2002年10月31日木曜日

ボランティアについて


 ボランティアの活動が、私達の社会の中で大変重要であるという
ことが言われています。確かにその通りですが、理由は次の三つに
整理できるかと思います。

1.行政が全てをやる時代は終わったといえるのでしょう。バブル
時代、行政は仕事を増やし、職員を増やし、市民の要望に一生懸命
応えてきました。しかし、少子・高齢化の進展、人口減少の時代を
迎え、経済成長が望めず、税収が減る傾向がはっきりしてきて、行
政は厳しい財政運営を強いられる中で、市民要望を全て実現するこ
とは困難になってしまいました。

2.市民社会、市民参加型社会が出現してきました。即ち「自らの
社会は自らの手でつくろう」という市民型発想、自立型社会を目指
す運動が大きく広がりはじめました。行政側からすれば、その大き
なパワーを頼りにしたいということで、市民とのパートナーシップ
を行政運営の中心に据えようと考えはじめました。

3.ボランティアが組織として認められはじめたことも重要です。
個人ベースの行動だけでは、どうしても継続体制とか責任体制が曖
昧になることは否定できません。そこで、個人の自由な発想をベー
スにしながらも社会に対し責任と継続性をもった社会貢献活動をす
る組織として、いわゆるNPOが法的存在として出現してきました。
ボランティアが社会の構成要素として認知されてきたといって良い
のでしょう。

 行政とすれば、そういう風潮を盛り上げ、ボランティアの方々に
もっと活躍してほしいと願っているのですが、いろいろネックはある
ようです。長野市の調査によると、ボランティアの皆さんが感じる
悩みは次の3点ということです。

1.資金問題
2.活動拠点
3.人材確保

 資金問題については、行政がボランティア団体やNPO等に事業
を委託することが重要な要素でしょう。行政からある仕事を受託し
てその報酬を受け取ることで、安定した活動が可能になると考えら
れます。ボランティア活動を維持・推進するには、これが最も重要
でしょう。介護保険がはじまって、この事業分野は大きく広がりま
した。行政のサービスではまかないきれない、というよりボランテ
ィアのきめ細かな配慮は、行政には真似の出来ないものと思います。

 行政からだけの受託ではなく、民間同士でも可能な分野(例えば
企業から市場調査や企画提案、福祉分野の音楽療法やアニマルセラ
ピー、青少年の健全育成やスポーツクラブ等々)もあるのではない
でしょうか。社会構造やシステムの違い、あるいはNPOの歴史の
違いがありますが、欧米のNPOは第二の市役所と言われるぐらい
大きな存在になっているようです。日本でもいずれ企業でも行政組
織でもない、21世紀の最も重要な組織になるかも知れません。

 資金問題で大切なことは、実費や事務費、あるいは正当な報酬を
受け取ることは間違いではないということです。事業を行い利益を
上げても良いのです、ただその利益を構成員で山分けする、あるい
は配当をすることは許されません。その組織の目的達成のために使
うことはかまわないと言うことなのでしょう。

 拠点については、現在はNPO代表者の自宅等を事務所にしてい
ることが多いようです。長野市では既に市役所の隣に本格的なボラ
ンティアセンターを設けていますが、まだ足りないと言われていま
す。そこで、今度取得した旧ダイエー長野店ビルにも、市民活動
をする方々の拠点として使っていただくフロアを設置する予定です。
ご相談いただいて、ぜひご利用ください。そして、あのビルには、
まだ余裕がありますので、みなさんからの要望が多ければ、さらに
増やすことも検討したいと考えています。たくさんのNPOの出現
を期待しています。

 人材不足、これはある意味では一番深刻なのでしょう。いずれの
組織・団体でもそうですが、創業時の人材から次の世代に活動の中
心を移すことは、なかなか難しい問題です。創業者からみれば「若
いものにはまだまだ任せられない」若い人からみれば「あんな年寄
りとは一緒にやっていられない」そんな感情があることはある意味
では当然でしょうし、後継者が現れない一つの原因でしょう。また
創業時の方々は、お互いみんなよく知っている、気心の知り尽くし
た人が集まった集団であることも、次の世代が参加することを難し
くしているのかもしれません。

 このことについては、行政としてなかなかお手伝いしにくいテー
マです。ボランティア育成のための研修、リーダー養成ということ
でのお手伝いはぜひやらしていただきたいと考えていますが、直接
的にはボランティアのみなさんの努力であり、組織内部のコミュニ
ケーションと仲間育成の重要性の認識でしょう。

 以上、ボランティアに関していろいろ申し上げてきました。もっと
違う考えがあるとは思いますが、いずれにしても長野市のボランティ
ア活動をもっと盛んにしたいという私の意気込みは、ぜひわかってい
ただきたいと思い、このメールマガジンを書いています。