長野市民会館は、昭和36年に開館してから約50年が経過しま
した。そのため、老朽化に加え、施設の造りや設備面などで、観客・
主催者の双方にとって使いにくいものになっています。
市では、平成19年から長野市民会館の在り方について検討を始
め、「長野市役所第一庁舎及び長野市民会館の在り方懇話会」、
「長野市民会館建設検討委員会」を組織して、有識者や公募委員の
皆さんにも検討をお願いしてきました。
そして、本年2月に策定した市民会館基本構想では、質の高い文
化芸術拠点として建て替えることを決定したところです。この基本
構想では、新しい市民会館の基本理念を「人と環境にやさしい文化
芸術創造のステージ」とし、長野市の文化芸術の核(コア)となる
拠点施設にしたいと考えています。
基本理念を実現するためのコンセプトとして掲げているのは、以
下の5つです。
(1)「文化芸術との出会いの場」として、質の高い音楽や演劇に
対応でき、また、市民が気軽に芸術と触れ合える場所
(2)「子どもたちの文化芸術の育成の場」として、次世代を担う
子どもたちが一流の芸術に触れ、また、自分たちもそこで演技・
発表できる場所
(3)「長野を象徴する文化芸術拠点」として、長野の市民文化や
まちの魅力を創造・発信していく場所
(4)「市民が集う、にぎわい交流拠点」として、練習室やギャラ
リーなどを備え、常に市民が集まる場所、活用できる場所
(5)「環境建築拠点」として、温室効果ガスの排出やヒートアイ
ランド化を抑制するなど、環境にやさしい場所
これらの考え方を実現できるよう、芸術性が高い催事が開催可能
なホールや、催しがない日でも人々が集える練習室・リハーサル室・
ギャラリーなどを設置していきたいと考えています。
また、6月からは、公募でお集まりいただいた「長野市民会館市
民ワークショップ」の皆さんに、長野市にはどんな市民会館が必要
なのか、ということで、市民会館の機能や役割・運営など、さまざ
まな視点で検討を進めていただいています。
ただ、ここにきて当初の構想を一部変更することが必要になりま
した。7月8日のこのメルマガでもご報告させていただきましたが、
基本構想で予定していた権堂B-1地区の西街区に市民会館を建設
することが困難になったのです。
このことを受け、権堂B-1地区市街地再開発事業準備組合から
は、長野大通りを挟んだ向かい側に位置する東街区で再開発事業を
実施したい、との提案を頂きました。市としても、東街区に建設す
ることが可能かどうか検証を重ねた結果、基本構想に示す文化芸術
の拠点にふさわしい施設を建設することが十分可能であるとの結論
を得るに至り、このたび、「建設地を東街区」とする方針案を固め、
お示しさせていただいたところです。
なお、地権者の合意による再開発事業組合が設立できなかった場
合には、現在の市民会館がある場所を建設地とする方針に変わりは
ありません。
する中で、長野駅前、権堂B-1地区再開発事業予定地、現在地
(緑町)の3カ所に絞り、最終的に権堂B-1地区に建設すること
が一番良いということで、その方針を決めたものです。
権堂B-1地区がある権堂町は、善光寺のおひざ元に位置してお
り、古くから人と人との交流によってはぐくまれてきました。この
ような歴史を踏まえると、新たな文化交流拠点としてこの地域の再
生を図ることは、中心市街地全体、長野市全体にとっても必要なこ
とと考えています。
そして、第三地区の住民自治協議会会長さんおよび各区長さん、
長野商店会連合会など中心市街地の商店街の代表者の方々からも、
権堂B-1地区に建設される市民会館と連携・協力し、一丸となっ
て中心市街地活性化のためのまちづくりを進めていくとの意思表示
も頂いています。
一方、権堂町は歓楽街の顔も持っており、文化施設の建設場所と
してはいかがなものかといったご意見を頂いていることも事実です。
しかし、権堂は古くから長野のまちの中心地であり、公共交通の便
も大変良いという側面も持ち合わせています。市民会館を含む再開
発を契機として、今後、住民の皆さんとともに、将来に向けてまち
づくりを真剣に考えていきたいと考えています。
昭和30年代後半、東京オリンピック前後からモータリゼーショ
ンが進展し、郊外のロードサイドへの大型店の出店が増え始め、住
宅地もどんどん郊外に整備されるようになりました。その結果、中
心市街地はドーナツ化現象(注1)によって人口が減少し、商店も
減り、徐々に往時の力を失ってきてしまったのです。
そうなった一番の理由には、中心市街地は地価が高くてコストが
掛かること、そして、モータリゼーションの進展に見合う駐車場ス
ペースが十分に取れないために新しい施設、業態が生まれなかった
ことがあると言えるでしょう。
数年前、市内で、大型店の郊外出店計画が何件も申請されたこと
があります。
これらの申請をどうするか、長野市としては随分迷いましたが、
国が農地をこれ以上減らさないようにという方針だったこと、長野
市としても基本的には、これ以上のスプロール現象(注2)は望ま
しくないと考えたことから、大型店は郊外ではなく、既存の市街地
へ出店してほしいという決断をしました(長野オリンピック開催の
ため、競技施設が郊外に造られたことで、農地が大幅に失われてい
たことも事実です)。
これに対しては、地権者の皆さんを中心に随分しかられましたし、
経済界でも賛否両論があったようです。
この決断により、すぐに市街地の開発が進めば良いのですが、急
に方向転換を図ることはなかなか難しいようです。
そんな中でも市街地の再生は徐々に進展しています。時期は前後
しますが、もんぜんぷら座、TOiGO(トイーゴ)、長野駅前A
-3地区の再開発ビル「Nacs(ナックス)末広」の完成、そし
て市民会館建設・・・中心市街地の再生は、都市としての重要な顔
作りです。地価の下落などにより、コストを抑えることができる現
在は、中心市街地を再生する千載一遇のチャンスでもあるのです。
権堂B-1地区の再開発についてですが、関係権利者の方々もお
おむね事業にご理解いただいていると聞いていますので、市民会館
を含む事業の実現に支障はないと考えています。
私としては、本来、市民会館が持つ文化芸術を振興する機能に加
え、市民会館と商店街との相乗効果による市街地の活性化、善光寺
や長野駅前だけではない「まちの広がり」など、まちづくりの効果
にも期待しているところです。
今回の建設地の方針案に関する詳細は、「広報ながの」9月1日
号、または市ホームページをご覧ください。市民会館の建設地は、
この方針案についてお寄せいただいた市民の皆さんからのご意見の
ほか、建設検討委員会や市議会のご意見をお聴きした上で、決定し
たいと考えています。
長野市民会館建設地の方針案:
http://www.city.nagano.nagano.jp/pcp_portal/contents?CONTENTS_ID=21274
(注1)ドーナツ化現象・・・都心部の人口が減って周辺部の人口
が膨れ上がる現象。
(注2)スプロール現象・・・都市郊外に宅地が無秩序・無計画に
広がってゆく現象。