2011年6月16日木曜日

ながのいのち


 社団法人長野市農業公社については、5年前ぐらいから構想を練
り、平成19年7月3日に設立しました。
 長野市域の4分の3を占める中山間地域を活性化するためには、
どうしたらよいか。農業公社は、この課題解決に向け、「農林業の
再生・都市部との交流・新たな産業の育成」の3本柱を立て、設立
以来頑張っています。
 しかし、本命はやはり、「農林業を再生する」「もうかる農業を
実現する」「農業者が将来に夢を持てるようにする」。それが、長
野市全体の活性化につながるのだ・・・私はそう考えました。

 農業を新たな産業として自立させるために、農業委員会や農業協
同組合(農協)、関係業界の皆さんと語り合いながら農業公社を設
立し、具体的に何が農業に必要なのかを考えてきました。
 農業公社の役割は、農協などが行っている仕事の中で、「もうか
らない、でも重要なものを引き受けること」、それと、特産品開発
・加工支援、マーケティング開発などの「新しい仕事に取り組むこ
と」でした(農協は経済団体ですから、赤字の仕事ばかりやってい
ては、組織が成り立ちません。そこで、もうからない仕事であって
も、重要な仕事については、税金を使うことが許される農業公社が
引き受けましょうというものです)。ただ、農業公社といえども、
いつまでも赤字では困ります。いずれは、もうかるようになること
が理想です。

 具体的には、農作業を支援するお手伝いさん派遣事業を農協から
引き受ける、農地流動化事業(農地の貸借)を行うなどしながら、
(1)遊休(荒廃)農地を有効に使う(遊休(荒廃)農地を借り上
  げ、耕運や草刈りなどの維持管理をしながら、貸付先を見つけ
  る)。
(2)農業人口を増やす(認定農業者や新規就農者などの多様な担
  い手の育成、株式会社の農業参入促進)。
(3)農産物は保管がきかず、生鮮食品としての販売だけでは限界
  があるため、できるだけ加工所を造って製品化する(そのこと
  によって、年間通しての売り上げと雇用が生まれる)。
(4)製品の販路拡大を図る(すなわち、マーケティングが重要)。
(5)農作業体験や農家民泊などによる都市住民との交流を促進す
  る。
 こうしたことを目指しています。

 このうち、(4)が、過去の農業社会が一番苦手だった分野だと
思います。そこで農業公社では、農業組織や企業関係者、そして地
域の16グループと手を組んでプロジェクトチームを立ち上げ、
「中山間地域の住民が生き生きと働ける場づくり」「もうかるビジ
ネスモデルづくり」について検討を重ねてきました。
(キャッチフレーズ“長生き長野 自然のまんま”)を立ち上げま
した。

産地消」「食育」の3つを柱とし、単なる“売らんかな主義”の物
産物・加工品を長野市民の生活の中に定着させ、市民と共に育てて
いくことを目標としています。

 ブランドマークは、「長生き長野 いのちの環(わ)」として、
デザイン・書を長野市在住の書家・川村龍洲(かわむら りゅうし
ゅう)氏(財団法人驥山(きざん)館理事長)にお願いしました。

中山間地域の生産者グループ、農業関係者、加工・販売・流通会社
などの結集を図りました。設立時は、32団体(うち生産者グルー
プは16)でしたが、現在は47団体(うち生産者グループは33)
に成長しています。
 これまでに開発し、商品化したのは、以下のとおりです。
(1)鬼無里みそラスク・えごまラスク
  の会」と製パン事業者「リトルマーメイド」の共同開発です。
(2)まこもどうふ
   本年2月、“マコモダケ”を生産する「(株)平成農園」が
  「(有)八光食品工業」と共同開発しました(地元産大豆を原
  料としています)。
(3)カレーもつ
   本年4月、篠ノ井信里地区の直売所「(有)たんぽぽ」が地
  元で生産した野菜と県産の豚もつや米粉を使ったレトルト食品
  を発売しました。
(4)あとひき豆(3種類)
   本年5月、長野市西部の西山地域で栽培されている特産品の
  「西山大豆」を使用した菓子として、市内中条地区の直売所
  「むらの駅つくし」が考案し、販売を開始しました。

 平成21年5月、アンテナショップ「ひっぱりだこ」を中央通り
沿いに開設。そして、平成22年4月には、移動アンテナショップ
「ひっぱりだこ号」の運行も始めました。
 また、平成22年7月から長野銀座商店街振興組合との共催によ
り、“ザ・ぎんざにぎわい市”をTOiGO(トイーゴ)広場で開
始しました。11月まで毎週火曜日に計24回開催し、“火曜市”
として定着してきました。本年も5月10日から11月29日まで
開催します。
 そのほか、おやきやぶっこみ(たっぷりの野菜に油揚げ、麺を入
れて煮込んだ鍋料理)などの郷土食を伝え、学ぶことができるイベ
か、リーフレット、ブランドマークのシール、手提げ袋(紙・ビニ
ール)、名刺、商品詰め合わせ用の手提げ箱などの販売促進・宣伝
資材を作成し、活用しています。

 まだまだ商品の数も開発力も足りませんし、宣伝力も販売する場
所の確保も十分とは言えないと思っています。おやき、こねつけ
(ご飯と小麦粉を混ぜてこねてからみそなどを付けて焼いたもの)
など、このブランドで売り出すことで、個々に販売するより有利だ
ということが分かっていただけるまでには、時間がかかりそうです。
 でも、地域の生産者グループが続々と生まれ、それぞれ工夫して
いただいているようですし、販路も増えてきています。生産者グル
ープには、開発力、そして我慢が大切と訴えています。

 農業公社が販売に手を出すことは、「武士の商法」と言われそう
で、失敗するのではないかと危惧していましたが、現段階では何と
か頑張っているということでしょうか。
 もうかるようになったら、農業公社は手を引いて、民間の発想・
工夫で事業を行っていただくことが大切かなあと思っています。