2008年5月1日木曜日

長野市の財政事情(1)


 今回は、2週にわたり長野市の財政事情のことを少しお話しさせ
ていただきます。
 長野市の財政について、昨年、「実質公債費比率」が警戒ライン
を超えたということで、心配される向きもあるようですが、基本的
には心配ないものと考えていますので、その辺りの事情も説明させ
ていただきます。

 具体的には、平成18年度決算において、長野市の「実質公債費
比率」が、国の定めた警戒ラインである18%を超えて18.6%
になり、長野市は、国の許可を受けなければ新たな地方債が発行で
きない、いわゆる「許可団体」になってしまいました。このことで、
市民の皆さんにご心配をお掛けしてしまったことと思います。

 前年の平成17年度決算時の「実質公債費比率」は、16.9%
だったのですから、一気に1.7ポイントも上昇してしまったこと
になります。確かに長野市には、オリンピック施設建設のために借
り入れた多額の借入金があることから、毎年の返済額が200億円
を超えており、「実質公債費比率」は比較的高い水準にあることは
事実です。
 しかし、今回大きく上昇した要因は、この比率を算定する際の国
のルールが改正されたことにあり、急に長野市の財政状況が悪くな
ったわけではないのです。

 私は、市長就任以来、必要な事業を実施するために、毎年約10
0億円を借り入れていますが、200億円以上の借入金を返済して
います。すなわち毎年100億円ずつ借入金を減らすことを実行し
ています。途中、4町村との合併により一時的に約300億円の借
入金が増えましたが、それもすでに克服して確実に市債残高を減ら
してきているのです。

 財政の数値については、一般的に分かりにくいと、いつもおしか
りを受けています。私も最近ようやく分かってきたところですから、
外部の方が「分かりにくい」とおっしゃるのは無理もないのです。
今回は皆さんに分かっていただくために、できるだけ分かりやすく
お話ししてみたいと考えています。

 先に「実質公債費比率」を算定する際のルールが改正されたとお
話ししましたが、具体的な例を挙げてみます。市には、市の関連団
体の借入金返済に対して交付している補助金があるのですが、「実
質公債費比率」を算定するに当たり、これまでこの補助金について
は利子のみが算入されていました。それが今回から元金も算入され
るようになったのです。
 また、公営企業の借入金返済のために一般会計から繰り出してい
るお金もあるのですが、これについても算入される範囲が拡大され
ました。加えて、分母である「標準財政規模」が縮小したことも比
率を上昇させた要因と考えています。

 ただルールの変更が原因だと不満を言っても借入金が多いことは
事実ですし、国全体のことを考えれば、早めに地方自治体の健全化
を促すという国の姿勢は評価すべきです。長野市も努力し、市財政
の健全化を図っていくべきであることは当然です。

 国としても、地方自治体の財政悪化が進んでいることを危惧(き
ぐ)していることは事実でしょう。北海道夕張市の状況は必ずしも
特殊事例ではなく、地方自治体全般に可能性があるのではないか、
だとすれば事前に手を打つ必要があると考えているようです(ちょ
っと動きが遅かったのではないかとも思いますが)。

 そこで国では、いきなりレッドカードを出すのではなく、事前の
監視を強め、破たんの危険がある場合には早めにイエローカードを
出す。すなわち、本当に悪化してしまう前に是正を促すという方針
を決め、次のとおり、自治体の財政状況を確認するための4つの指
標とそれぞれの基準を発表しました。

(1)「実質赤字比率」
 イエローライン:11.25%、レッドライン:20%
 (平成18年度決算時の長野市:0%)
(2)「連結実質赤字比率」
 イエローライン:16.25%、レッドライン:30%
 (平成18年度決算時の長野市:0%)
(3)「実質公債費比率」
 イエローライン:25%、レッドライン:35%
 (平成18年度決算時の長野市:18.6%)
(4)「将来負担比率」
 イエローライン:350%(レッドラインはありません)
 (平成18年度決算時の長野市:230%程度)

 この4つの指標のうち、いずれかがイエローラインを超えてしま
うと、「財政健全化計画」という地方自治体の自主的な努力によっ
て財政状況を改善するための計画をつくり、健全化に努めることに
なります。
 また、いずれかの指標がレッドラインを超えてしまうと、北海道
夕張市のように「財政再生計画」という再生計画を策定し、国の厳
しい関与を受けながら財政再建を行うことになってしまいます。

 4つの数値は、すべて「標準財政規模」で除して求めます。まず
は、この「標準財政規模」についてお話しします。
 「標準財政規模」とは、標準的な一般財源の規模を示すもので、
市税や普通交付税、地方譲与税等の合計額により、次の計算式を使
って求めます。

 「標準財政規模」=(基準財政収入額-地方譲与税等)÷0.75
          +地方譲与税等+普通交付税

 なかなか難解なのですが、一般のご家庭に例えると、この「標準
財政規模」というのは通常の年収ということで理解してください。

 4つの数値は、この年収に対するさまざまな割合を算出して、財
政の健全度を示そうとしているのです。次に、4つの数値について、
お話ししたいと思いますが、少し長くなりますので、続きは次回お
話しさせていただきます。

 今回のところは、
(1)長野市の「実質公債費比率」が、昨年、国が定めた警戒ライ
 ンを超えてしまいましたが、原因は、指標を算定する際の国のル
 ールが改正されたことにあり、急に長野市の財政状況が悪くなっ
 たわけではないこと。
(2)国としても地方自治体の財政悪化が進んでいることを危惧し
 ており、本当に悪化してしまう前に是正を促すため、自治体の財
 政状況を確認する4つの指標と基準を設けたこと。

という2点についてご理解いただきたいと思います。