先月、中部電力から次のような要請がありました。
同社が予測する7月から9月にかけての電力供給予備率(*)は、
安定供給の目安である8~10%を下回る5%程度になってしまう
とのことであり、電気の安定供給のために、ぜひ節電に協力してほ
しいというものでした。
東京電力の福島第一原子力発電所の事故とは直接的には関係ない
のですが、中部電力の浜岡原子力発電所が、政府の要請で運転を停
止したため、中部電力の供給区域である長野市においても電力供給
量に余力がなくなり、このままでは夏の電力需要のピーク時に停電
が発生してしまう懸念があるとのことでした。
浜岡原発が、今後30年以内に87%の確率でマグニチュード8
クラスの地震が起こると予想される東海地震の想定震源域のど真ん
中に位置していることから、政府は中部電力に浜岡原発の運転停止
を要請したものです。しかし、浜岡原発以外の原発については、安
全であるため、停止要請はしないと政府は言っています。
以下は、中部電力の長野営業所長さんから長野市に対しての要請
の詳細内容です。
・東日本大震災と福島第一原発の事故、ならびに浜岡原発の全面停
止に伴う電力不足が深刻化する中、夏場に向けて、国を挙げての
節電対策が求められている。
・中部電力の今夏の電力供給予備率は5%程度となる見通しで、安
定供給の目安である8~10%には達しないことから、電力需給
は極めて厳しい状況になると予想される。
・電力需要は、7月から9月にかけての平日午後1時から4時まで
がピークとなる。そこで、大手製造メーカー(自動車メーカーな
ど)が協力して、木・金曜日を休みにして、土・日曜日を出勤日
にすることになったので、木・金曜日については少し緩和されそ
うである。従って、月・火・水曜日の節電について、ぜひ協力を
お願いしたい。
市としては、この要請を受けて、まずはこの3カ月間を乗り切る
ために、職員のクールビズの実施期間延長に加え、さらなる節電対
策について検討を進めてきました。
市役所の閉庁日については、法的な制約があるため、大手製造メ
ーカーのように「勤務日を変更すること」は難しい状況であります。
そこで、照明灯の5台に1台程度を消灯するなどの庁舎内照明の削
減やノー残業デーの徹底はもとより、特に電力需要のピーク時にお
ける対策として、正午から午後1時までの昼休み時間帯を7月から
9月までは、1時間遅らせて午後1時から2時にすることについて、
市職員労働組合と協議の上、実施することにしました。ちなみに、
照明灯の機種によっては、蛍光灯3本のうち1本を間引いてしまう
・・・そんな工夫もしています。
冷房の設定温度も、法的に規制があり、28度を超える温度に設
定することはできないとのことですから、冷房を小まめに入れたり
切ったりして節電を行うことにしました。
その他、複数あるエレベーターのうち1基を止める、昨年度と比
較して、どの程度節電しているかを公表する・・・などを行ってい
きます。
加えて、市役所の部課長を動員して、市内155の事業所(従業
員100人以上の企業・団体など)を訪問し、節電のお願いをしま
した。
これからも、でき得る限りの節電に取り組んでいくつもりです。
市民の皆さん、企業の皆さんも、このような状況の中、既にさま
ざまな方法で節電に取り組まれていることと思います。ご協力に感
謝するとともに、この夏を乗り切るために、まさに全市一丸となっ
た最大限の節電が実現できるよう、なお一層のご理解とご協力をお
願いします。
お分かりのように、これは、この夏を乗り切るための短期的な施
策です。将来的なこととして、原発反対、あるいは賛成といったエ
ネルギー政策についての議論もありますが、まずは、直面している
この夏の電力不足を克服しなくてはならないのです。ただし、長期
的な視点に立っての政策が重要であることは間違いありません。
「将来的」というと遠い先の話に聞こえますが、実は来年2月ご
ろ、もっと深刻な事態が発生すると予測する方もいます。それは、
原子力発電所は、1年間稼動すると点検整備をすることが法律で決
められているため、今停止している原発はかなりの数になっている
ようです。点検が終わっても、再稼動についてはそれぞれの原発所
在地の知事の許可がいるようです。知事の考え方によっては、再稼
動を認めないのではないか。あるいは現在建設中の原発の稼動も認
めないのではないか・・・。そんな懸念が出ているのです。今後、
点検整備で停止した原発が再稼動できなくなると、来年2月ごろに
は、ほぼ全ての原発が停止することになるわけです。
さらに、この先、原子力に頼らない、なおかつ地球温暖化を防ぐ
エネルギーの開発が絶対に必要だということについては、誰も反対
はしないでしょう。
しかし、現在は総発電量の約30%を原子力に頼っている実情で
すから、事態は深刻です。
外国に目を向けると、フランスは総発電量の約80%を原子力に
頼っているとのことです。イタリアでは、先日、原発の必要性に関
する国民投票が行われ、今後、原発は要らないとの結果になったこ
とが話題になりました。ドイツも、何年か後、原発を全廃するとの
政策を打ち出しています。対応は各国いろいろです。目標を掲げて
努力することは必要でしょうが・・・原発に頼らない社会が実現す
る可能性はあるのでしょうか?
イタリアやドイツは、多分当面は他国から電気を買う必要がある
でしょう。それも原発の電気を・・・。
その間、自然エネルギーの開発に全力を傾け、電力コストが上が
って、その負担が国民に掛かったとしても我慢して耐えていけるの
でしょうか。
朝日新聞の世論調査では、「原子力発電を段階的に減らして将来
はやめる」ことに、賛成する意見が一番多かったとのことで、妥当
な意見だとは思います。しかし、「段階的」「将来」「やめる」の
意味が具体的でないが故に、問題解決の道筋が見えないわけです。
最近は、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などの技術開発
が進んでいるとの報道があります。地熱発電、潮力発電などの可能
性もかなり報道され始めました。
そういえば、「藻から石油が採れる。日本は産油国になれる」な
んて、夢のような話も聞こえてきました。
エネルギーの地産地消の時代が来るかもしれません・・・。
日本として今やるべきことは、現在ある54基の原発を検証して、
安全性を維持する。そして、節電に徹しながら、代替エネルギーの
開発に全力を挙げ、開発できた分だけ原発を止めるという政策しか
ないのではないでしょうか。
先ほど市内事業所への節電要請についてお話ししましたが、もち
ろん私もお願いに行きました。最後に、その時事業所にお渡しした
要請文の内容をご紹介します。
夏の電力需要ピーク時における節電のお願い
平素本市の環境行政につきましては、格段のご協力をいただき、
厚くお礼申し上げます。
さて、本格的な夏を迎える中、電力需要が増加する7月から9月
までの期間中、月・火・水曜日の午後1時から4時までのピーク時
に電力不足のおそれがあります。
電力不足による不測の事態が生じた場合、市民生活、事業活動に
多大な影響を及ぼすこととなります。
つきましては、趣旨をご理解いただきピーク時の節電対策につい
て可能な範囲でお取り組みいただきたく、お願い申し上げます。
長野市長 鷲 澤 正 一
「オール長野でピーク時節電!!」。こんなキャッチコピーも作
成し、節電の協力を呼び掛けています。
*電力供給予備率:発電設備の故障や急激な需要増加などに対応で
きるよう、予備の電力として供給が可能な電力量の、全体に対する
割合