4月13日、長野市開発公社の本年度第1回管理職会に出席しま
した。辞任された伊藤克昭前理事長の後を受け、3月22日に私が
理事長に就任しましたので、初めて同会に出席したものです。市長
が同公社の長を兼務することになったわけですが、今回のかじとり
通信では、同公社に関連して、日頃考えていることをお話ししたい
と思います。
開発公社や農業公社、保健医療公社など、市に関連する組織(外
郭団体)の長を市長が兼務することは、組織を運営する上で都合の
良い場合もありますが、あまり望ましいことではないと私は思って
います。なぜならば、各組織にはそれぞれ目標があり、それらに向
かって懸命な努力をするわけですから、市長の職務を行いながら、
そうした組織の仕事に専念することは難しいですし、本来の市長の
職務の遂行に支障がでる可能性があるかもしれません。そして何よ
り、各組織のことを全て理解することは、市長職との兼務では不可
能でしょう。また、補助金を交付するような場合も、「市長の鷲澤」
から「外郭団体の長の鷲澤」に補助金を渡すということになるわけ
です(事務手続き上は、同一人物同士が補助金の申請・交付をしな
いように処理をしています)。
特に、市開発公社のような大きな組織で、その組織の仕事が行政
の仕事とは必ずしもイコールにならない、例えばレクリエーション
事業や宿泊事業のような仕事をしている場合は、長である理事長は
専任でその職務に取り組む必要性があると感じています。さらに理
想を言えば、同公社は行政に頼らずに、自立・自尊の姿勢で頑張っ
てほしいというのが本音です。
同公社を取り巻く環境は、欧州金融への信用不安や原油に関わる
政情不安などの世界経済のマイナス要因に加え、国内においても東
日本大震災の影響が依然として残るなど、経済をはじめ、さまざま
な分野で先行きが不透明で、大変厳しい状況です。しかし、同公社
の場合、市民はもとより長野市を訪れる多くの皆さんに対し、行政
では実施し難いサービスや、楽しみと癒やしなどを提供する必要が
ありますし、当然、利益を上げなくてはならない宿命を負っていま
す。多くの皆さんに施設をご利用いただいて、その対価として利用
料などを頂戴し、同公社や施設を維持し、さらに新たなサービスを
開発していくことが任務です。
しかも、民間事業者が取り組んでいるサービスとの重複はできる
だけ避けるべきでしょうし、民間事業者では採算に合わないけれど
市民や観光客の皆さんの満足度を高めることができるサービスにも
取り組む必要があります。また、同じようなイベントを繰り返しや
っているだけでは、お客様に飽きられてしまいます。お客様のニー
ズを先取りし、ニーズにあった満足度の高いサービスを提供するこ
とが肝心です。お客様が一番大切なのです。
お客様に最良のサービスを提供していくためには、各施設で働く
職員が心も体も健康であることが前提です。職員一人一人が、この
困難な時期をたくましく乗り越えていくという心構えを自覚するこ
とはもちろん、公社職員として働くことに誇りを感じることができ
るような職場づくりや職員の心と体の健康管理にもしっかりと取り
組んでいくつもりです。
毎月開催している管理職会議にもできるだけ出席して、目標の達
成度の確認や情報の共有化を図り、組織の団結力が深まるような方
向へリードしていきたいと感じています。
ここで、同公社の事業について、平成23年度の実績などを中心
にお話しします。
まず、子どもと一緒に家族みんなで楽しめると人気の高い茶臼山
動物園については、「サマーナイトZoo」や冬期間限定の「アル
パカとの触れ合い」といった各種イベントが好調で、入園者数は
23万人を超え、過去最高となりました。また、妊婦さんを対象に
したマタニティビクスや水中エアロビクスなど多彩な教室内容で好
評を得たサンマリーンながのなどの施設が黒字となりました。
しかし、戸隠スキー場は、オープン当初の雪不足の影響などで年
末年始を中心に収入が十分確保できず、約9千万円の大幅な赤字に
なったほか、宿泊施設アゼィリア飯綱も、県外から学生の合宿を受
け入れることで宿泊利用者を増やしたり、経費を削減したりするな
ど経営の改善に努めたにもかかわらず、黒字に転換することができ
ず、その結果、2011(平成23)年度同公社は、約3,900
万円の赤字決算となりました。赤字の原因を詳しく分析し、今後同
じ轍(てつ)を踏まぬよう具体的な対策を講じていこうと決意して
います。
併せて同公社では、多様化する市民ニーズや高齢化など社会全体
の大きな変化に対応していく必要がある中、一般社団法人への移行
といった一大改革や2013(平成25)年度から2018(平成
30)年度までを計画期間とする中期経営計画の策定を予定してい
ます。したがって、本年度を重要な一年と位置付け、計画の着実な
実施に向けて取り組んでいきます。
同公社では、「いつも笑顔で、真心、感謝、親切」をモットーに、
本年度もおもてなしの心を大切にした取り組みや楽しいイベントを
数多く始めています。
4月にリニューアルオープンした城山動物園のモノレールは、来
園した子どもたちに大変人気だとのことですし、先日、飯綱高原の
大座法師池では、ワカサギの卵1千万匹分を放流し、池の風物詩で
あったワカサギ釣りの復活を目指しています。利用者が年間5万人
に迫る戸隠キャンプ場は、キャンプサイトを拡張するとともに、ト
イレ棟、シャワー棟、ログキャビンなども新築しました。さらに多
くのお客様にお越しいただき、隣接する戸隠牧場も含めた戸隠の大
自然を満喫していただきたいと願っています。
スキー場経営については、スキー人口が減少していくという厳し
い現実がありますが、戸隠スキー場は、「魔法の粉雪」と称される
抜群のパウダースノーや晴れた日の戸隠連峰の雄大な景色を生かし、
また、飯綱高原スキー場にあっては市街地に近い立地から、子ども
や家族連れに喜ばれる魅力的な企画の充実を図っていくことで、利
用者の獲得に努めていきたいと考えています。また、国内屈指の最
高級の泉質で天然かけ流し温泉のある松代荘や千曲川の爽やかな風
を感じながら本格的なショートゴルフやサッカーなどアウトドアス
ポーツを満喫できる千曲川リバーフロントスポーツガーデンなど、
その他の各施設においても、さまざまな自主事業や企画の展開を図
ることで、集客力を一層高めるとともに、ホスピタリティーに溢れ
た魅力的かつ効率的な運営を目指していきます。
職員一丸となって知恵を出し、汗をかき、同公社が管理・運営す
る施設などをフルに活用し、長野市の魅力を多くの皆さんに伝える
とともに、ご利用いただいたお客様に満足いただけるよう、サービ
ス向上と収益アップに向け、日々、努力を積み重ねていきたいと思
います。
開発公社は、行政の仕事と民間の仕事の隙間を埋める重要な役割
を担っています。公社として何ができるのか、また、何をしなけれ
ばいけないのかをしっかり考えて、取り組んでいきたいと考えてい
ます。
2012年5月31日木曜日
長野市開発公社の理事に就任しました
2012年5月24日木曜日
副市長プロジェクト
新年度に入り1カ月半がたち、各事業も軌道に乗り始めました。
4月1日からは、副市長を黒田和彦氏と樋口博氏の2人体制とす
ることで、トップマネジメントの強化を行いました。効果が表れる
のはこれからですが、大いに期待してください。
副市長複数制は、決して珍しいことではありません。長野市でも
過去には、長野オリンピック準備段階で2人制(当時は助役)でし
たし、他の40市の中核市でも37市で複数制は採用されています。
長野市とは規模が違うので単純には比較できませんが、長野県は副
知事が2人、東京都は5人、さらに、先日訪問した中国・石家庄市
は政治制度も異なりますが、副市長が7人とお聞きしました。
もちろん、副市長複数制には利点だけではなく、欠点もあると思
いますが、その欠点を補いながら、それぞれの役割分担をきちんと
果たすことが大切でしょう。今回は、この副市長2人制について、
当面考えていることを説明します。
まず、副市長2人制の目的と効果を明確にするため、部局間をま
立ち上げ、成果を意識したスピーディーな対応を図ることにしてい
ます。すなわち、部局横断案件について、関係部局を集めたプロジ
ェクトチームを組み、副市長がプロジェクトマネージャーとして取
り組むように役割を決めました。このことによって、行政の欠点と
いわれている縦割り制度の弊害を克服することにもつながると期待
しています。以下、各プロジェクトの内容を説明するのと併せて、
担当する副市長、関係部局についても記載します。
(1)市役所第一庁舎・新市民会館建設および運営体制調整プロジ
ェクト(樋口副市長担当)
文化芸術拠点としての運営体制の構築やどのような文化事業を中
心に展開するのかといったソフト面にも軸足を置き、それを実現す
るハード面はどうあるべきかという視点での検討を始めます。
【関係部局:教育委員会・総務部】(以下、先頭の部局がプロジ
ェクトの主管部局です)
(2)新幹線金沢延伸・中心市街地活性化対策プロジェクト(黒田
副市長担当)
・新幹線名称問題
・長野駅善光寺口駅前広場整備事業(善光寺御開帳開催時などの駅
前広場演出計画など)
・中央通り歩行者優先道路化事業
・セントラル・スクゥエア活用計画策定および残地取得・整備事業
・後町小学校跡地および県勤労者福祉センター跡地利活用計画
【関係部局:都市整備部・商工観光部・企画政策部・財政部】
(3)南長野運動公園サッカースタジアム整備検討プロジェクト
(黒田副市長担当)
・JリーグとAC長野パルセイロとの調整および支援
・サッカースタジアムの整備財源の検討
・工事期間中の仮スタジアムの確保
本年度予算に南長野運動公園総合球技場再整備のための調査費
800万円を計上しましたので、プロジェクトでは具体的な検討を
していきます。スケジュール的にはかなりハードですが、市民の皆
さんの機運も高まっていますので、スピード感を持って取り組みま
す。
【関係部局:企画政策部・都市整備部・教育委員会】
(4)公共交通利便性向上プロジェクト(黒田副市長担当)
・新交通システム(LRTほか)導入検討
・長野電鉄屋代線廃止に伴う諸課題検討
・長野以北並行在来線問題
・公共交通の在り方検討
LRT(次世代型路面電車システム:Light Rail
Transit)をはじめとする新交通システムの本市への導入可
能性については、既に長野市交通対策審議会の専門部会に諮るとと
もに、プロジェクトにおいても庁内検討を進めています。
また、長野電鉄屋代線の跡地については、地元のご要望を伺いな
がら、地域の活性化に寄与する活用方法を検討していきます。
【関係部局:企画政策部・商工観光部・都市整備部・環境部】
(5)中山間地域活性化推進プロジェクト(樋口副市長担当)
市域の4分の3を占める中山間地域の活性化については、
2010(平成22)年度に「やまざと振興計画」を策定し、関係
各課においてさまざまな施策を展開しています。この計画に定めら
れている各施策の実施による有効性を高め、より大きな成果を挙げ
るためには、部局間の連携が重要であると考えています。
まずは、各部局で実施している各種サービス事業を生活支援、地
域活性化などの分野ごとに再度洗い出し、部局間連携を強化するこ
とにより無駄を省き、サービスの質を高められないかを検討したい
と考えています。中山間地域にお住まいの方が安心して生活できる
よう、さまざまなサービスがよりニーズに合った分かりやすい仕組
みとなるよう努めていきます。
【関係部局:地域振興部・保健福祉部・商工観光部・農林部・消
防局・企画政策部(公共交通)】
(6)冬季オリンピック友好都市交流検討プロジェクト(黒田副市
長担当)
・姉妹都市・友好都市交流関係の再確認
・韓国・平昌(ピョンチャン)との友好都市交流の検討
平昌冬季オリンピックが開催される2018(平成30)年は、
長野オリンピック開催20周年の節目の年に当たります。平昌オリ
ンピックの開催決定以降、長野市には関係者の視察が続いており、
冬季オリンピックの開催経験に基づいたアドバイスと施設活用とい
うソフト・ハードの両面から平昌への何らかの協力ができないか、
またこれを機とした両市の友好交流の可能性についても検討します。
【関係部局:企画政策部・教育委員会・商工観光部】
また、これらのプロジェクト以外でも、積極的に取り組むべき重
要事業があります。
○長野県との調整を要する事業(黒田副市長担当)
・長野県短期大学の4年制移行と市の対応
・長野以北並行在来線に係るしなの鉄道株式会社との調整
・浅川ダム建設および内水対策問題
これらは、主に長野県の事業であり、また、JRやしなの鉄道の
事業ですが、長野市にとっても重要課題ですので、長野県との太い
パイプがある黒田副市長が担当し、長野県職員として培った経験・
人脈をフルに生かし、組織の機動性を高め、しっかり取り組んでい
きたいと考えています。
○8つの大規模プロジェクト事業(樋口副市長担当)
市役所第一庁舎・新市民会館建設事業や小・中学校耐震化事業な
どの8つの大規模プロジェクト事業については、方向性は決まって
いますので、樋口副市長を中心に、担当部局がしっかり取り組んで
いきます。
○その他:今後、確かな道筋を付けるべき政策課題として、いくつ
かの課題が挙げられますが、その主な課題の担当も決めてあります。
・ながのシティプロモーション事業の具体化(黒田副市長)
・再生可能エネルギー普及推進などのエネルギー政策(黒田副市長)
・善光寺表参道観光キャンペーン計画の策定(樋口副市長)
・次世代エネルギーパーク整備事業(樋口副市長)
・「いいとき構想」の推進(飯綱・戸隠・鬼無里)(樋口副市長)
・戸隠観光施設事業会計の在り方の検討(樋口副市長)
・「ドリーム40」構想(茶臼山動物園・自然植物園の充実)実現
の方向性確認(黒田副市長)
また、全体に関わる事項として、支出が伴う案件については、財
政判断が求められることから、基本的に財政部担当の黒田副市長と
の協議を要することにします。また、2人制による弊害をなくすた
め、原則として、市長、副市長による定例会議で検討することとし
て、財政面を含め、課題の共有を図っています。
その他、行政に減価償却費の考えをどう取り入れるかなど、やら
なくてはならない仕事はまだまだたくさんあります。副市長プロジ
ェクトを効果的に展開し、より確実かつスピーディーな市政運営を
進める覚悟です。
そして、最終的には私が全ての事業に責任を持って、かじ取りを
しながら取り組んでいくことは言うまでもありません。
これまでどおり、“みんなの声が「ながの」をつくる”を基本と
し、市民の皆さんや市議会をはじめとする関係者の皆さんには、適
時的確な情報提供に努め、ご意見をお聴きしながら進めていきたい
と思っています。
2012年5月17日木曜日
「節電の夏」を前にして
先週10日、市役所では夏季の軽装「クールビズ」を10月31
日までの期間で始めました。昨年より5日早めてのスタートです。
国と県が5月1日から実施する情報はありましたが、4月27日に
中部電力からこの夏の同社管内の電力事情の説明を受けてから実施
時期を決定したこともあり、国・県より若干遅れての実施となりま
した(でも、今年の連休明けは、クールビズには寒くて困りました)。
中部電力の説明では、まず、最大電力需要を、昨年来の利用者の
節電意識の定着による抑制量を60万kW程度と見込んだ上で、
2,567万kWと想定しています。これに対して電力供給力は、
液化天然ガス(LNG)を燃料とする上越火力発電所の7月からの
一部稼働などにより、2,875万kWを見込んでいるとのことで、
他の電力会社へ100万kWの電力を融通しても、電力供給予備率
が安定供給の目安となる約8%相当になり、結果として昨年夏のよ
うな節電をお願いしなくて済みそうだとのことでした。安心しては
いけないのでしょうが、ホッとしています。
中部電力のように電力供給に比較的余力のある電力会社がある一
方、関西電力など原発依存度の高かった電力会社などは大変厳しい
状況です。5月14日、政府は今夏の電力需給対策について、北海
道、関西、四国、九州電力管内で計画停電を準備する方針を表明し、
また、関西電力管内では、企業の節電を法律で義務付ける「電力使
用制限令」の検討に入りました。余力のある電力会社管内でも、企
業活動や生活に無理のない範囲で節電に協力し、可能な限り電力を
融通し合い、日本経済や国民の生活が停滞することがないよう、国
を挙げての対応が重要だと考えています。
長野県の電力は、今日に至るまで南の東海地方から信濃幹線とい
う太い送電線で送られてくる電力に頼っていますが、もしもの場合
を考えて、北からも長野県へ電力を供給できるようにする必要があ
るということで、「上越に火力発電所を造りたい」との話があった
のは、私が長野商工会議所の副会頭を務めていた20年ぐらい前の
ことだったように記憶しています。上越火力発電所の全面稼働は
2014(平成26)年とのことですが、長期の計画を立てて取り
組んできた中部電力の慧眼(けいがん)に敬服すると同時に、一つ
の発電所を造るのには、大変長い時間を要し、長期的なビジョンが
無くては語れないものだということを考えさせられました。
5月5日、42年ぶりに国内にある原発の全てが停止しました。
福島第一原発の事故原因の究明が遅々として進まず、安全性の担保
もないため、なかなか国民の信頼回復ができませんし、また、国の
方針が確定しないせいか、原発がある自治体は、原発の必要性と危
険性を訴える世論のはざまにあって大変苦労されています。原発関
連の仕事に従事している方の雇用や原発に係る交付金の減少なども
自治体にとっては大きな問題です。
原発停止による電力不足に対応する火力発電所の再稼働も、電力
会社にとって燃料費の負担が重く、排出される二酸化炭素の量も当
然増えることになり、国の地球温暖化防止政策に矛盾してきます。
長野県には、原発はありませんので、コメントすることは失礼だ
と思っています。ただ、人ごとと傍観することは卑怯(ひきょう)
だとも感じています。原発を持たない自治体としては、再生可能エ
ネルギーによる発電の普及に向けた取り組みや節電以外に、電力不
足に協力する方法はないのでしょうか。電力不足が社会にどんな影
響を与えるのか心配です。
ここにきて、新たなエネルギー政策に関する国の方針がようやく
見えてきた感があります。報道によりますと、まず、再生可能エネ
ルギー普及を促す「固定価格買い取り制度」を検討する経済産業省
の委員会において、電力の買い取り価格が、太陽光発電によるもの
が1kW時当たり42円、大規模な風力発電によるものが23.1
円などと、おおむね民間発電事業者の要望に近い高めの水準で決定
されました。これにより、新規エネルギー事業者の積極的な参入が
期待でき、電力市場の自由化が加速することは歓迎すべきでしょう
が、その一方で、火力や原子力による電力会社の平均発電単価約6
円と比較すると、太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電力
の価格は格段に高く、その差額が電気料金に上乗せされ、私たち使
用者の負担が大きくなることが懸念されています。経済産業省の試
算では、上乗せ額は標準的な家庭で月70~100円程度になると
のことです(ずっとこの程度の上乗せ額であるならば、私の予測よ
りかなり小額です)。
その他、次のような課題もあるそうです。まず、新たに送配電施
設を整備しようとすると巨額の設備投資が必要になるため、新規事
業者は発電した電力を電力会社が所有する送配電施設を借用して送
電することになり、それには電力会社に高い使用料を払うことにな
ります。また、太陽光発電や風力発電は天候によって発電量が左右
されるため、蓄電設備が必要になったり、電力が不足した場合、電
力会社から不足分の電力を通常より数倍高い料金で買うことになっ
たりするそうです。また、小水力発電に取り組もうとする場合は、
河川使用の許可や水利権の交渉などの手続きにかなりの時間を要す
るようです。
課題はたくさんありますが、再生可能エネルギー普及に向けた具
体的な動きも各地で出てきています。長野県についていえば、県内
最大で、国内でも有数の規模となるメガソーラー(出力が1MW
(メガワット、1MW=1,000kW)程度以上の大規模太陽光
発電所)が富士見町の県営富士見高原産業団地の未分譲地約18h
aに計画されるとのことです。想定する発電規模は約2,700世
帯分の年間電気使用量を賄う9MWで、県内で既に稼働している飯
田市の「メガソーラーいいだ」(1MW)や、松本市の飲料メーカ
ーが同社敷地内で計画するメガソーラー(1.5MW)を上回る大
規模施設です。阿部知事も、本年度を「信州自然エネルギー元年」
と位置付け、再生可能エネルギーの普及・拡大に積極的に取り組ん
でおられます。
長野市では、日照時間やまとまった土地の確保などの立地条件か
ら、現段階ではこうしたメガソーラー施設の具体的な計画は進んで
いませんが、1999(平成11)年度から家庭や企業に補助金を
出して、建物の屋根や屋上を利用した太陽光発電システムの普及を
促進しています。昨年度の申請件数は、過去最高の1,204件で、
補助金額は1億5千万円を超えています。設備規模はこれまでの累
計で約18MWに上り、これは、県が富士見町に計画するメガソー
ラー2カ所分に相当するものです。
また、商店街街路灯や各地区の防犯灯のLED(発光ダイオード)
化などへの省エネ改修補助事業も積極的に進めています。商店街街
路灯についていえば、昨年度の新設および改修件数は31件で、補
助金額は約1億2千万円になります。
東日本大震災以降、エネルギー問題に関するさまざまな情報を見
聞きしますが、5月9日の新聞に、政府がこれまで推進してきた原
発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理事業を、コ
スト面や技術面から見直すとの記事がありました。翌10日には、
イギリスの科学雑誌に核燃料の再処理を中止し、使用済み核燃料は
全て地中廃棄することが適当との意見が掲載されました。使用済み
核燃料の再処理工場がある青森県六ヶ所村への影響などを考えると、
これも難しい問題になるなと感じています。
いずれにしても、地球環境に負荷の少ない再生可能エネルギーで
発電した電力のシェアが拡大することは喜ばしいことです。しかし、
普及には、まだまだ時間がかかるでしょう。経済の発展、環境問題、
安全・安心な生活など、さまざまな角度から議論と検討を重ねる必
要がある人類の大きな課題です。
現代社会は、ずいぶんと便利になりました。昔に逆戻りすること
は難しいのかもしれませんが、私の若いころを振り返ってみると、
24時間営業の店も、あふれるような自動販売機もありませんでし
た。しかし、そんなに困った記憶はありません。社会が便利になり
過ぎたがために、例えば、隣近所でのちょっとした融通や困った時
の助け合いが減ってきて、結果として地域コミュニティーが希薄に
なってきたという一面もあるのではないでしょうか。私たち一人一
人が、環境に優しい生活を実践することが、地域コミュニティーの
復活にもつながるのかもしれません。
今、エネルギー問題を通して、もう一度、本当の豊かさとは何か
を考え直す時期に来ているような気がします。
2012年5月10日木曜日
公務をこなしながらのゴールデンウィーク
4月24日に中国・石家庄市から帰国して、ちょっと疲れていま
したが、休む間もなく翌日からは通常モードに頭も体も切り替えて、
頑張って公務をこなしました。連休に入っても、各地でイベントな
どが開催されましたので、休みはほとんど取れず、市内を駆け回り
ました。私的なことも含めて、そんな連休を振り返りたいと思いま
す。
連休初日の4月28日、南長野運動公園で「長野市緑花まつり」
を行いました。1983(昭和58)年から毎年開催していて、多
くの皆さんに親しまれているイベントです。長野市は、緑に親しむ
文化や人を育む「緑育」を基本方針に、緑化事業を推進しています。
これまでのかじとり通信でも紹介していますが、NHK「趣味の園
芸」などの講師としておなじみの矢澤秀成(やざわ ひでなる)さ
んを、昨年設立した「ながの緑育協会」の職員にお迎えし、以前よ
り具体的な取り組みを実施しています。
小学生対象の「育種寺子屋」は、ペチュニアという花を交配させ
て、種からオリジナルの花を育てるというもので、子どもたちは楽
しみながら花に触れ、花を育てることの大切さを学んでいます。昨
年、私も挑戦し、世界に一つのオリジナルの花を咲かせることがで
きました。
また、4月30日には、矢澤さんを校長とする「ながの花と緑そ
して人を育てる学校」の「ながの緑育マイスター養成講座」がスタ
ートしました。定員60人のところ、4倍の240人もの申し込み
があり、たいへんな人気です。定員オーバーですが、皆さんのやる
気を大切にしようと、全員の受け入れを決定しました。この他にも、
今後は多種多様な講座や植物の展示会などを展開していく予定です。
緑花まつりの後、ライオンズクラブ長野県大会に出席しました。
ライオンズクラブは、社会奉仕を目的に活動している団体ですが、
長野県中から千人を超えるライオン(会員をライオンと呼びます)
が集まり、盛大な会合でした。東日本大震災後、人と人との絆の大
切さを痛感していますが、ライオンズクラブの活動は、まさに助け
合いの精神に立つものです。長野市においても、地域コミュニティ
ー再生のために都市内分権を推進していますが、この大会を通じて、
あらためて地域の絆や小さな助け合いを軸とした思いやりのある社
会の構築が必要であると感じました。
4月29日、「真田街道推進機構」の総会に出席するため、上田
市に行きました。この組織は、上田市を中心に真田街道沿線の群馬
県沼田市や嬬恋村など12市町村で構成されていて、真田氏にゆか
りのある全国の市町村が一堂に会する真田サミットとは異なるもの
です。上田市と群馬県側の市町村が主体であったため、これまで長
野市は加盟していませんでした。このたび同機構から、松代のある
長野市に加盟要請を頂き、長野市としてもぜひ応援しようというこ
とで、参加することにしました。
これまでの同機構は、基本的に戦国の勇将真田幸村をゆかりとす
る市町村が集まったもので、幸村の兄、信之とは一線を画していた
ようですが、この際大きな組織にして、真田幸村を主人公とした真
田三代を描くNHK大河ドラマを実現させようと活動しています。
真田六文銭にちなんで、66万6,666人を目標とした大規模な
署名活動も行い、目標を大きく上回る78万人を超える署名が集ま
り、このたびNHKに提出されました。
4月30日は久しぶりの休みで、志賀高原横手山にスキーに出掛
けました。天気が良く、絶好のスキー日和だったのですが、なにせ
この時期ですから、雪が重くて私の実力では快適に滑るというわけ
にはいかず、疲れました。
ここで、長野市のスキー場の今季営業成績について概略を説明し
ますと、戸隠と飯綱高原スキー場の利用者数は、昨季より
6,054人(4.3%)減の13万3,798人で、特に戸隠ス
キー場は6.9%減の9万3,530人となり、初めて10万人を
割ってしまいました。シーズン初めに十分な積雪がなかったことが
響いたようです。スキー・スノーボード人口が減る中、利用者増を
図ることはとても難しいのですが、長野市の冬の重要な観光資源で
すから、さらなる取り組みを考えなければなりません。
5月1日、連合長野系の長野県中央メーデーに来賓として出席し
ました。会場となった城山公園には、約4,200人が集まったそ
うですが、ステージから見ても公園は参加者でほぼいっぱいに埋め
尽くされ、例年より多くの人が参加していると感じました。長引く
景気の低迷により依然として雇用環境は改善しておらず、労働者に
とっては大変厳しい状況が続いていますが、労働者の団結力、そし
て行政も一体となって取り組むことが大切だと思いました。
5月3日、「信州百名山」の一つ、中条地区にある虫倉山の開山
祭に行きました。前夜からの強い雨は朝8時の開山祭までには上が
りましたが、雨の影響もあってか、例年だと300人は集まるとい
う登山者は30人ほどでした。23回を数える開山祭のうち、雨だ
ったのはたったの2回ぐらいで、ほとんどは天気に恵まれていたと
のことです。地元関係者の皆さんが早朝からテントを張るなどご苦
労されて準備したことも考えると、今年はちょっと残念でした。一
年間無事故で、多くの人に虫倉山登山を楽しんでいただきたいと思
います。
同時開催されている「となりの村の道めぐり」の3つのイベント
会場にも立ち寄りました。地元の方の手作りのそばやうどん、採れ
たての山菜なども販売されていて、アットホームな感じのイベント
でした。会場の一つでは、北アルプスが一望でき、また、黄色い菜
の花が咲いて素晴らしい景観でしたし、さらに、別の会場では、恒
例になった古い発動機の競演も楽しみました。毎年この時期に開催
されていますので、皆さんもぜひお出掛けください。
その後、市街地に戻り、「善光寺花回廊-ながの花フェスタ
2012」の開会式に出席しました。長野市中央通り活性化連絡協
議会など地元商店会の皆さんが中心となり2002(平成14)年
に始まった善光寺花回廊は、毎回趣向が凝らされ、まちを花で埋め
尽くす、長野の春を代表するイベントに発展し、市民、そして観光
客の皆さんも毎年楽しみにしています。会場に着くと、多くのボラ
ンティアの皆さんが道路に花キャンバスを作成している最中で、た
くさんの人でにぎわっていました。先ほどの矢澤さんの緑育事業と
合わせ、長野市の緑化事業に大きく貢献しています。開会式は、4
月11日にオープンした表参道長野オリンピックメモリアルパーク
(セントラル・スクゥエア北西の中央通り沿い)で開催されました。
表参道のランドマークとなるミニ公園での開会により、中央通りで
開催される祭りにも心棒が入ったという感じで、こうしたイベント
の開催や観光客の方々などの回遊性向上も含めて、なかなか利用価
値の高い施設になるなと感じました。
私の趣味は、冬はスキー、グリーンシーズンは乗馬なのですが、
いずれも公務の合間を縫ってのつかの間の楽しみです。5月4日も、
午後の公務に間に合わせるため、午前中だけ飯綱高原で乗馬を楽し
み、昼に山から帰ってきました。午後は、長野オリンピックスタジ
アムで今シーズン初となる信濃グランセローズ公式戦に来賓として
出席しました。この日の対戦相手は、NPB(日本プロ野球機構)
横浜DeNAベイスターズのファームでした。NPBも地域リーグ
に対し、門戸を開く一歩になるのではと感じています。
5月5日は、孫にせがまれて、今シーズン最後のスキーに野沢温
泉スキー場に行ってきました。今年は雪が多いので6月まで滑れる
とのことでしたが、私には志賀高原の時と同様、雪が重過ぎる状況
では、ちょっと無理です。
5月6日には、「地域やる気支援補助金」公開審査会が開催され
ました。この補助金は、住民自治協議会を対象とするもので、地域
にとらわれない市民公益活動団体などを対象とする「ながのまちづ
くり活動支援事業補助金」(公開審査会は既に終了)と対になって
いる補助金です。両者の相乗効果により、元気なまちを目指しても
らおうという狙いです。審査の結果、14地区の14事業が採択さ
れました。
連休最後のこの日、栃木県、茨城県などで、落雷、竜巻、突風、
降雹(ひょう)などによる大きな被害がありました。特に竜巻によ
る被害では、屋根が飛ばされたり、電柱が倒されたり・・・規模は
東日本大震災と違いますが、個人が受けた被害とすれば同じでしょ
う。本当にお気の毒です。AC長野パルセイロも栃木ウーヴァFC
とアウェーで戦いましたが、雷雨で開始時間が1時間遅れた上、前
半が終了した時点で中止になりました。
暦どおりの連休となった皆さんは、長いようで短いといった感想
を持ちながらも、思い思いの休日を楽しみ、リフレッシュされたの
ではないかと思いますが、最後の最後にこんな大きな災害が起こる
とは・・・。自然の猛威をまた見せつけられました。
2012年5月3日木曜日
お待たせしました、石家庄市訪問記です
中国河北省石家庄市と長野市が友好都市協定を締結したのは、
1981(昭和56)年4月19日です。偶然にも、その日からち
ょうど31年目の同じ日に、友好都市締結30周年記念長野市民訪
中団が、石家庄市に向け日本を旅立ちました。東日本大震災により
一時訪中を見合わせざるを得ませんでしたので、30周年に1年遅
れての訪中となりました。昨年11月に石家庄市から記念訪日団が
お越しになりましたので、その答礼の意味もありました。
訪中団は、私をはじめ、市議会議員、教育長、市職員、そして長
野市日中友好協会の会員や公募市民の皆さんからなる総勢50人の
大訪問団です。これまで5年ごとに訪問していますが、これだけ大
人数での訪問は今回が初めてです。30周年にふさわしい交流を行
い、24日に帰国しました(公募市民の皆さんは上海などを経由し
て26日に帰国しました)。
19日の午後、北京空港に無事到着した私たちを石家庄市外事弁
公室の方が出迎えてくれました。バスで北京市内のホテルまで移動
しましたが、北京の空は薄暗く、ガス(多分スモッグでしょう)が
かかっていて、晴れていたのでしょうが青空は全く見えませんでし
た。北京オリンピックの時、中国は国威を懸けて大気の清浄化に取
り組み、その結果かなり大気汚染は改善されたと言われたようです
が・・・どうだったのでしょうか。
その日の夜、訪中団全員で夕食を取りました。朝から移動、移動
の連続で、同じ訪中団とはいえ公募市民の皆さんとあいさつを交わ
すことができたのは、この時が初めてです。「やあ、あなたも来て
いたのか!」などといった感じで、本場の中華料理を囲み、仲間同
士で楽しい時間を過ごしました。実質的な結団式のような感じでし
た。
翌朝、バス2台に分乗して高速道路をひた走り、北京から約
300km離れた石家庄市へ向いました。
高速道路沿いに植えられている木は、前回25周年記念の訪問時
に比べ大きくなっていて、木々の向こうに見える畑は緑一色で、よ
く耕作されていました。このような風景が延々と続きましたが、そ
の所々に田園風景とは不釣り合いの集合住宅のような大きな建物が
建っていました(古いものも多く見掛けました)。尋ねてみると、
農民の居住用住宅とのことでした。
途中、サービスエリアでの2回の休憩をはさみ(施設は、以前に
比べてかなり奇麗になっていて、売っている商品も豊富になってい
ました)、約4時間かけて石家庄市に到着しました。石家庄市に近
づくにつれ、道路は車で混雑し、ビルも林立。中心市街地は、10
年前と比べるとすっかり近代的な都市になっていて、その差には驚
きました。人口は、1千万人を超えたとのことです。
早速この日に、「経済懇談会」が開催されました。長野市側は、
市関係者のほかに公募市民として参加いただいた市内の企業関係者
が出席しました。石家庄市側は程凱(てい がい)副市長が中心と
なり(副市長は7人いて、投資、観光などに担当が分かれているそ
うです)、企業や学校の代表者なども出席して、企業提携や進出な
どについて具体的な話ができました。過去に行った同様の会議に比
べ、さらに前進した会議だったと感じています。実を結ぶことがで
きるかどうかはこれからが勝負でしょう。
それにしても、異言語で交渉するこうした会議の時に感じるのは、
微妙な言葉のニュアンスを通訳して相手に伝えるのは難しいだろう
なあということです。どのように伝わっているのか、通訳の方はか
なり大変だったと思います。
予定ではその後、石家庄市長への表敬訪問が予定されていました
が、香港出張が入り急遽(きゅうきょ)キャンセルとなり、程凱副
市長との会見となりました。これまでの両市の交流を祝福するとと
もに、相互交流の大切さを確認し合い、さらなる交流の推進に向け
意見交換を行いました。また、この席で、3月市議会でも答弁させ
ていただいたとおり、核兵器のない平和な世界の実現を目指す「平
和市長会議」(長野市は2009(平成21)年に加盟しました)
への石家庄市の加盟を要望しました。ちなみに中国では、北京、大
連など7市が加盟しています。
その日の夜、友好都市締結30周年記念式典が行われました。記
念式典は、すごい仕掛けが用意されていて、ステージの壁には長野
市と石家庄市の交流を表すモチーフが描かれた豪華なバックボード
があり(結構お金が掛かっているなあと思いました)、ステージ前
には30人ぐらい座れる大きな円形のテーブルが置かれていて、石
家庄市の幹部と長野市側では私や市議会議員、教育長がぐるりとテ
ーブルを囲みました。また、石家庄市芸術専門学校の生徒の皆さん
による京劇や二胡(にこ)の演奏、合唱など盛りだくさんの出し物
で「熱烈歓迎」のおもてなしを頂きました。長野市側からは、長野
市日中友好協会の皆さんが日本の歌を披露し(私も舞台に引っ張り
出されました)、公募市民として参加した中野清史市議会議員がフ
ルートを演奏して拍手喝采を浴び、獅子舞の笛を吹かれた方もいる
など、市民同士の交流が大いに盛り上がりました。
余談ですが、強い酒を「干杯(カンペイ)」の発声で飲み干す中
国特有のしきたりには、前回の思い出もあり、戦々恐々としていた
のですが、今回はそうしたお酒の強要は少なく、こうした面でも中
国は変わってきているなあと感じました。
石家庄市滞在2日目に、両市の「観光PR活動」を行い、石家庄
市からは、観光事業関係者や観光専門学校の学生、一般市民約80
人が参加されました。訪中団には、ながの観光コンベンションビュ
ーローと長野市開発公社も参加していて、DVDなどを使用して長
野市の観光について説明しました。DVDはこの日に合わせて制作
したとのことでしたが、内容は充実していて宣伝効果はなかなかの
ものだったと思います。
また、長野市の郷土料理を紹介する企画として「おやきの試食」
が行われました。公募市民として参加いただいた鬼無里いろは堂の
伊藤夫妻の出番です。中国では、福島第一原子力発電所事故の影響
で、長野県の食材が輸入停止措置を受けているため、現地の材料し
か使えないという、伊藤夫妻にとっては不安を抱えての調理だった
と思います。しかし、市日中友好協会の女性の皆さんもおやき作り
を手伝い、無事におやきが出来上がりました。イベント終了後、会
場の出口で石家庄市側の出席者に配りましたが、作った200個の
おやきはあっという間に品切れとなり、おいしいと大好評でした。
私も食べたかったのですが・・・一つも私の口には入りませんでし
た。
その後、石家庄市の歴史や将来の都市計画を見ることができる
「企画館」に案内いただきました。中でも、2020年の同市の姿
のジオラマにはびっくりしました。遠大なまちづくりが計画されて
いて、近隣の地域を吸収し市域を拡大するとともに、現在の市の中
心部にある市役所を郊外に移転し、そこを政治・文化の拠点とし、
中心部は商業・経済圏にするというものです。道路や河川、鉄道、
体育施設、マンションなどの大規模な建設計画が予定されています。
財政が豊かでないとできない話で、どんな財政構造なのかじっくり
話を聞きたい、8年後の石家庄市をぜひ見てみたいと思いました。
長野市の市民会館や市役所庁舎、サッカースタジアムなどの建設計
画と比較すれば・・・その規模の違いに圧倒され、今回の訪問で一
番ショックを受けました。まさに、カルチャーショックです。
夕方、長野市の議会に当たる「石家庄市人民代表大会常務委員会」
(人代)の楊智輝(よう ちき)代理主任と長野市議会祢津栄喜議
長の会見が行われました。長野市議会からは、岡田荘史市議会日中
友好議員連盟会長、小林治晴議員、野本靖議員、小林義和議員、田
中清隆議員、望月義寿議員も出席しました。また、引き続き行われ
た人代主催の晩さん会で、長きにわたる両市交流の尊さを話された
のが長野市日中友好協会の山根敏郎会長です。会長と中国との交流
が60年にわたるとの話もお聞きし、感服した次第です。
滞在3日目に、王大虎(おう たいこ)常務副市長と王大軍(お
う たいぐん)副市長主催の夕食会に出席しました。王大軍副市長
は、昨年11月に友好都市締結30周年記念訪日団の団長として長
野市にお越しになっていますので、多くの方が再会を喜び、楽しそ
うに歓談していました。
滞在4日目の最終日には、堀内征治教育長を中心に石家庄市外国
語学校を視察しました。毎年長野市が派遣する中学生がお世話にな
っている学校です。中国全土から優秀な子どもを集め、幼稚園から
小学校、中学校、高校までの一貫教育を行っているエリート校です。
スポーツでは卓球が必須科目で、大きな卓球場には卓球台が50台
あったそうです。観客席付きの立派な陸上競技場がグラウンドで、
その他、音楽、芸術などの専門教室もあり、教師は世界中から集め
ているとの話でした。
徹底的なエリート教育で、大学入学統一試験を受ければ、どこか
の大学には入学できるそうですが、生徒は北京や上海の超エリート
大学を目指して必死に勉強するのだそうです。6月がいよいよ大学
受験期ということもあり、生徒は真剣になっているとのことでした。
確かに素晴らしいと思いましたが、でも何か違和感も覚えました。
教育長は、一貫教育のメリット・デメリット、教員の資質向上な
どの意見交換のほか、障害のある子どもの教育環境についての長野
市への視察や、教育面での交流事業のさらなる拡大などといった石
家庄市側の具体的な要望についても情報交換をしたようです。
こうして、3泊4日の石家庄市の訪問はたいへん充実したものと
なりました。とりわけ、石家庄市外事弁公室の皆さんのご苦労は並
大抵のものではなかったと思います。感謝の気持ちと惜別の思いを
抱きながら石家庄市を後にし、再び北京に戻りました。
帰国当日の朝は、午前4時に起床し、午前5時20分にホテルを
出発して、バスで北京空港へ向かいました。あらためて、空港の大
きさに驚き、さすがと思いましたが、搭乗ゲートまで歩く距離が半
端ではなく長いこと、喫煙所の数が少ないこと(愛煙家の私には、
これが一番つらい)にはいささか閉口してしまいました。おまけに、
雨により視界不良との理由で、飛行機の離陸が約2時間30分も遅
れるなど、疲れ気味の私にはかなりこたえました。
こうして訪中団は、その任務を終え、全員無事帰国しました。友
好都市交流を将来にわたり継続することの大切さを実感するととも
に、これまでの交流の中心であった学生交流に加え、今後は今回企
画した経済、観光分野での交流をいっそう推進したいと思っていま
す。
そして今回の訪問は、住み慣れた郷土・長野市をあらためて外か
ら見つめなおす良い機会となりました。長野市の美しさ、清らかさ、
そして自然の豊かさを再認識するとともに、これこそ長野の「宝物」
だと確信することができました。これからもっともっと長野の魅力
を、国内はもとより世界に向けても発信していきたいと感じていま
す。