9月11日、4年に一度の市議会議員一般選挙が告示されました。
投票日は18日ですから、もうすぐです。皆さんには、ぜひ投票所
に足を運んでいただき、清き一票を行使して市政に参加していただ
きたいと願っています。
今回はより一層投票しやすくするため、暫定措置ではありますが、
支所における期日前投票の時間を2時間延長し、夜7時までとしま
した。これによる行政側の事情を申し上げますと、投票管理者や立
会人の負担、人件費などの経費(細かく言えば電気料なども掛かり
ます)、支所職員などの通常業務への影響も大きく、果たしてその
分に見合う投票率のアップが見込めるかどうか不透明なところもあ
ります。しかし、3月市議会定例会において、議員全員一致で要望
されたことですので、それに応えて今回の暫定措置ということにな
ったものです。
市議会議員選挙に限らず、市長選挙、県議会議員選挙、県知事選
挙、国会議員選挙まで、投票率の低下は悩みの種です。民主主義イ
コール選挙とは思いませんが、このまま長期低落傾向が続けばどう
なるか。
投票率が低い場合、例えば、特定のグループなどが強引に投票を
促した場合、そのグループが支持する候補者が当選する確率は高く
なりますし、結果として本来の民意とは懸け離れてしまう恐れがあ
ると思っています。
選挙への無関心、あるいは無力感、お任せ民主主義などに対し、
非常に危機感があります。
その意味からすると良いことだと思っているのですが、今回の市
議会議員選挙は、定数39人のところへ46人が立候補するという
近頃にない多数激戦です。
世代交代期なのでしょうか、現職が11人引退されて、立候補さ
れたのは、現職が29人、元職が1人、新人が16人の合計46人
です。個々の候補者についてお話しすることは遠慮させていただき
ますが、住所、年齢、性別、党派、職業など大変多彩な顔触れです。
立候補者が大勢いらっしゃるということは、有権者の選択肢もたく
さんあるということですから、基本的には歓迎すべきことです。8
月末になって、立候補を予定されていた新人の方が、急病でお亡く
なりになったことにはびっくりしました。心からご冥福をお祈りし
ます。
市長と市議会とは、地方自治の場における二元代表です。
すなわち、国会の議決で決まる内閣総理大臣と違い、市長も市議
会議員も、別々に市民の投票で選ばれるわけですから、市長として
も市議会議員選挙の結果に関心を持たざるを得ないことはご理解い
ただきたいと思います。
二元代表制について少しお話しさせてください。
二元とは、首長と議会(議員)のことをいうことは、当たり前で
すが、現実の社会において、二元代表制が機能するかどうか、なか
なか難しい問題があります。
議会という言葉を使いましたが、議会は、議員個人の集団です。
個人はそれぞれの主義主張があって、同志が集まって会派を結成し
ています(無所属の方もいらっしゃいます)が、各会派が同一意見
になることは、なかなか難しい。従って、二元代表制といっても、
首長の“一元”に対して、議会の“一元”は多数の合意体であり、
いわば“多数・元”というのが実態です。
首長としても、職員の議論を聴き、議会の意見、審議会の意見、
市民動向(世論)を察して施策を公表していくことになりますから、
“一元”という言葉は当たらないのかもしれません。しかし、職員
は首長の部下ですから、表面的には意見は統一しやすいでしょう。
具体的には、首長は、議会に議案を提案する前に、事前の話し合
いや勉強会を通じて、議会と十分な意見交換をしています。
議員さんによっては、また会派によっては、そういう事前の話し
合いを好まない方々もいらっしゃいます。それはそれで仕方がない
のですが、市政運営に当たって、この部分がとても重要なことだと
思っています。
事前の話し合いや勉強会は、談合だとおっしゃる方がいらっしゃ
います。私は違うと思っています。議会における論議だけでは十分
に意思疎通や意見交換ができないということは、結構多いのです。
議会での議論は、どうしても形式論になりがちで、本音が表れない
ことも多い。本会議(典型は議会討論ですが)では、メンツ、行き
掛かり、建前主義の中央意見などで言い争うこともあり、不毛な議
論になりがちです。
長野市という地方自治体の中での意見交換は、国・県の動向を推
測しながら、その範囲内で行うことが必要です。国・県の場合と違
って、市政では市民に直結するテーマが多いことから、形式や建前
を基にした議論は、混乱を助長するだけです。インフォーマルな意
見交換が大変有効であると、常々感じているところです。
都道府県は、市町村と同じ二元代表制です。
振り返ってみれば、長野県では、「知事と議会はガチンコ勝負」
とおっしゃって、事前の意見交換をやらなかった故か大混乱に陥り、
不信任議決につながるほどの騒ぎになってしまったことがありまし
た。事前の勉強会、意見交換、そして議案の事前修正(反対意見の
受容)などが重要であることを示す典型的事例でしょう。
ちなみに、国は、議院内閣制ですから、二元代表制とは根本的に
違います。先頃民主党の代表選に引き続き内閣総理大臣の指名投票
がありましたが、これも国会の中での議員同士のネゴシエーション
(交渉。協定・取引などの話し合い。)といってよいのでしょう。
直接選挙によって選ばれる首長と違い、内閣総理大臣は国会議員の
中から国会の過半数の賛成で選ばれるのですからネゴシエーション
は当然のことです。
なお、地方自治体でも首長の不信任議決はできるのですが、これ
は議会の場で議員の3分の2以上の出席の下に、その4分の3以上
の賛成があってのことです。しかし、その場合であっても、首長は
失職を受け入れずに議会を解散して、議会議員選挙をやり直すとい
う手段も選択できるわけで、国会内の議論だけで内閣総理大臣の交
替ができる国とはかなり事情が違います。もちろん国でも内閣不信
任決議を受けて、衆議院を解散するということはありうるわけです
が・・・。
形式、建前の議論の具体的な事例を一つ書きますと、ある議員さ
んから議会で「憲法9条をどう思うか?」という質問がありました。
その議員さんは、原子力反対からアメリカとの安保条約などについ
て、延々と持論を披露された後に私の見解を聞かれました。
私はこういう時、「長野市長として自分に権限がないことについ
てはコメントしません」とお答えしています。強いて言うなら、憲
法は9条も含め不磨の大典にすべきでないということを申し上げて
います。
逃げと言われるかもしれませんが、私が何の権限もないことに意
見を言うことは犬の遠吠(ぼ)えみたいですし、ただ対立をあおる
だけの不毛な議論は、市政に何のプラスにもならないと考えている
からです。
さて、話がだいぶ横道にそれてしまいましたが、二元代表制をし
っかりと機能させ、より良い市政運営を行っていくためにも、ぜひ
市民の皆さんには、市議会議員選挙の投票所に足を運び、ご自身の
長野市政に対する思いを託せる候補者に投票していただくようお願
いします。