公共交通に関連するいくつかの事業が、昨年度末から新年度にか
けて大きく進展しました。最近は公共事業費が削減される傾向では
ありますが、市内の景気回復のためにも必要な事業は確実に実施す
べきであると考えています。
まず、県都長野市の交通拠点であるJR長野駅のバリアフリー化
を図るため、2つのエレベーターがこの3月新たに完成しました。
平成21年度から工事が行われ、在来線の3・4・5番線と6・7
番線のホームにそれぞれ設置されたもので、4月25日には完成式
典が行われました。さらに、同ホームには、それぞれエスカレータ
ーも新設され、この日に合わせ供用開始となっています。2階のコ
ンコースも拡幅され、中央改札口付近は、とても開放感がある空間
に生まれ変わりました。駅を利用する多くの皆さんもそう感じてい
るのではないでしょうか。
今回の工事は、平成18年に制定された「高齢者、障害者等の移
動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」によるも
のです。本格的な高齢社会を迎え、高齢者の自立と社会参加の実現、
また障害のある人もない人も共に生活し活動する社会の実現を目指
すノーマライゼーションの理念の下、「どこでも、だれでも、自由
に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づいて
実施されており、長野市としても公共施設のバリアフリー化に一生
懸命取り組んでいるところです。
1日平均利用者数が5,000人以上の駅には、平成22年を目
標にエレベーターまたはエスカレーターを設置することなどが同法
に基づく政府の基本方針で決められていました。JR長野駅の1日
平均利用者数は約4万4,000人ですから、今回の工事実施とな
ったわけです。
長野市の玄関口であるJR長野駅のバリアフリー化は、利用者の
安全性・利便性を向上させるために有効なものであるため、長野市
としても国・県と協調し補助をさせていただきました。
最近の基本方針の改正で、1日平均利用者数が3,000人以上
の駅についてもバリアフリー化を促進することになり、市内では、
長野電鉄も含めていくつかの駅で工事が必要であるとのことです。
当然事業者にとってはかなり厳しい方針で負担も大きくなりますの
で、行政も支援する必要があると考えています。
JR川中島駅は1日平均利用者数が3,000人弱で、バリアフ
リー化の対象にはなっていないのですが、地域の皆さんは、「ぜひ、
エレベーターを設置してほしい」とJRに要望を出しているそうで
す。
また、現在、JR長野駅善光寺口の整備について、地域の皆さん、
JRなどと協議を行いながら詳細な計画作成を進めています。長野
オリンピックから13年余りが経過し、また、新幹線が金沢まで延
伸することに合わせ、ロータリーを含めた駅前広場そして駅ビル本
体を総合的に整備すべきとの声が大きくなったためです。駅前広場
が若干狭いと感じますが、使いやすく、そして長野市の顔として将
来に誇れるものにしたいと考えています。
次に、幹線道路2路線の開通についてです。
3月30日、都市計画道路返目浅川線の「檀田中央橋」が完成し、
渡り初め式が行われました。地権者、地域の皆さんのご協力のたま
ものと感じています。
今回開通した区間は、北部幹線から檀田土地区画整理事業で拡幅
が完了している箇所までの約90メートルで、平成12年度の事業
着手から完成までに約11年かかってしまいました。
理由は、「『脱ダム』宣言」のために、浅川の堤防高の変更や河
床の掘削計画などが決定しないまま、平成13年から3年間、県と
の河川協議が中断したことなどです。本来は土地区画整理事業の完
成と時期を合わせたかったのですが、それができず皆さんに大変ご
迷惑を掛けてしまいました。
この地域には、北側に浅川団地、神楽橋団地があります。檀田中
央橋が開通したことで、直接北部幹線に通じることになった返目浅
川線は、この地域の南北を結ぶ幹線道路として重要な役割を担うこ
とになるわけです。
もう1路線、都市計画道路山王栗田線の北石堂交差点から西の区
間も整備が完了しました。この道路は、中央通りと国道19号を東
西に結ぶ環状線内側の補助幹線という位置付けです。両側に家屋が
連なっていたため、完成までに約13年間、事業費も11億
2,000万円余り掛かり、その多くが用地費でした。
以前は、この通り沿いに長野赤十字病院(現在のJA長野県ビル
の場所)があって、子どもの頃母に連れられて通った懐かしい道路
です。現在は、幅員15メートルの立派な道路になりました。
「公共交通は都市のインフラである」というのは、私の年来の主
張です。
インフラである以上理想を言えば、電気・水道・ガスなどと同じ
ように、必要な場所・必要な時にはなくてはならないものだと思っ
ています。もちろんすぐできることではありませんし、少子化で人
口減少時代を迎えた今では、困難なテーマでもあります・・・。
公共交通の充実については、道路整備をしながらも、一歩一歩理
想に向かって、地域事情・財政状況を考慮しながらインフラ整備に
向け努力していくことが、必要だと思っています。
公共交通の一つであるバスについても昨年度に引き続き実証運行
を始めました。
長野市公共交通活性化・再生協議会では、「長野市地域公共交通
総合連携計画」に基づき、平成22年度から3年間、バス交通の活
性化と再生を目指し、乗合タクシーの実証運行も含めて、さまざま
な取り組みを行っています。本年度は2年目で、最終年度を前に交
通不便地域の解消を目的に、市内の8路線(見直し7路線、新規1
路線)で地域循環バスや乗合タクシーの実証運行を行うものです。
このうち、篠ノ井ぐるりん号、安茂里線、西長野・上松線の3路
線は、昨年度の実績を踏まえ本年度から本格運行(通年運行)とし、
そのほかの5路線については、本年度の利用状況を見て来年度の本
格運行へ移行できるかを検討していきます。
本格運行に移行できるかどうかは、どれだけ多くの皆さんがバス
や乗合タクシーに乗っていただけるかにかかっています。行政が全
てに対し支援や補助をすることは不可能ですから、皆さんに乗って
いただいて運賃をお支払いいただき、不足分を市が補助していこう
という発想です。しかし、その補助も無制限になってしまっては行
政が成り立たないことは自明の理です。まさに正念場とも言える年
でありますので、ぜひ、多くの皆さんに乗っていただき、本格運行
へのハードルを突破していただくようにお願いします。
バスあるいは乗合タクシーの利便性が、自家用車の利便性を上回
ることは難しいとは思います。しかし、地域によっては、自動車を
運転できない高齢者や子どもは、買い物や移動が困難な状況となっ
ています。また、公共交通の利用促進は、環境保護のために温室効
果ガスの排出をなるべく減らそうという目的もありますし、地域の
活性化にバスなどを利用して、交流を促進するという目的もありま
す。私は、こうしたことを大切にしたいと考えています。そして、
さらなる利便性向上のため、現在、路線バスにICカードシステム
の導入準備を進めているところです。
路線やダイヤの詳細は、市のホームページを参照していただきた
いと思います。
そのうち篠ノ井地区の地域循環バス「篠ノ井ぐるりん号」とジャ
ンボタクシーで運行する乗合タクシーの篠ノ井共和線、そして今回
新たに運行を始める茶臼山動物園線については、4月15日に多く
の関係者の皆さんにお集まりいただき出発式を行いました。篠ノ井
ぐるりん号および篠ノ井共和線は、川中島地区も含めた運行ルート
となっているため、出発式には川中島地区の皆さんも出席され、共
和地区の皆さんも、路線存続のチャンスだと張り切っていました。
バス再生に懸ける地域の皆さんの期待がとても大きいことを感じま
した。
長野市としても、利便性が高く、地域の身近な乗り物として、地
域循環バスや乗合タクシーを今後も増やしたいと考えていますので、
大勢の皆さんにご利用いただければと期待しています。
なお、新規路線の茶臼山動物園線は、動物園の駐車場が狭いこと、
そしてそれに伴う渋滞の解消を狙っての導入です。動物園にちなん
で「ZOO(ズー)ぐる」と名付けました。平日運行する篠ノ井ぐ
るりん号の車両を活用し、篠ノ井駅西口の無料駐車場と動物園の間
を土・日曜日、祝日のみ運行します。運行開始最初の4月16日と
17日は、満席となる便もあるほどの盛況ぶりだったそうです。
昨年に引き続き運行している松代の観光線「松代ぐるりん号」と
似た運行形態で、生活路線とは少し目的が違いますが、ぜひ、これ
らの二つのぐるりん号にも新しい需要を開拓してほしいものです。
なお、長野電鉄屋代線の廃止に伴う平成24年4月の代替交通の
運行に向けた検討については、沿線住民の代表者、長野電鉄、関係
機関、長野市を含めた沿線3市などで構成する長野電鉄活性化協議
会を中心に、「沿線交通の現状の再整理」「地域ニーズの把握」
「代替交通路線網編成方針の検討」「代替交通網の具体的検討」
「サービス水準及び事業性の検討」などを実施する予定です。
当然のことながら、その中では、沿線地域の活性化問題も大きな
比重を持つものと考えています。