1月1日、長野市は4町村を合併し、面積738.51平方キロの一段と大きな都市なりま
した。そしてその大きな都市の約70%が、いわゆる中山間地と言われる地域です。
長野市は人口38万の中核市ですが、非常に特異な形の都市構造になったと言えるでしょ
う。
長野市にとって、この中山間地をどのように運営していくか、都市部とのバランスをど
のようにとっていくか、合併後の大きな課題です。
長野市の農業、林業は、中山間地だけでなく、平地においても産業としては成り立ち難
くなっていることは残念ながら、事実でしょう。毎年行っている「元気なまちづくり市
民会議」でも、生産物の価格が安い、後継者がいない、等々のお話しが多く、根本的な
対策、施策がなかなか出てこないのが、実情です。農家の規模が小さいこともあって、
一部の林檎、白桃等の果樹以外は、かなり厳しい状況だと思います。
勿論、行政はJAなど関係機関等と協力して、いろいろな手段を講じています。農業指導、
機械化の補助、農業共済事業・・・最近は地域奨励作物(小麦、大豆、そば)を指定し
て補助金を出し、地産地消のお手伝いをしたり、農産物の直売所を設置したり、国が用
意した一番凄い補助金としては、中山間地域等直接支払制度もあります。ただいずれも
農村再興の決め手にはなっていないと感じています。
もっとみんなで知恵を出そうということで、中山間地市民会議等を開催して、各地域の
取り組み事例を発表しあい、お互いに刺激し合う試みも行っています。発表会には、い
ろいろな取り組みを聞かせていただき、大変参考になりました。
長野の農業は、小規模運営が多く、グローバルな取引が行われている農産物(農業製品)
は、価格的な競争には、まず勝てない。付加価値が高い、非遺伝子組み替え、農薬を使
わない有機農業・・・非価格競争の世界で頑張る必要性を感じます。
あるいは「そば」「おやき」のように、粉の生産から食まで、名物としてのブランドを
確立するなどの一貫生産、あるいは例えば葡萄からワインを作る等の工業化、が必要か
もしれません。それには資本の投下が必要なことは当然です。
観光との結びつきで、クラインガルテンやサラダパークの試み、都市住民との交流にも、
取り組んでいます。いずれにしても王道は無い、いろいろな施策を、辛抱強く、一歩一
歩積み重ねていくより仕方がないのでしょう。
目標は、中山間地に生活の根拠が出来ること、そして農業が自立して産業に育つことで
しょうが・・・・・。
林業の方が農業より厳しいと言われています。それは、農業の方が行政の援助があるけ
れど、林業の方はほとんど無い、それは外材の輸入がすっかり定着しているからです。
地元産材木使用のキャンペーンを行っていますが、経済行為として成り立つ、即ち産業
として自立するのは、なかなか難しいと感じています。
昔から「山持ち」という言葉は、金持ちの代名詞でした。長野市にも沢山ある「財産区」
は、市町村合併に伴なって、村有林を自分たちの財産として守りたいと言う手段だった
のでしょう。ですからそんな所へ行政の補助金を入れることは、有り得ない話しでした。
しかしながら、山林での重要な商品である材木の値段は、外材に押されて、桁違いに安
くなり、商売にならなくなったこと、山の手入れをする人が減ってしまったこと、等々
で維持が難しくなっている財産区が多いことも事実です。
しかし、現段階になって、山は都市部に対し、きれいな空気、きれいな水、人々の癒し
の場、さらに水害を未然に防ぐ保水の役目・・・・それらを提供してくれる山林の持つ
有用性が認識され、間伐を含めた山の手入れの必要性が叫ばれるようになってきました。
森林環境税も、目的税として有効という意見が増えているように感じています。
いくつかの地方公共団体でこの税を導入しています。現段階は、それしか山林の再生を
図る手段は無いのではないかとさえ感じています。
少し視点を変えて、生活の場として中山間地を捉えたとき、そこで成り立つ仕事につい
て考えてみました。中山間地での仕事の場として考えられることは何か、考えられる仕
事を拾ってみました(私の頭の中だけの考えです)。
山の管理作業、農作業、地域の溜池管理、農作業の指導、案内人(山のガイド)、雪掻
き、雪下ろし、一人暮らしの老人訪問、介護、消防団、福祉自動車・村内タクシーの運
転、買い物や生活の支援、食事作りや配達、地区内連絡係り、送迎、
育った人材にもよるが、地産地消の店を作る、特産品を作る等、新しい産業をおこすこ
とが理想。企業誘致も必要。意欲ある若者の定住策の実行、年次計画に基づく地区の祭
り、イベントの企画・実施。
ちょっと考えただけで、こんなに出てきます。これを有料で(即ち生活できるような組
み合わせは出来ないものか)。
地域の「真の自立」とは何か。地域住民と行政職員が協働により地区行政に参加し、役
割分担をし、支えあって地区を経営する姿。地域に産業、働く場があって自立して生活
できる環境・・・こんなことを夢見ています。