3期目の市長職も、11月10日で4年の任期の半分が終わり、
いよいよ折り返し点を迎えることになります。残り2年間でやり遂
げたいプロジェクトはいろいろあります。全てやりたいのですが、
それは無理でしょう。どこかで踏ん切りを付けなくてはならないと
思っています。
今後やり遂げなくてはならないことについては、その完成を目指
し努力することは当然ですが、任期中に完成させることは無理でも、
「入りを量りて、出ずるを為す」の精神を基本にめどだけは付けた
いと考えています。
現在、策定中の第四次長野市総合計画後期基本計画には、今後の
長野市の方向性や目標、つまりやるべきこと、やらなくてはならな
いことなどが過不足なく書き込まれています。
しかし、長期計画ですから、策定したからといって必ずそのとお
りにできるとは限りません。また、社会情勢の変化の中で、変更す
べきこともあるかもしれません。できるだけ実現させようという強
い意志を持つことは当然ですが、極端な話、市長が代わった場合は、
計画内容を変えることも十分考えられます。
また、この計画の策定段階では、やりたいけれど、方向性を練り
上げられなかった事業もありますし、今後、民間活力を利用するこ
とで、行政が支援に回る事業もあるでしょう。また、国や県の方針
の変更により計画を見直すこともあり得ると思います。
そこで、後期基本計画には書き込むことができなかった事業も含
め、私が今後2年間でやり遂げたいこと、少なくともめどは付けた
いことについて、以下のとおり整理してみました。
1 ソフト部門
(1)都市内分権の着実な推進と市民の自立・自治意識の確立
市内32地区の住民自治協議会が発足して1年半が経過し、
一括交付金の増額や事務局長配置などの新たな要望が出されて
います。また、今後、住民自治協議会と支所との関係について
も組織や業務内容について整理していく必要があります。こう
した課題を一つずつ解決し、住民自治協議会の自立、地域コミ
ュニティーの再生を目指し、積極的に取り組んでいきます。
(2)中山間地域の振興
中山間地域は、市内の13地区にあり、その面積は市域の約
4分の3を占める一方、人口は市全体の約1割であり、若年層
を中心とした住民の流出とそれに伴う高齢化、農作物の野生鳥
獣被害など重く大きな課題を抱えています。こうした中山間地
域に住む皆さんの生活を維持し、地域の活力が減退することな
く魅力的な地域であり続ける政策を推進していきます。
(3)公共交通機関の再生
マイカーの便利さに押されて利用者の減少が続くバスや鉄道
などの公共交通を新しい発想で再生・活性化させ、都市のイン
フラとして将来にわたって維持していくことが重要です。その
ための一つの方策として、平成24年10月から、バス共通I
Cカードの本格的な導入を予定しています。
(4)長野市民病院の黒字化
市民病院の経営健全化については、「長野市民病院中期経営
健全化計画(公立病院改革プラン)」に沿って取り組んでいま
す。引き続き、救急医療やがん診療を充実させ、市民の皆さん
に選ばれる病院を目指し、計画に掲げる平成25年度の黒字化
を前倒しして達成するようにしたいと考えています。
(5)飯綱高原スキー場と戸隠スキー場の経営改善
スキー場は、長野市の冬の重要な観光資源だと常々思ってい
ます。民営化などを含め、スキー場のさらなる魅力アップや経
営効率化の検討を進めて、黒字化の道筋を何としてでも付けた
いと考えています。
(6)飯戸鬼(いいとき)構想の進展
飯綱、戸隠そして鬼無里地区が連携し、お互いの魅力を高め
合う事業を展開します。具体的には、アウトドア体験を気軽に
楽しめる飯綱高原、人気のある戸隠神社やスキー場、キャンプ
場を有する戸隠、奥深い自然が魅力の鬼無里、3地域それぞれ
の魅力を結び付けた観光振興を図ります。
(7)歴史、文化、芸術を大切にするまちづくり
長野市は、有形無形の歴史・文化財産の宝庫だと自負してい
ます。平成16年度から行っている「イヤーキャンペーン」で
も、住民の皆さんと一緒に、市内外にその魅力を発信してきま
した。引き続き、歴史・文化の魅力があふれるまちづくりを推
進していきます。
また、市内にある200を超える野外彫刻を活用した潤いの
あるまちづくりを推進し、教育や観光振興につなげるとともに、
新たに芸術作品や伝統芸能などをデジタルアーカイブ化して発
信することを検討しています。
2 ハード部門
(1)市役所第一庁舎と長野市民会館の建て替え
平成26年度の完成を目指し、現在長野市民会館の解体工事
を進めています。市役所第一庁舎は、市民の皆さんが利用しや
すく、かつ、いざという時の防災拠点の機能を備えた施設に、
また、長野市民会館は、本市の文化芸術拠点となる質の高い、
使いやすい施設にします。
(2)ごみ焼却施設の建設
長野広域連合の環境アセスメントが終了次第、地元の皆さん
と十分な協議をしながら、合意形成に向けたステップを着実に
踏み出します。
(3)斎場2カ所の建て替え
大峰斎場は、来年度に建設工事に着手する予定です。松代斎
場については、できるだけ早く地元合意が得られるよう努力し
ます。
(4)市立小・中学校の耐震化対策
事業の前倒しを図ってきた結果、現在の耐震化率は80%で、
かなり進展してきていると感じています。残りについても早期
耐震化に向けて計画的に進めています。もう一頑張りです。
(5)JR長野駅東口周辺整備
主な道路の築造工事が進むにつれ、東口周辺整備が本格化し
てきたと実感しています。引き続き、地権者の皆さん、関係す
る皆さんと連携を取りながら、事業を進めたいと思います。
(6)中心市街地(JR長野駅善光寺口前・中央通り・権堂地区)
の活性化
中心市街地の活性化は、まちづくりを進める上で、大変重要
なポイントです。門前町としての魅力を高め、長野市の顔とし
て、そして、そこに住む人、そこを訪れる人にとって快適なま
ちづくりを進めます。
そして、これから新規に行いたいハード事業がありますので、以
下に記します。
(7)Jリーグ対応のサッカースタジアム
スポーツは、まちに活力を与えます。スポーツを軸としたま
ちづくりを進めている本市にとって、JFL(日本フットボー
ルリーグ)に所属するAC長野パルセイロを応援することは大
きな意味を持つと考えています。今後、Jリーグ昇格を見据え
たサッカースタジアムの建設を検討する際は、市の財政負担の
軽減に考慮する必要があります。また、ファンドまたは出資を
はじめとする民間活力の利用について十分検討したいと考えて
います。
(8)茶臼山動物園・自然植物園の再整備とモノレール建設
茶臼山一帯は、長野市の大きな観光資源と考えています。動
物園には「レッサーパンダの森」のような新しい展示手法を取
り入れ、自然植物園はボランティアの皆さんによる植栽イベン
トなどにより植栽の充実を図るなど、茶臼山エリアの再整備を
行いたいと考えています。しかし、この区域は傾斜地のため、
エリア内を移動することがとても大変です。そこで、新たな移
動手段として、モノレールのような乗り物を計画しています。
3 ソフト・ハード両面に関する部門
(1)全ての施策において、省エネルギーの観点を基本とする設計
(2)太陽光発電、小水力発電、木質バイオマスエネルギーなどの
自然エネルギーの活用
(3)次世代エネルギーパークの整備
(4)新エネルギーの研究と開発
前述しました第四次総合計画後期基本計画に位置付けた市の方向
性を実現するためには、私がやり遂げたい具体的な内容である上記
1~3の項目を進めることが何より重要だと思っています。
国の政権交代の後、国、そして地方自治体という政治の世界に、
新しい動きを模索する動きが出てきているように感じています。
東日本大震災、福島第一原発の事故、台風12号、15号に見ら
れるような大きな被害、TPP(環太平洋連携協定)参加問題、沖
縄の米軍基地問題、歴史的な円高問題、ギリシャに端を発したヨー
ロッパの信用不安、中近東や北アフリカの混乱など・・・、日本人
全体が、何か鬱屈(うっくつ)したもの、言い知れぬ不安を感じて
いると思います。
地方自治体においても、「大阪都構想」や「新潟州(新潟都)構
想」の動きも、先行きが読めない状況です。
私は、従来、市長として権限のないことについて語るのは、犬の
遠ぼえのようなもので、それについては発言しないことを旨として
きました。また、長野市には、国や県に口出しするほどの力はない
と感じていました。所与の条件の中で、最大限、長野市民の幸せと
将来を考えて、市政を運営してきました。その結果として、財政に
ついては現段階において、皆さんにご心配をお掛けしない状況を築
き上げてきました。
しかし、今後については、市長在任の10年間の経験からもう一
歩踏み込んで、地方自治法や農地法の改正などについて国や県に提
案をしていきたいと考えています。