9月18日に執行された長野市議会議員一般選挙は、平成22年
1月に合併した信州新町と中条村の旧2町村の区域にそれぞれ特例
で設けた選挙区を解消し、全市1選挙区で実施したもので、現職
28人、元職1人、新人10人の計39人の皆さんが当選され、女
性は6人全員が当選されました。20日に当選証書付与式が行われ、
私はあいさつで、「お互い市民の負託に応えるべく、協力し、ある
いは意見を交わしながら、長野市の健全な発展と市民福祉の向上に
努めたい」と申し上げました。
今後、当面は各議員さんの政策実現に向けた会派構成をめぐる動
きが活発になるのであろうと思っています。
今回の選挙では、有権者の皆さんがより投票をしやすく、そして
少しでも投票率を上げるための方策として、暫定措置ではあります
が、市内27カ所の支所における期日前投票の投票時間を2時間延
長し、夜7時までとしました。
その結果を見てみますと、9月11日の告示日の翌日12日から
投票日前日の17日までの6日間(支所は13日から16日までの
4日間)の投票者数は、本庁と支所を合わせて2万6,973人で、
前回の市議会議員一般選挙の2万507人より6,466人増加し
ました。その内訳は、本庁では9,056人で、前回の9,578
人より522人減少しました。支所では、1万7,917人で、前
回の1万929人より6,988人の増加となり、支所の投票者数
が著しく伸びた結果となりました。
しかし、本庁の投票者数が減少し、支所の投票者数が増加する状
況は、平成22年7月執行の参議院議員通常選挙以後、8月の県知
事選挙、今年4月の県議会議員一般選挙と同様ですので、今回の投
票時間延長の影響だけではないと考えられます。
また、今回投票時間を延長した午後5時から午後7時までの2時
間の支所における投票者数は3,066人で、支所で期日前投票を
した人の17.11%でした。この数字は、他の時間帯と比較して、
投票者数が特に多くも少なくもないという結果でした。
当然、各支所で投票状況は異なりますが、午後5時以降の投票者
が多かった支所は、篠ノ井240人、川中島263人、更北240
人、安茂里210人、信州新町336人でした。逆に、投票者が少
なかった支所は、七二会18人、信更16人、長沼5人、小田切2
人、芋井9人でした。
今回の時間延長では、約3,000人の有権者の皆さんが延長し
た時間中に投票され、投票の利便性向上には一定の効果があったも
のと思います。しかし、多くの有権者の皆さんに投票に行っていた
だくようお願いしてきましたが、残念ながら投票率は46.32%
と、過去最低であった前回の49.71%よりも、さらに3.39
ポイント下がってしまいました。やはり投票時間を延長したからと
いって、それがそのまま投票率向上につながるわけではないという
こと。つまり、投票しやすい環境の整備だけでは、投票率が向上し
ないわけで、政治に市民の皆さんの関心を向けるための何らかの方
策が必要であると感じています。しかし、ここが一番難しいところ
で、他の自治体でも苦慮している点だと思っています。
なお、投票日の最高気温が34.8度と、この時季としては異常
な暑さとなりました。市選挙管理委員会からの報告では、正午から
午後4時までの投票者は2万138人で投票日における投票者の
17.42%、前回は3万1,429人、24.29%で、暑い時
間帯の投票率が特に低かったそうです。
市選挙管理委員会では、今回の選挙の結果を受け、今後の支所期
日前投票時間の延長について、本市が10月から11月にかけて行
う「まちづくりアンケート」で市民の皆さんの声を広くお聴きする
予定です。
アンケートでは、今回の市議会議員選挙の投票率が結果的に下が
ったこと、延長措置に伴い約300万円の経費増となったことを踏
まえて、今後の選挙でも投票時間を延長すべき、従来どおりに戻す
べきなどの選択肢から選んでいただく予定です。
こうしたアンケート結果を基に、支所の現場の意見や、各地区住
民自治協議会のご要望などをお聴きしながら、総合的に検討し、来
年度当初をめどに支所期日前投票時間に関する方針を決定する予定
です。
期日前投票の制度について私の考えを少し述べたいと思います。
本来は、告示後、選挙公報が出て、有権者はその選挙公報を見てか
ら投票するわけです。それがこの期日前投票の制度では、告示日の
翌日から投票できることになっています。場合によっては、選挙公
報も見ず、選挙運動を通した各候補者への理解も深まらないうちに
投票することになるわけですから、本来の趣旨からするとどうなの
かなあと思ってしまいます。法律で定められた制度の問題ですので、
私が何を言っても変わるわけではありませんし、期日前投票がなけ
れば投票率はもっと下がるでしょう。ジレンマを感じてしまいます。
いずれにしても、10月1日から新しい構成による議会活動が始
まり、中旬に開催される市議会臨時会で正副議長も決まります。二
元代表制である地方自治において、議会と市長は、共に市民に直接
選挙で選ばれた独立・対等な立場で、チェック・アンド・バランス
機能を保ちながら切磋琢磨(せっさたくま)することが肝要である
と考えています。
その10月臨時会には、住宅リフォーム補助金に係る補正予算案
を提出する予定です。9月1日、住宅リフォーム補助金の募集をし
たところすごい人気で、用意した予算5,000万円分は、当日の
早い時間帯に終了してしまいました。これは経済対策の一環で行っ
たものですが、総事業費を推定すると、6億円ぐらいの需要が喚起
できたようです。
しかし、応募者が予想を大きく上回り、多くの皆さんの要望に応
えられなかったので、予算を増やすべきとのご意見が寄せられ、市
としても急遽(きゅうきょ)対応策を考えました。通常ですと、次
の補正予算案の提出は12月定例会となりますが、それでは実際の
募集が来年2月ごろになってしまいます。今年は、前述のとおり市
議会議員選挙がありましたので、10月に臨時会が開催されるため、
そこに補正予算案を提出し、12月初めごろに再度募集したいと考
えています。補正予算額をいくらにするかはまだ決定していません
が、できるだけ多くの皆さんのご希望に沿えられればと思っていま
す。なお、この住宅リフォーム補助金については、来年度予算にも
盛り込む必要があると考えています。
議会の話題で、芹澤小諸市長さんが住民投票実施の発議を取りや
められたことについて触れてみたいと思います。小諸市の新庁舎と
県厚生連小諸厚生総合病院の併設案に関わる補正予算案については、
併設案についての議論不足として、9月市議会において否決される
可能性が高まっていました。そこで、芹澤小諸市長さんは、補正予
算案否決の場合には、住民投票実施を発議すると表明されていまし
た。結果として、市議会が同予算案を可決したため、市長が併設案
などの是非を問う住民投票実施の発議には至らなかったものです。
住民投票については、8月25日および9月1日のかじとり通信
でもお話しさせていただきましたが、やはり、どういうものを対象
に行うのか、どんな方法、手順で行うのかという基準や手続きがは
っきりしていないのは問題だと思っています。国も、住民投票がで
きるとしているだけで、その中身など具体的なことについては何も
示していません。住民投票は、本来、間接民主主義を補完する役割
を担うべきものなのでしょうから、これを前面に出していくと、行
政におけるねじれ現象を引き起こす可能性があり、混乱の元になる
と考えています。それ故、今回、小諸市議会において補正予算案が
可決されたことは良識のある判断であったと思っています。
住民投票は、住民の声を聴いてほしいと住民が請求する場合もあ
れば、理事者や議会から発議する場合もあります。理事者や議会か
ら発議された主なものとしては市町村合併を問う住民投票などがあ
りましたし、佐久市の総合文化会館建設に係る住民投票がありまし
た。
やはりこの問題は、いろいろな角度からもっと掘り下げ、さまざ
まな議論をし、目的、対象案件、手法・手続きなどについて、その
根本から作り上げる必要があるとあらためて感じています。
間接民主主義の根幹である選挙における投票率の低下と住民投票
を求める昨今の風潮は全く無関係ではないのではないかと私は思っ
ています。つまり、投票率が高ければ高いほど、多様な住民の意見
や考えが、選ばれた代表者に集約されるわけですが、投票率が低け
れば、残念ながら、そのようにはならず、偏りが生じてしまう可能
性があります。そうすると、選挙によって選ばれた住民の代表者で
決めたはずの議会の結論にも、納得できないと思う住民が出てくる
のではないかと考えられます。投票率が低下して、間接民主主義が
十分に機能しなくなってきていることが、住民投票という直接民主
主義の手法を求める動きに表れているのではないでしょうか。
こうしたことからも、選挙における投票率の低下は、さまざまな
問題に波及する大きな課題だと思っています。