年末の総選挙で新しい内閣が生まれました。ある世論調査による
と「国民は何を望んでいるか」との設問に対する最も多い回答は
「景気回復」ということだそうです。
そこで、安倍内閣が超金融緩和に踏み切るとの予測があり、それ
を先読みして、選挙後の年末から「円」が安くなり、株価が値上が
りしています。それはそれで望ましい動きだと考えていますが・・
・。
私は経済のプロではありませんから予測をするつもりはありませ
んが、超金融緩和だけで、果たして本格的に景気は良くなるのでし
ょうか・・・どうもよく分かりません。右肩上がりの景気回復はあ
り得ない、現在が普通の状態と考え対策を立てるべきだと以前から
識者が随分おっしゃっていました。
現在は「需要不足」だという説には、素人の私もうなずいてしま
うところがあります。すなわち金融緩和だけでは景気が良くならな
い。「需要を増やす」ことが大切で、そのための「アイデア」が欲
しいということなのです。しかし、需要を増やすということは、簡
単ではなさそうです。景気が良くなるためには、お金を市中に、そ
して国中に回すことが重要であると考えています。
私たちの周りを見回しても、欲しいものがないわけではありませ
んが、必要なものはまずまずそろっているのではないでしょうか。
社会を動かすほどの需要に結び付くものは、ないような気がします。
そこで私の素人アイデアですが、大型の需要喚起策として、「中
山間地域の土地を、売りたい人から国が全て買い上げる」というの
はいかがでしょうか。
使い道がなくて困っている。買い手がいないため、売りたいけれ
ど売れない。耕したいけれど人手がない・・・結局耕作放棄するよ
り仕方がない。そんな土地が全国至るところにあるように感じてい
ます。利用度が低いこうした土地を、まずは国が買い取るのです。
現段階では、それらの土地の固定資産税は安価(実質0円に近い
額です)になっているわけですから、市町村にとっては歳入面での
問題は小さい。また、水資源目的などで海外投資家が買うのではな
いかという危険性が指摘されていますが、このことへの防御策にも
なります。
ただ、土地を買収しやすくするためには、固定資産税をかなり高
く設定する必要がありそうです。「税金が少額なら持っていても同
じ」ということでは、国の買収に応じる人は少ないでしょう。
地主がその土地を使いたくなったら、利用目的をはっきりさせて、
安い価格で国から借りるか買えばいい。公共団体や企業も同じです。
「そんなことを言っても、土地の買収資金は全て地主に行くだけ
で、需要喚起にはならない」と言われそうですが、それでも良いで
はないですか・・・その地主さんは、かつては「山持ちは金持ちの
代名詞」だったはずなのに、国の政策のために財産を失ったような
ものですから、その補償と考えればどうでしょう。利用策を見いだ
すことがなかなか難しい中山間地域の土地を活用する方法として有
効だと思いますし、あえて言えば、そのお金はどこかで使われるは
ずですから、究極のバラマキ政策ですが、間違いなく一定の需要は
喚起できるはずです。
この方法には、もう一つ大きなメリットがあります。誰のものか
分からなくなっている土地の所有者をはっきりさせることです。税
額が上がることで所有者の意識は変わるでしょうし、税収も上がり
ます。持っていても税金を取られるだけなら、お金に変えようとい
う思いになってもらえるかもしれません。国が全部買い取ってしま
えば、相当な労力と経費の掛かる地籍調査もやる必要がなくなるで
しょうし、土地の境界問題も全て解決します。安い土地ですから、
比較的スムーズにいくのではないでしょうか。航空写真1枚あれば、
そこに境界線を引いて・・・こうしたやり方でもできるかもしれま
せん。
社会主義的発想ですかねえ・・・でも、中国やソビエトの建国の
時代、革命によって財産を強制的に取り上げられたことを考えれば、
少なくとも売りたい人から土地を買うということは、悪い話ではな
いでしょう。
土地の所有権については、私は時々こんな話を例に引いています。
飯綱高原にある名門ゴルフ場「長野カントリークラブ」の土地のほ
とんどは長野市の所有です。長野カントリークラブは毎年数千万円
の借地料を長野市に払っているわけで、長野市にとっては大変あり
がたい収入です。長野カントリークラブが設立された1965(昭
和40)年当時、土地を貸すことについては特定の企業支援(中で
もゴルフというブルジョアのスポーツ)ということで大反対する人
たちもいたため、当時の夏目忠雄市長は決断するのに、かなりご苦
労されたようですが、そのおかげで長野市民は今大きな恩恵を受け
ているわけです。ちなみに、この土地は、1954(昭和29)年
に長野市が芋井村を編入するとき、芋井村が財産区を設立しないで
合併したため、長野市の所有になったものです(この土地は市有財
産ですが、かなり前に所有したため、評価額は算定されていません
)。要は、土地については使用権が大切ですよね。
長野市の中山間地域は、市域の約4分の3を占めています。それ
らの土地についての固定資産税の税収は多いものではありませんし、
自分が所有者であることすら忘れている地主もいます。また、相続
登記をすることを諦めている人もいると思われます。土地は、3代
も相続登記をしないと、権利者が累積的に増えて、誰のものだか分
からない状態になることもある、と聞きます。以前、公共事業で土
地を購入する際に権利者の特定が必要で、権利関係をたどっていっ
たらブラジルに住んでいたということを、当時の担当部長から聞い
たことがあります。
大都市ではこのようなことは少ないでしょうが、中山間地域は全
体として公共も民間も投資が不足しているために、そして人口減の
時代であるが故に、こういうことになっているのだと思います。何
らかの投資を行うことは、近い将来にわたり難しいでしょう。とす
れば、究極のバラマキ政策ではありますが、まずは国が土地を買い
取る。そして、いつの日か公共事業を中心に大きな投資が行われる、
例えば所有権が国に一元化している山を一つ開発して・・・そんな
時代が来れば、究極の需要喚起策になるのではないか・・・と考え
ています。
この政策は、地方自治体ではできません。なぜなら、地方自治体
ではお札の印刷機を持っていませんから、そんなことをしたら、い
っぺんに破産です。国にやってもらわなければ仕方ないのです・・
・。
日本銀行の国債買い受けに問題があるなら、政府保証債権を無限
に発行して(発行できるかどうかは分かりませんが)、購入したら
いい。売りたい土地はほとんど無限にあるわけですし、固定資産税
も上がるとなれば、需要はいくらでも出てきます。計算したことは
ないので分かりませんが、今の時価で買うなら国全体で10兆円も
あればいいのかなあと考えています。
複式簿記の発想からすれば、借金をしても土地(資産)が増える
わけですから、別に国が赤字になるわけではありません。土地を売
った人も、土地を取られたわけではなく、現金化しただけ。土地を
使おうと思えば安く借りられるわけですから、別に痛くもかゆくも
ない・・・一石二鳥の政策ではないかなあとひそかに感じています。
この話を私の周辺の人に酒を飲みながら話したら・・・意外に評
判が良いのです。最初はそんなむちゃくちゃな話は・・・という顔
をされるのですが、案外面白いという人が多いのです。
究極のバラマキですが、何の目的もなく、あなたに補助金を
100万円あげるというわけにはいかないのが行政です。誰かに補
助する、支援するためには、何か正当な目的が必要ですし、行政が
支給する各種手当はそれぞれ目的があって支給しています。ですか
ら、中山間地域の土地の有効活用が見込まれ、国家のためにもなる
であろうとなれば、有効な手段ではないかと考えたのです。
このテーマについては、もう少しじっくり考えて精査し、論理を
組み立てたい。そして、国に提言したいと考えています。