2月24日の夜、市役所で本年度の国際交流市民会議を開催しま
した。
この市民会議は、国際都市としての在り方や生活しやすいまちづ
くりについて意見交換する場として、平成元年から継続して開催し
てきており、多文化共生社会の実現や相互理解といった観点から、
主に市内在住の外国人や滞在中の外国人留学生などの皆さんと意見
を交わしてきました。もんぜんぷら座にある国際交流コーナーを誕
生させるきっかけになった市民会議でもあります。
会議の形態は一定しておらず、意見交換会やスピーチコンテスト、
時にはワークショップを行うなど、さまざまです。中でも昨年度は、
戸隠スキー場に外国籍市民の皆さんと一緒に行き、冬の長野を体験
してもらいながら意見交換しました。
本年度の市民会議は、これまでとは趣向を変えて開催してみまし
た。集まっていただいたのは、市内で活動している国際交流に関係
する団体の皆さんです。一言で国際交流といってもその範囲は極め
て広く、各団体の活動内容もさまざまで、目的も違えば、交流する
相手国も違うといったように、それぞれ独自に活動されているわけ
です。
そこで、各団体の皆さんが普段どのような活動をされているのか、
どのような課題をお持ちなのか、自由に意見交換することにより、
現在長野市が行っている姉妹都市・友好都市交流のさらなる発展、
また、それとは別に何か新しい国際交流の可能性が発見できるので
はないかということで、このような内容で開催することにしたもの
です。
今回は、以下の17団体の皆さんのほか、4人の市民の皆さんに
参加していただきました。
◇長野国際親善クラブ:長野オリンピックを契機に始めた「一校一
国運動」を中心に、外国語講座開講、通訳・翻訳サービス、ホ
ームステイ受け入れなどの活動をしている。
◇長野市日中友好協会:日中友好協会全国本部・長野県日中友好協
会の下部組織。帰国者への理解を深める活動、交流活動などを
している。
◇長野みすずライオンズクラブ:長野オリンピックの翌年から、長
野国際親善クラブと一緒に「一校一国運動」を実施している。
◇長野青年会議所:国際交流委員会を設け、ソウルや台中の青年会
議所との訪問・受け入れ事業を実施。長野びんずるでは「国際
連」を結成して外国籍市民の参加を支援している。
◇長野県国際交流推進協会:県の外郭団体。国際交流団体検索シス
テム・多文化共生くらしのサポーター制度の運営、外国籍児童
への母国語教室の支援などをしている。
◇長野県青年国際交流機構:内閣府の青年国際交流事業(青年海外
派遣、世界青年の船、東南アジア青年の船など)の推進に協力、
支援をしている。
◇日墺協会長野:本部は松本市。長野は長野オリンピックが開催さ
れた平成10年に結成。主にオーストリアのチロル地方との交
流活動をしている。昨年は、鬼無里地区の皆さんとベルフェン
ベンク村を視察。
◇長野日仏協会:東京の日仏会館が中心となり、全国の日仏協会が
年1回フランス大使館で交流。フランス語講座などを開催して
いる。
◇長野県日独協会:ドイツ語講座とドイツ語で歌う会(シュタムテ
ィッシュ)などを開催している。今年は日独交流150周年。
◇長野県ベトナム交流協会:枯葉剤散布被害児童リハビリ施設への
資金援助を目的としたチャリティーコンサート開催を機に組織。
ベトナム人留学生の就職支援活動などをしている。
◇国際伝統文化交流協会:国際交流コーナーを訪れる外国人に日本
の伝統文化を経験してもらうことを目的に設立。お茶、三曲、
着物の着付け、折り紙などを体験してもらっている。
◇ながの国際交流スポーツクラブ:長野オリンピックの前年に設立。
語学教室、国際文化理解、スポーツ交流活動などをしている。
◇北信外国人医療ネットワーク:国籍や信条によらず、外国人が安
心して医療を受けられるよう、無料健診、医療通訳などの活動
をしている。
◇信州大学工学部:工学部に在籍する12カ国75人ほどの留学生
が、充実した大学生活を送り、満足して、日本は良かったと思
って帰国してもらえるよう努力している。
◇長野県短期大学 地域・国際連携センター:アメリカのミズーリ
州立大学セントルイス校、中国の河北大学と連携、交流してい
る。
◇清泉女学院大学・短期大学:学内の地域連携センターの中に国際
交流オフィスがあり、海外へ学生を送り出したり、迎え入れた
り、学内で国際交流を行うなどの活動をしている。
◇長野工業高等専門学校:日本国費での留学生、マレーシア政府派
遣の留学生の受け入れ、学生の外国との交流を支援している。
皆さんとは、“長野ヤキメン”を食べながら、懇談させていただ
いたのですが、いろいろなお話をお聴きすることができました。や
はり、それぞれの団体が全く違う目的のために活動していることが
よく分かったというのが私の印象です。連携が必要かどうか、各団
体の事情は異なると思いますが、まず、お互いに知り合い、それぞ
れの団体の皆さんがやっていることを分かってもらえたという面で
は、今回、非常に良かったのだろうと思っています。
しかし、今回、全ての国際交流団体が集まったわけではありませ
ん。情報不足で長野市から呼び掛けをしなかった団体、連絡はした
けれど都合がつかなかった団体、そのほか個人で熱心に活動してい
る方々もいらっしゃるようです。全ての皆さんに集まっていただく
ことは難しいことですし、組織化することなどはもっと大変だなと
痛感しました。
いずれにしましても、今回集まっていただけた各団体の皆さん同
士でいろいろなことを雑談する中で、今後、何か生まれてくるのか
なあと、そんな期待も持てた市民会議でした。
この1週間ほど前、2月18日の夜には、みどりの移動市長室と
して、川中島地区のNPO法人「信州・川中島平ファクトリー」の
皆さんと懇談させていただきました。
川中島地区は、“川中島白桃”の発祥の地です。しかし、競争力
の高い特産品であるにもかかわらず、栽培農家の高齢化・後継者不
足から、川中島には「発祥の地」という名前だけが残り、主産地は
山梨県、福島県ということになりかねない、そんな危惧すらあるの
が現状だそうです。
そんな危機感を背景に「信州・川中島平ファクトリー」の皆さん
は、“川中島白桃”という貴重な地域資源を農・商・工連携により
守る取り組みを始めています。
(1)規格外品の農産物を使った商品の開発
通常廃棄されてしまう規格外品の白桃を活用し、ジャムなどの
さまざまな加工品にして販売することで、生産農家の収入増につ
なげる。
(2)地域の活性化と雇用の創出
川中島地区周辺の企業、団体などが連携して加工品の製造、販
売に当たることで、農業だけでなく商工業の振興も目指し、地域
での雇用創出、地域の活性化を目指す。
(3)長野市と都市部の交流
東京で子どもの体験活動を企画している団体と提携し、互いの
地域で子どもたちが学び合う活動を実施し、子どもの農業や食に
対する理解、お金や流通に対する理解を深める。
(4)“川中島白桃”の農地の保全と生産拡大
耕作できなくなった農家の代わりに農地を管理し、栽培作業を
行っているNPO法人「風とみどりの会」と連携することで、荒
廃農地の解消と生産拡大を図る。
これらの活動をコーディネートすることを目的に設立されたのが
「信州・川中島平ファクトリー」だそうで、活動に関わる農家や企
業などの皆さんで構成されています。
懇談会でお聴きしたところによりますと、開発した“川中島白桃”
を加工した商品の販売契約が、都内の有名店との間で成立したとの
ことでした。そのほかにも引き合いが来ているようで、販売価格も
悪くはないそうです。
私は以前から、“作る農業”からマーケティング手法を取り入れ
た“売る農業”へ転換する必要があると考えてきており、市独自に
農業法人化や農産物加工施設設置に対する支援制度を整えてきまし
た。国でも農産物の生産(第一次産業)、加工(第二次産業)、販
売(第三次産業)まで取り込んだ農業の“六次産業化”を進めてい
ることもあり、農産物の「高付加価値化」「売れる・もうかる農業」
の確立へ向けた環境が整いつつある状況です。
必ずしも同じではありませんが、「信州・川中島平ファクトリー」
の皆さんが目指す方向性はこれらとよく似ています。長野市を代表
する成功例となるよう、生産、加工、販売ともしっかりもうけても
らい、関係する皆さんの収入増につながることを願うばかりです。
話は変わりますが、3月5日、市立長野高等学校(市立長野)の
誕生と共に入学した1期生157人の卒業式がありました。
市立高校の歴史は大変古く、大正8年の実科高等女学校の創立ま
でさかのぼります。以来、実に今年で92年。その長い歴史の中で、
平成20年4月に男女共学の単位制総合学科の高校として再生した
のが“市立長野”です。県内唯一の市立高校として、市立ならでは
の特色を出して存在感のある学校にしたい、そんな願いを込めてつ
くりました。
その1期生の皆さんが、学習をはじめ部活動や生徒会活動など、
さまざまな分野で大いに活躍し、多くの成果を残して卒業されるこ
とを大変うれしく思っています。特に、インターハイや国体でのス
ケート部の活躍は、創部3年目とは思えない素晴らしいものでした。
卒業生の進路状況を見ますと、四年制大学希望者82人、短期大
学希望者24人、専修・各種学校希望者44人、就職希望者7人で、
おおむね希望どおりの進路へ進むことができたようです。
1期生が刻んだ新たな歴史を礎に、2期生、3期生・・・と歴史
を積み重ね、存在感ある伝統校に成長していってもらいたいと思っ
ています。