中心市街地小学校6校の統合問題の検討がはじまったのは、平成6年ごろだったでしょ
うか。6校とは、後町、鍋屋田、山王、城山、加茂、城東の各小学校です。名称は「長
野市中心市街地のまちづくりと小学校の適性配置研究委員会」ということで、関係区長
さん、関係小学校のPTA副会長さん、そして校長会の代表、商工会議所の代表、関係市議
会議員、そして、まとめ役としての大学教授・・・・総勢35人ぐらいだったと思いま
す。
当時、この6校については、ほぼ中心市街地に位置し、中心市街地の空洞化、人口減の
ために、それぞれの学校はかなり小規模になってしまい、統合の必要性が言われていま
した。しかし、古い伝統校が多く、この議論は最初からかなり難しいと思われていたこ
とは事実です。しかしあまりに小規模になってしまうと、子供達にとって、教育的見地
から如何なものかということで、この検討会が始まったものです。併せて中心市街地の
空洞化が進み、なんとかしなくてはならない・・・そのためには統合された小学校の跡
地の利用も重要というまちづくりの観点もあったことは事実でしょう。
検討が始まった当時、議論はいったりきたり、私も商工会議所を代表して委員の一人だ
ったのですが、始める時は、当然オリンピック前に結論が出て、何らかのアクションに
結びつく(例えばオリンピック関連の利用)と思っていたのですが、途中から、これは
無理だと感じざるを得ませんでした。(実際、報告が出たのはオリンピック終了後、3年
目ぐらいでしたでしょうか。)
議論の中味はもう古いことですから、今申し上げても意味がありませんが、柳町の県営
住宅をオリンピックのメディア村に建て直し、そのあと一般に開放されるということで、
当然人口が増える予測が出てきて、城東は残すべきとの意見が決まり、北側の城山小、
加茂小についても、山手の飯綱地区の子供が通っている実態から、結論は先送りされ、
結局、後町小、鍋屋田小、山王小をまず統合することになり、長い議論の末、委員会の
中で投票を行って、統合先は山王小の跡地に決まりました。
ただその後、3校の通学区域の人口が西側の安茂里地区の人口が予想したほど増えず、
東側の人口が増えていることから、一番東側にある鍋屋田の場所の方が良いのではない
かとの議論が起きて、結局、委員会の意見は鍋屋田に変更されました。この間の経緯に
ついては、一旦決めた案を変更する等、不手際があったことは事実ですし、発足当時の
委員会は公開が原則ではなかったために市民の間に、不信感が生まれてしまったこと、
原則委員は個人の資格で出席して自由に意見を言って欲しいと思ったが故に、地域、学
校での内容公開は避けてほしいという申し合わせを行ったこと・・・等々、透明性、公
開性に欠けていたことは事実であり、申し訳なかったと思っております。しかしながら、
当時の委員会のあり方としては普通のことでしたし、公開では、委員の方々が意見を出
しづらいといったことも事実でした。
その後、長野市教育委員会では、この検討委員会での結論を尊重して統合する小学校は
鍋屋田小の跡地と決定しましたが、関係学校関係者や地区関係者等から、異論が出され、
教育委員会関係者が地域でいろいろ説明してきましたが、なかなか収まらず、市長とし
ても強行することは困難な状況と判断せざるを得ませんでした。
しかし、現実に中心市街地の小学校は、極端に生徒数が減少しており、一学年10人未満
という例もあるなど、子供たちの教育環境を考えれば、憂慮すべき情況と判断せざるを
得ませんでした。子供たちが一定人数以上の仲間と一緒に学び遊ぶことの喜び、社会性
の醸成、将来の仲間つくり・・・・それは人生を生きていくための大切なことだと私は
思います。
教育委員会が関係の保護者や地域の皆さんの意見を参考に一生懸命に知恵を絞った結果、
次のような方式があみだされました。
即ち、中心市街地の後町、鍋屋田、山王小の三小学校に平成17年度から通学区特例校
制度〔フリー通学区〕を導入し、3年くらいの動向を検証する中で、継続的に一学年2ク
ラス以上の生徒確保ができた学校は存続する。その目途が立たない学校は、近くの学校
に統合するということで、地域の皆さんと合意が成立しました。(ただこの原則は、中
山間地には適用できないと感じています。それは周辺に学校が無く、通学距離がありす
ぎるからです)。
将来的には、もっとフリー通学区は増えるかもしれません。それは「近くに学校がある
のに、通学区があるために遠くへ行かなくてはならないのは不合理である」と言う意見
はかなりの数、寄せられています。又、各小学校ではいろいろ工夫、研究して立派な運
営をして、多くの子供に来てもらえるようにしたい、と言う学校側や地域の努力にも報
いたいとの思いもあり、そうなれば通学区を自由にしたほうがよいのではないか・・・
と言う意見が強まることにもなりそうです。
いずれにしろ、この方式は問題の先送りだと言う意見もあるようですが、私はそう思っ
ていません。将来を担う子供たちのことを考え、地域の皆さんも納得して、最良の解決
方法を見出したのだと信じています。
そして仮に統合される学校が出た場合、行政とすればその場所に素晴らしい公共施設を、
地域の皆さんと相談しながら造ることになると思っています。