2002年8月1日木曜日

オリンピック・パラリンピックの資産(その1)


 1998年の冬に「愛と参加」「ふれあいと感動」をテーマとし
た、あのオリンピック・パラリンピック冬季競技大会が大会史上最
多の国と地域の参加のもと大成功に終了しました。今から思うと何
か夢の中で過ごしていたみたいで、その招致活動からの長い準備活
動を考えると、あっけないようでもあり、また、努力が報われたこ
とへの満足感に私は浸っていたように思います。

 その後、IOCのスキャンダルや招致委員会の帳簿問題などが出
て、若干オリンピックの成功に水を差された感もありましたけれど、
私達に有形・無形の資産を残してくれた喜び、そして、その資産は
長野市が大きく変わるための原動力になったと、今でも私は思って
います。丸四年を過ぎて、次のソルトレークオリンピックが終った
今、長野オリンピックが残してくれた資産を再確認することは、将
来の長野にとって意義あることではないでしょうか。

 これら有形・無形の資産を大きく分類するならば、4つに分類で
きるかと思いますが、これらについては、簡単に説明するだけでも
内容が多種多様になりますので、二週にわたり配信してまいりたい
と思います。
 今週号ではまず、オリンピック・パラリンピックによりもたらさ
れた無形の資産について書かせていただきます。

 一つ目の資産は、長野の人がオリンピックを契機につちかったお
もてなしの心、すなわちホスピタリティーやボランティア精神の醸
成ではないでしょうか。両大会の開催に先立ちましては、市内はも
とより全国から大勢のボランティアの申し込みがあり、輸送や会場
整備、警備の場面など、この方々の協力なしにはこれらの大会が、
これほど立派に行えるとは思えないほど充実したものでありました。
特に冬季競技ということもあり、大変厳しい環境の中で頑張ってい
ただいた皆様への感謝の気持ちを忘れることはできません。
 さらに、オリンピック後に結成されたボランティア団体の数は大
変なもので、スポーツやコンベンション、まちづくりなどで現在も
積極的に活動を進めております。また、商店街の皆さんの応対振り
はかなり変わったように思いますし、タクシーの運転手さんたちの
応答ぶりは、以前と比べ凄く良くなったと思うのは、私だけでしょ
うか。
 全国大会や国際大会が数多く開かれていますが、コンベンション
ビューローが行ったアンケート結果によりますと、長野市を訪問し
たお客様には概ね良い印象を持っていただいているようですし、そ
れらの大会等の運営はボランティアの協力なくては実現できないと
言われるほど、ボランティアの皆さんが一生懸命に目立たない場所
で頑張って下さっています。派手にパフォーマンスしたい人が多い
なかで、本当に頭が下がります。

 二番目の資産は、国際化の流れでしょう。外国人に対する違和感
はほとんどなくなったのではないでしょうか。長野にも外国人の方
がたくさん住んでいます。観光で訪れる人も増えているように思い
ます。海外へ出て活躍する人も多くなっているように思います。
 特にこの国際化にあたっては、市内の全小中学校が取り組んだ一
校一国運動の成果が大きかったと思います。一つの学校が一つの国
を応援し、その文化や人々とのふれあいを持てたことは、大規模な
国際大会が行われたこと故に可能となったものでありますし、こど
も達にとって最高の思い出になったのではないでしょうか。
 一校一国運動を契機につちかわれた国際感覚は、将来国際社会に
飛躍しようとする子どもたちに必ずや心の糧になるはずです。この
交流事業は、IOCの公式プログラムに採用され、今後オリンピッ
クが開催されるたびに、この運動が行われることになります。現に
シドニーやソルトレークでは実施されていました。また、教育環境
が遅れている国や地域に教材やスポーツ用具などの支援をするとと
もに、貧困と紛糾に苦しむ子どもたちに教育支援を行うことを目的
に、長野オリンピック国際協力募金(長野オリンピック・ハーモニ
ー)を設立し、スポーツを通じ平和の大切さを世界に発信すること
もできました。

 余談ではありますが、私の友達に深井克純さんという方がいますが、
彼は経営者協会の職員として、NAOCでオリンピック成功に尽力
した後、国際協力事業団(JAICA)に応募してパキスタンに滞
在し、昨年9月11日のあのテロ事件後は、あのアフガニスタンに
駐在し復興のために必死に頑張っています。ちなみに彼の奥さんは
同じJAICAから派遣されて、ケニヤ駐在だそうです。壮大な国
際別居ですね。そんな国際人が現れてきているのです。

 これ以外にもまだまだ無形の資産はあると思います。世界のトッ
プ選手が繰り広げた最高の競技は、私たちにいつまでも忘れること
のできない感動を与えてくれました。これら、人それぞれの心に残
っているもの全てが無形の資産なのではないでしょうか。 

 来週号では、有形の資産と景気の低迷等に伴う影の部分について
書いてみたいと思います。