【選挙と民主主義の根幹】
私は、自分の選挙を2回やってみて、いろいろな矛盾を感じてい
ます。11月に開催された長野県18市選挙管理委員会連合会委員
長会の際に、開催市の市長としての挨拶の中で次のような話をさせ
ていただきました。
「選挙」は民主主義の、あるいは地方自治の根幹をなす制度です
から、大切であることは当然です。でも投票率が40%を割ってし
まった選挙が果たして民意を正確に反映していると言えるのか、少
なからず疑問を感じています。民主主義=選挙とは思っていません
が、今の制度にはどうも疑問があります。
10月30日の市長選挙後いろいろな人と話してみました。「選
挙権の行使を権利ではなく、義務にすべきである。義務ならペナル
ティーを課すことが出来る」「選挙が有効と判定されるための最低
投票率を決めるべきである」「世論調査の方が民意を表すことが出
来る」「地方首長選は、アメリカ大統領選挙のような中間選挙人に
よる間接選挙にした方が良い」「正しい民意を探る方法としての選
挙とはいえ、市長選挙で9千万円も使うなんてもったいない」「マ
イナス選挙を認めて落としたい人に投票するのは、どうか」「コン
ピューター投票を採用したら、物珍しさもあって投票率アップにつ
ながるかも」・・・珍案を含めていろいろな意見がありました。
また、私は姉妹都市クリアウォーター市で、向こうの市長やコミッ
ショナー(議員)と懇談したとき「40%は上出来、クリアウォー
ター市では30%もいかない」という話をお聞きして愕然としたこ
とを思い出しています。
選挙管理委員会が明るい選挙推進協議会や各地区の白バラ友の会
と一緒にいろいろな投票率を上げるための運動をされても、効果が
薄い(すみません)。もう少し効率的に、きちんと民意を政治・行
政に反映するシステムはないものか。
いずれにしろ、このまま推移すると、というより先進国では投票
率はドンドン下がる傾向にあるということですから、ある勢力が、
ある意図をもって地方選挙を占拠する事態、選挙の結果が一般の世
論とは全く違う結果となることが絶対ないとは言い切れないと思い
ます。「候補者に魅力がないがゆえに投票率が上がらないのだ」と
いう意見、「結果が決まったような選挙で投票に行かない」、「争
点がない」といった意見もありますが、選挙と民主主義について、
我々一人一人が考え直す必要があると思います。
【既存不適格】
この言葉、皆さんご存知ですか?私は市長に就任してから知りま
した。なるほどなあと思いますが、極めて変な話です。現在社会問
題になっている「姉歯事件」とも無関係ではありませんので、皆さ
んにもぜひ知ってほしいと思い、私なりに書いてみます。
具体例で申し上げますと、長野市民会館は昭和36年、市役所第
一庁舎は昭和40年の建設ですから、現在の耐震基準(昭和56年
に法律で決められています)には適合していません。「危険」とい
う点だけで考えれば、姉歯事件のマンションやホテルと同じことな
のです。姉歯事件は、現在の基準決定以後の建物で、耐震法に違反
しているので許されない、市役所の建物は、建設当時の法律には合
致していて、現在も存在しているので「既存不適格」ということで、
違反にはならない・・・ということです。
こういう建物はたくさんあって、法律が変わったことで違法にな
ったのではたまりませんから、仕方がないとは思います。でも危険
かどうかという点で考えてみれば、どうでしょうか。日本の建物の
耐震基準は、大きな地震で被害が出る度に強化されてきたそうで、
新しい基準が決まると、それ以前の建物は、「既存不適格」という
ことなのだそうです。
もう少し踏み込んでみますと、この「既存不適格」建築物の増築
等を行う場合は、現在の耐震基準に合うように補強工事等をするこ
とになるのですが、それまでには相当の時間がかかります。
阪神淡路大震災を教訓に、法整備が進み、現在の耐震基準以前に
建てられた、学校、病院など多くの人々が利用する建物では、耐震
診断や補強工事をして建物を安全に保つ努力をしなさいということ
になっていますので、建物の所有者の方には耐震についての啓発を
行っていますが、努力義務のためになかなか耐震診断や補強工事が
進まないのが現状です。
また、本市においては今年度から昭和56年以前に建てられた木
造の戸建て住宅について、耐震診断と耐震改修をするための費用を
補助する制度をはじめており、多くの申し込みをいただいておりま
すが、今後とも今まで以上に皆さんに耐震というものに関心を持っ
ていただきたいと思っています。
安全なまちづくりの必要性が叫ばれている中、市民の命と財産を
守るために行政の責任者としてどう考えるか。いずれにしても、
「既存不適格」は厄介な課題です。
それともう1つ、姉歯事件に絡んで、私が記者会見で申し上げた
ことが、若干誤解されている面があるようですので、説明させてい
ただきます。
構造計算が偽造されている建物が、長野県内でも見つかって、ホ
テルの営業が出来なくなるなど、大変な事態が発生し、社会問題に
なっていることは、私も承知しています。長野県では、行政が構造
計算ソフトを購入して、過去の確認書類を再計算すると発表しました。
建築確認ということでは、長野市は長野県と同じ立場(建築確認
を受け付ける)ですが、本市では記者会見で「現段階では長野市は
同じことをやるつもりはない」という意味の発言をしました。市民
の皆さんからなぜ?という質問をいただいております。
本市では、建築確認の審査については、複数チェック体制をとり、
また十分な審査時間をかけて審査を行い、更に建築主事が最終判断
し厳格に審査を行っており、問題はないと判断しており、今すぐに
プログラム導入による再計算は考えておりませんということです。
しかし、今回の事件を踏まえ国も危機感をもっており、建築確認
制度全体の見直しを急ぐとともに、建築基準法改正等の検討も行っ
ています。本市は、その動向をきちんと見極める中で、プログラム
導入についても今後、適切な対応等総合的に判断していきたいと考
えています。再計算を全く否定したものではないということを改め
て申し上げます。
また、再計算とは別に過去に本市が建築確認した3階建て以上の
マンション等について、安全性を再確認するための再点検を行って
います。
加えて、今回の事件を受け、建築確認でのチェックとは別に、不
正工事防止のため工事途中に行う中間検査を充実し、チェック機能
の強化を図っていきます。
本市では従来、鉄骨造りについてのみ中間検査を実施してきまし
た(当時県と話し合い、一番問題なのは、鉄骨造りの溶接部分であ
る、ということで決めたことです)が、今回、検査対象建築物の範
囲を拡大し、鉄骨造りに加えて、新たに長野県内ではじめて鉄筋コ
ンクリート造り及び、鉄骨鉄筋コンクリート造りについても中間検
査を実施することとしました。この中間検査は、民間指定確認検査
機関についても検査が義務付けられ、市内に建設されるすべての対
象建築物について検査が行われることになり、チェック機能が強化
され、不正建築物をなくすために非常に有効な手段と考えています。