今日は大みそか。今年もお世話になりました。来年もよろしくお
願いします。
今年は、市長選もあり、私にとっては、大きな節目の年であった
と思います。直前に行われた衆議院議員総選挙での“Change
(チェンジ)”や“政権交代”の風を受けて苦戦しましたが、幸い、
皆さんのご支援を頂き、辛うじて当選させていただきました。「み
んなの声が“ながの”をつくる」を基本姿勢に、皆さんと約束した
3期目のマニフェストの実行に全力を挙げる所存です。
今回は、“理念と具体論”について、少し書かせていただきます。
理念、あるいは理論といったものは、ほとんどの人が納得できる
ものだと思います。ですから、それに対して異論を唱える人は少な
いでしょう。しかし、具体論になると、いろいろな意見が出てきま
す。「総論賛成、各論反対は、世の常である」という状況があるこ
とはよく言われていることです。
理念・理論はとても重要です。しかし“どんな理論でも、理論的
に正しいからといってそれを徹底していくと、人間社会はほぼ必然
的に破たんする。どの理論が正しいとか間違っているとかの問題で
はない、すべての理論で言えることである”という指摘もあります。
これは、以前から私がご紹介している数学者・藤原正彦さんの著書
『国家の品格』に出てくる一節ですが、私はこの文章に出会って目
から鱗(うろこ)が落ちた気持ちでした。まさにその通りなのです。
広い意味での理念は、具体的にどのようなものがあるでしょうか。
思い付いたものを幾つか列挙してみます。
・貧困と争いのない平和な世界を実現しよう
・地球環境を守ろう
・すべての国民・市民の幸せを願い、差別をなくし、あらゆる違い
を尊重し合える社会にしよう
・犯罪や事故のない安全で安心な明るい社会にしよう
・無駄を廃し、有効な資金の使い方をしよう
・真面目に働いている人が、正しく報われる社会にしよう
・弱い立場の人、困っている人が救われる世の中にしよう
・日本一いや世界一素晴らしい、美しい街にしよう
まだまだたくさんありそうですが・・・すべて大切なことで、ぜ
ひ実現したいことばかりです。恐らく、これらの理念に反対する人
はいないでしょう。
しかし、これを実現するための具体論になると、さまざまな立場
や考え方があり、完璧な実現を目指そうとすれば、かなりの困難を
伴うはずです(だからと言って、何もしないということではありま
せん。今、最も大切なのは、具体論、具体策です)。
理念を一生懸命に主張する人の多くは、ポピュリズムに陥ってい
る可能性が高いと思っています。そして、私たちは、そのような主
張に流されやすいことも事実です。
今の日本の国政は、ポピュリズムに陥っているのではないかと思
うのですが、いかがでしょうか。
広辞苑では、ポピュリズムのことを「一般大衆の考え方・感情・
要求を代弁しているという政治上の主張・運動」と解説しています。
ポピュリズムは、国民の常識によって政治や権力の腐敗や誤りを是
正するという方向に向かうときは大きなエネルギーになり得ます。
ただし、考え方が偏っていたり、理性的でなかったり、因習などに
とらわれたものであれば、極論かもしれませんが自由や民主主義を
破壊してしまう危険性すらはらんでいるのです。
日ごろ私は、市町村行政に関係することについての意見は申し上
げていますが、国政・県政などについては、あまり申し上げてきま
せんでした。それは、批判めいたことを言ってみても犬の遠ぼえみ
たいで、あまり意味がないと思っているからです。
ただ、今回は大みそかですので、今年一年を振り返るという意味
から、市町村行政に非常に大きな関連がある国の政策について、雑
談的に少し意見を書かせていただくことにします。
「入りを図りて、出ずるを為す」。これは、日ごろ私が一つ覚え
のように繰り返しているフレーズですが、今くらいこの発想が必要
な時期はないと考えています。個人でも、市でも、国家でもそうで
す。
特に国家は、100年の大計を見渡して、子孫に借金の山を残さ
ないように、最優先で取り組むべきです。その結果、重い負担が生
じるとすれば、国民からは不満が噴出することになるのでしょうが、
これは、実行しなければならないと思っています。ポピュリズムは
廃し、毅然(きぜん)とした態度で臨むべきです。
その手段の一つには、消費税の大幅アップがあると思っています。
アップした分は国債の返済に充当。消費税1%が約2兆円というこ
とですから、20%上げれば、単純計算で年間40兆円ずつ借金の
返済に充てられることになります。国の借金が全体で800兆円と
すれば、20年で完済できる計算です。
消費税を税金だと考えれば高いと感じると思いますが・・・少し
インフレになったと考えれば、負担感は和らぐのではないでしょう
か。現在のデフレ環境の中では、採用しやすい施策だと思います
(極論であり、実際には景気悪化を助長することになるので不可能、
との意見はもっともですが・・・)。
ただ、消費税には、所得が低いほど相対的に負担が重くなる「逆
進性」の問題があります。この対策として、国でも「給付付き税額
控除」を今後検討するようですが、私は中谷巌さんの著書から“還
付金付消費税”という考え方を知りました。恐らく、逆進性の問題
は、これで解消することが可能ではないかと思っています。
中谷さんの案では、例えば消費税を20%に引き上げたとすると、
(1)税率アップと同時に全国民に等しく毎年40万円ずつ還付す
る制度を導入する。
(2)その結果、年間消費額が100万円の人の消費税負担は20
万円であるが、40万円還付されるので、消費税率は実質ゼロ
になることに加えて20万円の所得補てんを受けることになる。
(3)200万円の人の消費税負担は40万円であるが、40万円
還付されるので、消費税率は実質ゼロ。
(4)400万円の人の消費税率は実質10%。
・・・と、消費額が少ない人ほど実質的な税率が下がることになり、
逆進性が解消されるというものです。
ガソリン税などの暫定税率廃止も、政策としてはいかがなものか
と思います。結果として、暫定税率を廃止しても税率は変わらない
ことになったようですが、昨年、衆議院と参議院のねじれ現象の影
響により、1カ月間だけ暫定期間が切れ、ガソリンなどの価格が安
くなったことがありました。確かに、家計にとってはその分の支出
が減って良かったのですが、それを手放しに歓迎できるものではな
かったように思いました。
環境のことを考えれば、化石燃料の使用を減らす努力が当然必要
になります。単純に対策を講じるとすれば、化石燃料の価格を上げ
ることが一番効果的でしょう。
今後、暫定税率に代えて、環境税の創設を検討するようですから、
大いに賛成です。実質的な税額は同じはずで、新たな負担を国民に
課す話ではないと思います。
子ども手当は、所得制限を設けないことで決着したようですが、
私は設けるべきだと思います。ただ、厄介なのは、地方自治体とす
れば、所得把握などの事務が増加することで、支給に際して事務経
費が生じます。その経費を国が負担するのであればできると思いま
すが、かなり多額になりますし、難しいでしょうね(麻生政権での
定額給付金の事務経費は、すべて国が負担しました)。
いずれにしても、地方交付税を総額1兆円余り増額することは大
いに歓迎できますが、引き換えに新たな負担が生じるようなことは
避けていただきたいと思っています。
ポピュリズムは、大衆への迎合を優先する無責任な政治指導を指
す言葉として用いられることが多いようです。今の日本には、その
ようなポピュリズムではなく、先を見据えてリーダーシップを発揮
する政治が必要だと思います。たとえ一時的に国民を落胆させるこ
とになっても、将来に向けて、もっと戦略的な発想による政策が必
要でしょう。
大みそかにしては、少々重い話題になってしまいました。お許し
ください。
今年も1年間、このメルマガにお付き合いいただきありがとうご
ざいました。皆さん、どうぞ良いお年をお迎えください。
2009年12月31日木曜日
年末考
2009年12月24日木曜日
閉町村式
平成22年1月1日、長野市は信州新町・中条村と合併して、ま
た一回り大きな都市になります。
12月6日、信州新町の閉町式典が行われました。
信州新町町民体育館に大勢の町民の皆さんが集まり、信州新町の
長い歴史を記録したビデオ「美しいふるさと信州新町」の上映の後、
式典が開式。県知事、国会議員、県議会議員、長野市議会議員、周
辺町村長などが出席し、盛大な式典でした。異色だったのは、有島
生馬画伯の縁で交流のある北海道ニセコ町長さん、鹿児島県薩摩川
内市長さんが、出席されていたことでしょうか。
以下は、中村町長さんの式辞を要約したものです。
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信州新町はこの12月31日をもって町の長い歴史を閉じ、長野
市へ合併する。
顧みると、昭和29年4月1日、町村合併促進法に基づき、上水
内郡津和村と水内村2カ村の合併により久米路村が発足し、同年1
0月1日に町制を施行して新町と改称。翌昭和30年3月31日、
更科郡日原村と信級村2カ村と合併し、上水内郡信州新町となった。
その後、昭和31年9月30日に更級郡牧郷村の大部分を編入合併、
昭和34年4月1日、北安曇郡八坂村の左右地区を編入。これら幾
多の合併を経て今日に至った。
昭和30年代には、基幹産業であった農業の近代化を推し進めた。
とりわけ昭和36年度から実施された、パイロット農業構造改善事
業は、その後の事業と合わせ実に14年間という長い歳月と多額の
投資を行い、基幹産業である養蚕業を中心として、土地基盤整備、
施設の近代化による農業の生産性向上を図り、地域の経済的発展に
大きく寄与した。
工業面では、高度経済成長時代を迎えた昭和38年に工場招致条
例を施行し、積極的な工場招致を進めた。電気機器、精密機器、製
糸、紡績、木工、食料品、セメント二次製品など、多様な分野の工
場立地がなされ、町産業に占める工業の役割は飛躍的に進展。農業
中心の町経済から農商工、調和の取れた産業構造の町としても発展
してきた。
信州新町は芸術文化のまちづくりにも意を注いできた。古くから
町を愛する数多くの芸術家が訪れ、町民との交流を深め、それらの
縁によって当時としては先駆的な美術館条例を昭和35年に施行。
美術館、有島生馬記念館、化石博物館とともに一連の博物館施設は、
芸術文化を愛する町民の象徴として大切な財産となっている。
これらの町の発展・変遷は、先人の皆さま、諸先輩の皆さまの多
大なご尽力、そして町民の皆さまの地域を愛する熱意の賜物(たま
もの)であり、今更ながら敬意と感謝の念を禁じ得ない。
一方では、苦難な出来事もあった。中でも昭和51年の奈良尾地
区の地すべり、昭和58年の台風10号による新町地区を中心とし
た水害は、今でも記憶に鮮明に残る大災害だった。そのほかにも集
中豪雨による災害にたびたび見まわれてきた。これらの災害も、町
民や企業の皆さま、町消防団、多くの関係機関などのご協力、ご尽
力を頂きながら乗り越えてきた。
社会経済情勢や行政運営を取り巻く状況が激動する中にあって、
過去も合併によってこの地域の発展を目指したように、半世紀を過
ぎた今、合併に関する住民意向調査の結果と長野市の深いご理解に
より、信州新町は県都長野市へ合併することとなった。遠い将来を
見据えたとき、この合併が必ずや将来にわたるこの地域の発展のた
めの新たな出発点になるものと確信している。
合併しても信州新町という地域はこれからも永遠に続いていく。
この地域の自然、歴史、伝統文化、大切な多くの財産を守り生かし
ながら、町の発展を営々と築き上げてきた町民の経験と地域を愛す
る情熱をもって、今後は長野市信州新町地区として「~善光寺平に
結ばれる~人と地域がきらめくまち“ながの”」のまちづくりの一
翼を担いながら、さらなる地域の発展と大勢の長野市民に親しまれ
る地域となることを願う。
**********
式辞の後、町長さんから多くの町政関係者に表彰状・感謝状が手
渡されました。受け取った皆さんは、それぞれ感慨にふけっており、
その姿が印象的でした。
式典は、信州新町小学校6年生の皆さんが「故郷(ふるさと)」
を歌う中、町旗が降ろされて木箱に納められ、町長に手渡されて閉
式となりました。
12月19日には、中条村の閉村式が行われました。
会場は、中条中学校の体育館です。大勢の村民の皆さんのほか、
県知事、国会議員、県議会議員、長野市議会議員、周辺町村長など
も出席し、こちらも大変盛大でした。
中条村の式典でも、表彰状・感謝状の贈呈、村旗の降納などがあ
ったのですが、圧巻だったのは、中条村の保育園児、小学生、中学
生152人全員が舞台に上がって合唱を披露したことです。
曲は「故郷」ですが、それぞれの園歌・校歌が組み込まれ、立派
な組曲になっていました。指揮を執られた先生が作られたのでしょ
うか。とても素晴らしいもので、感心し、また感激しました。一緒
に行われた消防団の解団式も、今まで経験したことがなく、厳粛に、
そして今後は長野市消防団の分団として出発する決意も表明され、
感激しました。
以下は、久保田村長さんの式辞を要約したものです。
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長野市長様、長野市議会議長様をはじめ市議会議員様各位、そし
て各市民の皆さまの大きな温かいご理解を頂き、中条村は平成22
年1月1日に長野市と合併する。
中条村は、昭和30年に町村合併促進法により、栄村と日里村が
合併して発足した。村発足当時は米作、養蚕、酪農など農業を中心
に多くの営みが行われ、行政も農業政策が中心に進められていた。
昭和40年代からは、村内の道路改良整備、上下水道の完備、村営
住宅の建設など生活基盤の整備が進み、文字通り高度経済成長の時
代であった。
教育面では、中学校の統合、小学校の統合をはじめ、公民館の建
設など、文化教育施設の充実、資料館の開設など目覚ましいものが
あった。産業面では、工場誘致、オリンピック道路への道の駅の建
設、やきもち家の建設、お菜とりツアー、虫倉山開山祭、むしくら
まつりなどのイベントの開催等々、先人の方々が築かれた功績は、
語り尽くせるものではない。
このような時期を経て、人々の暮らしは大きく変わり、現在では、
通勤、通学など生活のほとんどが長野市という家庭が多くなってい
る。そのような折に住民の総意は、長野市との合併を選択するとい
う大変大きな、そして大変重い決断を行った。
私は、議会の皆さん、村民の皆さんのご協力をいただきながら、
その先頭に立って邁進(まいしん)してきた。そして、来年1月1
日からは、県都長野市民として皆さんと一緒に新しい地域づくりに
取り組み、この地域を守り、発展させていかなければならない。こ
のことは、村民一同大きな喜びであり、遠い将来を見据えたとき、
必ずやこの合併がこの地域の発展のための新たな出発点となること
を確信している。
この中条地区のシンボルは、今までもこれからも虫倉山である。
360度の展望と里山でありながら登山気分を十分に味わえる自然
の良さに加えて、古くから伝わる山姥(やまんば)伝説により虫倉
神社とともに子育ての神様として信仰されている。
今後は、長野市の名所に加えていただき、中条を子育ての里とし
て愛していただければ、さらにこの地は元気になると思う。この地
域の自然、歴史、伝承文化、人のつながりの強さ、先人の地域を守
る伝統、これらをしっかりと守り、長野市中条地区として、「~善
光寺平に結ばれる~人と地域がきらめくまち“ながの”」の一翼を
担いながら、この中条地域の発展を心から願い、一日も早く長野市
民に溶け込むよう最大の努力をすることを約束する。
そして、合併が希望と夢に向かっての新たな第一歩であるという
気持ちを持ち、先人が築いてきた思い出をそれぞれの立場で一つ一
つ心に刻みながら力強く前進したい。
**********
式典では、中村町長さんも久保田村長さんも感極まった感じで、
若干涙ぐんでおられるように感じた場面もありましたが、両町村長
さんはじめ、住民の皆さんの心境をお察しすると、私もあらためて
厳粛な気持ちになりました。
両町村の式典では、出席された大勢の方々からの祝辞がありまし
た。
そのうち、県知事さんからの祝辞は、「このたびの合併は、これ
からの地方分権社会、そして少子高齢化社会に対応できる基礎自治
体を目指して、将来を見据え熟慮を重ねた上でのご英断であり、心
から敬意を表する。合併により町や村としての歴史は幕を閉じるが、
これまで培われてきた歴史、文化、自然はこれからもはぐくまれ続
ける。この地の特性を生かし、活力あふれる地域づくりが進むこと
を期待する。」という趣旨でした。
私も合併先の市長という立場からあいさつさせていただきました。
私がお伝えしたかったことは、合併はあくまで手段であり、重要
なのは、地域の皆さんが合併して良かったと思えるまちづくりを行
うことです。信州新町や中条村の皆さんが合併を選択されたその思
いを深く受け止め、これまで培ってきた歴史や文化を尊重し、有形
・無形の地域資源を生かし、「人と地域がきらめくまち“ながの”」
を目指して、住民福祉の向上、活力ある地域づくりに取り組んでい
きたいと思っています。
そして、合併協議を通して、信州新町や中条村から学ぶべきこと
がたくさんあることを知りました。合併後は、信州新町や中条の皆
さんが長野市民として何ができるかを考え、胸を張って、堂々と長
野市の一員として活躍してほしいと考えています。
以上のようなことは、平成17年の合併に際しても申し上げてき
たと記憶しています。
そのほか、合併によって、役所が遠くなるということを心配され
ている方もいるようですが、心の距離は皆さんの方から近づいてき
ていただきたいとも思っています。
地名も、頭に“長野市”が付くと、その分呼称が長くなりますの
で、公式文書以外は“長野市”を付けなくても良いと思っています。
例えば、松代は「信州松代」、戸隠は「信州戸隠」として、“長野
市”にこだわらずに情報発信していることも多いようです。
さあ、あと1週間で、新しい長野市がスタートします。両町村民
の皆さんの期待にも応えられるよう受け入れ態勢を整え、みんなが
合併して良かったと思えるまちづくりに最大限努力していきましょ
う。
2009年12月17日木曜日
国が行っている事業仕分けと長野市
先月11日から27日にかけて、国の行政刷新会議ワーキンググ
ループによる「事業仕分け」が行われ、大々的に報道されました。
言ってみればこの事業仕分けという手法は、来年度予算編成に向け
て、これまでは財務省の主計官が密室で行っていた、膨れ上がった
予算要求の査定作業を公開の席上で行った、ということでしょう。
この光景、最初に見たときはちょっと驚きましたが、実際に仕分
け会場で行われている内容自体は、財政状況の厳しさが増している
地方自治体として以前から常時行っていることだと、しばらくして
から分かりました。
長野市では、数年前に財政が厳しく、積立金を大幅に取り崩さな
いと予算が組めないという状況に直面した際、事態を切り抜けるた
めに、全庁を挙げて財政構造改革に取り組みました。「入りを量り
て、出ずるを為す」の理念の下、個々の事業の細部にまで切り込ん
で検討した結果、積立金に頼らない財政状況をつくり出すことをほ
ぼ実現しました。
その後も、行政改革推進委員会行政評価部会が中心になって、既
存の事務事業について常に見直しを行い、無駄を廃した効率的な財
政運営に努めています。
長野市のやり方と国の事業仕分けとの違いについて、感じたこと
を3つ書かせていただきます。
(1)長野市の予算査定会議には、外部から仕分け人を入れていま
せん。
(2)けんか腰ではなく、話し合いで検討しています。
(3)長期的な視点として、長野市では持続可能な行政経営の視点
を取り入れています。
(1)外部の人を予算査定会議に入れること
このことの是非は、なかなか難しい問題です。ただ、国とは違い、
地方自治体の職員は常に地域の皆さんとの共同作業を行っています。
つまり、地域の要望をよく分かった上で予算編成に臨んでいますの
で、予算査定の段階であらためて外部から意見を求める必要がある
のか疑問です。
また、“外部から”といっても、公募を含めてどのような人に入
っていただくかということもなかなか難しい問題です。
長野市では、平成14年度から事務事業評価を行っており、市が
実施すべき事業なのか、民間で同種のサービスが無いのか、などの
視点で各事業を評価し、その結果を予算に反映させています。そし
て、何より市議会は首長のチェック機能として一番大きな役割を果
たしているのです。
また、市の制度としては、監査委員制度(常勤の代表監査委員1
人、市議会代表2人、民間代表1人で構成)のほか、外部の専門的
な知識を有する方が監査を行う包括外部監査制度もありますから、
予算査定のためにあえて外部から仕分け人を入れる必要はないので
はないかと思っています。
(2)けんか腰の議論
けんか腰の議論で仕分けが行われている様子には、どうも違和感
を覚えました。確かに、95兆円にも膨れ上がった予算要求から3
兆円を削ることが目的、すなわち最初から減額・廃止ありきの議論
ですから、仕方ないと言えばそれまでです。
しかし、イソップ物語の北風と太陽の話にもありますが、強引な
査定というのは説得性に欠けますね。糾弾集会ではないのですから、
日本人のメンタリティから言うと、穏やかに話し合う雰囲気が必要
だと思いました。
(3)長期的視点の欠如
長期的視点が欠如していることについては、誰が見ても明らかで
しょう。ノーベル賞受賞者が、そろって日本の科学技術が遅れる恐
れを指摘しており、鳩山首相もほぼ認めているような感じです。い
ずれにしろ、長期的な視点で考えると、事業仕分けにはなじまない
案件もあるように感じます。
身近な例では、文部科学省が所管する施策の「地域科学技術振興
・産学官連携」が「廃止」と評価されました。この施策には、地元
企業65社、信州大学、県や長野市など、産学官が連携して進めて
いる「長野県全域知的クラスター創成事業」が含まれています。
施策の継続については、上田、須坂、千曲の各市長さんと共に4
市長連名で要望書を文部科学省に提出したところですが、この事業
の前身「長野・上田地域知的クラスター創成事業」では、特許出願
233件、論文391件、ベンチャー設立7件、商品化・事業化2
1件、技術移転9件、国・県等支援施策採択数14件など、国際競
争力もある大きな成果を生み出しているのです。仮に仕分けの評価
どおり廃止になれば、科学技術の遅れのみならず、今後の長野地域
の産業振興や雇用確保、人材育成などに与える影響も計り知れませ
ん。
そのほかにも、仕分けの対象になった事業とならなかった事業と
の区別が分からない、仕分け人はどのように選任されたのか・・・
よく分からないことも多いのです。
ただ全体としては、公開で行ったことで、国民としてお金の流れ
が少し分かったということは、プラス評価でしょう。
この事業仕分けにより、具体的に長野市の行政にどのような影響
が出るのかがまだ見えてきません。ただ、現在はまだ単なる仕分け
作業の段階です。今後、実際に予算案が固まるまでには、いろいろ
な折衝が行われ、政治判断も出てくるはずですから、それまでは何
とも言えないでしょう。
従来であれば、いろいろな陳情活動や事務局の折衝などで、「こ
の予算は大丈夫」とか、「これは無理そうだ」とかの情報が入って
きたのですが・・・今年は情報が少なくて困っています。
長野市に関係しそうな事業では、市内のバス交通に関する補助金、
まちづくり交付金などが「地方自治体の判断に任せる」という結論
になっています。しかし、この結論には、財源に関する議論が含ま
れていないことから、一体どのように地方に任せられるのか、全く
分かりません。
さらに、市の収入に占める割合が二番目に多い地方交付税が、
「(抜本的)見直しを行う」となっています。これも、どのように
見直されるのか、増えるのか、減るのか、全く分かりません(“地
域主権”を持ち出した内閣ですから、大幅に「増」ということにな
るのではないかとひそかに期待しているのですが・・・)。多分、
多くの自治体は、来年度予算の閣議決定まで、予算の組みようがな
いと思います。
ただ、先日決まった第二次補正予算の中に、事業仕分けで削られ
た事業が幾つも復活している、という話もあるようですが・・・。
いずれにしても、地方に任せるということは、ただ単に事業単位
で振り分けるのではなく、国と地方の役割分担の見直しや権限・税
源の移譲など、その前提になる議論が必要なのだと思います。それ
があって初めて地方に任せるということになるのでしょう。
話は変わりますが、先週、友人と話をしていたところ、19日の
市内3スキー場のオープンのことが話題になりました。もうすぐだ
ったのですが、待ちきれないということで、週末を利用して足慣ら
しに志賀高原へ初滑りに行ってきました。
ただ、志賀高原といえども、本格的な降雪はまだですから、雪質
も滑れるゲレンデも十分な状態ではありませんでした。それでもウ
オーミングアップにはなったかな、といったところでしょうか。
今週は、先週までに比べて冷え込みが厳しくなっていますが、そ
の分スキー場には待望の雪が積もりつつあります。
今シーズン、戸隠スキー場では、中社第2リフトの架け替えによ
り、中社と越水の両ゲレンデが一体化して、これまで以上にお楽し
みいただけるようになります。また、飯綱高原スキー場では、里谷
多英コースが未圧雪のパウダーコースとして復活しますし、今シー
ズンで営業を終了する聖山パノラマスキー場では、これまでの感謝
の意を込めて“お客さま感謝プラン”などを用意しています。
あさっての19日には、市内3スキー場がそろってオープンでき
るようになってもらいたいものです。
2009年12月10日木曜日
景気が心配です
現在の不況は何が原因か、多くの識者は「需要不足」を指摘して
おられます。私も同感です。ただ、不足している需要をどこで生み
出すのか、これが問題です。エコカー減税やエコポイント制度など
の効果で、多少は需要が出ているようですし、「住宅版エコポイン
ト制度」も創設されることになり、期待が膨らみそうですが・・・。
鳩山内閣の最初の方針は、投資や輸出に頼る経済成長ではなく、
民生の安定による内需主導の経済成長が必要、ということでした。
私もそれができるなら大賛成と感じたことは事実です。
しかし、よく考えてみると、経済の基盤や仕組みが内需主導型に
なっていないとできない、すなわち、方針どおりに需要を増やすこ
とはできないのではないかと感じています。国民は今どうしても買
わなくてはいけないものがあまり無いのではないか、たとえ欲しく
ても買う余裕がないのではないか、結局のところ輸出や公共事業に
頼らざるを得ないのではないか、そんな不安がよぎります。
今や景気は二番底に入るのではないかと心配されています。
景気を良くするには、世の中に需要が生まれてモノの売買が盛ん
になり、資金が回らなければいけません。そして何よりも、将来に
向けて国民が明るい展望を持てることが必要です。
公共事業不要論に乗って、予算の重点を変えて公共事業を激減さ
せてきた・・・これは民主党の政策だけではなく、自民党もその道
を歩いてきたわけです。
しかし、いまさらではありますが、世の中に資金を回す方法は、
広い意味での公共事業がやはり有効なのではないかと思うようにな
りました。公共事業や民間投資などが激減していることにより、そ
れらを受注する企業の淘汰(とうた)はすでに始まっています。で
も、現段階であればまだ公共事業の受注基盤が残っており、世の中
に資金を回すことができると思うのです。
今後、過度に企業の淘汰が進むと、このような基盤すら無くなっ
てしまうのではないか、そんな心配もしています。
世の中に資金を回すもう一つの方法として、投資の面で今まであ
まり厚遇されてこなかった中山間地域に新しい産業を興す、という
ことがあると考えています。中山間地域に資本を投下して、もうけ
ることができる地域にしていかなくてはならないと思うのです。そ
の筆頭プログラムは、付加価値の高い農林業の育成、観光・交流業、
そしてバイオマス関連事業への投資だと思っています。ただ、今す
ぐ大規模な需要を生み出す即効性はありませんが・・・。
強行採決で衆議院を通過した中小企業等金融円滑化法(返済猶予
法)が、先月30日、参議院で可決、成立しました。借入金の返済
延期だけで、どの程度の効果が出るかは分かりませんが、それでも
一定の効果は見込めると思います。ただ、この法律で新しい需要が
生まれるわけではありませんし、企業の財政規律心の劣化や金融機
関の体質弱化が心配です。そもそも企業の願いは、金融よりもモノ
(仕事)が欲しいということにあるのだと思います。
“埋蔵金”を予算に組み込む話も、行政刷新会議の「事業仕分け」
により現実的な話になってきました。
確かに、一時的には有効な手段かもしれませんが、次年度はどう
するのでしょうか。この“埋蔵金”は、独立行政法人などが過去に
ためてきた資金ですから、その法人の体質が弱くなるのは当然とし
て、二度は使えない手段であることも確かでしょう。
あえて予算に組み込まなくても、省庁の予算から関係法人に支出
される補助金を削り、“埋蔵金”である法人の内部留保を使うよう
に促がせば、同じ効果が得られるはずです。
「子ども手当」の創設も素晴らしい発想ですが、麻生政権が実施
した定額給付金などと同種のバラマキ政策であることに変わりあり
ません。ただ、一度だけの支給でない点は大きな違いです。また、
地方自治体としては、新たな負担を国から求められる心配もありま
す。
高速道路の無料化も、既存の経済秩序で頑張っている、例えばフ
ェリーや新幹線・在来線などの公共交通機関の経営にどんな影響が
出るか、高速道が低速道にならないか、地球温暖化への影響は大丈
夫か、心配は尽きません。
個人的な見解ですが、究極の“バラマキ”は、日本の山林すべて
を国が買い上げることではないかと思っています(山林に限定しな
くてもいいかもしれません)。価値が無いと判断したのでしょうか、
実質的に相続放棄されている山林も思いのほか多いようです。社会
主義的な発想で面白くないと思っている部分もあるのですが、買い
上げができれば公共事業などが実施しやすくなるという効果もあり
ますし、自然環境の保全にも大きな役割を果たしそうです。地方に
任せてもらえれば、どんどん進めていきたいと思っています(英国
に始まったナショナルトラスト運動につながるといえば、そうかも
しれません)。
先月、政府は、現在の日本経済がデフレ状況にあるという認識を
示しました。デフレの反対はインフレですが、私の記憶の中でイン
フレがひどい時期といえば、終戦直後は別とすると、昭和48年の
第一次オイルショック前後の時期です。当時、私はすでに、早世し
た父に代わって会社を経営する立場にありましたので、インフレ手
当てとして社員の給料を30%近く上げざるを得なくなり、苦しん
だことを記憶しています。
いまさらながらに思うのですが、よく倒産しなかったものです。
そのころ、デフレなんて想像もできませんでした。デフレは物価
が下がりますから、消費者として一時的には喜べるでしょう。ただ、
その反面で、企業は利益が出なくなりますから、結局は給料が下が
ることにつながります。さらに物価が下がれば、企業は経費を削る
ために人員整理をせざるを得なくなり、結果として税収も下がって
行政も困り、景気が悪くなって、さらに人員削減、需要不足が起こ
る・・・いわゆるデフレスパイラルです。これが、今日本で起こり
つつあるのだと思います。そしてこれは、現在の日本人にとって、
初めての経験と言っていいのでしょう。
資本主義の社会では適度なインフレが望ましい姿であると、識者
から教えられたことが今あらためて思い出されます。
2009年12月3日木曜日
今年も12月になってしまいました
12月、何となく気ぜわしい時期になりました。12月のことを
「師走」と言いますが、何となく分かる気分です。この場合の「師」
は、先生という意味でしょうか、それともお坊さんを意味している
のでしょうか・・・。
11月中は、選挙明けということで、ひと息入れたい気持ちもあ
ったのですが、投票日の翌々日には初登庁になってしまいました。
その後、松山市へ出張したり、アスペース篠ノ井や川中島小学校で
移動市長室を行ったり、市立高校の創立90周年記念式典への出席、
戸隠のトレイルランレースのスターター、都市デザインフォーラム、
長野市民会館を建て替えるか否かについての市民会議、茶臼山動物
園のレッサーパンダの森完成記念式典・・・。
23日には長野えびす講煙火大会におじゃまさせていただきまし
た。広く日本中からお客さんにお越しいただき、30万人を超える
人出があったとのことです。確かに犀川河川敷は、大変な人込みで
したし、花火もミュージック・スターマインをはじめとして素晴ら
しいものでした。
今年は不況の影響で、全国的に中止または縮小に追い込まれてい
る花火大会が少なくないようですが、主催した長野商工会議所と長
野商店会連合会にお聞きすると、長野は盛大な冬の花火で心意気を
示そうと、昨年より多い7,500発を打ち上げたのだそうです。
政権交代した後、私にとって初めてとなる国への要望・提案活動
にも出掛けました。すでに3回になりますが(全国史跡整備市町村
協議会、北陸新幹線関係都市連絡協議会、道路関係期成同盟会)、
これらもすべて11月中でした。
結構慌ただしい日程をこなしてきています。
さて、12月。忘年会がたくさんありそうですね。お酒は飲み過
ぎると体に良くありませんが、人と人とのコミュニケーションのた
めには、優れた効果を生み出します。また、お酒の席には「雑談」
も付き物です。日ごろ私がよく言っていることですが、「雑談」の
中にこそ素晴らしいアイデアが詰まっている可能性が高いのです。
お酒の席の効用は、まさにこの「雑談」にあるのかもしれません。
私の普段の仕事の中では、会議や懇談、打ち合わせなど、さまざ
まな方と会話をする機会が数多くありますが、それらの中に「雑談」
の時間はほとんどありません。いずれも市長という肩書を外してと
いうわけにはいきませんし、それぞれ目的があり、時間的な制約も
ありますので仕方ないのでしょう。
そのような中ですから、たまに気の合った仲間や家族とお酒の席
で談笑する・・・私は至福の時を感じます。そして、このような中
で生まれるアイデアや気付きも案外少なくないと思っています。
本日12月3日、市議会定例会が始まりました。この定例会では、
長野市民会館や都市内分権についていろいろ議論されることになる
と思います。
長野市民会館については、11月16日の「市役所第一庁舎・長
野市民会館に関する市民会議」で出された意見や、「長野市民会館
建設検討委員会」の意見、市民の皆さんの意見を基にして、私から
市議会にご提案したいと考えています。その上で、議員さんからの
意見を慎重にお聞きしてまいりたいと思っています。
結果は、あらためて皆さんにご報告したいと考えていますが、い
ずれにしても期限のある話ですから、いつまでも検討しているわけ
にいかないことは事実です。
12月19日には、市内3スキー場のオープンを予定しており、
待望のスキーシーズンが始まります。今シーズン、特に戸隠スキー
場では、中社ゲレンデのリフトを架け替えるなど、リニューアルに
取り組みました。
このリニューアルは、スキーの持つ素晴らしい魅力を多くの市民
の皆さんに満喫してほしい、心身の健康に役立ててほしいという思
いとともに、中山間地域と都市部との交流人口を増やすための重要
な施策として実施したものです。
長野県にとって、冬の観光にスキーが果たしてきた役割はとても
大きなものがあります。長野市にとっても当然で、何としてもスキ
ーを冬の観光の目玉に復活させ、観光客・宿泊客の増加、お土産品
販売や地元レストランの繁盛、地元雇用の増加等々を図りたいと、
かなり欲張っています。
リフトやゲレンデの整備も大切ですが、歩くスキーも力を入れて
みたい分野です。また、グリーンシーズンでは、ノルディックウオ
ーキングやトレイルランニングもいいと思っています(先日、戸隠
診療所の佐々木先生に誘われてノルディックウオーキングに参加し
てきました。健康にも良いそうですから、今後さらに人気が出るで
しょう)。
確かに現在、スキーは冬の時代と言われ、スキー場全体に元気が
ありません。地球温暖化で雪が不足がちであることや、娯楽が増え
て人間の行動が分散しているからスキーの復権は難しいという方も
いらっしゃいます。
しかし、そんな時だからこそ、リフトの架け替えをきっかけにし
て、“戸隠スキー場は頑張っているぞ”という発信力を高め、そし
て何より“いいとき(飯綱高原、戸隠、鬼無里)観光エリア”の目
玉として、存在感を増していきたいのです。
皆さん、19日の戸隠のスキー場開きには、ぜひ、お仲間、ご家
族等々おそろいで来場いただき、前途を祝していただきたいと思い
ます。そして、飯綱高原スキー場、聖山パノラマスキー場にもぜひ
お出掛けください。
2009年11月26日木曜日
松山市と「坂の上の雲」
11月5日、中核市サミットが愛媛県松山市で開催されました。
選挙が終わった直後でしたが、政権交代後の国と地方の関係を知る
上で重要と考え、私も出席してきました。
サミットに先立って行われた、中核市財政基盤確立検討、中核市
制度研究、地域活性化施策検討、地域公共交通(生活バス交通)活
性化の各中核市市長会プロジェクト会議では、国への提言、プロジ
ェクトの今後の活動について議論がされました。政権交代がなされ
てから時間の経過が少ないためか、総じて今後の国の動向を見極め
ていく必要があるという趣旨の意見が多かったように感じています。
サミット開会式の後、「中核市から日本を変える」というキャッ
チフレーズの下で、四つの分科会に分かれて討議しました。各分科
会のテーマは、第1分科会「健全な財政運営に向けた取り組み」、
第2分科会「住民主体のまちづくり」、第3分科会「地球温暖化対
策への取り組み」、第4分科会「スポーツを通じたまちづくり」で
す。
私は第4分科会に出席し、オリンピックを開催した都市としての
責務について持論を述べさせていただきました。景気の影響もあっ
て企業チームが撤退し、クラブチームに移行している現状を考える
と、資金問題がスポーツの在り方を大きく変えていく時代なのだと
感じています。
そして、各分科会での議論も踏まえ、最後に、次のような「中核
市サミット松山宣言」を採択して終了しました。
**********
これまで中核市は、制度発足以来、地方分権の進展を目指し、そ
の先導者として大きな役割を果たすとともに、自らの行政改革にも
積極果敢に取り組んでまいりました。
現在、国においては、歴史的な政権交代を機に、国と地方の役割
分担や国の関与のあり方について、抜本的な見直しが行われようと
しており、地方分権は、新たなステージへ進みつつあります。
一方、地方では、世界同時不況による景気の低迷、少子化による
労働力人口の減少、地球温暖化による異常気象などの厳しい状況の
下、複雑・多様化する住民ニーズに対応しつつも将来に亘(わた)
って持続可能な行政運営を目標に更(さら)なる改革を進めていま
す。
こうした中、中核市は市民に最も身近な基礎自治体として、また、
地域の拠点都市として、中核市特有の課題にも積極的に取り組み、
市民満足度の向上を目指したクオリティの高い行政サービスを展開
することにより活力に満ちた地域社会づくりに邁(まい)進してお
ります。
私たちは、将来世代が夢や希望を共感し、安全・安心で快適に暮
らせる社会を構築するため結束し、地方分権の流れを更に大きなう
ねりとし、地域主権の確立を目指し全力で取り組むことを全国にア
ピールするため次のとおり宣言します。
1 中核市は、今後も行財政改革を推進することで健全な財政運営
に努めるとともに、国と地方の役割の見直しを通じて市民に最も
身近な自治体として地域主権の確立を目指します。
2 中核市は、地域住民の主体的で自立したまちづくりを推進する
ため、住民を対等なパートナーとし、協働のまちづくりを推進し
ていきます。
3 中核市は、市民・事業者・行政の協働の下、地域の特性を活
(い)かした温暖化対策に積極的に取り組み、誰もが安心と豊か
さを実感できる低炭素社会の実現を目指します。
4 中核市は、スポーツを「する」「みる」「支える」すべての人
たちを応援し、スポーツの振興を通じ、「ひと」と「ひと」をつ
なぎ、「まち」の元気と活力を創出します。
平成21年11月5日
中核市市長一同
**********
松山市には以前にも行ったことがあったのですが、あらためて素
晴らしい都市だと感じました。人口は51万人強だそうですから、
長野市より一回り規模が大きな都市です。松山空港、松山城、道後
温泉・・・前に訪れたときの記憶はあまり鮮明ではないのですが、
とても落ち着いた街、というのが今回あらためて感じた印象です。
早朝、市内電車に乗って道後温泉にも行くことができました。
私が松山市に好感を持つようになったのは、小説の影響、特に夏
目漱石の「坊っちゃん」と司馬遼太郎の「坂の上の雲」の影響が大
きいように思います。
「坊っちゃん」は、中学生のころ「吾輩は猫である」などと一緒
に読んだことがあり、主人公の同僚の先生である赤シャツが痛烈に
やっつけられる場面を楽しく読んだことを思い出します。
「坂の上の雲」は私の愛読書の一つです。秋山好古・真之兄弟と
正岡子規の物語、そして日清戦争、日露戦争・・・明治の時代、新
しい日本が右肩上がりで上っていく時代を司馬さんは素晴らしいタ
ッチで描いておられますよね。日露戦争で日本はどうして勝利でき
たのか・・・大山巌・児玉源太郎の中国での戦い、そして日本海海
戦、その背景にあるマダガスカル島でのバルチック艦隊滞留、日英
同盟の意義、対馬での決断・・・。日本は、この成功体験が仇(あ
だ)となり、昭和の時代に入って軍部が台頭し、太平洋戦争に突入
してしまった・・・司馬さんの「明治という時代」への思いがよく
表れていると私は思っています。戦争が題材ですから、ただ楽しい
小説だと言ってしまうには抵抗がありますが、この小説は日本の誇
りと言えるのではないでしょうか、私はそう思うのです。
今月29日からNHKのスペシャルドラマで「坂の上の雲」が放
映されます。存命中、司馬さんはドラマ化を断っていたのだそうで
すが・・・でも期待は大きいですね。ここ最近、毎回欠かさずに見
るようなテレビドラマは無かったのですが、このドラマは、ぜひ全
部見たいと思っています。
サミット翌日は、朝から会議が行われたり、夕方までに長野に着
かなければならなかったりで、少し忙しかったのですが、サミット
会場のすぐ近くの「坂の上の雲ミュージアム」を視察できました。
この施設は、建築家・安藤忠雄氏の設計なのだそうですが、建物
の平面が三角形で、とてもユニークな形です。内部の展示は、「坂
の上の雲」の主人公である秋山兄弟と正岡子規の3人の生涯を中心
に構成されています。そして、そこからは「明治」という時代を生
きた人々の高い志や気概が伝わり、近代国家として成長した「明治
の日本」の空気を強く感じることができました。
短い時間でしたが、松山市の魅力を知る、とても有意義なひとと
きでした。
2009年11月19日木曜日
11月、元気な長野のイベント
11月の上旬、市内で開催されたいろいろなイベントや式典に参
加しましたので、幾つかご紹介します。
11月6日~8日、ビッグハットでISUグランプリシリーズの
第4戦「2009NHK杯国際フィギュアスケート競技大会」が開
催されました。来年のバンクーバーオリンピックに向け、グランプ
リシリーズで優秀な成績を残そうと、各選手、力の入った熱戦を繰
り広げていました。
結果は、女子のシングルで、安藤美姫選手が優勝、男子シングル
では高橋大輔選手が4位となりました。バンクーバーオリンピック
のフィギュアスケートシングルの日本の出場枠は、男女共3人だそ
うですから、オリンピック出場を懸け、これから熾烈(しれつ)な
競争が行われるのでしょう。アイスダンスやペアも、昔に比べ、と
てもレベルアップしていると感じました。日本スケート連盟の橋本
聖子会長、林泰章副会長も長野入りされ、力の入れ方は大変なもの
でした。
11月7日、「市立高等学校創立90周年記念式典」が行われま
した。県内唯一の「市立高校」が、数回の変遷を経ながらも90周
年を迎えたことは、とても感慨深いことです。
市立高校は、大正8年、市立長野実科高等女学校として開校、そ
の後、長野市立高等女学校、長野市立高等学校、市立皐月高等学校
を経て、昨年度から男女共学・総合学科の「市立長野高等学校」に
生まれ変わりました。
これまでの卒業生は2万人を超え、地域を支える有為な人材を輩
出し続けています。この式典に臨み、市立高校は、同窓生、教員、
地域、市民の皆さんの力で支えてきていただいたのだと、あらため
て感じました。
市立高校は、「市立長野(いちりつながの)」としての開校を機
に、平成22年度までの工期で校舎などの全面改築を行っています。
本年度は複合体育館と弓道場が完成し、この90周年のお祝いの機
会に皆さんに披露できたことは喜ばしいことでした。
特に式典の会場となった複合体育館は、とても素晴らしい施設で
す。学校数が多い県立高校では、ちょっとまねすることが難しいか
もしれません。今後も「市立」であることを常に意識して、素晴ら
しい、そして特色ある学校に育てていきたいと思っています。
11月7、8日、「篠ノ井まつり恵比寿講」が行われました。日
程の都合で残念ながら私は参加できず、酒井副市長が出席させてい
ただいたのですが、「しののいソーラン」、花火、移動動物園、篠
ノ井西中学校の生徒さんたちによる吹奏楽の演奏等々、楽しいイベ
ントがたくさんあり、七福神が沿道に御供(ごく)をまく「宝船」
も出て、篠ノ井駅前通りは大変な人出だったとのことでした。
篠ノ井地区が元気であることはうれしいことです。ただ、このイ
ベント、長野市全体から見ると、まだあまり知られていないのでは
ないかとも感じています。もっと宣伝して、知名度を上げていきた
いですね。来年は、ぜひ私も宝船に乗ってみたいものです。
同じく11月7、8日、戸隠スキー場のゲレンデをスタート・ゴ
ールとした「第1回信州戸隠トレイルランレース&アウトドアフェ
スタ」というイベントが開催されました。私は名誉大会長というこ
とで、レースのスターターを務めさせていただきました。早朝の高
原ですから、かなり寒かったのですが、スタートの合図とともに皆
さん元気に坂を登っていかれました。
レースは、45キロメートル、25キロメートル、5キロメート
ルのコースに分かれていましたが、スキー場の坂に代表されるごと
く、どれも山あり谷ありの道路ではないところが多いコースです。
しかも、それをマラソンより長く走るのですから、大変な耐久レー
スだと言えます。
役員さんにお聞きしたところ、参加申込者は約800人、宿泊は
約400人ということで、戸隠地区の宿泊施設にも大変な経済効果
をもたらしていることが分かりました。ありがたいことです。飯綱
高原や、信濃町方面へもコースが伸びているようですから、今回の
第1回を契機として、これから工夫を加えて第2回、第3回と回数
を重ねることによって、名物イベントになる可能性を秘めていると
感じています。
エンデュランスという馬術競技もこのトレイルランレースと似た
ようなコース取りをする競技です。いずれはこちらも開催してみた
いと考えています。
11月8日、長野シルバー人材センター設立30周年を記念した
「シルバーまつり」が、長野市民会館集会室で開催されました。長
野シルバー人材センターは、昭和54年に県下で初めて設立されて
以来、大いに頑張っていますから、売り上げも上がってきており、
お祭りを実施するだけの実力が備わってきたということです。
日ごろの互助会活動の成果である作品の展示やステージでの発表、
独自事業として門松・しめ飾りの展示実演、農産物の即売など、元
気な、そして十分に商売になる実力を見せていただきました。
11月8日には、「AC長野パルセイロ・サポーター感謝デー」
も開催されました。2009年シーズン終了に当たり、AC長野パ
ルセイロの選手がサポーターの皆さんに感謝し、来年の活躍を誓う、
そんなイベントでした。南長野運動公園でのキッズサッカースクー
ルやザスパ草津U-23との特別試合、その後、懇親会もあり、選
手とサポーターの皆さんが一体になって、にぎやかなイベントにな
りました。
今シーズンのパルセイロは、残念ながら北信越1部リーグで2位
に終わり、全国地域リーグ決勝大会への出場はかないませんでした。
でも、この階級では全国屈指の実力があると認められていますので、
来年こそ勝ってJFL(日本フットボールリーグ)への昇格を果た
してほしいものです。
なお、本年度、女子の「なでしこリーグ」に所属していた大原学
園JaSRA女子サッカークラブが、AC長野パルセイロ・レディ
ースとして移管され、来シーズンは男女そろってリーグへ臨むこと
になりました。11月1日にその移行式があったのですが、女子リ
ーグへの参入により、長野の地にも女子サッカーの文化が普及し、
相乗効果が生まれてくることを期待しています。
11月9日には、「都市デザインフォーラム in NAGAN
O」を開催しました。はじめに、今年で22回目になる長野市景観
賞の表彰を行い、その後、俳優の渡辺篤史さんに「建もの探訪」と
題した講演をしていただきました。
長野市景観賞は、昭和63年から実施しており、良好な景観づく
りに寄与している建築物や工作物、景観の向上に努力されている市
民団体などを、毎年市民の皆さんから推薦いただいて「長野市景観
審議会」で選考し、表彰しているものです。“継続は力なり”。こ
の景観賞を続けてきたことによって、少しずつではありますが、長
野市の風景が良くなってきていることを実感しています。
ただ、私の受け取り方かもしれませんが、今年は景気が悪くて民
間の新しい建物が減っているのでしょうか、例年より応募数が少な
く、かつ行政関係の作品が多かったように思います。その中で、中
央通りに復元建立された「春日灯籠(とうろう)」は、実行委員会
の皆さんの努力もあり、光っていました。
第22回長野市景観賞表彰作品
・長野市民病院 中央棟、南病棟
・善光寺表参道復元建立春日灯籠
・長野市立博物館付属施設 門前商家ちょっ蔵おいらい館
長野市景観奨励賞
・みんなで北中を良くする会
2009年11月12日木曜日
秋篠宮殿下お成りとクリアウォーター市長の来長
選挙前でこのメルマガをお休みしていたため、ご報告が遅れまし
たが、10月初旬、長野市に賓客をお迎えしましたので、今回はそ
の報告をさせていただきます。
10月7日から9日、第57回動物園技術者研究会が長野市で開
催され、その主催者である日本動物園水族館協会の総裁を務めてお
られる秋篠宮殿下が長野市にお見えになりました。
この研究会は、全国から大勢の動物園の飼育員、獣医師の皆さん
が一堂に会して行われる大規模な研究会です。長野市では初めての
開催でしたが、3日間にわたり、研究発表、茶臼山動物園の視察な
どのほか、歓迎レセプションも行われ、大変意義のある研究会にな
りました。
秋篠宮殿下には、ご公務お忙しい中での来長でしたが、研究会の
合間に戸隠地質化石博物館、茶臼山動物園のレッサーパンダや長野
県在来の鶏の一種である信州唐丸をご視察いただきました。私は同
行できなかったのですが、大変ご興味をお示しいただいたとお聞き
しています。
今回私は、ホテルの一室で、30分近く市政概要を説明する機会
を頂きました。殿下と二人だけでしたので緊張しましたが、地図を
机の上に広げて長野市の沿革や歴史、自然、現状などについてお話
しさせていただきました。殿下は、山階鳥類研究所の関係などで何
度も長野にお越しいただいていることから、長野についてはよくご
存じで、今回の訪問を楽しんでおられることがよく分かりました。
殿下にもご説明させていただいたのですが、動物園のある篠ノ井
の茶臼山は、大規模な地すべりがある地域として全国的に有名だっ
た場所です。昭和40年代以降、深井戸や排水トンネル掘削など、
強力な対策工事によって次第に安定し、地すべりは収まりました。
この地すべりの跡地に整備して皆さんにご利用いただいているのが、
自然植物園や恐竜公園です。隣接している茶臼山動物園は、昭和
58年の長野市制施行80周年記念事業の一環として整備したもの
で、もともとここは、地すべり地帯ではありません。
今回、殿下にご覧いただいたレッサーパンダは、長野市が中国河
北省石家庄市と友好都市を締結したことを機に、石家庄市から贈ら
れたのが始まりです。以後、繁殖に努めた結果、今や“日本のレッ
サーパンダのふるさと”と言われるくらい、日本中に嫁入りや婿入
りをしています。
また、レッサーパンダの獣舎ですが、これまでのものが老朽化し、
手狭になっていたことから、いろいろなアイデアを入れて新たなレ
ッサーパンダ舎を建築していました。そしてこのたび、素晴らしい
期待の獣舎が完成したのです。
実は、今回の殿下のお成りに合わせてこの完成記念式典を開催し、
殿下にもご臨席いただきたいと考えていたのですが、台風18号の
影響により式典を延期せざるを得なくなってしまいました。ご出席
いただくことがかなわず残念でしたが、殿下にはご視察の中で新し
いレッサーパンダ舎をご覧いただくことができましたので、大変光
栄に思っています。
茶臼山動物園では、今後、順次園内をリニューアルして、動物園
を生まれ変わらせたいと張り切っており、今回のレッサーパンダ舎
の建築はその第一弾です。昨年度、茶臼山動物園には、約20万人
のお客さんにお越しいただきました。リニューアルを機に、本年以
降、さらに多くの皆さんにお楽しみいただけるのではないかと期待
しています。
同じ時期、10月8日から11日まで、長野市の姉妹都市である
アメリカ合衆国フロリダ州のクリアウォーター市から、フランク・
ヒバード市長夫妻、ポール・ギブソン副市長夫妻、ジョージ・クレ
テコス市議会議員夫妻、ジョン・ドラーン市議会議員夫妻の8名が、
姉妹都市提携50周年を記念して長野市を訪問されました。
クリアウォーター市ご一行の皆さんには、市役所玄関棟での歓迎
式典、市議会全員協議会での記念あいさつ、協定書調印式、歓迎レ
セプション、長野市周辺の視察、松代藩真田十万石まつり参加など、
忙しいスケジュールをこなしていただきました。
協定書の調印式は、レセプションの直前に別室で行いました。
50年前の姉妹都市提携を結んだ当時は、両市議会の議決をもっ
て提携が承認されたようで、双方で取り交わした書類は特に無かっ
たようです。そこで、今回の50周年を記念して、両市のこれまで
の友好関係を振り返るとともに、将来のさらなる交流の進展を願う
「協定書」を作ろうということで、以下のような協定を交換するこ
とになったのです。
***************
50周年記念姉妹都市協定書
日本国長野県長野市とアメリカ合衆国フロリダ州クリアウォータ
ー市が、両国間の相互理解と友好親善を深めるため、昭和34
(1959)年に両市の市議会において姉妹都市の提携について議
決をしてから、平成21(2009)年の今年で50周年を迎える。
この間、両市の間を絶えることなく多くの市民が行き来し、教育や
文化など様々な面で交流を深め、変わらぬ絆(きずな)と深い友情
を育んできた。
姉妹都市提携50周年を迎えるにあたり、これまでの両市の交流
の歴史を誇りをもって振り返るとともに、これまで築いてきた両市
民の友好の絆を一層深め、将来の更なる交流の進展を願い、平成
21(2009)年10月8日、日本国長野県長野市において、こ
の協定書を交換する。
***************
調印式では、両市議会議員の皆さん等々にお立ち会いいただく中
で、緊張して署名をし、ヒバード市長と固い握手を交わしながら、
協定書を交換させていただきました。
歓迎レセプションには、国際親善クラブの皆さんや、これまでに
クリアウォーター市との交流事業にかかわった皆さんなど、大勢の
市民の皆さんに出席していただき、楽しくにぎやかなパーティーに
なりました。
視察では、リンゴ狩り、そば打ち体験と自ら打ったそばの試食、
戸隠や地獄谷野猿公苑の見学・・・長野市周辺でいろいろな視察・
体験をしていただきました。途中、稲刈りの風景なども盛んに写真
に収めておられたそうですから、文化の違いを目の当たりにし、驚
きながらも楽しんでいただけたようです。
そして、11日の日曜日の松代藩真田十万石まつり。ヒバード市
長も大きな体に羽織・はかまをまとって陣がさをかぶり、腰に大小
の刀を差して馬に乗ってパレードに参加、なかなか貫禄(かんろく)
があり格好良い姿でした。ギブソン副市長やお二人の議員さんもそ
れぞれ重臣役に扮(ふん)していただき、奥様方には着物を着て輿
(こし)に乗っていただきました。そして、沿道の皆さんに「こん
にちは!」「ありがとう!」と日本語で話し掛けたり、ハイタッチ
を交わしたりするなど、市民の皆さんとの交流も深めておられたよ
うです。
ヒバード市長は大変感激され、「一生に一度の体験をさせていた
だきありがとう」との言葉もあり、松代の皆さんの演出に心から感
謝していました。
この日の夕方、クリアウォーター市の皆さんは新幹線で長野を後
にされ、帰国の途に就きましたが、今回、長野市民のおもてなしの
心は、クリアウォーター市の皆さんに熱く伝わったと思っています。
2009年11月5日木曜日
選挙戦でご意見を頂いた二つの話題
私は、市長選に当たって市民党を標榜(ひょうぼう)してきまし
た。地方自治体は、市民の皆さんの生活に直接関係する仕事が多い
だけに、できるだけ多くの皆さんと情報を共有し、話し合っていく
必要があると私は思っています。すなわち、一つの政党に片寄るこ
となく、多様な考え方の人たちをすべて包含する包容力が大切であ
る、と私は信じているのです。
しかし、残念ですが、市民の大多数の皆さんから支持を頂いたと
は言えない結果になってしまいました。私は、市長に就任した8年
前から、すべての市民の皆さんから支持していただける首長であり
たいと考えて市民党を名乗ってきており、そのことについては、ブ
レてはいないのですが・・・。
このたびの市長選に当たり、私は、次の4年間に何を実行するの
かを具体的にお示しする自分のマニフェストづくりに随分時間を費
やしてきました。現職であるが故に当然ですが、実現不可能なこと
をお示しすることがないように、また、理念より具体論となるよう
に心掛けてまとめたつもりです。
一方で、立候補された相手のお二人のお考えについては、理念と
してはとても魅力的でしたので、どんな長野市の姿を描いておられ
るのか、もっと具体論で意見交換できれば良かったと思っています。
ただ、その中で、長野市民会館の建て替えや、住民自治協議会と
区長制度など、幾つか具体論もありましたので、ここであらためて
私の考え方をお示しさせていただきます。
(1)長野市民会館について
長野市民会館は、昭和36年の完成で築48年、市役所第一庁舎
は昭和40年に完成、築44年です。いずれも、昭和56年以前の
旧耐震基準による建物であり、大規模な地震が頻発している昨今の
状況を見るにつけ、大勢の市民の皆さんがお越しになる施設だけに
とても心配でした。
そうした中で平成18年に第一庁舎の耐震診断を実施した結果、
震度5強以上の地震で倒壊の恐れがあることが分かったのです。市
民会館は、それより4年も古いことから、耐震診断を実施しても費
用対効果が低いということで、劣化診断や耐久度調査だけにとどめ
ています。
市民会館の耐震対策としては、耐震補強工事をするという選択肢
もあります。しかし、仮に高額な費用を掛けてこの工事をしても、
今ある建物の耐震強度はアップしますが建物の寿命を延ばすことは
できません。結局は、5~10年後に建て替えを検討しなければな
らないということで、無駄な投資になってしまいます。
また、建設から50年近く経過していますので、老朽化が著しい
上に、使い勝手、エネルギー効率も悪く、維持費も割高です。ユニ
バーサルデザインという面でも問題があり、人にも環境にも、そし
て財政的にもさまざまなマイナス面を多く抱えていることから、建
て替えという方向が出てきたのです。
オリンピック施設で代替できるのではないかという意見もありま
した。しかし、建物本来の利用目的が違い、音楽会や舞踊、演劇、
講演などに使用するには不向きで、舞台装置を設置するために手間
とお金が掛かるなど、市民会館の代替施設とするには難しいようで
す。
また、文化芸術を推進したり、学術会議などを誘致したりする長
野市の立場としては、ホクト文化ホールだけでは需要に応じられな
いと考えています。さまざまな催し物を開催する立場の方々からも、
同様の申し入れを頂いており、市内の文化団体、舞踊団体、音楽団
体等々からも必要性について多くのご要望を頂いています。
財政的な理由もあります。平成17年1月1日の合併により、市
民会館の建て替えに「合併特例債」という起債を利用できることに
なっているのです。この「合併特例債」は、国が費用の7割を交付
税で面倒をみてくれることになっていますので、地方自治体にとっ
て大変有利なわけです。
「合併特例債だって借金ではないか」という声もあると思います。
私も同感です。ですが、この「合併特例債」は、長い目で見て国の
財政負担を減らすことにつながる市町村合併をすることで得られた
支援ですから、ここで利用をためらう必要はないとも思っています。
ただ、この支援を受けるには、平成26年度までに建設を完了し
なくてはならないという制限事項が付いていますので、今、検討を
進める必要が生じているのです。何年か後に検討すればいいとした
場合には、財源確保のタイミングを逃してしまうことになり、この
ような国からの支援なしに費用を捻出(ねんしゅつ)することは、
かなり難しくなると思っています。
“ハコモノ行政”に対する批判的なご意見や、自治体の財政が厳
しいということで、さまざまなご意見がある中ではありますが、多
くの方々が利用する施設ですから、問題を放置しておくことはでき
ません。
このようなことから、市民会館の建て替えを検討せざるを得なく
なっているのです。
一部に誤解があるようにも思うのですが、この長野市民会館の問
題は、あくまでも長野市の耐震対策の一環として出てきた問題です。
耐震対策として、今、長野市が最優先に進めているのは、学校施
設の耐震化です。可能な限り早く完了できるよう努力していますが、
学校施設全400棟のうち、何らかの耐震対策を必要とする施設が
今年4月の時点で138棟もあります。工事発注に必要な構造設計
が追いつかないこともあり、これだけの建物の工事を一斉に実施す
ることはできません。また、施設ごとの耐震性にも差がありますの
で、より危険度が高い施設から対策を実施するようにしています。
当然ですが、耐震補強工事を実施しても建物の寿命を延ばすことに
はなりませんので、古い施設は建て替えています。
具体的には、市役所第一庁舎と同程度の危険性がある施設のうち、
補強工事によるものは平成22年度までに完了、建て替えるものは
遅くとも平成24年度までに着工することにしています。平成26
年度には、学校施設の9割の耐震化が完了する予定です。
そのほかの耐震対策としては、昭和56年5月以前に着工した個
人所有の木造住宅の無料耐震診断や、補強工事への補助金も用意し
ています。これまでに、簡易診断と精密診断を合わせ約2,350
戸の診断を行い、約120戸の補強工事に補助しました。
また、病院や店舗、事務所など、たくさんの人が利用する特定建
築物の耐震診断にも本年度から補助金を用意しています。市内の建
物の耐震化を促進し、安心して住めるまちにしていきたいと考えて
います。
相手候補の方々は、市民会館の建て替えを白紙に戻すと訴えてい
らっしゃいましたが、私も、まだ白紙だと思っています。11月
16日には、建て替える必要があるか否かも含めて市民の皆さんと
討論する「市役所第一庁舎・長野市民会館に関する市民会議」を開
催することにしていますので、ぜひ、ご参加ください。
(2)住民自治協議会と区長制度について
市内には、市長が委嘱する区長さんが460人いらっしゃいます
(あくまでも各区で選ばれた方に委嘱しているもので、市が区長さ
んを選任しているわけではありません)。この460人すべての区
長さんは、二つの立場を合わせ持っています。一つは、住民の皆さ
んから選出された区や自治会の代表者として活動する立場、もう一
つは、市長の委嘱により市の行政事務の一部を行っていただく立場
です。
区長さん方には、この二つの立場で日々活動していただき、地域
を支えていただいているわけですが、区長さんの中からは、仕事が
多すぎて困る、地域の中でご高齢の方が多くなり区長のなり手がい
ない・・・などの声も聞こえてきていました。
市が進めてきた都市内分権構想の一環として、区長さんの立場の
うちの一つ、“市長の委嘱”という立場を発展的に解消することに
しています。このことが、区長制度そのものの廃止と混同されてし
まった向きがあるようです。
市とすれば、区長さんへ集中している負担を分散・軽減したい、
区長さんと対等な立場で地域のまちづくりを進めていきたい、との
考えから”市長が委嘱する制度”を発展的に解消するのであって、
決して区長制度そのものを無くそうとしているのではありません。
このような誤解が生じてしまったのは、これまで都市内分権を推
進するに当たり、区長さん方のお気持ちや、区長さん方のこれまで
のご尽力に対する配慮が足りなかった面もあったのではないかと反
省しています。
区長さん方には、今後も住民自治協議会の中核として活動いただ
くとともに、それぞれの区や自治会の代表者として地域を引っ張っ
ていっていただかなくてはならないと考えています。また、日々地
域を支えていただいている区長さん無しには地域はまとまらず、住
民自治も成り立たないとも考えています。そして、区長さんのリー
ダーシップ、地域を思う気持ちが生かされる仕組みでなければ、新
たに設立された住民自治協議会の運営も難しい面が生じてくるので
はないかと感じています。
この話については、これまで3年がかりで区長さん方と話し合っ
てきたのですが、区長さんへの委嘱について混乱を招いてしまった
ことは事実です。今後の区長制度の在り方については、さらに区長
さん方のご意見をお聴きし、十分な検討を経た後に、あらためて結
論を出す必要があると考えています。
市長選挙を前に、争点になりそうな問題は先送りすべきだと私の
陣営内部からの意見もありました。しかし、長野市の未来のために
は、躊躇(ちゅうちょ)することは許されないのです。たとえ、選
挙で不利に働くと考えられることであっても、そのために長野市が
後退することがあってはいけないと思い、あえて私は発言してきた
つもりです。
また、結果的に選挙戦の争点にはなりませんでしたが、ごみの有
料化についても、「引っ込めろ」あるいは「時期を変えるべきだ」
と、随分言われてきました。ただ、そうはできなかったことは、ご
理解いただきたいと思います。
市長選挙の開票の結果、相手候補お二人を合わせた得票数は、私
の得票数を超えています。このことは真摯(しんし)に受けとめな
ければいけません。私が直すべきところは、陣営の中からも耳にた
こができるほど聞かされてきました。私としては、行政経営という
ことに重きを置いてきたことからあまり気にしていなかったことば
かりで、反省しきりです。
ただ、これまで私がとってきた施政方針、そして具体論には大き
な間違いはなかったのではないかと思っていることも事実です。で
すが、この選挙を通じてご指摘いただいたことは、修正しなければ
なりません。“みんなの声が「ながの」をつくる”を合言葉に、こ
れまでにも増して皆さんの声を反映した長野市づくりを進めていき
たいと思っています。
2009年10月29日木曜日
みんなの声が「ながの」をつくる
このたび、市民の皆さまの信託を受け、もう一度、長野市政のか
じ取りを担わせていただくことになりました。向こう4年間、一生
懸命に努めます。よろしくお願いします。
このメルマガの配信は、約3カ月ぶりです。現職であるが故に、
市のサーバーを使って情報発信するのは公平性を欠くとのことで自
粛してきたものです。
ただし、私の後援会のホームページには、マニフェストとともに
私のブログを載せてきました。そのほか、インターネット上では反
鷲澤陣営のブログなどもありましたので、大変にぎやかでした。
そういえば、私の後援会の事務所開きに当たって、関係者の皆さ
んに私からお願いしたことがあります。それは、“選挙運動は楽し
くやろう”ということと、“絶対に悪口は言わないでほしい”とい
うことです。
悪口というのは、相手候補に対しては当然ですが、こちらの事務
所内でも、互いの批判めいたことは言わないでほしい、みんな仕事
を持っていて忙しい、政治や選挙の活動より仕事が優先、当たり前
です。これらは守られたように感じています。
選挙期間中、私自身も枝葉末節にはこだわらない姿勢を貫いたつ
もりです。相手候補への反論も広い意味では悪口になると考え、極
力自制してきました(いささかストレスがたまりましたが・・・)。
他方、これは当然ですが、相手候補は、これまでの私の市政運営
に対して異議があるからこそ立候補されたわけですから、私に対し
てはさまざまなご意見を頂くことになりました。ただ、印象として
は、具体性に欠けることがほとんどだったとも思っています。
しかし、その大きさも痛感しているところであり、改めて、責任
の重さに身が引き締まる思いです。さまざまな危機が迫る嵐の時代、
これまでの2期8年間の私の経験を生かさせていただきたい、今後
4年間、元気いっぱい頑張り、長野市のために身をささげていく決
意でいます。
今後4年間で私が実現を目指す政策は、「政策マニフェスト20
09」で発表させていただきました。ぜひお読みいただきたいので
すが、長すぎて全部をきちんと読んでいただけないようにも感じ、
ダイジェスト版もいろいろな形で発表させていただいてきました。
ここで改めてその概要を申し上げさせていただきます。
ということを据えています。そして、市民の皆さまの生活を護(ま
も)ることをすべての基本に、まずは、住民自治協議会を中心に市
民の皆さまの力をお借りして、コミュニティーの再生を目指したい
と考えています。
また、従来から申し上げてきた私の市政運営にあたっての5原則、
すなわち、
(1)入りを量りて、出ずるを為す
(2)市民とのパートナーシップ
(3)簡素で分かりやすい市政運営
(4)民間活力の導入
(5)「無私・利他」の精神
これらについても、これまでどおり貫き通していきます。
その上で、
(1)「少子化対策」として、子育ち・子育て環境の充実を図るこ
と。
(2)高齢者や障害を持つ方が安心して健やかに暮らせる社会を維
持していくために、「福祉・健康」の視点から暮らしのセーフ
ティーネットの充実を図ること。
(3)個性を尊重した教育は、一人一人が人間らしく、自分らしく
生きていくための基本であり、人材育成のためにも教育環境の
充実を図ること。
(4)地方分権の流れの中、自立・自尊の都市経営を目指すために、
産業の強化・育成および雇用と税収の確保を図ること。
(5)世界に誇れる「カーボンニュートラルシティ・ナガノ」の実
現に向けて、すべての政策に「環境」の屋根を架けること。
これらの実現を目指していきます。
さらに、より具体的な約束として、以下の17項目も挙げさせて
いただきました。
約束1 行財政改革の継続と健全財政の維持
約束2 住民自治協議会への全面的支援
約束3 子育ち・子育て環境の充実
約束4 「1200万人観光交流推進プラン」の継続実施
約束5 新たな文化・芸術の発信都市への提案
約束6 雇用機会の創出
約束7 バイオマス資源の活用とエコビジネス創出の支援
約束8 再生可能エネルギーの積極的な活用
約束9 ワンストップサービスを備えたエコ庁舎の実現
約束10 指定管理者により提供されるサービスの向上
約束11 高齢者の皆さんの“元気”を応援
約束12 長野市の玄関である長野駅前広場の整備
約束13 活き活き(いきいき)とした中山間地域の維持
約束14 公共交通システムの維持
約束15 地産地消の推進と農業振興
約束16 農を楽しむ大規模市民菜園の整備
約束17 学校施設耐震化の推進
これらのことを実現していくことを通して、今後も引き続き、明
るく確かな未来に向けて健全財政を維持し、魅力あふれ、誰もが安
心して暮らせる元気なまちにしていきたいと思っています。
なお、選挙期間中にも訴えてきたことですが、
(1)集落機能が低下してきている中山間地域を産業振興や魅力を
生かして活性化すること
(2)利用者の減少に歯止めがかからず、民間事業者の経営努力に
も限界がある中、将来にわたり持続可能な交通システムを再構
築すること
この2点については、喫緊の最重要課題だと思っています。全力を
挙げていきますが、いずれもなかなか決め手がない課題です。“み
んなの声が「ながの」をつくる”を基本姿勢に、市民の皆さまと知
恵を出し合いながら解決策を見いだしていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
2009年10月16日金曜日
都市内分権と住民自治協議会
平成18年度を都市内分権元年と宣言し、国の地方分権の流れの中、
長野市版の地方分権を実現する施策の展開を始めました。
「地方分権」が大切だということは、どなたに聞いても異論はあり
ません。ただ、具体論と国の姿勢があまりはっきりしない、そう感
じる中でのスタートでした。
私は、市長就任後、各支所の状況を確認したり、市民の皆さんのご
不満をお聞きしたりする中で、これまでの行政システムが限界にき
ているのではないか・・・と強く感じるようになりました。
これまでは、公平性・公正性という観点から市内一律の施策を行っ
てきており、地区ごとに異なる施策を行うことはあまりありません
でした。しかし、地区ごとに住民の皆さんの年齢構成や地区の立地
条件などは、当然異なっています。すなわち、画一的な施策だけで
は、地区の住民ニーズや特性に細かく対応することができず、暮ら
しやすい地域づくりができないのではないか、という思いを強くし
たのです。
地区の実情を十分に尊重して施策を展開することができないか、そ
の後庁内でいろいろ議論した中で出てきたのが「都市内分権」の考
え方です。住民の皆さんに市内30地区ごとの「住民自治協議会」
をつくっていただき、住民自治協議会と行政が「協働と創意工夫」
で、より住みやすい地域を実現していこうという考え方です。
住民自治協議会の設立にあたっては、「地区を代表する」「計画性
を持つ」「適切な役割分担で運営する」、この三原則だけは満たし
ていただきたいとお願いしてきました。この三原則以外については、
“地域のことは地域で決める”ということを基本にして、すべて地
域で決めていただいて構わないということも申し上げてきました。
市内30地区すべてで住民自治協議会を設立していただくことがで
きたのは、今年の3月末です。その後、4月20日には、住民自治
協議会と市の協働関係を明確にするために、条例に基づいた基本協
定も締結させていただきました。
来年度からは、「地域の自治の仕組み」「活動の内容」「お金の使
い道」を地域住民の皆さんが決定する住民自治協議会の本格的な活
動が始まることになります。
(1)「地域自治の仕組みを決める」
これまでは、交通安全や青少年の健全育成、環境美化など、課題ご
とに役員を選出していただき、市長が役員として委嘱するとともに、
各地区で課題ごとの団体を組織していただくことで、地域の活動が
進められていました。また、地区ごとの組織の上部組織として、課
題ごとに市全体の連合組織も設けられていました。いわば、縦割り
組織での活動だったと言えます。
来年度からは、市長委嘱制度と各種団体の連合組織は廃止する予定
です。このことによって各種団体の活動は、各地区で仕組みを決め
た住民自治協議会の部会としての活動になり、縦割り組織から横軸
を通した組織に再編されることになります。
(2)「活動内容を決める」
これまでは、市が主導して活動内容を決めていましたから、市から
の依頼事務が多く地区の活動も硬直しがちで、住民の皆さんにとっ
ては多分にやらされ感があったのではないでしょうか。また、地区
によっては、役員の選出にも困難が伴っていました。
来年度からは、市が地区へお願いしていた依頼事務を大幅に減らす
ことにしています。具体的には、これまでお願いしていた68項目
の事務のうち、5項目を廃止し、41項目を必要に応じて地区に選
んで実施していただく「選択事務」にしたいと考えています。その
結果、今後も30地区に共通して市から依頼する「必須事務」は、
22項目になります。
そのほか、地区独自の課題にも発展的に取組んでいただきたいと思
っています。地域の特性・実情に応じた活動が盛んになってほしい
と考えています。
(3)「お金の使い道を決める」
今までは、各種団体ごとに市が補助金や交付金などを交付していま
した。
来年度からは、これらの補助金や交付金を一つにまとめ、「地域い
きいき運営交付金」として住民自治協議会へ一括交付したいと考え
ています。総額は、2億4,400万円余りで、1地区あたり約
260万円から2,000万円になる見込みです。
この交付金は、できるだけ使い道を限定せず、住民自治協議会が柔
軟に運用できるようにして、住民の皆さんの意向を反映した活動が
しやすくなるようにしたいと考えています。
そのほかにも財政支援策を考えています。
一つは、「地域やる気支援補助金」です。これは、より一層の活動
を望む地区への支援を目的に、住民自治協議会から事業提案を受け、
審査をした上で交付したいと考えています。
提案の審査は、市が行うのではなく、NPOなどを対象に交付している
「ながのまちづくり活動支援事業補助金」と同様に、学識経験者な
ど第三者に審査していただく予定です。現在のところ、1地区あた
りの限度額100万円、総額1,000万円を見込んでいます。
もう一つは、「やまざと支援交付金」です。これは、過疎化により
人手不足に悩む中山間地域の自治活動を支援するために交付したい
と考えています。中山間地域特有の課題を解決するとともに地域の
共助機能の拡大を促進する一助として、1地区あたり60万円を、
中山間地域を含む11地区の住民自治協議会へ交付するものです。
いずれの支援策も、年度中に詳細を詰めて来年度予算案に盛り込み、
市議会にお諮りしたいと考えています。
そのほか、住民自治協議会への人的支援策の一つとして、中山間地
域の11地区を対象に、今年度から「地域活性化アドバイザー」を
配置しています。地域活性化アドバイザーは、活性化対策や集落支
援など、各地域の特性に応じて「地域にとって何が必要なのか、何
をしていけば良いのか」を住民自治協議会と一体となって考え、具
体的な活動を通して支援できる立場として配置したものです。
これらの支援を通じて住民自治協議会の活動が軌道に乗り、地域課
題がより解決しやすくなり、これまで以上に暮らしやすい地域が実
現できれば良いと思っています。
ただ、これまで足掛け8年を費やして都市内分権を進めてきたわけ
ですが、まだ完全に詰め切れていない部分も多くあると思っていま
す。新たな取り組みですので、今後もさまざまな試行錯誤があるこ
とを前提に、十分な話し合いを継続し、改めるべきことは改めてい
きたいと考えています。
ここで一つお詫びしなければいけないことがあります。それは、区
長さんへの委嘱の取り扱いについて混乱を招いてしまっているとい
うことです。
市内には460人の区長さんがいらっしゃいます。460人すべて
の区長さんは、二つの立場を合わせ持っています。一つは、区の住
民の皆さんの立場で活動する区や自治会の代表という立場。もう一
つは、市長の委嘱により市の行政事務の一部を行っていただくとい
う立場です。
区長さん方には、この二つの立場で日々活動していただき、地域を
支えていただいているわけですが、区長さんの中からは、仕事が多
すぎて困る、ご高齢の方が多くなり区長のなり手がいない・・・な
どの声も聞こえてきていました。
今回、市が都市内分権推進の一環として、区長さんの立場のうちの
一つ、“市長の委嘱”という立場を発展的に解消することにしてい
ます。このことが、区長制度そのもの廃止と混同されてしまってい
る向きがあるようです。
私とすれば、区長さんの負担を軽減したい、区長さんと対等な立場
で地域のまちづくりを進めていきたい、との気持ちから区長委嘱を
発展的に解消するのであって、決して区長制度そのものをなくそう
としているのではありません。
このような誤解が生じてしまったのは、これまで都市内分権を進め
てくるにあたり、区長さん方のお気持ちや、区長さん方のこれまで
のご尽力に対する配慮が足りなかった面もあったのではないかと反
省しています。
区長さん方には、今後も住民自治協議会の中核として活動いただく
とともに、それぞれの区や自治会の代表者として地域を引っ張って
いっていただかなくてはならないと考えています。また、日々地域
を支えてきていただいている区長さん無しには地域はまとまらず、
住民自治も成り立たないとも考えています。そして、区長さんのリ
ーダーシップ、地域を思う気持ちが活かされる仕組みでなければ、
新たに設立された住民自治協議会の運営も難しい面が生じてくるの
ではないかと感じています。
今後の区長制度のあり方については、さらに区長さん方のご意見を
お聞きし、十分な検討を経た後に結論を出す必要があると考えてい
ます。
2009年10月16日
2009年10月9日金曜日
行政改革について
市町村の行政改革は、時代の大きな要請です。
「小さな市役所であるべき」ということと、「充実した市民サービ
ス」をすべしということ。これは一見、矛盾したテーマに見えます
が、やらなくてはならないことと認識しています。言い換えれば
「行政コストを減らし、費用対効果を上げる」ということです。
全くの私見ですが、私の考えていることを、二つの面からお話しま
す。
まず、組織や人について、どのように考えるべきか、ということで
す。
問題点と思われることをアトランダムに羅列してみますと、職員数、
人件費、定年制、正規職員と非正規職員、成果主義と年功序列主義、
人間の能力・人間性・思想、職種の違い、職制、タテ割り組織・・
・もっとありそうですが、考えるべきことはこのようにたくさんあ
ります。
もう一つは、行政が行う事務事業についてどう考えるかということ
です。基本は「無駄を排する」ということでしょう。
しかし、事業の妥当性、費用対効果、理想論と現実の狭間、市民の
要望、国・県との法律を含んだ関係、自治体の可能性と限界・・・
さまざまな視点があります。地方分権がどこまで進むか、というこ
とも大事な要素ですが、これは、国の政策に大きく左右されそうで
す。
いずれも難しい、考えれば考えるほど迷い道であり、矛盾をはらん
だような話です。だからこそ、考え続けなければならない課題であ
るとも言えます。
私は、行政改革は日常的に取り組むべきテーマだと捉えています。
組織は常に肥大化する癖がありますし、無駄を廃止していくことも
当たり前です。でも、何が無駄なのでしょうか。それを判断するに
は、定期的に仕事を精査して何が必要かを見極めなければいけませ
んし、組織はこのままで良いのか、という視点で見直すことも重要
になります。
具体的には、現在実施している仕事を評価して、
・拡大すべきか
・そのまま続けるべきか
・改善すべきか
・縮小すべきか
・やめるべきか
ということを判断していかなければなりません。
さらに、これから手をつけようとしている新規事業についても、
・目的・趣旨は時代の流れにあっているか
・どのくらい費用がかかるか、それに耐えうる手立ては大丈夫か
・市民の目線に立って考えているか
・本当に必要なことか
・もっと良い事業のやり方がないか
・事業を進めるための組織をどうするか
といったことを事前に判断し、実施することになります。
行政改革の代表的な問題として、ここでは、職員給料について考え
ていることをお話しします。
一般職公務員は、労働三権のうち、スト権を停止されています。そ
の代償として、人事院勧告が行われることになっているのです。
長野市も基本的には、人事院勧告を尊重しています。ただ、考え方
が変わり、国の人事院勧告はあくまで国家公務員に関するもので、
地方公務員の給料の決定は自治事務とされ、地方独自に決められる
ということです。
しかし、地方で決めるには、県や市町村がそれぞれ人事委員会を設
置して、その地域の賃金水準を細かく調べて勧告してもらうことが
必要になります。でも、これでは、大変なコストがかかりますので、
国の人事院勧告や県の人事委員会勧告を準用しているというのが実
態です。
従業員(市職員も同じ)の立場になれば、誰でも給料は高いほうが
良い、と考えていると思います。これは当たり前です。
ただ、企業には、経営不振による株価の暴落や倒産がありますから、
一蓮托生の労働組合側にもおのずと自制力が働きます。
しかし、公務員の場合はその感覚が薄い。だから、暴走させないた
めに、人事院勧告で大枠を抑えているということでしょう。
長野市では、手当に関して一つ問題があります。国(人事院勧告で)
が地域手当という考えを示したことです。地域によって賃金水準に
格差があるから、それを補うために、賃金や物価などが高い地域で
は地域手当を支給しようということで、長野県内の4都市(長野市・
松本市・諏訪市・塩尻市)が3%の地域に指定されました。
これは妙な政策だと感じています。長野市の職員は、隣の飯綱町の
職員より3%高い給与を得るということは、どうも違和感がありま
す。実際には給料表のあり方などで、すでに差があるのでしょうか
ら、さらにそれを助長するような政策は疑問です。一般的に言って
長野市職員の給与が、民間と比較して低いという話も私には聞こえ
てきません。
長野県人事委員会では、県職員の在勤地の割合を調べた結果、本庁
などの3%地域に勤務する職員と、加算の無い地域に勤務する職員
は、ほぼ同数であると考え、全職員に1.5%の地域手当を支給す
べきと決めたとのことです。
長野市でも、消防職員が周辺市町村にある消防署に勤務することが
ありますし、広域連合などでは、逆に長野市に勤務する周辺市町村
の職員もいるわけです。こう考えますと、この3%は慎重に判断し
なければなりません。
長野市では、県が県内全域を一律に1.5%としていることや、今
後の広域行政の展開を考え、現時点では1.5%が適正であると判
断しています。
人件費の話はこのくらいにしますが、行政改革と言ってもいろいろ
な問題を含んでいるということを市民の皆さんにも理解していただ
きたいという思いから、このブログを書かせていただきました。
2009年10月9日
2009年10月6日火曜日
文化・芸術、そしてスポーツで誇れるまちを
長野市には、善光寺御開帳はじめ、善光寺門前の各町が誇る絢爛豪
華な屋台巡行や大岡の道祖神祭りなど、数多くの伝統行事がありま
す。真田十万石の城下町・松代には、八橋流筝曲や大門踊りなどの
伝統文化が、あるいは飯綱・戸隠には飯綱大権現、戸隠神社群を中
心とする地域独自の文化が継承されています。
こうした伝統行事・文化が着実に継承され、一層花開いていくこと
は、長野市の存在感を高める上で重要なことだと思います。また、
どんど焼きなど、地域のコミュニティが中心になって行われるお祭
りや行事も、大切な伝統文化だと言えるでしょう。
芸術という面では長野市は昭和48年から、これまでの35年間、
「豊かな自然の中で 文化の香り高い 彫刻に出会うまち ながの」
をコンセプトに野外彫刻の整備を進めてきました。
才能あふれる多くの芸術家たちの137点もの作品が、街の風景に
溶け込み、間違いなく都市の品格を高めています。街のたたずまい
に彩りを添えているこれらの作品群に、私たちはもっと誇りをもっ
ていいと感じています。
市民の皆さんが趣味として親しむ芸術活動も大変盛んです。毎年、
音楽や絵画、伝統芸能の大会・発表会が数多く開催され、私が招待
状をいただくものだけでもかなりの数で、さまざまな芸術分野で多
くの方々がご活躍されていることを実感しています。
スポーツに目を向けますと、地域密着型のスポーツチームの代表的
なチームとして、サッカーのAC長野パルセイロ、野球の長野県民
球団信濃グランセローズが活躍しています。
こうしたチームの活躍は、私たちの胸を躍らせてくれますし、多く
の子どもたちに夢を与えてくれるとともに、長野のシンボルとして、
知名度やイメージアップにつながります。
スポーツは、することで心と身体の健康を養い、見ることで私たち
に感動を与え、そして支えることで地域の一体感や活力が生まれま
す。スポーツ交流による経済効果など地域活性化も期待され、市民
の気持ちを明るくし元気度を大きくしてくれます。
1998年の長野冬季オリンピックは、アスリートが輝くだけの舞
台ではありませんでした。同時に行われた文化プログラムで「アス
ペン音楽祭」やオペラ「信濃の国・善光寺物語」、開会式の「芦ノ
尻の道祖神」といった長野ゆかりの演目が披露されただけでなく、
世界中の芸術家、子供たちが展覧会等に参加してくれました。
そして、スポーツには、長野パラリンピック大会やスペシャルオリ
ンピックス長野大会での日本選手団の活躍でも明らかなように、障
がい者の自立や社会参加を支援する力があり、結果として障がい者
と健常者とが共に生きるノーマライゼーション社会を構築していく
役割も持っています。
長野は、オリンピック、パラリンピック、スペシャルオリンピック
スの3つのオリンピックの開催都市として、これらの分野を引き続
き世界に発信していく義務があると感じています。そして、そのこ
とは、長野の元気に大きく貢献するものと信じています。
長野市としては、これまでにも増して文化芸術及びスポーツで誇れ
るまちづくりを進めたいと願い、その基本条例となる「長野市文化
芸術及びスポーツの振興による文化力あふれるまちづくり条例」を
制定しました。行政としての基本姿勢を明確にお示しし、行動計画
で具体的な事項を示していきます。
例えば、文化・芸術分野では、市民の文化活動の意欲、楽しみをよ
り磨いていくことを、奨励しようということですが、市内のカルチ
ャーセンターや習い事の教室は、とても盛況だとお聞きしています
し、その集大成とも言える長野市文化芸術祭は毎年華やかに行われ
ています。もちろん各教室や絵画の発表会も盛んで、プロとして飛
躍していく方々も現れているようですから、多いに元気付けていき
たいと思っています。
音楽関係の皆さんからは、発表の場だけではなく、練習する場がほ
しいとの要望をいただいています。数年前、もんぜんぷら座の地下
に練習室を設置しましたが、予約満杯でまだ足りないそうです。
(仮称)東部文化ホールがようやく竣工しますので、少しは解消に
つながるはずです。
スポーツの面でも、小・中学校やクラブチームの全国大会出場等の
報告は、毎年多くなってきていますし、高校生や社会人のクラブも
力を上げてきているように思います。
いずれにしても指導者の力の大きさ、そして継続の大切さをいつも
痛感しています。
そのほかの市民スポーツも盛んになっています。バレーボールや早
起き野球などの大会には、お招きを受けて参加させていただいてい
ますが、皆さん元気ですし、市民の健康増進には多いに貢献してい
ると思います。スポーツによる交流の増加は、コミュニティの再生
にも効果がありそうです。
プロスポーツの分野でも頑張りがはじまっています。サッカー、野
球など、関係者は新しいビジネス・モデルとしてぜひ長野に定着さ
せたいと意気込んでいます。プロスポーツの魅力は、市民の気持ち
を一つにして盛り上げる力があることで、野球、サッカー、そして、
スケートなどが候補でしょうが、多いに頑張って、盛り上がってほ
しいものです。
プロとアマチュアの区別は、一般的には技術の高低でイメージされ
るのでしょうが(「あの人はプロ並みだ」という表現がなされるよ
うに)、最近ではアマチュアでも非常にレベルが高くなってきてお
り、そうした分け方が難しくなっています。観戦料を頂くのがプロ、
無料で見ていただくのがアマチュアということぐらいかなと感じて
いますが、そのくらい市民スポーツの全体的な力が上がっていて、
差が小さくなっている。でも、両方とも大切だなあと感じています。
専門的にやっておられる方が、その道で生活できるような収入をあ
げられるかも、一つの区別でしょうね。
話は変わりますが、善光寺・松代・戸隠などの伝統文化の持つ魅力、
これは長野市独自のものです。善光寺のもつ発信力は、春の御開帳
で十分堪能させていただきました。松代もハード整備が進んでいく
に従って、エコール・ド・まつしろをきっかけに、松代の文化面の
魅力が増進されてきていますし、戸隠神社の伝統の力も大いに感じ
ています。
そういえば、以前、善光寺の本堂でクラシック音楽の演奏会やコン
サートが行われるなど、ユニークな試みが評判になりました。過去
にも、太鼓の演奏や声明(しょうみょう)もありましたし、境内を
利用した映画上映が行われたこともあります。ハードを活かすソフ
トの重要性を認識させていただきました。
もう一つ、文化芸術とは違いますが、長野がもつ自然の雄大さ、私
は、これが何にも優る長野の財産だと思っています。この自然を市
民みんなが大切にしながら活用することが重要です。この自然こそ
が、短歌や俳句、絵画、音楽の題材となるなど、長野の文化芸術の
重要な基盤の一つとなっているのでしょう。
一昨年、市政施行110年の記念事業として、各地のお宝を集めた
こと、ご記憶にあると思います。各地域の文化・歴史を示すお宝が
ずらりと並びました。これを今後にどう生かすか、これも考えるべ
きテーマだと思っています。
民謡・舞踊・童謡、書道、絵画、俳句、短歌といった文化芸能、ま
た、マジックや大道芸もその一種でしょう。秋祭りなどに神社に奉
納される神楽、神輿、さらに、このところ各地で盛んになっている
太鼓も素晴しい文化です。あらゆる分野で、長野の文化を高めてい
ただいていると感じています。
市内には、このブログでは書ききれないほど、たくさんの文化があ
ります。全て、長野の文化力につながるすばらしいものばかりだと
感じています。
なお、思いつくままに、アトランダムに書いてきましたので、書き
漏らしてしまったこともあるかと思います。何卒お許しください。
いずれにしても、これらの分野については、市民の皆さんの元気、
長野の元気を表現する場として、多くの皆さんが楽しまれ、また活
躍をしており、行政としてもできる限り応援していきたいと考えて
います。
2009年10月6日
2009年10月2日金曜日
合併の話、そして広域行政
平成17年1月1日、長野市が豊野町・戸隠村・鬼無里村・大岡村
を編入合併してから、もう5年目を迎えています。
この合併は、現段階では良かったと評価しています。地域審議会や
元気なまちづくり市民会議などの場で、合併地区の市民の皆さんの
意見を十分お聞きして市政に反映していますし、合併協議で話し合
われたことは、実現に向かって順調に動いています。
財政的には、借金が増えるのではないか、との心配もありました。
確かに一時的には増えましたが、借入金の総額はすでに合併前の水
準以下になっており、この問題は克服しています。
長野市全体として考えてみますと、新しく長野市になった地域の
“財産”が素晴しいと感じています。ここでは、一つ一つ申し上げ
ませんが、豊野・戸隠・鬼無里・大岡の4地区には、素晴しい景色、
人情など、有形、無形の魅力的な“財産”があり、その“財産”が
それぞれの地区の個性を引き立てています。そして、各地区では、
その個性を発揮しつつも長野市の一部としての一体感は増してきて
おり、全体として「長野市」の存在感を大きくしていると感じてい
ます。これは、合併によって得られた大きなメリットだと言えるで
しょう。
長野市全体として受けるメリットは、このほかにもいろいろありま
すが、財政面でのメリットも大きいと思っています。
全国の多くの市町村は、国から地方交付税の交付を受けています
(地方交付税は市町村にとって、独自の税金と同様、自己財源とし
て算入できる重要な財源です)。例えば、長野市と合併した旧町村
への交付税は、それまで別々に算定されて交付されていました。こ
れが、合併により一つになるわけですから、国としては、一つの自
治体として算定することで、交付額を減らすことができるようにな
ります。これは、国にとって大きなメリットです。
一方、合併した市町村側としては、交付額が減ってしまうわけです
が、その分、組織や歳出などの合理化、合併によるスケールメリッ
トを活かすことで十分にカバーできます。行財政改革の面でも市町
村合併の効果は、とても大きいということでしょう。
ただ、今回の合併では、国の合併促進策として、この地方交付税の
減額がこの先10年間猶予されることになっています。つまり、交
付税の算定に当たっては、平成26年度まで合併がなかったものと
見なして、旧町村別々に算定した交付税が長野市に一括して交付さ
れることになっています。10年分を合計すると、かなりの金額に
なりますから、長野市にとって、これも大きなメリットだと言える
でしょう。
でも、10年後には交付税が減ってしまうというご意見があります。
それは事実です。ですが、その後もさらに5年間の激減緩和措置が
あり、急激に減額されないことになっていますから、本来の算定額
になるのは15年後の平成32年度からです。当然、合併により増
えた歳出もあるわけですから、それまでにしっかりと行財政改革を
実施して、減額に耐えうる体質にすることが重要だと思っています。
前述のとおり、合併によって増えた借金には、5年を経たずに返済
し、解消できました。合併によって増えた職員の数も15年かけれ
ば適正数にできると考えていますし、さまざまな諸施策もスケール
メリットを活かせば、対応は可能です。
そして、来年の1月1日、長野市は、新たに信州新町と中条村を編
入合併します。
1年半におよぶ長い合併協議を経て、合併調印、市町村議会の議決、
県議会の議決、そして、県知事から総務省へ届出され7月31日に
総務大臣による告示が行われたことで正式決定しました。
長野市とすれば、過去の経験を生かし、きちんとした体制で取り組
んでいきたいと考えています。市民の皆さんには、もう一段大きく
なる長野市に多いに期待していただきたいと考えています。
合併とは違いますが、自治体同士が協力しあって事務事業に取り組
むことができるよう、国ではいろいろな広域行政システムを示して
います。地方自治体は、それぞれ独立した存在であって、お互いに
不可侵であることは当たり前です。ただし、小さな自治体では、ス
ケールメリットが働かない分、どうしても不利になることもありま
す。
そこで、共同で取り組んだ方が効率の良い事業については、この広
域行政システムを利用して、幾つかの自治体が集まって事業を実施
しています。
まずは、「広域連合」です。長野市が長野広域連合に属しているこ
とは、私もメルマガで何度かお知らせしましたので、ご存じだと思
います。長野広域連合で行っているのは、特別養護老人ホームの運
営、介護保険の要介護度の認定審査、ごみ処理施設建設に向けた準
備作業などの事業です。広域連合ごとに実施している事業は異なり
ますが、このような広域連合は、県内に10あります。
そのほか、県内で1つしかない「長野県後期高齢者医療広域連合」
という組織もあります。後期高齢者医療広域連合は、都道府県ごと
にすべての市町村が加入する広域連合を設けることが法律で定めら
れていることから、長野県でも県内全市町村で一つの広域連合を組
織したのです。
私も創立期の2年間、市長会長であったが故に連合長を務めたので
すが、すべて国が決めた通りに仕事を進めただけで、典型的な“形
式だけの地方自治”だと感じました。これでは、広域連合ではなく
県の業務とした方が効率的ではないか、というのが私の率直な感想
です。
広域連合に似たようなシステムですが、「一部事務組合」という仕
組みもあります。広域連合が幅広くいろいろな事業に取り組めるの
に対し、一部事務組合は、特定の事務について協力し合うための仕
組みです。例えば長野市では、し尿処理や火葬場などの設置運営の
一部を近隣の市町村と共同で実施しています。
ちなみに、市町村(長野市を含めて)は「普通地方公共団体」です。
それに対して、広域連合や一部事務組合などは、「特別地方公共団
体」と言われています。
事務事業を「委託」するという仕組みもあります。消防・救急業務
を例にしますと、長野市では、委託を受けて周辺5町村の消防・救
急業務も行っています。この場合、長野市は受託して費用を頂いて
いる立場ですが、共同で特別地方公共団体をつくるのではなく、応
分の費用を負担して普通地方公共団体に委託することで、広域行政
を実施する方法もあるのです。
さらに総務省では、今年度当初から「定住自立圏構想」という仕組
みを本格的に推進しています。これは、広域連合でも一部事務組合
でもなく、中心になる市と周辺市町村が1対1で締結する協定に基
づいて役割を分担し、相互に連携する仕組みとのことで、これも広
域行政の一つと言えるでしょう。
言葉だけでは、なかなか難解な部分もありますが、今年度から全国
22圏域で先行実施するとのことですから、長野市にとって必要か
どうかの検討も含め、今後の動向を見極める必要がありそうです。
このように、さまざまな選択肢がありますが、市域を超えて実施で
きる行政のスリム化、効率化があるということもご理解いただきた
いと思います。
2009年10月2日
2009年9月29日火曜日
長野市の福祉・医療について
長野市の人口は平成19年にピークを迎え、その後、わずかずつで
はありますが減少し続けています。合計特殊出生率は1.43で、
県下80市町村の中で65番目です。全国平均の1.37を上回っ
てはいますが、確実に若年層が減り続ける傾向にあります。
先日のブログでもご紹介させていただきましたが、「第4回 次世
代育成環境ランキング」において、長野市が子育てしやすい都市と
して3位に評価されたことは、とても嬉しいことで喜んでいます。
しかし、少子高齢社会の中で若年層が減り続ける傾向をみますと、
この評価だけで満足してはいけないとも思っています。
まず、子育ち・子育て支援施策について幾つか考えを申し上げます。
今年度から、市内の全54小学校区のうち、17校区で「長野市版
放課後子どもプラン」を実施しています。この事業は、放課後の安
全で安心な居場所を子どもたちに提供するとともに、遊び・学習・
各種体験活動をするための場として、地域の皆さんと協働して既存
の児童館・児童センターと小学校施設を活用して実施しているもの
です。
安心して子育ち・子育てできる環境を整備することは、少子化対策
の第一歩だと思っています。かつて地域には、「地域の子」という
概念があり、地域の子は地域が護り育てるという考え方が、無意識
のうちに浸透していました。「長野市版放課後子どもプラン」は、
地域の皆さんと協働して子育てのためのより良い環境を整備する事
業であり、現代版の「地域の子」育成支援体制づくりでもあると思
っています。できるだけ早く、全校区で実施体制を整備しなければ
いけないと考えています。
なお、「放課後子どもプラン」の利用料についてですが、検討をお
願いした審議会の意見では「有料にすべき」という答申を頂いてい
ます。しかし、各地区の市民会議や、市議会でいただいたご意見か
ら、有料化することにかなり強い抵抗感があることが理解できまし
た。さらに、現在17校区で先行実施している「放課後子どもプラ
ン」が無料だということもあり、散々迷った末ですが、私としては、
少子化対策の重要な施策として、利用料は無料とすることが良いと
いう結論を出すに至りました。このことは、マニフェストにも記載
しています。
今年の12月から長野市版ブックスタート「おひざで絵本」事業を
始めることにしています。これは、絵本を読み聞かせながら、赤ち
ゃんと向かい合うひとときを持っていただくために、絵本をプレゼ
ントする事業です。絵本は、7~8カ月児健康教室の際にお渡しす
ることにしています。その際には、読み聞かせの大切さなどについ
てもお話もさせていただき、選定委員会で選定した5冊程度の本の
中から1冊選んでいただくことにしています。対象となる保護者の
方にはぜひお受け取りいただき、赤ちゃんの豊かな心の成長を促す
とともに、親子の絆を深めていただきたいと思っています。
妊婦健康診査についても今年の4月から公費負担回数を拡大してい
ます。妊婦健康診査は、妊娠中のお母さんの健康状態や赤ちゃんの
発育状態などを定期的に確認する大切な健診です。これまでも妊婦
健康診査費用の一部を公費で負担してきましたが、医師会など関係
機関との連携により、これまでの5回を14回に拡大しました。安
心して出産を迎えていただきたいと思っています。
このほか、こども広場、子育て支援センター、ファミリーサポート
センター、一時保育、休日保育、病後時保育などによる子育て支援、
協賛店拡充による「ながの子育て応援カード事業」など、長野市独
自の施策を充実していくことはもちろんですが、税制面や諸手当の
面でも、子どもが多いほど優遇される社会システムを構築すること
も必要だと考えています。また、保護者の労働環境に子育てに関す
る十分な配慮を加え、安心して子育てができる環境づくりにも力を
入れていきたいと考えています。
また、新政権の誕生により、国の新たな子育て支援策が具体化して
くることになるでしょう。こちらも大いに期待したいと思っていま
す。
福祉というよりは教育分野ですが、子どもに関することで少し付け
加えさせていただきます。
先日の新聞報道などにもありましたが、残念ながら長野市では、児
童・生徒の不登校が小・中学校ともに増加傾向にあり、国・県の平
均を上回っている状態です。引き続き、不登校児童・生徒の受入れ
施設である中間教室の充実を図るとともに、不登校を予防するため
に必要な手立ては積極的に実施していきたいと考えています。
特に、今年度からは、全小・中学校で「Q‐U(楽しい学校生活を
おくるためのアンケート)」を実施しています。このアンケートを
実施すると、児童・生徒の意欲や満足感、学級集団の状態などを診
断することができ、不登校の予防に活かせるそうですので、大いに
期待しています。
いずれにしましても、教育現場を預かる先生方と力を合わせ、教育
環境の改善に努めていきたいと思っています。
青少年の健全育成という視点も大事にしていきたいと考えています。
インターネットや携帯電話などの普及により、今の社会は、大変便
利になりました。
しかし、子どもたちを取り巻く環境にもたらしているものは、有害
な情報の氾濫や、事件に巻き込まれるきっかけとなるなど、必ずし
も良いことばかりではありません。犯罪が低年齢化しているとも言
われています。次代を担う青少年を健全に育成することは、私たち
大人に課せられた大きな課題です。これまで以上に、学校や地域、
ご家庭とも連携を図れるようにしながら、青少年の健全育成、非行
防止に努めていきます。
次に、高齢者、障がい者施策について申し上げます。少子高齢社会
なのですから、子どもたちだけではなく、高齢者、そして障がいを
持つ方にとっても、安心して健やかに暮らせる社会を維持していく
ことが市政運営の基本だと思っています。
人口総数に占める65歳以上の割合を示す高齢化率は、長野市全体
で23%に達しています。これは、超高齢社会と言われる状況です。
また、中山間地域においては高齢化率34%で、3人に1人が高齢
者という著しい高齢化が進行しています。20年後には、長野市全
体が現在の中山間地域とほぼ同じレベルの超高齢社会を迎えるとの
予測もありますので、長野市にとって高齢者、障がい者施策はとて
も大事な施策です。
基本とすべきは、高齢者も障がいを持つ方も、健康で生きがいのあ
る、その人らしい生活を住み慣れた家庭や地域で送れるよう、環境
を整えていくことだと考えています。そのためには、保健・医療・
福祉の連携を強化するとともに、地域で支え合い、ともに生きてい
く仕組みを皆でつくっていくことが必要です。
また、いきいきと自分らしく暮らすため、生涯学習・スポーツ環境
の充実、積極的な社会参加を促進することも不可欠だと思っていま
す。お一人お一人の元気が長野市の元気をつくっていくはずです。
個別の高齢者、障がい者施策は、大変多岐にわたっており、とても
ここだけでご紹介することはできませんので、ベースとなる考え方
を幾つか申し上げます。
まず、高齢者、障がい者をはじめ、すべての人に優しいバリアフリ
ー、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めることは、行政の基
本的な役割だと思っています。公共交通を維持することはもちろん
ですが、進展する高齢化社会に対応するためには、日常的なことは
近い範囲の移動で済むコンパクトシティの実現も重要です。その意
味では、歩いて行ける近所のお店・商店街を守ることも福祉施策の
一環と言えるでしょう。
地域医療を維持することも重要です。長野市の医療体制は、行政と
長野市・更級・上水内・須高の各医師会の皆さん、そして長野赤十
字病院などの基幹となる病院との協力関係を柱に、市民の皆さんの
けがや病気を治療したり、健康を守ったりすることに万全を期して
います。
市内の医療体制は、大規模な病院としては、長野市民病院、長野赤
十字病院、そして厚生連の篠ノ井・松代・若穂の各病院(来年1月
の合併で新町病院も入ります)、国立東長野病院、NTT病院、長
野中央病院などがあります。開業医の先生方には、大病院と連携し、
良き協力・補完関係をもって、長野市の医療を支えていただいてい
ます。
中山間地域については、信更・小田切・信里・戸隠・鬼無里・大岡
地区に長野市として診療所を設置しており、先生方に辺地医療に取
り組んでいただいています。
地域の中の助け合い体制を維持することも大切だと考えています。
この一環として、昨年度から七二会地区など3つのモデル地区で
「中山間地域自治活動支援事業」を始めました。平成22年度から
は、中山間地域の11地区すべてで実施したいと考えています。
この事業は、そう遠くない将来、市内全域で実施する必要性が生じ
るのかもしれません。まず、中山間地域で実施することで、さまざ
まなノウハウを蓄積していきたいと思っています。
高齢者の皆さんの“元気”も応援していきます。「ながのシニアラ
イフアカデミー」の拡充、「おでかけパスポート事業」の継続、人
気の高いマレットゴルフ場整備など、社会とのつながりを保ち、生
きがいを持って健康で自分らしく生きるための環境整備にも積極的
に取り組んでいく必要があると考えています。
そもそも、市町村行政が目指す根本的な目標は、市民の皆さんの幸
せを実現することです。そして、その実現のために必要なことは、
「福祉」と「教育」であると、ある方から教えていただきました。
その通りだと思います。加えて、両者の共通項として、“心のケア”
ということがこれまでにも増して大切になっていると感じています。
幅が広く、画一的な施策だけでは実現できないテーマですが、あら
ゆる場面を想定して、市民の皆さんの幸せを追求したいと考えてい
ます。
2009年9月29日
2009年9月25日金曜日
教育について
教育に関する分野は幅が広く、また、法的には教育委員会制度によ
って市長部局とのすみ分けがなされていますので、市長があまり差
し出がましいことを言うことは、好ましいことではありません。全
般的なことは、教育委員会に任せています。
ただ、教育委員の選任や教育予算の編成もありますので、長野市教
育のあり方について責任を持つ立場にあることは当然です。
教育分野については、快適で安全な教育環境を整備することや、不
登校対策、特別支援教育、学力向上への取り組みなど、さまざまな
思いがありますが、今回は、四年制大学を長野市に誘致したいとい
う私の思いを申し上げます。
長野市にある高等教育機関は、
・四年制大学・・・信州大学工学部、同教育学部、清泉女学院大学
・高等専門学校・・・長野工業高等専門学校
・短期大学・・・長野県短期大学、清泉女学院短期大学、長野女子
短期大学
(順不同です。そのほか、性格は違いますが、専修学校・各種学校
は数多くあります。)
これらの大学・短大に在籍する学生さんの数は、約5千人です。こ
の数字は、全国の中核市など、類似都市に比べ、非常に少ないと私
は感じています。
例えば、同じ中核市で、長野市より人口が少し多い金沢市(人口約
45万人)の学生数は、約2万人と言われています。熊本市(人口
約68万人)では、もっと多く、2万6千人ということですし、長
野市より人口が少ない高崎市(人口約37万人)でも、大学数、学
生数ともに長野市より多いようです。
また、長野市内の高校の卒業生で、大学進学を志す学生さんの多く
は、関東、中京圏等へ流出していますので、市内の20歳前後の人
口が少ないことも事実です。このことは、市内に活気がないと言わ
れる要因の一つになっているようにも思います。
東京へ学生を送り出すと、親御さんの負担は大変です。4年間で授
業料を含めれば、1千万円以上は掛かるでしょう。
私は、少なくとも長野市には四年制大学がもう一つ必要だと思うの
です。親御さんの負担の話だけではなく、学ぶために長野を目指す
学生さんがもっと増えてほしい、若い人にとっての長野の存在感も、
もうひとまわり大きくしたいのです。
「大学冬の時代」と言われています。学生数が減って、募集停止に
追い込まれている私立大学もあると聞いています。それは承知の上
で、あえて長野市のために、長野市の子どもたちのために、そして、
長野市に夢を求めてやってくる若人のために、さらには、優秀な人
材を求める長野市の企業のために・・・一流の学者を招き、小さく
ても良いので素晴しい大学をつくり、長野市で有為な青年をもっと
育てたい・・・私の強い想いです。
以上が、私が四年制大学を求める理由です。ただ、前述の「大学冬
の時代」を意識しますと、大学の数を増やすことは無理でしょうし、
厳しい状況が待っているように感じます。
そこで、「長野県短期大学を、四年制大学にしたらどうでしょうか」
と、長野県にお願いしています。「独立行政法人にしていただけれ
ば、長野市も相応の応援をさせていだきます」ということも申し入
れてあります。県で実施した包括外部監査にて、短期大学のままで
は将来性に疑問がある、との報告がされていることも、追い風にな
ると考えています。県短の良き伝統を活かしながら、新しい出発を
することが大切だと思っています。
2009年9月25日
2009年9月18日金曜日
産業政策について考えていること
産業政策は、都市経営に必要不可欠な政策です。
産業政策とひと口に言いましても、農業、林業、商業、工業、観光
など、さまざまな分野がありますが、それぞれ雇用の確保、食料や
生活用品の生産・流通・販売・・・と、欠くことができない大切な
役割があります。そして、都市活力の源でもあり、産業のないとこ
ろでの私たちの生活はあり得ません。
市民の皆さんの生活を護るうえで、欠くことができない産業を振興
していくことは、行政政策として、当然、重要な要素になりますし、
行政の側としては、税収確保という側面もあります。
今回は、企業立地という視点から、長野市の産業政策を考えてみた
いと思います。
地方都市では、大都市に比べて企業数が多くはありませんので、そ
れだけ、一つ一つの企業が大切な存在になります。つまり、地方都
市では、一つの企業の存在感が大きく、地域社会そのものの中で大
きな役割を果たしていると言ってよいでしょう。
ただ、最近では、「企業の社会的責任」ということが、当然だと考
えられるようになってきました。企業の最大の目的は、利益を上げ
ることですが、そのほか法令遵守はもちろん、社会貢献活動をはじ
め、情報公開や地球温暖化対策などの社会的責任も果たすべきだと
いうことです。それゆえに、ただ利益を上げることだけに徹してい
る企業は、地域の中で信頼を得られず、浮き上がった存在になって
しまう傾向もあるように感じます。結果的には、本来の利益追求活
動にも、支障を来たす可能性、つまり、社会的な制裁が加わり、企
業が倒産・整理されることもあり得るわけです。
このように見てきますと、地方行政の産業政策の柱は、以下の三つ
になると考えています。
(1)市内の既存企業や個人経営者の活動を検証・支援し、育てる。
(2)新たに長野市へ優秀な企業の誘致をはかる。
(3)新たに市内で起業しようとする人の支援に取り組む。
この三本の柱を実現するために、具体的には次のような施策が重要
だと考えています。
(1)企業の研究開発・販売促進を支援する体制の構築
長野市ものづくり支援センター(UFO)などを利用して、産・学・
官が協力して企業の研究開発・販売促進を支援する体制の構築、充
実が必要だと思っています。
(2)資金支援体制の充実
金融機関・自治体などの制度資金やエンジェル税制(ベンチャー企
業投資促進税制)などを活用できる体制の充実も必要です。同時に、
信用保証協会などと連携し、雇用を護り、創出するための緊急融資
体制の充実も大切だと思っています。
(3)新たな企業の誘致
具体的には、工業系を中心とした企業団地の造成が急務になってい
ます。長野市は、過去に造成した工業団地をすべて売り切ってしま
い、企業を誘致したくてもできない状況でもあります。国の方針に
より、農業用地の転用が難しい中で、あまり広大な面積の工業団地
はできませんが、7ヘクタールの用地を確保しました。すでに、幾
つかの企業からの打診があるようです。市内には空きビルもかなり
あります。これも誘致という面では紹介していきたいと考えていま
す。
(4)進出企業への支援
進出企業のスタートが順調にいくように、いろいろな補助金を用意
することも大切です。長野市では、必ずしも土地を買っていただか
なくても良いように、市有地をリースする制度も整備しています。
(5)誘致する企業の検証
どんな企業なのか、経営者の理念、行動についても調査する必要が
あると思います。ただこれは、経営者などが変わることもあり、経
営環境も変化するものですから、決定打にはなりませんが、企業風
土が長野に合うか、将来性はどうかなど、調べておきたいものです。
100年に一度の不況と言われるこの時代、新しい企業を誘致する
のは、なかなか難しいテーマだとは思いますが、長野の強みを生か
して努力していきたいと思っています。
強みは、交通手段、特に関東圏との近さ、穏やかな人の気持ち、そ
して、高原特有の空気の良さ、UFO、信州大学工学部、長野高専
等の存在をあげることができるでしょう。文化・歴史・美しい自然、
暮らしやすさ・・・こんな点が挙げられます。中山間地域が多い点
も将来のプラスになる可能性を感じています。
弱みは、土地利用の制約です。平地が少ないところから、あまり大
きな工場団地は無理。それと上越市が近いとはいえ、海が無い(大
量輸送を必要とする企業には向かない)ことも弱点でしょう。また、
道路、通信網などのインフラもまだまだ整備する必要がある・・・
そんな点も弱点です。
それら、長野の弱点を克服する努力は続きますが、利点・欠点を承
知して進出してきていただける企業、特に今、弱点を利点に変える
産業が求められると思っています。その一番の候補は、農業、食の
産業、林業を利用した新エネルギー産業のような予感があるのです
が・・・。
2009年9月18日
2009年9月14日月曜日
安心・安全のまちづくり
行政としてこのテーマを考える場合、大変幅が広くなります。昔か
ら言われてきたことに、“地震・雷・火事・親父”という言葉があ
りますが、現代では災害の領域、考え方はかなり変わってきていま
すし、市町村の対応もそれに応じて広がっています。今回は、安心・
安全のまちをつくるための考え方を整理してみました。
「安全」という面から考えますと、まず、災害を防ぐ、災害が発生
したときの被害を最小限にするということが大切です。長野市で起
こる頻度が高い自然災害は、家屋などへの浸水被害と、山間部での
土砂災害でしょう。
梅雨の時期から秋にかけて、長雨が続くと道路の冠水や住宅の浸水
被害が起こりやすくなり、消防団の皆さんには、土のうを設置する
など、一生懸命努力していただいています。大きな被害にはならな
い場合が多いのですが、雨量が多くなると、雨水を飲み込みきれな
くなる用水路や道路側溝があり、市民の皆さんにご迷惑をお掛けし
ています。このような場所の改修も毎年実施しているのですが、ま
だまだ追いついていないのが実情です。
こうした都市型水害を防止するため、都市排水路の整備や排水機場
の建設、雨水調整池の整備、各戸貯留施設の設置促進などの対策を
行っています。大規模な対策として現在は、長野運動公園の地下に
大きな雨水調整池をもう一つ建設中です。これが完成すると、長野
運動公園の地下では、これまでの約4.6倍にあたる2万8,000
トンの雨水を貯めることができるようになりますので、下流域の水
害を減らせると期待しています。
このほか、ハザードマップの作成や人的な水防態勢の整備など、ソ
フト面での対策も行っています。水防態勢の整備ということでは、
市主催の水防訓練を毎年実施し、消防局が中心となり、消防団、地
域の皆さん、建設業協会の皆さんなどに参加していただき、水防技
術や知識の向上を図っています。地域の防災組織と連携した訓練や、
県の消防防災ヘリも参加する訓練も行い、いざという時に慌てない
ように、そして安全意識の高揚に努めています。
都市部の洪水とは違う危険性があるのは、山間部に降った雨により
起きる土石流やがけ崩れなどの土砂災害です。土石流被害が発生し
ないよう、危険な箇所には、主として県に砂防堰堤をつくっていた
だいていますが、これも完全ではありません。特に長野市の西部、
昔から西山と言っている地域ですが、ここは崩れやすく、急しゅん
な山地であり、地すべりや斜面崩壊、土石流など、土砂災害が発生
する危険性が高い地域です。
西山地域ではありませんが、今年は、鬼無里地区と戸隠地区で相次
いで土砂災害が発生してしまいました。先日の7月末の大雨で、鬼
無里地区の大川林道では、約20カ所の崩落が起きて通行止め、8
月6日には戸隠地区の大雨により、道路決壊や住宅被害が生じてし
まったのです。
まだまだ砂防堰堤を入れなくてはならない場所はかなり多い、自然
のままにしておくことは、下流部に住んでいる方にとってはまさに
恐怖と聞いています。ですが、国の公共事業予算の削減もあってな
かなか追いつかない・・・お住まいの方々の安心度を高めるために
も、必要な事業が実施できるよう、国・県に要請していきたいと思
っています。
次は地震です。国全体では、発生の可能性が高いと言われる東海地
震、東南海地震、南海地震をはじめとした地震対策が行われていま
す。いずれも大変な被害が想定されている大きな地震です。
長野市では、過去一番大きかったと言われる弘化4(1847)年
の善光寺地震を想定して、防災倉庫や中山間地域での保存食糧など
の備蓄、避難所の指定、避難支援体制の整備、庁内外の危機管理体
制の構築などの対策を練っています。
建物の耐震化も行政の地震対策として重要な項目です。阪神・淡路
大震災では、犠牲者の約9割が建物の倒壊により犠牲になったとの
ことですので、建物の耐震化を進めることで、人命被害はかなり軽
減することができるでしょう。
最優先して進めているのは、学校施設の耐震化です。子どもは宝で
すし、いざ、というときに学校は、市民の避難所にもなることから、
国も予算を投入して頑張っています。長野市でも可能な限り早く耐
震化を完了すべく努力していますが、学校施設全400棟のうち、
何らかの耐震対策が必要な施設が今年4月の時点で138棟もあり
ます。これだけの建物の工事を一斉に実施することはできませんし、
耐震性にも差がありますので、危険度に応じて耐震化を進めていま
す。
具体的には、構造耐震指標(IS値)が0.3未満の施設は、平成
24年までに耐震化工事を終わらせることにしています(構造耐震
指標とは、建物が地震にどのくらい耐えられるかを表す指標で、学
校施設については0.7以上を確保する必要があります)。より危
険度が高い施設から対策を実施し、平成26年度には、9割の耐震
化を完了させる予定です。ただ、耐震補強工事を実施しても建物の
寿命を延ばすことにはなりませんので、古い施設は建て替えていま
す。
そのほかの耐震対策としては、昭和56年以前に建築した個人所有
の木造住宅の耐震診断を無料で行っています。診断により補強が必
要と判定された場合には、補強工事にも補助金を用意しています。
これまでに、約2,000戸の診断を行い、約100戸の補強工事
を補助しました。
また、病院やお店など、たくさんの人が利用する特定建築物の耐震
診断に対しても、今年度から補助金を用意しており、市内の建物の
耐震化を促進し、安心して住めるまちにしていきたいと考えていま
す。
市役所第一庁舎や長野市民会館の建て替えもこの延長線上にありま
す。
長野市民会館は昭和36(1961)年、市役所の第一庁舎は昭和
40(1965)年の建設で、第一庁舎のIS値は0.23という
ことで、極めて危ないとのことです。市民会館はそれより5年も古
いことから、耐震診断はせずに劣化診断だけにとどめました。
“ハコモノ行政”に対する批判的なご意見や、自治体の財政が厳し
いということで、この建て替えについてはさまざまなご意見がある
かと思いますが、多くの方々が利用する施設ですから、問題を放置
しておくことはできません。
前回のブログでも書かせていただきましたが、合併特例債を利用す
ることで、建設費の約7割を国にみてもらえるというチャンスは、
この先まずないでしょう。建設時期を先送りすることにより、合併
特例債を利用しないとすれば、建設費の捻出は今以上に困難になる
と思っています。
いずれにしろ、昭和56年以前に建築した建物は、耐震補強工事が
必要ですし、耐用年数からすると、あと5~10年後には建て替え
をせざるを得ないのが実情です。市民の皆さんのご意見を踏まえて
さまざまな面から考え、建て替えるか否かを含め、ここで結論を出
さざるを得ないと思っています。
「安心・安全のまち」ということで、主として水害、土砂災害、耐
震対策について述べてきましたが、そのほかにも、考えなくてはな
らないテーマがいろいろあります。
気象面では、最近の報道によると、雷や竜巻が頻繁に起きている、
台風も停滞気味で大きな降雨災害を起こしているようです。大規模
な台風が長野市を直撃したのは、昭和34年の伊勢湾台風だけとい
う印象なのですが、いざ本当に来襲したら、慣れていないだけに被
害は大きいと思います。台風の来襲を防ぐことは困難ですが、情報
を早くお伝えするようにして、危険から身を守っていただけるよう
にするしかないと思います。
安全を求める以上、農業被害も無視できないことだと思います。冷
害、ひょう、有害鳥獣、いずれも農家の仕事の意欲を奪う災害です。
雪害も、暖冬で少なくなっているとはいえ、大雪となれば深刻な被
害が発生します。雪にはプラス面もあるのですが・・・過ぎたるは
及ばざるがごとしです。
以下に列記した項目も「安心・安全のまち」には大切なものでしょ
う。行政としては、これらすべての撲滅に、全力を挙げなくてはい
けないと感じているところです。
・交通事故・・・市内では、年間の死者が一番多い項目です。
・犯罪・・・振り込め詐欺、暴力団犯罪、覚せい剤など、あらゆる
犯罪防止に努めることは市民社会の義務でしょう。
・疫病(新型インフルエンザ)・・・保健所も持つ長野市としては、
とても重要な項目のひとつになります。
・火事・・・安心・安全のまちにするためには、これも重要な項目
です。
・構造物・建造物の欠陥や劣化による事故・・・設計ミス、経年変
化の確認やメンテナンスの不足など、安心・安全のためにぜひとも
事前に防ぎたい事項です。
まだまだ、たくさんあるとは思いますが、安心・安全は市民生活の
中の一番の原点でしょう。あらゆることに目配りしなくてはならな
いのが、市町村行政です。
2009年9月14日
2009年9月9日水曜日
市民会館・市役所第一庁舎の建て替えについて
長野市民会館は、昭和36年に完成、築48年、市役所第一庁舎は
昭和40年に完成、築44年です。いずれの建物も耐用年数は60
年ですから、もうしばらく使用できるはずでした。ところが、平成
18年に第一庁舎の耐震診断を実施した結果、震度5強以上の地震
で倒壊の恐れがあることが分かったのです。市民会館は、それより
5年も古いことから、耐震診断を実施してもお金の無駄ということ
で、劣化診断だけにとどめました。
対策としては、耐震補強工事をするという選択肢もあるのですが、
高額な費用を掛けてこの工事をしても、建物の寿命を延ばすことは
できません。結局は、5~10年後に建て替えの検討をしなければ
ならないということで、無駄な投資になってしまうのです。
また、建設から50年近く経過していますので、老朽化が著しい上
に使い勝手も悪く、維持費も割高になるなど、マイナス面も多く抱
えています。
このようなことから、現在、この二つの施設の建て替えを検討せざ
るを得なくなっています。
このことについては、市議会でもご意見を頂いていますが、“ハコ
モノ行政”に対して批判的な世論の流れもあり、議論が分かれると
ころです。論点は、市民会館の建て替えの是非で、意見は大きく二
つだと思っています。
一つは、第一庁舎も市民会館も建て替えが必要だ、というご意見で
す。
市役所の庁舎は、日常的に多くの市民の皆さんが訪れる場所であり、
かつ、災害発生時には、市民の安全・安心を守る拠点となる場所で
もあるので、耐震強度が万全な施設として建て替えるべきである。
市民会館は、完成以来、長野市民の文化芸術の振興や大きな会議の
開催に重要な役割を果たしてきており、今後とも必要である。市民
会館を廃止した場合、その他の施設では十分な利用の代替はできな
い、というご意見です。
それに対してもう一つは、第一庁舎の建て替えは仕方ないが市民会
館はいらない、というご意見です。
長野市には、ホクト文化ホール(県民文化会館)やオリンピック関
連施設もあるので、市民会館は不必要。将来の負担になる“ハコモ
ノ”は極力少なくすべきであり、建て替える必要はない、というご
意見です。
この二つのご意見に対し、私が考えていることを申し上げます。
第一庁舎の建て替えについては、おおむね多くの方の賛同を得たと
感じています。市民会館についてですが、私は、「建て替えは必要
である」と考えています。具体的に幾つかの理由を申し上げます。
(1)オリンピック施設は、建物の主たる利用目的が違いますので、
音楽会、舞踊、演劇、講演会などに使用するには不向きです。そし
て、音響が悪いこと、あるいはその都度、舞台装置を設置するのに
手間とお金が掛かり、市民の皆さんに手軽に文化芸術を提供する施
設とは言えません。すなわち、市民会館の代替施設にはならないと
いうことです。
(2)ホクト文化ホール(県民文化会館)の大ホールの収容人員は
約2,000人、中ホールは約1,000人です。1,000人程
度以下のホールは市内に幾つかありますが、約1,700人収容の
長野市民会館がなくなると、1,000人を超える人数を収容する
施設は、ホクト文化ホールの大ホール以外には無くなってしまうの
です。長野市の文化芸術を推進する立場から、また、学術会議など
を誘致する立場からも、そして、長野市民が利用する成人式や消防
出初式などでも使いたいと考えていますので、ホクト文化ホールだ
けではどうしても需要に応じられない、複数の施設が必要だと考え
ています。興行的な催しを開催する立場の方々からも、同様の申し
入れを頂いています。
(3)市内の文化団体、舞踊団体、音楽団体等々から、必要性につ
いて多くのご意見を頂いています。もちろん、意見は同じではなく、
例えば音楽団体などからは、音響効果の良い音楽専用ホールを・・・、
といったご意見です。ただ、これは、建設が決まってからの問題で、
どの分野に重点を置くかという議論だと思っています。結局、多目
的ホールにせざるを得ないのかなと感じてはいるのですが・・・。
(4)もう一つは、財政的な理由です。いずれの地方自治体も財政
が苦しいことは皆さんご存じだと思いますが、この建て替えには別
の要素もあります。長野市は平成17年1月1日に、豊野・戸隠・
鬼無里・大岡の4町村と合併しました。その合併により、市庁舎・
市民会館に「合併特例債」という有利な起債を利用できることにな
っているのです。
「合併特例債だって借金ではないか」とおっしゃる方もいますが、
そのご指摘は正解だと思っています。ですが、この借金に限っては、
国が7割を交付税で面倒をみてくれるということですから、地方自
治体にとっては大変有利で、利用しない手はないと思っています。
今後、このようなチャンスは、まずあり得ません。そして、地方自
治体にとっては、合併をすることで得た国からの支援ですから、利
用することをためらう必要はないとも思っています。
ただ、この支援には、平成26年度までに建設を完了しなくてはな
らないという制限事項が付いていますので、今、検討を進める必要
があるのです。何年か後に建て替えを検討すればいいとした場合に
は、財源確保のタイミングを逃してしまうことになり、市の健全財
政を堅持するという観点からすると厳しいと思っています。「合併
特例債」が無いとすると、費用をどこからひねり出してくるか、か
なり難しい問題です。
以上、私が市民会館の建て替えが必要だと考える4つの理由を申し
上げました。ぜひご理解いただきたいと思います。
このほか、長野市民会館と第一庁舎の建て替えに関して考えている
ことを申し上げます。
(1)街の中心施設として、市民会館をぜひ誘致したいという声が
複数の地区から上がっており、調整が難しいと感じています。市と
しては、可能性のある10カ所の候補地から、現実的に建設が可能
な3カ所に絞り、検討しています。
(2)高齢化が進む状況において、さまざまな手続きがワンフロア
で完了できる体制が必要になってきています。建て替えに当たって
は、住民サービスの充実を主眼に、また、防災面にも配慮した人に
優しい建物になるようにしたいと思っています。
(3)長野市では、環境に配慮した都市になりたいということで、
あらゆる対策を行っています。そして、今後つくる全ての公共施設
に加え、既存施設であっても比較的新しく設置可能な施設には、全
て太陽光発電システムを導入することを決めています。
残念ながら、現在の市民会館は、エネルギー効率が悪く、維持コス
トも高いことから、環境にやさしい施設ではないことは事実です。
新施設は、徹底的な環境対策を行い、現段階で考えられる理想的な
施設とすることで、維持費を40~50%カットできると見込んで
います。第一庁舎も、環境配慮型の建物のモデルになるような省エ
ネ施設にしたいと思っています。
以上、市民会館の建設と市役所第一庁舎の建て替えについての考え
方を説明させていただきました。環境対策ということも含め、長野
市の将来にとって大変有効であり、市民の皆さんのためになる施策
だと思っています。
いずれにしても、できるだけ次の世代の負担を軽くし、負の資産を
残さない、という観点でのご判断をお願いします。
2009年9月9日
2009年8月28日金曜日
「環境首都コンテスト」総合2位と「子育てしやすい都市」3位
自慢話のようで恐縮ですが、上記の二つ評価を頂いたことは、長野
市にとって、大変嬉しいことでした。
「環境首都コンテスト」は、全国13の環境関連NGOが主催して
いるもので、持続可能な社会づくりを進めようという趣旨で開催さ
れています。
今年のこのコンテストで長野市は、総合第2位、規模別・分野別表
彰(政令指定都市を除く人口30万人以上)のうち、地球温暖化防
止部門と住民参画部門、人口規模別で第1位、質問分野別表彰「風
土を活かした風景づくり」でも第1位を頂きました。このことは、
すでに以前のメルマガ「かじとり通信」(本年5月の長野市メール
マガジン第368号)で紹介させていただいたとおりです。
これとは別に、今度は東京都の特定非営利活動法人(NPO法人)
の「エガリテ大手前」が行った「第4回 次世代育成環境ランキン
グ」において長野市は、子育てしやすい都市として全国の政令指定
都市や中核市の中で、宮崎市、高松市に次いで3位に評価されまし
た。
調査したNPO法人エガリテ大手前は、男女共同参画社会の形成の
ために活動している法人です。調査は、平成20年度末までに入手
できた出産、保育、医療に関するデータや地域の取り組みなどを基
に独自の規準で採点したとのことで、長野市は、乳幼児保育の待機
児童数がゼロであること、延長保育に取り組む保育園が49カ所と
多いこと、対象人口当たりの児童館・児童センター数、小児夜間救
急施設数が充実していることなどが評価されたようです。
このほか、長野市が平成20年度から始めた「子育て雇用安定奨励
金交付制度」も評価されました。この制度は、子育てしながら働き
やすい環境づくりに取り組む中小企業に奨励金を交付する制度で、
育児休暇取得の代替要員を確保する際などに20万円~30万円を
交付することになっています。平成20年度には、4事業所に計
100万円の奨励金を交付しました。
「環境首都コンテスト」、「次世代育成環境ランキング」とも、国
やその外郭団体など、いわゆる公的セクターが主催するものではな
く、民間、非営利の市民組織が担う「公的活動」として実施されて
いるものです(ただし、資金的には、国などから資金援助を受けて
いるようです)。公的セクターではないということからも、これら
の評価は、法律に基づいた仕事ではなく、自治体が独自に取り組む
施策やそれに対する自治体の姿勢を評価したということなのでしょ
う。
若干面はゆい思いもありますが、長野市の姿勢や、長野市が積み上
げてきた取り組み、そして、市としての総合力が評価されたものと
考え、素直に喜んでいます。
少しオーバーな言い方になるのですが、環境問題(地球温暖化防止)
と子育て問題(少子化対策)は、日本にとって最重要課題だと思い
ますし、当然、長野市にとっても重要な課題です。特に、地球温暖
化防止は「人類の生き残りをかけた戦い」だと言われています。今
回の評価を契機として、今後も、あらゆる世代が安心し、心地よく
過ごしていける“まち”を、市民の皆さんとともにつくっていきた
いと考えています。
2009年8月28日
2009年8月24日月曜日
中山間地域の活性化について
長野市域の面積の70%が中山間地域であることは、皆さんご存知
のとおりです。そして、来年1月1日に合併する信州新町と中条村
も中山間地域ですから、この割合は、もう少し上がることになりま
す。
長野市が旧豊野町、旧戸隠村、旧鬼無里村、旧大岡村と合併して以
来、本年で5年目を迎えたわけですが、この合併はおおむねうまく
いっていると思っています。さらに、2町村が加わりますが、私は
自信を持って、一体感の醸成、元気なまちづくり、都市部と中山間
地域の両立を目指した行政運営を進めていけると考えています。こ
の広い中山間地域を元気にすることなしに、長野市全体の活性化は
あり得ないと思っています。
中山間地域の活性化に向けて私が考えていることを少し述べさてい
ただきます。
日本の経済は、100年に一度の経済危機ということで、昨年の秋
以来、大変な状況になりました。その後、なかなか景気が回復して
こない原因は、いろいろあると思いますが、私が一番の原因だと感
じていることは、“需要不足”ということです。景気回復のために
は、有効な需要を喚起するのが大切だと思っています。
政策の妥当性については賛否両論があるようですが、国も「定額給
付金」や「休日は、どこまで行っても千円」「耐震改修」など、い
ろいろな景気刺激策を実施しています。道路や河川の改修などの公
共事業についても、景気刺激策として昨年よりかなり多くの予算が
支出されていると実感しています。ただ、全般的な景気上昇にはま
だ程遠いのではないか、とも感じています。公共だけでできること
には限りがあるということでしょうか。
円高で輸出が伸びないことも原因の一つでしょう。ですが、逆に輸
入資材は実質値下がりしているのですから、国内需要を増やすこと
が、今一番重要なのではないでしょうか。その国内需要がどこにあ
るか?ということが、これからの大きなテーマになると思っていま
す。
まだ限られた範囲ではありますが、ここ最近、グリーン・ニューディ
ール政策に関連する分野でかなり需要が出てきていると言われてい
ます。ハイブリッド車や電気自動車、太陽光発電のパネル、エコポ
イント商品などが典型的な例であり、これらは今後の成長分野にな
るのでしょう。
長野市としても国の景気刺激策に乗り、国の予算を取り込むことで、
できる限りの努力をしています。また、プレミアム付き商品券「な
がの“きらめき”商品券」を5億5千万円分発行し、市内の需要喚
起もしてきました。これらの施策は、それぞれ効果があったと思っ
ているのですが、規模の問題もあり、地方自治体としてできること
の限界を感じていることも事実です。
結局のところ、長野市にとってこれから最も可能性があるのは、
「農業分野」と「中山間地域活性化」ではないかと思っています。
言い換えますと、今まであまり重視されてこなかった、ある意味で
は、これまで投資不足だった分野に対してできるだけの投資をして、
高い生産性のある分野に育てることが重要だと思っています。
もちろん資金だけでなく、人が大切ですから、農業に、そして中山
間地域に人を送り込む仕組みづくりも必要でしょう。
以上、なぜ農業や中山間地域に注目しているかという、私の考えを
述べさせていただきました。具体策について、一部ではありますが、
もう少し触れさせていただきます。
(1)農業は、決して儲からない産業ではないことは、さまざまな
工夫や努力をして多くの収入を得ている方々がいらっしゃることで、
証明されています。確かに世界貿易機関(WTO)が進める貿易の
自由化により、農畜産物の輸入量が増大し、販売価格が低迷してい
ることで、日本の農業が圧迫されているのは事実でしょう。しかし、
それを跳ねのけて、大きな需要を獲得している農業者がいることは、
今後の農業振興にとって大きな希望です。
農業で生活していける人をもっと増やしたいと思っています。長野
市では、新たな農業者のやる気を醸成するために、新規の認定農業
者に奨励金を差し上げたり、セミナーを実施したりして、農業人口
の増加に努力しています。今後は農地の斡旋もしなくてはいけない
とも考えています。
(2)一般的に現在の農業に対しては、マーケテイング不足、高齢
化による人手不足、組織化できていない、機械化しても規模が小さ
すぎて効率があがらない、などの課題が挙げられています。これら
の課題については、集落営農や農業法人を立ち上げることで、解消
できるよう支援をしています。
(3)長野市農業公社を立ち上げて、農業を応援する体制も整えて
います。公社が取り組んでいる仕事を羅列してみますと、
・農産品を積極的に販売するため、農産物加工品ブランド「ながの
いのち」を立ち上げました。アンテナショップも中央通りに開設し
ています。
・土地の集約化に努めています。
・大型農業機械の貸し出しをしています。
・人手不足を補うため、「お手伝いさん」を募集し、有料ボランティ
アとして農家に派遣しています。
・都市部との交流事業ということで、農家民泊や農業体験を盛り込
んだ都市部の学校の修学旅行を受け入れており、かなり盛り上がっ
てきています。
・中山間地域に絞った施策としては、県との共同作業ですが、薬草
栽培に取り組みはじめました。また、バイオマスエネルギーの利用
も視野に入れています。
(4)農地を守ることも大切だと思っています。雇用の確保やまち
を元気にするためには、企業にも進出してほしいと思っています。
ただ、それには、それなりの面積をもった用地が必要になります。
これまでは、その対象として農地を割いてきました。しかし、長野
市の農業を守るためには、無制限に都市化することは許されません。
農地を保存していくということも併せて考えながら、用地を確保し
たいと思っています。
長野市には、広い中山間地域が存在しています。一方で、約40万
人もの人が住んでいる都市という性格も持ち合わせています。中山
間地域問題は、日本中が悩んでいる問題ですが、中山間地域と都市
部とが近接しているという特性をもつ長野市だからこそ、一つの自
治体内で、中山間地域と都市部が両立する考え方が必ず生まれるは
ずだと、私は信じています。
2009年8月24日
2009年8月17日月曜日
公共交通問題について
最近の選挙では、マニフェストの重要性について語られることが多
くなっています。自分の任期(市長の場合は次の4年間)に何を実
行するのか、ということを文章にして市民の皆さんと約束するので
すから、これはとても重要です。
併せて、こちらは、まだ、あまり話題になってはいませんが、マニ
フェストに掲げた内容が本当に実現できたのか、ということを検証
することも重要だと思っています。
そこで、10月の市長選挙に向けて、まず、4年前に私が皆さんと
お約束したマニフェストと、その進ちょく状況を示した資料を提示
させていただきました。進ちょく状況の資料は、長野市が評価した
ものですから、言わば私の自己評価のようなものですが、私が市民
の皆さんにお約束したことがどう実現したのかということを示す資
料としてお読みいただきたいと思っています。
私としては、将来的にマニフェストの進ちょく状況を検証する外部
委員会をつくるような制度の必要性も感じていますが、いかがでし
ょうか。
前回申し上げたとおり、10月の市長選挙に向けたマニフェストに
ついては、現在、詰めの作業をしているところですので、現段階で
はまだ結論が出ていません。そこで、このブログでは、マニフェス
トに盛り込めるかどうかは別として、今、長野市にとって大切なこ
とは何か、ということを書かせていただきたいと思っています。
まず今回は、公共交通の問題について書かせていただきます。
公共交通は、社会の大切なインフラですが、経営している事業者だ
けでは解決が困難ないろいろな問題を抱えるようになってきていま
す。
このような問題を解決するために国では、公共交通の活性化・再生
を通じて魅力ある地方を創出するということで、「地域公共交通の
活性化及び再生に関する法律」をつくりました。この法律が施行さ
れたことで、地域の関係者が連携して取り組む事業に対して、国か
ら総合的な支援が得られるようになったのです。つまり、公共交通
の改善に取り組む地域を国が応援してくれるということです。
現在、長野市では、公共交通関係で以下の三つの協議会を設置し、
検討を行っています。いずれも、この法律に基づいて設置したもの
です。
(1)長野市公共交通活性化・再生協議会
(2)長野電鉄活性化協議会
(3)しなの鉄道活性化協議会
モータリゼーションの進展、都市構造の変化、そして、人口減少時
代を迎えて、公共交通機関の経営が危機に陥っていることは、皆さ
んお分かりのことと思います。これら三つの協議会は、国の支援を
得ながら、関係機関等が集まって、再生に向けてどうしたらよいか
を検討する協議会です。
(1)長野市公共交通活性化・再生協議会
長野市の公共交通の主力であるバスを主体に、検討する協議会です。
長野市では、主として川中島バスと長電バスの二社に、市内及び近
郊の公共交通を担っていただいていますが、両社とも利用者の減少
により厳しい経営状況になっています。
昨年6月、親会社が事業再生計画に基づき金融支援を要請した川中
島バスから、不採算路線廃止などの提案を受け、長野市としては、
当面の問題は処理して市民の皆さんに影響が出ないようにしました。
しかし、対症療法では根本解決に程遠いと考え、前記のバス会社2
社やタクシーなどの公共交通事業者を含め、関係行政機関、公安委
員会、利用者、学識経験者、民間団体、道路管理者などにも加わっ
ていただき、この協議会を設置しました。現在は、ワーキンググル
ープによる検討をしているところです。
(2)長野電鉄活性化協議会
長野電鉄の屋代線では、慢性的な赤字が続いており、経営が難しい
局面になっているとのことから、長野市、須坂市、千曲市の沿線関
係者や長野電鉄など関係機関が集まって設置した協議会です。
長野電鉄屋代線は、大正11年に開通した由緒ある路線で、平成
14年までは「河東線」という名称でした。乗客数は、昭和40年
度の330万人をピークに、平成19年度には、その14.7%、
48万人にまで落ち込んでおり、年間1.8億円の赤字、累積損失
は50億円を超えているとのことです。さらには、近い将来、車両
の更新や、変電所、線路などの施設更新の時期が迫っており、新た
に30億円以上もの多額な投資が必要になってくるのだそうです。
長野市とすれば、関係者が連携して長野電鉄の活性化・再生に資す
る具体的な施策を展開し、沿線地域におけるバス等を含めた公共交
通利用者全体が増加するよう、沿線地域の皆さんと意見交換するな
かで、検討していきたいと考えています。
「長野市公共交通活性化・再生協議会」、「長野電鉄活性化協議会」
とも、専門家のコンサルタントに入っていただいて調査を進めてい
ます。
(3)しなの鉄道活性化協議会
しなの鉄道は、軽井沢-篠ノ井間の鉄道です。長野新幹線の開業と
ともに並行在来線として経営分離されて平成8年に誕生しました。
創業以来かなり頑張って合理化などに取り組んでおり、期間損益で
は黒字を出せるところまで努力してきていただいていますが、残念
ながら乗客数は減少しています。合理化も限界、値上げも限界とす
れば、この経営もなかなか難しい局面を向えているものと考えられ
ます。
こちらの協議会は、長野県、沿線市町及び沿線商工団体、観光団体、
利用者、しなの鉄道が構成メンバーで、事務局は上田市です。
以上、三つの協議会を立ち上げて研究・議論を始めていますが、い
ずれも簡単ではありませんので、この段階で私がマニフェストに結
論を入れることは、好ましくないと判断しています。ただ、長野市
民の皆さんの足を守るために最大限の努力をするということは、お
約束したいと考えています。
三つの協議会の議題ではないのですが、長野市の公共交通機関をめ
ぐる問題はこのほかにもいろいろあります。
一つは、北陸新幹線の金沢延伸に伴う並行在来線の問題です。この
問題は、長野県が責任をもって解決すると、かなり以前に発表して
いますので、安心はしています。しかし、市民の皆さんの生活にも
関係がある路線ですので、長野市としても、県にお任せしていれば
良い、とばかり言ってはいられない問題です。
もう一つ、JR東日本の篠ノ井-長野間の問題もあります。これは、
JRにお任せするより仕方がないようですが、しなの鉄道や並行在
来線の問題ともつながっていることですので、双方の利便性、そし
て、新潟県側のことも考慮して考えなくてはならないと思っていま
す。
また、市町村合併によって引き継いだ市営バスや、需要が少ない中
山間地域で運行している乗合タクシー、社会福祉協議会で運行して
いる福祉自動車、小学校統合によるスクールバス・タクシー、大岡
地区のハッピー号なども公共交通機関としての役割を担っています。
このほか、ご好評をいただいているおでかけパスポート、市内に3
路線あるぐるりん号の位置づけ、あるいはタクシー業界のことも考
慮していかなくてはならないテーマだと考えています。
根本的な問題として、公共交通機関の再生は、お金さえかければ解
決できる話です。言い換えれば、いくらまで市費を投入するのか、
という問題に帰結するのだと思っています。費用対効果が常に問わ
れている、でも、地域の皆さんにすれば移動手段は必要、しかし、
あまり乗っていただけない、そんなジレンマを常に抱えながら、解
決に向けて頑張っていかなくてはいけないテーマです。
2009年8月17日
2009年8月5日水曜日
明日の舵取り応援団からの政策通信 創刊号
私は、6月市議会で、10月18日告示、25日投票となる次期市
長選挙に、三選を目指して立候補するという意思表明をさせていた
だきました。そのため、長野市のホームページから発信していたメ
ールマガジン「かじとり通信」は、自己規制によって休刊すること
にしました。代わって、私の後援会組織である「明日の舵取り応援
団」のホームページを立ち上げ、今後、10月中頃までの約3カ月
の間は、このホームページ上で市政の諸課題について議論を深め、
いただいたご意見を市長選挙に向けたマニフェストに反映していき
たいと考えています。
私は、平成14年4月から、メールマガジン「かじとり通信」を週
1回発信し、市政のあり方、市民の皆さんに伝えたいこと、施策の
真意などについて、できるだけ分かりやすく、率直にお話ししてき
ました。これまでに配信したのは、号外も含め、全部で371号で
す。
7月上旬、それらをまとめ、私なりに10月の市長選挙に向けたマ
ニフェストの原案(たたき台)をつくり、まず、「明日の舵取り応
援団」の役員の皆さんにお示しいたしました。その際には、「今後、
皆さんで議論をしてほしい。さらには、役員以外の方からもいろい
ろな意見を出していただき、それを反映してマニフェストとして完
成させたい」、ということをお願いしました。
私の原案をたたき台にして、足りないこと、異論など、もろもろの
ご意見をいただきながら、後援会の役員の皆さんを中心に、小グル
ープでの議論を主体にした検討作業を進めていただきたいと考えて
います。不定期になるかもしれませんが、私もこのホームページを
通じて、政策議論をさせていただくつもりです。
8月末の衆議院議員選挙終了後、まとめの作業を行ってマニフェス
トを完成させ、公開したいと思っています。
ここで、私の後援をしていただいている「市政に参加する市民の会」
と「明日の舵取り応援団」について、少し説明させていただきます。
「市政に参加する市民の会」は、長野市の発展と市民の福祉向上を
図ることを目的に、昭和40年代、故夏目忠雄さんの市長選挙の時
に結成された会で、言わば、以後の歴代市長の市政をバックアップ
してきた重要な会です。
私もこの「市政に参加する市民の会」の応援をいただき、最大限努
力してまいりました。今後も、この会をはじめ、多くの市民の方々
のご支持をいただきたいと考えています。政党やその派閥にかかわ
らず、ご賛同いただけるすべての市民の方々にご加入いただきたい
会です。
「明日のかじ取り応援団」は、私、鷲澤正一の個人的な後援会です。
私の友人やNUPRI(長野都市経営研究所)の仲間、そして徐々
に輪が広がって、商工会議所、JC、JCシニアクラブの皆さんに
も加入していただいています。もちろんこの会も、どなたでもお入
りいただけるのですが、私の個人的な後援会ということで、私に対
してさまざまなご意見やご提言をいただける会、という側面もある
と考えています。
7月18日(土)、「市政に参加する市民の会」と「明日の舵取り
応援団」合同で、『かじ取り通信 第7巻』の出版に併せた私の市
政報告会を開催していただきました。
『かじとり通信』という本は、後援会活動の一環で、後援会の皆さ
んに私の活動報告をさせていただくための資料として、平成15年
から毎年1巻ずつ出版しているもので、私のメルマガ1年分をまと
めた本です。第7巻には、平成20年度のメルマガが載っています。
このたびの市政報告会では、今年出来上がった第7巻を皆さんにお
配りするとともに、市政報告として、長野市が抱える市政課題につ
いて私から報告させていただきました。併せて、「市政に参加する
市民の会」と「明日の舵取り応援団」の役員決めもありました。
今回、役員をお引き受けいただいたのは、以下の方々です。
「市政に参加する市民の会」会長 加藤久雄さん(長野商工会
議所会頭)
幹事長 小山岑晴さん(長野市議会議員)
事務局長 星沢哲也さん(長野県中小企業団体中央会会長)
「明日のかじ取り応援団」 団長 星沢哲也さん
事務局長 柳澤幸一さん(株式会社柳澤商店社長)
「市政に参加する市民の会」の会長は、長い間大変ご苦労いただい
た塚田俊之さん(社団法人長野県経営者協会顧問)でした。このた
び、ご高齢である旨を理由に辞意を表明されたことから、加藤久雄
さんにバトンタッチすることになったものです。
なお、塚田俊之さんには、前市長の塚田佐さんとともに、顧問とい
う立場で、引き続きこの会に関わっていただくことになりました。
そのほかの役員については、マニフェスト議論と並行して話し合い
の中で検討し、9月には決めていただくことになっています。
2009年8月5日
2009年7月23日木曜日
企業誘致フェア
先週、7月15日(水)から17日(金)までの3日間、東京国
催されました。このフェアは、社団法人日本経営協会が主催してい
るもので、企業を誘致して地域活性化を進めたい地方自治体と、新
たな立地先を探している企業とのお見合いの場とも言えるイベント
です。昨年に続き、2回目の開催になります。
長野市では、本市の最上位計画である第四次長野市総合計画で
「企業立地の推進」を重点施策に位置付けていることをはじめ、産
業振興部内に企業立地推進室を設けたり、「長野市産業集積・企業
誘致戦略」を策定したりするなど、積極的に企業立地を進めていま
す。そのような中でこのフェアは、長野市への企業立地をご検討い
ただくとても良い機会になりそうだということで、展示ブースを出
展して産業用地やオフィスビルの情報を発信するとともに、私も市
長としてプレゼンテーションをしてきました。
長野市の製造業の現状について、少しご説明させていただきます。
従業員4人以上の事業所を対象とした「製造品出荷額等」の推移を
見ますと、ピークの平成9年が7,936億円だったのに対し、平
成16年には約半分の4,018億円まで落ち込んでしまいました。
その後は増加傾向に転じ、平成19年には4,903億円まで回復
しましたが、ピーク時と比較して3,033億円、率にして約38
%も落ち込んでいる状況なのです。
また、従業者数も減少を続けており、出荷額などが持ち直した後
も経営の合理化などに伴い減少が続いている状況です。
このような状況において、雇用の確保やまちに元気を呼び戻す効
果が期待できる「企業誘致」という政策は、市内の企業を応援する
政策と並んで、長野市にとって大変重要になっています。
現在、企業へ分譲するために長野市がストックしている産業用の
用地は4区画です。ただ、これでは、スムーズな企業誘致はできま
せんので、川合新田の南部浄化センター跡地と南長池の三菱電機長
野工場の跡地を利用して、新たに産業用地を整備する計画です。
また、中心市街地では、営業所の統合や撤退によって空室が目立
っているオフィスビルもありますので、ここへの企業誘致もしたい
と考えています。
ただし、企業を誘致したいということは、事情はそれぞれでも全
国の地方都市に共通する思いであり、近年では自治体間の誘致合戦
が過熱している状況でもあるのです。このような中では、長野市の
魅力をいかにお伝えできるか、ということが大事になってくるので
しょう。7月15日に行ったプレゼンテーションでは、私もさまざ
まな思いを込めながら、最大限アピールさせていただきました。
私が行ったプレゼンテーションは、おおむね以下のような内容で
す。
優れた交通アクセス
・東京までは、新幹線で1時間30分。北陸新幹線延伸により金沢
までは1時間。長野市を拠点とした営業エリアがさらに拡大する。
・首都圏、中京圏へは複数の交通ルートがあり、災害時でも容易に
支援体制が確保できる。
・新潟県上越市の直江津港までは車で1時間。中国・韓国との交易
に優れている。
都市と自然が共生するまち
・上信越高原国立公園へは、長野駅から車で30分。ここには、飯
綱高原や神話の舞台にもなる戸隠などがあり、都市機能と自然の
安らぎが調和している。また、志賀高原や北アルプスも間近に望
むなど、大自然の魅力に満ちあふれている。
・スポーツ、レジャー、癒やしなど、ワークライフバランスに優れ
た環境にある。
・善光寺や真田十万石の城下町松代など、伝統・文化の宝庫。周辺
には、「栗と北斎のまち小布施」や「蔵のまち須坂」、「名月の
里 千曲」など、歴史や文化の薫るまちがある。
気候(過去30年の平均)
・年間平均気温は11.7度。夏場でも朝夕は涼しい。
・年間降水量は900ミリ前後。全国平均と比較すると半分程度で
あるが、水源を数多く有しており、水不足の心配はない。
・冬場の最大積雪量は、平地で20センチメートル程度。迅速な除
雪により、事業活動や日常生活への影響は少ない。
産・学・行の連携が活発
・市内には、長野市ものづくり支援センター、超微細な炭素繊維で
あるカーボンナノチューブなどの研究成果が注目されている信州
大学工学部、長野工業高等専門学校(長野高専)、県工業技術総
合センターなど、産・学・行連携支援機関が集積している。
・長野市ものづくり支援センターには、「クリーンルームシステム」
のほか、研究者が企業と連携しながら試験・研究・試作を行う
「レンタルラボ」や産・学・行の交流をもたらす「交流ゾーン」
などが整備されている。
コンベンション機能が充実
・約7,000人を収容できる宿泊能力、2万人を収容できるコン
ベンション施設もあり、学会や国際会議などの開催が可能で、助
成制度もある。
企業立地への支援体制
・研究開発や販路拡大に向けた情報提供を積極的に推進。
・立地後も、企業の求める情報の提供や技術支援などのフォローを
積極的に実施。
・不動産関係者や金融機関などと連携し、産業用地整備やオフィス
ビルの情報を発信。
さまざまな助成制度を用意
・工場用地の取得に対する助成
・固定資産税相当額の助成
・貸付特約付分譲制度
・事業用定期借地制度
・事業所税相当額の助成
・雇用創出企業立地支援助成金制度
・施設改修に関する助成
以上のようなことをアピールさせていただきました。これを契機
に、多くの企業に長野市への立地をご検討いただけますと、うれし
く思います。
話は変わりますが、今年は4年に一度の市長選挙の年です。長野
市選挙管理委員会では、10月18日告示、10月25日投開票と
いう日程を決定しています。
私、鷲澤正一は、6月市議会で三選を目指して立候補するという
意思表明をさせていただきました。
現職としての公務は11月の任期まで続くわけですが、選挙が近
くなるにつれ、候補者としての側面も強くなってきます。それ故に、
市の公の施設(道具)を使って、選挙運動だと誤解されるような行
動をとることは、当然、自粛すべきであると認識しています。
公職選挙法では、選挙運動と政治活動を区別してはいるのですが、
どこで線を引くのか、必ずしも明確ではありません。しかし、現職
であるが故に、紛らわしいことは遠慮すべきということ、肝に銘じ
ているつもりです。
従って、市役所のサーバーを使って配信している「かじとり通信」
は、休刊することにし、市役所とは別のホームページを立ち上げて、
私の考えを述べさせていただくことにしました。
前回、すなわち、私の二期目の市長選の時も、同様の処置をした
と記憶しています。もちろん、このホームページでも選挙運動をす
るつもりはありません。過去と同じように、市政の課題について、
私の考えをきちんと述べさせていただくつもりです。
この自主規制は、特に法的根拠があるわけではありません。報道
機関では、選挙前3カ月は候補者(その可能性のある方も含む)の
顔写真や記事などを出さないようにしているそうで、その例に倣っ
ているものです。投票日の10月25日の3カ月前と言えば7月
25日前後ということになりますので、今日が最終日ということに
なります。
以上のように、来週からしばらくの間、私が執筆するメールマガ
ジン「かじとり通信」は休刊させていただくことにします。そのほ
かのコーナー「お知らせ&イベント情報」と「新着情報」は、従来
どおり配信させていただきますので、引き続きご覧いただければ幸
いです。
なお、投票日以後の最初の木曜日は10月29日です。その時は、
当落に関係なく、私はまだ任期中ですので、再びメルマガを書かせ
ていただく予定です。
追記
7月9日付けのメルマガ「底割れを防ぐ経済対策」の中でアメリ
カの経済政策は日本の政策を受け継いだ、という趣旨のことを書か
せていただきましたが、少し言葉が足りない面がありましたので、
補足させていただきます。
民間会社に資本を注入したということは、大きな意味でアメリカ
も日本も同じなのですが、アメリカの場合は、ゼネラル・モーター
ズ(GM)の優良資産だけを引き継いだ新会社、新GMをつくり、
そこへ政府が資本注入したわけです。残された借金など、不良資産
の部分は旧GMに残され、資産売却などを行い清算するそうです。
しかし、これには、かなり大きな財政負担が見込まれるはずで、日
本の場合とはかなり違っています。
メルマガの配信後、このことを十分に書かなかったことが気にな
っていたものですから、今回、付け加えさせていただきました。
2009年7月16日木曜日
長野市が提供する市民サービスについて
市民サービスというと、行政が行う保育園や健康保険などを思い
出される方が多いと思いますが・・・私は、行政が行うすべての事
業が市民サービスだと思っています。
長野市では、昨年、市が提供しているさまざまな市民サービスに
ついて、市民の皆さんからどのくらいの対価を頂くのが良いのか、
ということの考え方の原則を決めて発表しました。誤解のないよう
にお願いしますが、あくまでも考え方であって、新しい金額を決め
たわけではありません。
市民サービスを提供する対価として、市民の皆さんからは税金を
頂いているのですが、そのほかにも、サービスの利用者には、税金
とは別に施設などの使用料や講座の受講料などの料金を負担してい
ただいています。
しかし、ご負担いただいている料金の算定基準は必ずしも統一さ
れておらず、類似するサービスと比較して均衡の取れていないもの
もあり、このような状況に以前から疑問を感じていました。
そこで、市の行政改革推進審議会に諮問して、サービス利用者に
ご負担いただく金額の考え方の原則をまとめていただきました。
今後、料金を改定する場合には、この原則に基づいて慎重に検討
し、市民の皆さんからいろいろなご意見を頂いた上で最終的には市
長が決断して議会の了解を得る、そんな手順で実施することになり
ます。現在は、その手続きを開始した段階です。
今回は、行政改革推進審議会の方々にまとめていただいた考え方
の原則について、私なりにお話しさせていただき、皆さんにご理解
いただきたいと考えています。
まず、一般的なお話をさせていただきます。
施設などのハードに関するものでも、診療や保育園運営などいわ
ゆるソフトに関するものでも、市がサービスを提供するために必要
な費用は、市民の皆さんから頂く税金や、サービス利用の際にお支
払いいただく料金などにより賄われています。
可能であれば、別途、料金などを頂くことなく、税金のみでサー
ビスを提供したいのですが、現実には税金だけで賄うことはできま
せん。また、後で述べさせていただきますが、サービスを利用する、
利用しない、という公平性の観点からも、税金だけで賄うべきでは
ないとも思っています。
仮に、税金だけで市民サービスすべてを賄おうとした場合には、
税金をもっと頂くか、提供するサービスを減らすことを考えざるを
得ないのです。ただ、これでは、サービスの低下どころか、行政が
成り立たないことは、誰が考えても明らかです。
必要なサービスを維持していくためには、公平性の観点から見て
も、どうしても利用される方に使用料や受講料などの料金を負担し
ていただくことも必要になってしまいます。
このことをご説明するために、まず、市が提供している市民サー
ビスを分析・分類してみました。
(1)国が基準を定めて、サービスの提供方法を決めているために、
長野市として自由に料金を決めることができないものがありま
す。典型的なものは義務教育で、これは無料です。料金を頂く
サービスではありませんが、生活保護などもこの区分の中に入
ります。
一方で、例えば保育料のように、国が決めた基準があるもの
の、実際には市が独自の予算を使って保護者の負担を軽減して
いるようなものもあります。国民健康保険なども同じ区分に入
るサービスです。
(2)国の補助を受けて整備した施設などで、無料でなくてはなら
ないと国が規定しているものもあります。図書館、公園などは
この区分に入るでしょうし、道路も有料道路としてつくったも
の以外は、当然無料です。
(3)公営企業が提供している市民サービスというものもあります。
長野市の場合、具体的には上下水道局が提供するサービスです。
これは、行政が提供するサービスではありますが、企業と同様
に原価計算をし、利益を見込んで料金を頂いてしっかり経営す
る、そんなサービスです。
(4)市が独自に計画し、国や県に依頼して補助金を受けて提供す
るサービスもあります(補助金を受けられない場合ももちろん
ありますので、企業に協賛していただけるとありがたいのです
が・・・)。補助金などの支援が受けられないサービスの典型
は、スキー場や動物園の経営でしょう(今秋竣工(しゅんこう)
予定のレッサーパンダ舎の改築には、地方交付税で支援しても
らえる合併特例債の活用を考えていますが、運営経費への支援
はありません)。支援が受けられるサービスには、冬の道路除
雪などがあります。
(5)民間企業に代わって市が提供するサービスもあります。赤字
などが理由で企業がやむなくサービスの提供をやめてしまう場
合に、長年利用してきた方々の生活が成り立たなくなってしま
うことから、行政として取り組まざるを得ないことがあります。
その場合は、企業に赤字を補てんするための補助金を出したり、
廃止代替として実質、行政直営でサービスを提供したりしなく
てはなりません。赤字のバス路線などがその典型です。
(6)公益を追求するサービスと、私益的な利用に提供するサービ
スということで考えてみますと、こんな考え方もあるでしょう。
施設サービスの中では、例えば、スポーツ施設や会議場などは、
私益的なサービスと言えるでしょう。ただ、これらを長野市が
主催する事業で使用するときは、公益と言えると思いますし、
市ではありませんが、学校行事や地域行事でお使いになるとき
も公益的と言えることは当然です。
市が提供するサービスには、いろいろな形態・考え方があること
がお分かりいただけたでしょうか。
ただ、すべてのサービスについて言えることですが、お使いにな
るのは市民全員ではない、ということです。それぞれのサービスに
は、利用する(できる)人と、利用しない(できない)人が必ずい
ます。利用しない人の中にも、本当は利用したいけれど、何かの理
由(例えば、遠い、狭い、古いなど)で使えない、使わない、とい
う人もたくさんいるわけです。全市民が同一に利用するというサー
ビスは、実はあまり多くないと言えるのです。
従って、市が提供するサービスをすべて無料にするということは、
利用しない(できない)人からみれば不公平だということになるで
しょう。無料ということは、すなわち、すべて税金で賄われている
わけですから・・・。
ただ、利用の有無にかかわらず、消防や救急、義務教育、地区の
公園など、本来、市民の皆さん誰もが利用できるよう、税金で賄っ
て提供すべきサービスもあるわけです。今回は、このような本来行
政が提供すべき公益性が高いものを除いたサービスについて、利用
者負担の割合に関する考え方の原則をまとめたということです。
言い換えますと、今回、この考え方の原則をまとめ、利用者とし
て応分のご負担をお願いすることは、税負担、すなわち市民全体の
負担を減らすことにつながる、ということをご理解いただきたいと
思います。
次に、市民の皆さんが一番気にされていると思われる、ご負担い
ただく金額を具体的にどう決めるべきか、という点についてです。
まず、市が提供するサービスに対して応分のご負担をお願いする
ためには、サービス提供に要するコスト(原価)を明らかにするこ
とが必要ですし、そのコストの算定もある程度統一的な方法で算出
する必要があります(統一的といっても、例えば個々の施設は全部
違いますから、個別に妥当性のある検討が必要なことは当然です)。
長野市民会館のコストを例にして考えてみましょう。
まず、基礎的なコストとして、施設をつくるための建設費、用地
費があります。この費用から、施設の耐用年数に基づいて算出した
額を、減価償却に相当するコストとして考えることもできます。た
だし、長野市民会館建設のための借入金返済は終わっていますし、
昭和36年の建設から約50年間使用しているということもあり、
現在のコストとしては、施設建設費用はゼロだと考えても良いでし
ょう。
このほかのコストには、施設維持や運営に掛かる費用があります。
これらの費用には、人件費をはじめ、保守点検費、修繕費、清掃費、
そして電気・上下水道といった光熱費などがあり、毎年掛かる費用
です。特に光熱費や修繕費などは、施設が古いが故に効率があまり
良くはなく、割高になっていることも事実です。
また、役務提供費も掛かります。例えば講演会や講座を開催する
と、講師料や謝金、消耗品費などが必要になります。そのほか、全
体を管理する部門の費用も掛かります。
このような費用を合計し、サービス提供に要するコストを算出す
る予定です。併せて、税金以外にご負担いただくべき金額をお示し
していきたいと考えています。
ただ、市が提供するサービスの内容は、大変多岐にわたっている
こと、内容・性質によって利用する人も異なることから、利用者の
負担と税による負担を一律にすることも現実的ではありません。サ
ービスを大まかな類型に分けて、類型ごとに利用者負担の割合を決
めることが、一番合理的なのでしょう。
以上が、市民サービスの利用者に負担していただく費用に対する
基本的な考え方です。この考え方に基づいて、負担していただく金
額を再検討してみますと、これまでどおり無料のままや低料金で提
供すべきであるというサービスも多いのですが、安すぎるのではな
いかというサービスも結構あるのです。
市民の皆さんにご負担いただく金額のことですから、当然、さま
ざまな配慮が必要になることは言うまでもありませんが、公平性と
いうことを視点に、市民の皆さん全体の負担を減らしたいというこ
とを考えますと、何とかしなくてはいけないのではないか・・・、
そんな思いも強くしています。
行政改革推進審議会でまとめていただいた内容は、長野市のホー
ムページにすべて公開しています。今回書かせていただいた原理原
則の詳細は、こちらをご覧いただければ幸いです。
2009年7月9日木曜日
底割れを防ぐ経済対策
昨年6月、少しおこがましいかなと思いながら3回にわたって
「お金をおもちゃにした“つけ”」というテーマでメルマガを書か
せていただきました。
私は、経済の専門家でも評論家でもありません。ただ、どう考え
てもおかしい、こんなことが許されて良いはずがないと考えて、サ
ブプライムローン問題について勉強をして書かせていただいたのが
このメルマガです。
その後、9月になっていわゆる「リーマン・ショック」が襲い、
世界の経済は一挙に大混乱に陥りました。そして、今年に入ってか
ら、ビッグスリーと言われるアメリカの自動車メーカーのうち、ク
ライスラー、ゼネラル・モーターズ(GM)という世界最大級の企
業が相次いで実質倒産するという、今までの常識では考えられない、
とんでもない事態に発展してしまいました。
日本では、小泉・竹中改革の良い部分が効いてきたおかげで、金
融機関は何とか健全性を保っているように感じています。国による
資本注入という、非常時なので許されたのであろう政策でこれまで
何とかしのいできたということでしょう。
そして、その政策がアメリカ政府の政策に受け継がれ、膨大な株
式の保有という資本注入によって、GMは国有化されたと言って良
いと思います。
日本の資本注入は金融機関だけかと思っていたのですが、今年の
4月からは、改正された産業活力再生特別措置法によって金融分野
以外の企業にも許されることになりました。具体的には、エルピー
ダメモリという半導体大手企業への資本注入が決定したようです。
あの日立製作所にも・・・という報道もあったように記憶していま
す。
このように、国による資本注入という手段が非常時には有効だ、
ということが証明された格好です。ただ、こんなことが長続きした
らどのような社会が生まれるのでしょうか。私には、見当も付きま
せんが、国営企業のまん延は、すなわち、自由な経済活動に行政が
介入するということで、資本主義社会を終えんに向かわせるかもし
れないのです。
市場原理主義を信奉しているアメリカですら、国が資本注入せざ
るを得なかったように、今回のサブプライムローン問題の影響の恐
ろしさは、計り知れないものがあると感じています。
アメリカでは、注入した資本はできるだけ早く回収する、つまり、
いったん保有した株式を売ってしまうことで、国は手を引く段取り
を模索する、という話のようです。しかし、そんなにうまく株式が
売れるのでしょうか。それだけの投資家がいるかどうかということ
でしょう。
ただ、資本注入とか株式保有というのは、補助金とは違い、うま
くいけば返ってくるお金だと言えます。これは、一時的に企業の信
用力を補完し、資金繰りを助け、そして企業を再生させることが目
的ですから、再生した企業が再び利益を上げられるようになれば、
お金はいずれ返してもらえることが期待できるわけです。つまり、
“支出はしても無くならないはずのお金”、とも言えるわけです。
日本の場合、以前、国が金融機関へ注入した資本は、健全化を達
成したところから徐々に返済されているようです。そして、日本の
金融システムも回復してきているようですから、現在のところは成
功だったと言えるのでしょう。
さて、日本経済の状況ですが、昨年の秋以来、どこも不況、不況
の大合唱で、好況だという業界はあまり無いようです。国は、
100年に一度の経済危機ということで、いろいろな経済対策を打
ち出してきました。それを受け、長野市としても一生懸命、経済対
策に取り組んでおり、関係する補正予算額は88億2,000万円
余りにもなりました。
長野市が実施してきた主な経済対策は次のとおりです。
(1)定額給付金、子育て応援特別手当
究極のバラマキ政策と言われましたが、6月末現在で、対象者
のうち「定額給付金」は約92%、「子育て応援特別手当」は約
95%の方々に受け取っていただきました。
まだ「定額給付金」を受け取っていらっしゃらない方には、今
月中に再度、申請書をお送りすることにしています。また、一人
暮らしのお年寄りの方などには、民生児童委員さんからも申請の
呼び掛けをしていただくようお願いしています。
この二つの給付金の申請締め切りは、10月15日です。何と
か対象者全員にお受け取りいただきたいと思っています。
(2)中小企業への支援
中小企業向け融資制度では、新規貸付利率引き下げ、貸付限度
額拡大、借換時の返済期間延長などを実施しました。平成20年
度の融資実績は、1,908件、185億6,000万円余りに
上っています。また、信用保証協会の100%保証が別枠で受け
られる緊急保証制度は、制度が開始された昨年10月末から4カ
月間で1,178件もの利用がありました。これらは、企業の資
金繰りを助け、景気の底割れを防ぐ意味でとても有効だったと思
っています。
また、市独自の政策として、7月1日から3年間、資本金
1,000万円以下の中小企業などを対象に法人市民税均等割の
税率を標準税率に引き下げることにしました。1企業当たり年1
万円~2万4,000円の減税になります。
(3)雇用を増やす政策
国の政策により県が創設した雇用対策のための基金を活用し、
予定も含め、市として280人分の新たな雇用を創出しています。
また、介護保険施設などで働く人の待遇を改善し、介護現場の
人材不足解消と雇用増加を図るため、国は介護報酬を3%アップ
しました。市では、このことが、皆さんから頂く介護保険料の値
上げにつながることを抑制するため、国からの交付金で基金を創
設し、現在の保険料を平成23年度まで維持することにしていま
す。
(4)公共事業の前倒し
国の経済対策を受けて、平成21年度以降に予定していた事業
を前倒しして実施しました(小・中学校の校舎・屋内運動場の耐
震補強や改築工事、緊急性や優先度の高い道路や排水路、河川の
改修、防災工事、地上デジタル放送完全移行に備えた小・中学校
や市立公民館へのデジタル対応テレビの配備など)。
(5)プレミアム付き商品券「ながの“きらめき”商品券」の発行
長野市独自の対策として、10%のプレミアムを付けた商品券
を5億5,000万円分発行しました。市内に少しでも多くのお
金が回って景気を刺激したいということで発行したのですが、幸
いにも大変な人気で、2日間で売り切れてしまいました。お買い
上げいただいた方は、ぜひ、有効期限の8月末までに使い切って
いただきたいと思います。
以上、これまでに国や県、そして市が取り組んできた主な経済刺
激策を書き出してみましたが、新年度になり、国では、さらに総額
13兆9,200億円余りの大型補正予算を組んでいます。これま
での補正予算が、主に緊急的な施策だったのに比べ、今回はやや長
期にわたる施策がプログラム化されていると言って良いようです。
このうち、地方へは、総額1兆4,000億円の「公共投資臨時
交付金」と総額1兆円の「経済危機対策臨時交付金」が配分される
ことになっています。長野市への配分は、これまでに決定した分だ
けでも15億円余りです。これらを最大限利用して地域経済のさら
なる活性化に取り組むため、先日6月市議会定例会が終わったばか
りですが、7月17日に市議会臨時会を開催し、長野市としての新
たな補正予算を決定したいと思っています。
さらに、国が来年度予算に向けてのシーリングを決めたという報
道もありました。シーリングとは、予算編成に向けて各省庁の要求
枠が無制限に大きくならないよう、あらかじめ限度額を設けること
です。来年度予算のシーリングでは、従来とは違って制限枠をかな
り緩めたようです。来年度も景気拡大型の予算を組むという姿勢の
表れでしょう。
これだけの景気刺激策を行っていますので、景気が良くならない
はずは無いと考えていたのですが、最近になり、景気が上昇してき
たという新聞記事もようやく見られるようになってきました。
もっとも、マクロとミクロの経済では、かなりずれがあるはずで
すし、時期、業種、地域などによってもずれるのは当然ですから、
景気が回復した部分と、まだまだという部分があることは避けられ
ないとは感じています。
ただ、このまま景気が回復したとしても、今までと同じような経
済状況には戻らないと思っています。危機を乗り越えた新しい時代
にふさわしい、新たな経済社会が生まれてくるのでしょう。
2009年7月2日木曜日
長野市の上下水道事業(2)
今回は、長野市の上水道事業の統合についてご報告します。
長野市営の水道事業は、昨年度4つに統合(上水道事業、戸隠簡
易水道事業、鬼無里簡易水道事業、大岡簡易水道事業)するまでは、
14もの事業(上水道1、簡易水道事業10、飲料水供給施設1、
簡易給水施設2)があったのです。
なぜ、14もの水道事業があったかと言いますと、平成17年に
合併した際に、それぞれの旧町村が運営していた簡易水道など13
事業を引き継いだことに原因があります。
合併と同時に一元化すれば良かった、と言ってしまえばそれまで
なのですが、公営企業(上下水道局)で運営している長野市の財産
管理の方法や基準と、旧町村営での基準が一致しなかったことから、
それができなかったのです。
そのため、これらの事業をいったん環境部で引き継ぎ、公営企業
の基準に合わせるための準備を進めてきました。このたび、それが
整ったことで、統合できることになったのです。
なお、平成17年の合併を経験して、私も初めて知ったことなの
ですが、同じ水道でも水道法という法律によっていろいろな区別が
あるのです。いずれも水源から取水し、水道管を通じて各戸へ給水
するという仕組みは同じですが、以下のような区分になっています。
(1)上水道(給水人口が5,001人以上)
(2)簡易水道(給水人口が101人から5,000人まで)
(3)飲料水供給施設(給水人口が50人から100人まで)
(4)簡易給水施設(給水人口が20人から49人まで)
このうち、「飲料水供給施設」と「簡易給水施設」というのは、
水道法による水道に当たらないそうで、保健所において「要綱」を
定め、指導を行っているというものです。
合併まで十分に意識していなかったことで、もう一つ驚いたこと
があります。それは、水道事業には、行政ではなく、地区や住民の
皆さんによる組合が運営している民営の施設があることで、市内に
は27もあるのです。いずれも飲料水供給施設や簡易給水施設など
の小規模施設が多いのですが、戸隠地区の中社区のように簡易水道
を運営しているところもあります(これらの事業は、地区特有のも
のですから、料金体系は地区ごとに違っているでしょうし、維持管
理経費も当然地区の負担のはずです)。
ただ、合併旧町村ばかりでなく、篠ノ井、川中島、更北地区にも
数多く存在しています。これは、この地域の県営水道の給水開始が
昭和41年からと遅かったことで、それ以前に集落ごとに整備した
施設が現在も使われている、ということのようです。
4月から上下水道局で担当することになった市営の4つの水道事
業ですが、今後、導水管の新設などにより水源や浄水場の統廃合な
どを進め、平成28年度末までにすべて上水道事業に一本化するこ
とにしています(前述の通り、民営のものは別です)。
ただ、それでも県営水道の問題は残ります。篠ノ井、川中島、更
北地区と信更地区の一部は、市営水道ではなく、県営水道の供給区
域なのです(この県営水道は、長野市南部地域だけでなく、千曲川
流域の千曲市、坂城町、上田市の一部にも供給しています)。
従って、料金体系も市営水道とは違いますので、市民の平等とい
う観点からは問題が残ります(ただし、県営水道の給水地域でも下
水道は長野市の事業ですから、こちらは同料金です)。
この点について、県では水道の広域化を計画しているようです。
将来は県営水道と長野市上下水道局が合併することになるかもしれ
ません。
もう一つの問題は「おいしい水」の問題です。最近、ペットボト
ルに入った水を買ってお飲みになる方も多いと思います。ちなみに
あの水は、1本当たりに換算してみますと、水道水の約1,100
倍もの値段になるそうです。上下水道局としては、せっかくの需要
を取られてしまっているわけですから、飲料水を供給する義務があ
る同局にとってこの水は、大変な強敵だと言えます。上下水道局の
売り上げが下がっている原因の一つと申し上げても良いでしょう。
数年前から、当時の水道局には、「もっと水道水を飲んでいただ
けるような政策をとるべきだ。私の経験から言えば、東京の水道水
はまずいけれど、長野の水はおいしい。十分太刀打ちできるだろう」
と私は主張してきたのですが・・・。
このメルマガを書くに当たって、上下水道事業管理者から話を聞
いたのですが、「市長の経験はもう古い。現在の東京の水はおいし
い。東京都は大きな投資をして、高度浄水処理(オゾン処理、活性
炭処理、膜ろ過処理)という処理をして、異臭味などのない水をつ
くっており、昔とは違う。それと、水は冷やして飲めばおいしい」
とのことでした。「じゃあ、長野市でもその高度浄水処理を取り入
れよう」と言ったのですが、ばく大なお金が掛かるようです。
実は、年々水道水の需要が減ってきており、公営企業が行う水道
事業の採算性が悪化しつつあることも問題なのです。人口減少の時
代、節水機器の普及、前述のペットボトル入りの水、企業や団体の
地下水利用・・・地球環境を考えた場合、節水は良いことではある
のですが、上下水道局の経営を考えると頭が痛いことでもあるわけ
です。将来、水道料金の見直しが必要になるのかもしれません。
また、いずれは公営企業という経営形態の問題も議論になりそう
です。実質的には市の直営なのですが、公営企業ということで、企
業と同じように収入と支出をきちんと計算し、採算を取らなくては
なりません。これは当然です。
ただ、公営企業の採算のとらえ方には、これまでずっと疑問を感
じてきました。公営企業では、資産形成のため、企業債という借金
をすることがあります。ところがその借金は、資本に組み入れるこ
とになっているのです。もちろん借金ですから返済はしていくので
すが、本来的には負債として計上すべき性質のものであり、資本を
返済するというのは、どうも私の感覚からは理解できないのです。
先ごろ総務省では、公営企業の会計基準の見直しを打ち出しまし
た。具体的にどのように変更されるかは、まだ分かりませんが、少
なくても資本や負債のとらえ方は一般企業と同様にしてもらいたい
と思っています。
この見直しにより、公営企業独特の会計基準が改正できるとすれ
ば、外部資金を導入することも考えられるようになるかもしれませ
ん。将来的には、公社などの独立法人化、あるいは、もう一歩進め
て株式会社化して株式を上場する、なんてことが起こる可能性もあ
るのかなと感じています。
すなわち、外部から資本出資をしていただき、公営企業から別の
法人形態に移行することで経営を安定させる、ということも将来の
問題として考えておく時期なのかもしれません。
2009年6月25日木曜日
長野市の上下水道事業(1)
長野市では、今年の4月1日から、庁内の上水道事業と下水道事
業の所管を統合し上下水道局へ事業を一本化しました。
このことをお聞きになり、「え!上下水道局以外でも水道や下水
道事業をしていたの」と思われる方もいらっしゃると思います。ご
もっともなことで、公営企業として行っている上下水道事業以外の
事業をご存じの方は、あまり多くないのではないでしょうか。
実は、産業振興部(農業関係)や環境部、各支所が行っている事
業、個人が行っている事業もあり・・・そのほか、県営水道がある
こと、合併により旧町村の事業を引き継いだこと、国の施策がいろ
いろに分かれていることなどが原因で、長野市の上下水道事業は大
変複雑なシステムになっていました。
このたび、ようやく一本化できた、と言って良いと思います(ま
だ県営水道や合併処理浄化槽のこともありますので、すべてではあ
りませんが)。
2年ほど前になりますが、篠ノ井山布施地区の農業集落排水事業
(下水道)が完成し、一連の農業集落排水事業がすべて完了したこ
とを機に、このメルマガで、長野市の下水道事業について紹介させ
ていただいたことがあります。
その中では、
(1)長野市の公共下水道事業は、昭和28年から始まっているこ
と。
(2)現在の長野市では、公共下水道事業(特定環境保全公共下水
道を含む)、農業集落排水事業、合併処理浄化槽事業の、大き
く三つの事業により、全戸水洗化を目指していること。
(3)長野市の下水道整備工事は、平成24年度までにほぼ完了す
る予定であること。
(4)以下のような課題があること。
・工事が難しい場所の整備に向けた努力が必要。
・市民の皆さんに下水道管を接続していただかなくてはならな
い。
・敷設から50年以上経過している下水道管もあり、不断のメ
ンテナンスが重要になっている。
・市民の皆さんにご負担いただく料金が、公共下水道・農業集
落排水など、事業の種別によって異なっている。
・上下水道局の健全経営、技術研究の継続が必要。
というようなことを書かせていただきました。
このメルマガ以降、今回までに進展したこととして、二つのこと
が挙げられます。
一つは、現在進めている下水道事業の進ちょく状況です。以前ご
紹介させていただいたときの公共下水道事業人口普及率(平成18
年度末)は73.8%、農業集落排水・合併浄化槽を含めた全体の
普及率は83.7%でした。
それから2年経過した平成20年度末では、公共下水道事業人口
普及率は84.1%(10.3%増)、全体の普及率は88.7%
(5.0%増)にまで整備が進みました。
平成24年の工事完了に向けて、さらに努力していきたいと考え
ています(ただ、公共下水道を整備することにしている区域の中に
も、費用対効果の面から公共下水道事業での整備が困難だと考えら
れるところもあります。今後は、合併処理浄化槽の設置にすること
を含め、あらためて市民の皆さんを交えて効率的な整備手法を検討
していく必要があると考えています)。
もう一つは、課題として挙げさせていただいていた料金の問題が
解決したことです。これまで事業の種別によって異なっていた料金
体系ですが、4月の上下水道局への事業統合に合わせ、すべて公共
下水道の料金体系に統一しました。農業集落排水が整備されている
地区にお住まいの皆さんの中には、値下げになった方も多いと思い
ます。
ただ、実際のコストとしては、公共下水道に比べて規模が小さい
農業集落排水・合併処理浄化槽が割高であることは事実です。しか
し、同じ水洗化であるのに、お住まいの場所によって料金が異なっ
てしまうことは不公平だということで、公共下水道側の経営にとっ
ては、若干不利ではありますが、このたびの統一となったものです。
皆さんにとって、下水道の整備手法ということはあまり身近な話
ではないと思いますので、ここで少し説明させていただきます。
まず、公共下水道ですが、以下の3つの方式があります。
(1)単独公共下水道
地方公共団体が単独で整備・管理する下水道で、主として市
街地(都市計画区域)で整備する方式です。長野市では、おお
むね第一から第五、芹田、古牧、三輪、吉田、大豆島、安茂里
地区の汚水を大豆島地区の「東部浄化センター」で処理してい
ます。
(2)流域関連公共下水道
複数の市町村が共同で整備・管理する方式です。長野市が関
係する千曲川流域関連公共下水道は、県が下水道幹線と終末処
理場を整備管理し、そこへ市町村が公共下水道を接続するとい
う方式で、市町村は、整備面積に応じた建設費用と汚水の量に
応じた処理費用を県に支払っています。
この流域下水道には、上流処理区と下流処理区があります。
上流処理区は、篠ノ井、川中島、更北地区と、松代地区の一部
のほか、千曲市や坂城町が対象で、更北地区にある「アクアパ
ル千曲」で処理。下流処理区は、おおむね古里、朝陽、柳原、
長沼、若槻、若穂、豊野地区のほか、須坂市や小布施町、高山
村を対象に、長沼地区にある「クリーンピア千曲」で処理して
います。
(3)特定環境保全公共下水道
観光地などの環境保全を目的とする公共下水道で、市内では
芋井(飯綱高原)、若穂、松代、戸隠、鬼無里地区の一部で採
用しています。飯綱高原の汚水は「東部浄化センター」、若穂
・松代の汚水は「クリーンピア千曲」、戸隠、鬼無里は単独の
処理場で処理しています。
農業集落排水事業というのは、農村地域振興の一環として、公共
下水道で整備できない地域を対象に農林水産省が進めてきた水洗化
事業です。市内には、浅川、芋井、篠ノ井、七二会、信更、豊野、
戸隠、鬼無里地区に21カ所あり、それぞれ単独の処理場で汚水を
処理しています。
合併処理浄化槽は、各戸に個別の浄化槽を設置して水洗化するも
ので、下水道管を敷設することが費用対効果や技術的に難しい離れ
た場所にお住まいの方々を対象に設置をお願いしています。また、
下水道区域内でも下水道管の敷設までに時間がかかる場所にお住ま
いの方々にもご利用いただいています。
市内の合併処理浄化槽には、市町村設置型と個人設置型とがあり
ます。
市町村設置型というのは、行政が浄化槽を設置・管理し、お住ま
いの方からは、使用料金を頂く方式です。これは、旧戸隠村と旧鬼
無里村が実施していた方式で、ご利用いただけるのは現在も両地区
だけになっています。
これに対して個人設置型というのは、個人が費用を負担して浄化
槽を設置・管理する方式で、戸隠・鬼無里以外の地区が対象です
(設置費用が高額になるため、設置工事に対して補助金を交付し、
負担を軽減する制度があります)。
このように、市町村設置型と個人設置型では費用をご負担いただ
く仕組みが大きく異なっていますので、いずれ何らかの統合を考え
なくてはいけないでしょう。
これまでは、国土交通省所管の公共下水道は「上下水道局」、農
林水産省所管の農業集落排水事業は「産業振興部」、環境省所管の
合併処理浄化槽事業は「環境部」というように、補助制度などを所
管する国の省庁に合わせて市役所の担当部署も異なっていたわけで
す。
水洗化という同じ目的の事業を行いながら、庁内に幾つもの担当
部署があるのは、以前から不合理だと思っていましたし、市民の皆
さんに対応する窓口の分かりやすさという点でも問題があったと思
っています。
今回、個人設置型の合併処理浄化槽(環境部所管)を除き、上下
水道局に一元化することで、これもほぼ解消することができました。
来週は、上水道事業についてご報告します。