2005年12月28日水曜日

年末随想


 今年最後のメルマガになりました。一年を振り返って、いろいろ
書くのが通例でしょうが、それはいろいろな場面で申し上げていま
すので、今年は個人的に感じていることを、書かせていただきます。

【「公」と「私」】
 私は市長就任以来、いろいろな場面で「公」と「私」の区分で悩
んでいます。どんなことで悩んでいるか、お聞きください。

(1)まず勤務時間の問題です。首長には(と言うより行政の特別
 職には)出勤簿がありません。したがって始業・終業時間、休日
 といった概念はないようです。すなわち、「公の時間」という規
 定がありませんから、今日は体調がすぐれないから役所へ行きた
 くないと思って、休んでも減給なんてことはないはずですし、欠
 勤扱いにもなりません。それだけに、かえって休むことが難しい、
 市役所が休みでも市長はいろいろな公務があるので、「私の時間」
 はほとんどとれません。休みが欲しいのが本音です。

(2)市長就任以来、事故をおこす危険性から自分で車を運転して
 はいけないと厳しく言われ、運転手さんの運転で公用車に乗って
 いるのですが、ちょっとした私用が困るのです。例えば公務の合
 間にちょっと病院で診察して欲しい、ちょっとした時間の合間に
 書店に寄って本を買いたい・・・その都度タクシーを呼ぶのは時
 間がかかりますし、次の約束に遅れる危険性もありそうです。こ
 ういう場合、申し訳ないですが、仕方なく公用車を使わせてもら
 っています。

(3)タクシーのチケットも悩んでいることの一つです。私はタク
 シーチケットを公用と私用の2種類持っているのですが、夜の懇
 談会(公務)の場合、公用車は私を会場に送り届けたあと、極力帰
 ってもらっています。終わって帰る時、通常はタクシーで公用の
 チケットを使いますが、同じ方向へ帰る方が同乗することもあり
 ます。懇談会の後、誘われて2次会に行くこともありますが、こ
 れは私用チケットを使うのは当然です。

(4)「パソコンの使い方がわからないとき」、「個人用のパソコ
 ンの調子が悪い」、「自宅内無線がうまくいかない」・・・そん
 な時、秘書あるいは無線に詳しい職員に手伝ってもらうことがあ
 ります。しかし、家でしか書く時間がないメルマガを広報広聴課
 に送る必要があったり、公の内容のメールを転送したりしますの
 で、これは公務と考えるより仕方ないのですが。

(5)次は旅費についてです。私は、市長就任後3カ月の頃、ソル
 トレークシティー(冬季オリンピック視察)とクリアウォーター
 市(姉妹都市への表敬)を訪問しました。そして、クリアウォー
 ター市からの帰途、乗り継ぎ地のロサンゼルスで休暇をとりまし
 た。理由は同地で駐在員生活を送っていた息子の家を訪問したか
 らです。そこで秘書課が悩んだのは、私のロスから日本までの帰
 りの旅費が公費か、私費かでした。結局、規定の経路分について
 は公費で払いました。

(6)会費等の参加負担金も厳密に考えると、迷いがないわけでは
 ありません。数年前、全国市長会(東京)の折、稲門市長会(早
 稲田大学出身の市長の集まり、毎年全国市長会の折、大学の総長
 も出席して交流会を開いている)があり、初めての会合でしたの
 で、稲門市長会に出席しましたが、その会費を公費で払ったこと
 を、市議会で共産党さんが問題視しました。やましいことは全然
 ありませんが、この会費の問題だけでなく、あらゆる団体・組織・
 協会等のお招きをどうすべきか・・・出席すべきではないという
 のも、一つの見識ですが、情報収集、あるいは長野市の考え方を
 知っていただくという面から、可能な限り出席しています。

 公的な仕事か、私的な仕事か、首長の場合、区別は付け難いこと
は事実です。いずれにしろ、公と私の区別はきちんとしなければな
らない・・・当たり前ですが、区別が付け難いあいまいな部分があ
る。現状は、責任は自分でとるとして、秘書政策課の判断に任せる
より仕方がないのですが・・・。

【ぜいたく?】
 「長野市長の専用車『リース料5年で600万円』財政改革の中
ぜいたく?」こんな見出しが新聞に載ったことを、ご覧になりまし
たか?
 先日、市長の公用車購入についての入札が行われました。現在乗
っている車は、前市長が乗っておられたものを、そのまま引き継い
だ車です。
 少し前、秘書政策課から1月に市長車のリースが切れるというこ
とで、相談がありました。私は「現在の車に別に不満はない。再リ
ースをすればかなり安くなるだろうから、このままでよい」。でも
運転手さんは、あまり調子がよくないとも言っていたので「変える
なら、ハイブリッド車で小さ目の環境にやさしい車にしてください」
と伝えました。

 しばらくして、秘書政策課から「いろいろ調べたけれど、現在の
車のリースは、再リースしてもあまり安くならない。それと調子も
よくなく、最近は修理が多い状況にある。ハイブリッド車には適当
な四輪駆動車がなく、長距離出張を考えるとある程度の大きさが必
要」との理由で、「今までと同程度(装備も含めて)の車にしたい、
リース料金は入札すれば、今までよりも安くなり、5年リースで車
検等を含め約600万円、月10万円前後(車検等も含む)ほどに
なる」との報告があり、結局了解しました。

 ところが、情報公開が徹底しているせいでしょう、新聞の紙上で
前述のような大きな見出しの記事があらわれました。この記事を読
んで、皆さんはどう思われましたか?

 記者からは市に問い合わせがあったそうです。秘書政策課では前
記の事情と、装備にあるシートヒーターとシートバイブレーター
(記事ではマッサージ機能でしたが)について、2つの機能は車の
装備で既にセットになっていること、急な外出や屋外活動の際に体
を冷やさないようにするためシートヒーターが必要であることを、
きちんと説明したそうですが、その上での記事です。

 無視すればそれまでですが、私は見過ごすことができない記事と
考え、あえて反論します。私は、政策上のことで、批判、あるいは
反論されても、それが事実に基づいたことであるなら、結構です。
きちんと議論して、皆さんの批判を仰ぐ度量は持っているつもりで
す。仮に対象が個人のことであっても、事実なら甘受しますし、間
違ったと思えば謝ります。

 ただ、今回の記事は、大見出しで「ぜいたく?」ということです。
記者が本当に贅沢と感じたなら、はっきり理由を書いて「贅沢」と
書くべきです。それなら、私の対応は違うのですが、「?」という
ことは、断定せずに、それでいて読者に贅沢ということを、印象つ
けようという意図が見えます。報道というより意見でしょうし、メ
ディアが批判された時の逃げも打っているのです。メディアの誘導
の典型例と申し上げたい。

 そして内容が、私個人が関係すること、特に私が一番自分に戒め
ていること、すなわち「公と私」の項で述べたように、個人の勝手
で市に負担をかけることはしないという心情に対する、裏づけが不
十分な意見記事と感じたので、許せないのです。前述のような経過
の中で、私とすれば十分検討し、適当な車と結論づけた上で決めた
ことです。もっときちんと「ぜいたく?」という根拠を示してもら
わなくては納得できません。

 同時期、別の新聞にも私への批判記事が載っていました。大型店
問題に関する件で、内容に私としては不満がありますが、これは、
政策のことであり、事実に基づいて、そう考える人がいても当たり
前と感じていますので、「財政改革の中ぜいたく?」の記事とは質
が違います。参考意見としてお聞きし、いずれ堂々と議論させてい
ただくつもりですが・・・。

【年末のご挨拶】
 今年最後のメルマガで随想風ということで、私の思いをぶちまけ
させていただきました。お許しください。
 来年は良い年でありますよう、そして正月は雪を楽しみましょう。
 良いお年をお迎えください。