2012年3月22日木曜日

イヤーキャンペーンが幕を閉じます


 観光誘客イヤーキャンペーンは、本年度の2011篠ノ井イヤー
と2011信州新町イヤーをもって終了します。これは、平成18
年3月に策定した「1200万人観光交流推進プラン」に基づき、
地域の観光資源を生かし「地域ブランド化」を推進し、各地域の魅
力を高めようと展開してきたものです。

 篠ノ井イヤーの最後を飾るのは、3月18~24日の日程で始ま
った「信州しののい 川村驥山(きざん)展 生誕130年記念」
と、20日に開催された「冬の古道めぐり」です。18日の驥山展
オープニングセレモニーに出席した私は、会場となった驥山館(*)
と市立博物館を、驥山館館長の川村龍洲(りゅうしゅう)さんにご
案内いただき、130点ほどの作品を約1時間30分かけてじっく
り鑑賞し、書の魅力を堪能しました。

 天才書家と言われる川村驥山先生は、日本の近代書道の第一人者
であり、1951(昭和26)年に書道界において、初の日本芸術
院賞を受賞された書家です。受賞に際し驥山先生は、「書」が「芸
術」として認められたと、大変な喜びようだったそうです。
 1882(明治15)年、現在の静岡県袋井市に生まれ、
1945(昭和20)年の東京大空襲の直後に63歳で篠ノ井に疎
開し、以後篠ノ井で住民と親交を深めながら作品も発表、中央書壇
にも大きく貢献し、1969(昭和44)年、篠ノ井の地で87歳
の生涯を閉じました。
 明治天皇・皇后両陛下の銀婚式典では、わずか12歳の驥山少年
が2千字を全部暗記して書き上げた作品「出師表(すいしのひょう)
」と「孝経(こうきょう)」を献上し、ご覧になられた明治天皇は、
「これぞ、まことの神童」と感心されたとのことです。
 両陛下に献上されるほどの作品を書くこともさることながら、2
千字全てを暗記してしまうとは、すごいことですよね。

 今回の展覧会のために、個人や企業、長野中央・長野南警察署な
どの官公庁、篠ノ井高校、通明小学校などの学校が所蔵している作
品約100点が一堂に集められました。普段なかなか見ることがで
きない大変貴重な作品ばかりです。作品をご提供いただいた皆さん
のご協力と多くの作品を集められた驥山展の責任者で、2011篠
ノ井イヤー実行委員会「書と歴史・文化グループ」リーダーの宮崎
一(はじめ)さんほか関係の皆さんの並々ならぬご労苦に対し、深
く感謝を申し上げます(特に、個人の皆さんから作品をお借りする
のは大変だったことでしょう)。

 展示品の中で印象に残った作品の一部を紹介します。
 驥山先生の書の原点と言われている作品「大丈夫」は、なんと5
歳にして書かれたもので、「立派な男子になる」という強い思いが
込められた作品です。「先憂後樂」(長野南警察署蔵)は、住民の
安全安心を担う警察官の心得を書かれたそうです。「政治家もよく
使う言葉だな・・・」なんて思いました。どっしり、そして太々と
書かれた「質実剛健」は、現在の行書の良き見本であり、驥山先生
の絶筆となった作品「心」の前では、多くの人が長い時間足を止め
て見入っていました。

 実は、驥山先生は大のお酒好きでした。「酒」なくして先生を語
ることはできないほどです。昼から深夜まで飲み続けた後に、酒で
墨を摺(す)り書いた作品「飲中八仙歌」は、驥山先生の最高傑作
と言われています。また、「読書は酒を飲むが如(ごと)し」で始
まる「飲酒詩・自詠」は、銘酒の醸造主に贈ったものです。書と酒
をこよなく愛した、人間味あふれる驥山先生・・・こうした視点で
作品を見るのも面白いかもしれません。

 この展覧会には、市役所からも所蔵品を提供させていただきまし
た。第二応接室に飾られている掛け軸、1対です。14字から成る
ものですが、どの字を見ても驥山先生の書であることが瞬時に分か
る作品だそうです。余談ですが、私はこの応接室に普段入ることが
なかったのですが、半年ぐらい前に偶然この掛け軸を見掛けました。
その時、素晴らしい作品であることが一目で分かり、また表具も立
派なものでしたので、誰の作品かと職員に聞いてみると、驥山先生
の作品とのことでした。私の目も、まんざらではないということで
しょうか。

 篠ノ井市民会館では、24日まで驥山先生の写真展も開催されて
います(併せて、これまで1年間の篠ノ井イヤーの様子を収めた
「しののいの賑(にぎ)わい写真展」も同時開催されています)。
著名人や多くの弟子たちに囲まれた驥山先生の写真をはじめ、中に
は、親しげに酒を酌み交わす様子や昼寝している様子を撮った写真、
ドラム缶風呂に入っている写真など、驥山先生の偉大さ、そして気
さくな人柄がにじみ出ている写真が数多く展示されています。また、
当時の篠ノ井の風景、人々の暮らしぶりが感じられる写真もありま
す。大変貴重な写真ばかりですので、書と併せて、ぜひこちらもご
覧ください。ちなみに、驥山先生は、丸いメガネとその風貌から、
ガンジー先生と呼ばれ、親しまれていたそうです。

 信州新町イヤーも、28日の閉会式をもって終了します。信州新
町美術館で、今日から31日まで、この1年間に行われた各種事業
や信州新町の魅力を撮影したフォトコンテスト作品展も開催されて
います。実行委員会の役員さんをはじめ、ご協力いただいた地区の
皆さん、参加された多くの皆さんの笑顔あふれる、思い出がいっぱ
い詰まった写真が数多く飾られることでしょう。私も、昨年4月2
日の開会式「ろうかく梅園花まつり」に参加し、また、夏の「カラ
ー花まつり・ジンギスカンまつり」や「ろうかく湖花火大会・とう
ろう流し」にもお招きいただきました。10月の「義仲・巴(とも
え)全国連携大会」も懐かく思い出されますし、11月に開催され
た「信州新町能」で能を演じた地元信州新町出身の能楽師古川充
(みつる)さんとは市長室で懇談しました。
 また、琅鶴(ろうかく)湖では定期的に屋形船が運航され、毎月
第2土・日曜日にはジンギスカンデーとしてジンギスカン街道加盟
10店舗で食事などをすると割引券が当たる抽選会が行われるなど、
さまざまな事業が行われました。
 「アート&グルメ」をキャッチフレーズに、合併以前から持ち合
わせる素晴らしい地域の資源を広く発信されたと思います。

 両地区のイヤーキャンペーンはこれで終了となりますが、地域の
盛り上がりが、ぜひこれからも継続され、観光資源を生かした地域
づくりが一層進むことを願っています。
 2011篠ノ井イヤー実行委員会の渡邉一正会長さん、2011
信州新町イヤー実行委員会の中村一雄委員長さんをはじめ、両実行
委員会の役員の皆さん、関係された全ての皆さんのご努力に心から
感謝申し上げます。本当にお疲れさまでした。

 これまでのイヤーキャンペーン事業は、飯綱、戸隠、鬼無里、松
代、篠ノ井、信州新町などのブランド価値を高めてきました。4月
からは、「新1200万人観光交流推進プラン」として、これらの
地域などに存在するさまざまな観光資源と善光寺を結び付け、観光
客を増やすことと市内での滞在時間を延ばすことを目指し、長野新
幹線の金沢延伸と善光寺御開帳が開催される2015(平成27)
年に焦点を合わせたテーマ別キャンペーンを展開します。

 「遠くとも一度はまいれ善光寺~善光寺ふた旅」をメーン・キャ
ンペーンネームとし、新年度のテーマは、「ながの『四季の彩り』
キャンペーン」です。長野市の強みである善光寺のブランド力や自
然豊かな長野市ならではの四季の楽しみなどを踏まえつつ、長野市
全域で観光キャンペーンを展開していきます。

 新年度も、「元気なまち『ながの』」を目指し、これまで以上に
積極果敢に取り組んでいきたいと考えています。

* 驥山館:「大丈夫」や芸術院賞受賞作「楷書醉古堂劍掃語」な
ど、川村驥山の秀作が多数常設展示されています。
住所 長野市篠ノ井布施高田380(JR篠ノ井駅から徒歩約10
分)
電話番号 026-292-0941