の旅」には272人、「電車にゆられて小さな旅・
松代編」には168人も参加した、綿内駅前のスーパーが突然撤退
してしまったが電車まで無くなったら困る、障害者施設の通所者が
利用しているので屋代線は必要、高校生が電車で通学している、
11月ごろ存廃が決まると聞いているが心配・・・。これらがすべ
てではありませんが、屋代線をぜひ残してほしいというご意見がた
くさんありました。
一方、そんな意見に交じって、イベント頼りでは活性化は難しい、
住宅地をもっと造りたい、若穂には蓮台寺のアジサイなど花がたく
さんあるので、花でまちおこしをしたい、もっと利用しやすく、ま
とめてお金を出すことなどが必要、個人の力では限界だ、日替わり
通勤運動の強化や税金を投入する必要を感じる・・・このようなご
意見もありました。
皆さんからのお話を踏まえ、最後に私から、
(1)公共交通は都市のインフラであると以前から主張してきてい
るが、公共交通の必要性を理解していただいても、乗っていた
だけなくてはどうにもならない。
(2)公共交通機関を維持するための費用を皆で負担するという考
え方もある。懇談でも同様の提案があったが、方法の一つとし
て、沿線の皆さんに1世帯1万円の年間フリーパスを買ってい
ただく、ということも考えられる。1世帯10万円では難しい
と思うが、1万円であれば可能かもしれない。
(3)道路を改良して、自動車の利便性を良くしすぎると、電車の
乗客が減ってしまうことにもつながる。バランスが難しい。
そんなお話をさせていただきました。
年間フリーパスについて少し補足します。長野電鉄屋代線の年間
赤字額は、投資を別にして1億7,000万円。そして須坂市や千
曲市も含め、屋代線沿線には2万1,000世帯あります。このう
ち1万7,000世帯の皆さんに年1万円のフリーパスを買ってい
ただければ、この赤字が消える計算になるわけです。
もちろん、この計算どおり単純にはいかないと思いますが、将来
的には、技術革新や新規の工夫により、コストが下げられる可能性
もあります。そのほかの手段、例えば駅舎や駅前広場の使い方の工
夫、そして住民が増える方策の実行、観光開発なども必要でしょう。
いずれにしてもこの不況の時代、何をするにも簡単ではありませ
んが、可能性を検討してみることも大切かもしれません。
2010年7月8日木曜日
権堂再開発・住民自治協議会・スポーツについて
6月25日、市議会6月定例会が終わりました。この定例会で論
点になったことのうち、3点について、現段階の課題、今後の方針
という側面から報告します。
1点目は、権堂地区の再開発についてです。定例会中の6月17
日、株式会社イトーヨーカ堂から本市に対して、「権堂B-1地区
市街地再開発事業への参加は困難であり、現在の店舗での営業継続
を前向きに検討する」という方針が示されました。
この再開発事業は、権堂地区にとどまらない中心市街地の活性化、
新たな都市拠点づくりを目指すものであり、そのためにもイトーヨ
ーカドー長野店の存在は、長野市民会館と並んで必要不可欠な要素
であると考え、その「存続」を第一に交渉を進めてきました。本市
を含め、全国的に大型店の撤退と中心市街地の空洞化が深刻化する
中で、今回示された「営業継続」の方針は大変喜ばしく、長野駅前
と並ぶ「中心市街地の核」となる大型店の存続に安堵(あんど)し
ているところです。
再開発事業そのものに参画していただけないことは残念ですが、
イトーヨーカ堂からは、現店舗を使って営業を行い、長野大通りを
挟んだ東側の区域で市民会館などの計画が実現した際には、連携を
強化して街の活性化に協力したい、との回答も頂いています。商業
施設と市民会館の相乗効果によって街の活性化を図りたいとする思
いは、地元の皆さんや本市の思いと同じであり、大いに心強く感じ
た次第です。
そうした中、7月2日に再開発準備組合の代表者が市役所にお越
しになり、権堂地区の活性化のために、西側の既存商業施設を生か
しつつ、再開発の必要性が高い東側の区域で市民会館を含めた再開
発事業を実施したいので、支援してほしい旨の要望を頂きました。
今後、その具体的な変更計画案が示された後、市として十分検証す
るとともに、市民の皆さんや市議会議員の皆さんのご意見を十分に
お聴きし、方針を決めていきたいと考えています。
2点目は、「地域やる気支援補助金」についてです。この補助金
の選考結果については、先日のメルマガでもご報告させていただき
ましたが、事業開始初年度とすれば、まずまずのスタートを切れた
と思っています。ただ、選考方法や予算額についてさまざまなご意
見やご要望を頂いていることも事実であり、今後さらに検討する必
要があることを改めて感じています。
いずれにしても、地域の皆さんの「やる気」が一層高まるような
配慮が大切です。将来にわたって連綿と続く住民自治活動をしっか
りと支援していくためにも、まずは、本年度の課題や効果などを十
分に検証したいと思っています。そして、市議会で頂いたさまざま
なご意見を参考にするとともに、住民自治協議会の皆さんのご意見
をよくお聴きし、地域の「やる気」と「熱意」に応えることができ
る、より良い制度となるよう改善を図っていきたいと考えています。
3点目は、スポーツに関する諸課題です。
オリンピックと並び、スポーツ界最大の祭典とも言われるサッカ
ーのワールドカップが、南アフリカ共和国で開催されています。わ
が日本代表チームは、決勝トーナメント1回戦で惜しくも敗れてし
まいました。
しかし、海外でのワールドカップ初勝利に始まり、強豪国との激
戦を経て決勝トーナメント進出を決めたその戦いぶりは、多くの国
民に勇気と感動を与えてくれたと思っています。ワールドカップは、
いつの時代もサポーターの祖国に対する熱い思いと愛情に満ちた姿
が印象的です。スポーツの持つ素晴らしさを改めて実感しています。
世界のステージではありませんが、今シーズンの後半戦に入った
サッカーの北信越フットボールリーグでは、現在、AC長野パルセ
イロがトップを快走中です。
今年こそJFL(日本フットボールリーグ)への昇格を果たして
ほしいという思いはもちろんのこと、いずれはJリーグへの階段を
も駆け上がり、わがまちのチームからも日本代表選手を送り出す日
が来ることを願っています。
冬季スポーツでは、長野市が熱望していたエムウェーブとスパイ
ラルのナショナルトレーニングセンター(NTC)競技別強化拠点
施設の指定について、念願がかないました。6月1日、それぞれ再
指定していただくことができたのです。
両施設のNTC指定期間はバンクーバーオリンピックまでという
ことで、今年の3月末で切れていました。その後、再指定していた
だけるか気をもんでいましたので、正直ホッとしています。今回の
指定期間は、ソチオリンピックが開催される平成25年度までです。
長野市ではこれまで、エムウェーブとスパイラルを拠点として、
国内トップレベルの競技者の国際競争力の向上を目指し、選手強化
を図ってきました。その結果、スピードスケートでは、バンクーバ
ーオリンピックでメダルを獲得することができたわけです。
今後も、競技連盟とも連携して施設を有効に活用し、日本選手が
世界大会において上位入賞を狙えるよう選手強化を図っていきたい
と思っています。
ただ、課題があることも事実です。
まず、スピードスケートについてですが、今回のNTCには、前
回と同様にエムウェーブと北海道帯広市のリンクが同時に指定され
ました。両拠点の利用形態としては、7月から9月中旬までは帯広
市のリンク、9月下旬から3月まではエムウェーブを使用していた
だきたいと考えていますが、それには日本スケート連盟との調整が
必要になります。
ボブスレー・リュージュでは、スパイラルの維持・運営の難しさ
が課題です。氷を維持するのに費用が掛かるだけでなく、危険を伴
うことから選手が一人で気軽に練習することができません。常に監
視員・製氷員が必要で、短い期間しか使えないという悩みを抱えて
います。
長野オリンピック記念基金からの助成が終了したことも課題です。
長野市では、長野冬季オリンピック開催後、スポーツを軸とした
まちづくりの推進を掲げ、スポーツの振興に取り組んできました。
今後、自他共に認めるウインタースポーツのメッカとなるためには、
行政だけでなく、何よりも大勢の皆さんの熱意と支援が欠かせない
と思っています。現在、基金の趣旨を引き継ぐ新たな仕組みを検討
しており、近いうちにご提案できそうです。その際は、大勢の皆さ
んのご理解とご協力をお願いします。
ウインタースポーツのメッカを目指すためにも、今後とも冬季競
技大会の開催や選手の育成・強化に取り組んでいきたいと考えてい
ます。それには、指導者やジュニア選手の育成をはじめ、幼少のこ
ろからスケートやアイスホッケー、ボブスレー・リュージュなどに
慣れ親しんでいるという、精神的なスポーツ文化の醸成も必要でし
ょう。そして、できれば通年で氷を張ることができる施設が欲しい
ものだとも思っています。
以上、今後の市政にとって重要な点についてまとめてみました。
2010年7月1日木曜日
参議院議員選挙について
参議院議員通常選挙が6月24日に公示され、7月11日の投票
日に向けて各政党・候補者は一斉に走っています。
参議院は、3年ごとに半数の議員が選挙の洗礼を受けることにな
っています。そして、衆議院と違って解散がありません。すなわち、
この選挙では、今後6年間、国会議員として活躍していただく人を
選ぶことになるわけです。
選挙について直接的に意見を述べることは、首長という私の立場
からすべきではないと思っていますので、ここでのコメントは差し
控えます。ただ、参議院そのものについて、私は以前から疑問を感
じていることがありますので、今回は、そのことに触れさせていた
だきます。
私が疑問に感じているのは、国会が衆・参の二院制を採っている
ことが無駄ではないかということです。外国の例はあまりよく知り
ませんが、一院制が多いと聞いています。日本の憲法で決まってい
るのだから仕方がないといえばそれまでですが、衆議院だけで国会
の機能は十分果たせるのではないかと以前から思っていました。
衆・参両院の性格が全く違い、役割も違うのなら意味があるかも
しれません。衆議院は政党政治の根幹ですから、政党中心に動くこ
とは仕方ないでしょう。それに対して参議院は、政党とは一線を画
した存在になり、相応の権限を持つようになれば良いと思うのです。
衆議院と参議院の議決が違ってしまう、いわゆる“ねじれ現象”
も、本当の意味の話し合いが行われるのならば良いのですが、現在
のような形では国会審議を複雑にしているだけのように思います。
参議院には、衆議院の行き過ぎをチェックしたり、衆議院の解散
中に国会の機能を代行したりする役割が期待されているようですが、
果たして機能しているのでしょうか。
戦前の貴族院は、政党政治の防波堤という意味合いを持っていた
そうです。貴族院なんて民主主義とは正反対の組織と言われそうで
すが、戦前のことを勉強している中で、「明治維新の元勲が生きて
いる時代には、政党政治家が跳ね上がっても元老が抑え込んでいた。
ところが、昭和になって、生きている元老は西園寺公望1人になり、
抑えが利かなくなって太平洋戦争に飛び込んでいってしまった」と
いう意味の本を読んだことがあります。
現在の参議院にそれほどのパワーを求めることは無理でしょう。
しかし、貴族院のように大御所が選ばれるルールがあれば、新しい
仕組みが生まれるかもしれません。
戦後、参議院になってからも昭和30年代ごろまでは、緑風会と
いう、政党とは一線を画した会派が院内で力を持っていたように記
憶しています。政争とは無縁、大所高所から意見を主張する会派で、
議決に際しては個人の判断と責任で賛否を決めたそうです(実際は
よく知りません。ただ、一服の清涼剤として貴重な存在だったと言
われています)。
この緑風会が力を失ったのは、自由民主党と日本社会党が二大政
党として出現した、いわゆる55年体制ができたときだそうです。
参議院にもだんだん政党の手が伸びて、無所属は無力だという気運
が支配するようになり、衆議院、参議院の区別が無くなってしまっ
たと言われています。それは決して良いことではなかったのでは・
・・と私は思うのです。
解決策として、参議院議員には党議拘束を禁止する、というのは
どうでしょうか。
最近いろいろな本を読んでいて感じることですが・・・民主主義
というのは、歴史の中では比較的新しい考え方であり、成熟したも
のではない・・・すなわち、万能ではないのではないか、というこ
とです。民主主義の起源として、古代ギリシャに陶片追放という制
度があったと子どものころ勉強しましたが・・・。
古代ローマでも、共和政(どちらかというと民主政に近いはず)
から帝政になり、それなりの人物が皇帝に選ばれてきたから、ロー
マ帝国が長く続いたと言えるのでしょう(不適格な皇帝はそれなり
に排除されてきたことも事実のようです)。
現在の民主主義は、民主主義の顔をしていながら、実は独裁者が
支配しているのではないでしょうか。あのヒトラーでさえ、最初は
民主主義的な方法で勢力を築いてきたということです。そして、現
代の日本でも、民主的に選挙で選ばれたはずなのに、いつの間にか
民主的なリーダーではなく、独裁者のようになっている・・・そう
感じている国民が大勢いるというのも実態ではないでしょうか。
そもそも民主主義とポピュリズムは、どこが違うのでしょうか?
選挙公約を見ていると、程度の違いこそありますが、結局ポピュリ
ズムにならざるを得ない・・・前政権、前々政権が実施した定額給
付金や子ども手当の支給、高速道路料金の値下げあるいは無料化・
・・そのほかたくさんありますが、すべてポピュリズムに基づく選
挙対策のように見えるのです。
選挙のために意地を張る、そうでないと選挙に勝てない・・・た
とえ良い政策でも政争のために賛成しない。こんなことが繰り返さ
れてきたように思います。
ただ今回の選挙には、消費税引き上げの話が出てきました。私と
すれば、日本のことを真剣に考えたまともな政策がようやく出てき
たと、ホッとしているのが心境です。どう考えても選挙には不利と
思われる増税の話が打ち出されたこと、ポピュリズムだけではない
ことを感じさせます。
グローバル社会の必然として、企業減税についても話題になって
きました。実施されれば、国として減収の可能性があるのでしょう
が、国際競争に打ち勝つためには、仕方がない選択でしょう。
そして、選挙は本当に最善の方法なのでしょうか?以前このメル
マガで、松代町の善光寺回向柱寄進建立会の会長の選び方を報告し
たことがあります。前任者が真剣に考えて後任者を指名する、とい
う伝統的なあの選び方は、素晴らしいと感じています。
とはいえ、参議院議員選挙は今後の国政を左右する重要な選挙で
す。期日前投票もすでに始まっています。棄権しないで大切な1票
を投じてください。