2012年12月27日木曜日

読書について


 本年最後のかじとり通信になりました。今回は、少し私の個人的
な言い分になりそうです。

 昨年の夏から約半年間かけて、自宅にあるいろいろな本を、秘書
課に用意してもらった古い段ボール箱に詰めて市役所に運びました。
職員研修所が研修用の図書を管理しているため、職員に読んでもら
い何かの足しにしてもらえばと考えたものです。
 私は昔から「活字中毒」なんて言われるほどかなりの活字好きで、
いつも何かの本を読んでいないと、どうにも落ち着かない性格だっ
たようです。ある程度本を運んだ時点で職員に何冊ぐらい運んだか
聞いてみると、2,000冊以上ということでした。その後も運ん
でいますから、相当な数になっているでしょう。自宅にまだあるの
ですが・・・、市役所に置くのに、あまりくだらない本では恥ずか
しいと考えて、昨年いっぱいで一応やめました。

 家の中が本でいっぱいというわけではないのですが、一度読んだ
本をまた読みたくなることはあまりありませんし、かといって捨て
るわけにもいかず、どうしようか迷った末のことでした。初めは
「寄付する」と言ったのですが、市長が寄付することはできない
(公職選挙法違反だそうです)とのことで、それならば「貸す・・
・」ということにしました。市長を退任した後は、忘れたことに・
・・とも考えています。

 職員に読んでもらえれば、本も本望だろうと思っていたところ、
本県出身でフリージャーナリストとして幅広く活動している池上彰
という本のことを書いていました。池上さんが紹介するショウペン
ハウエルの考え方にちょっとショックを受けて、慌ててその本を購
入して読んでみました。

 皆さん、ショウペンハウエルという哲学者をご存じですか・・・
「デカンショ節」をご存じですか。昭和30年代前半、私の高校時
代、昔の旧制中学のバンカラの気風が残っていたせいでしょうか、
酒こそ飲みませんでしたが、コンパや合宿の時など、あまり意味も
考えずに、大きな声で歌ったものです。

 デカンショ!デカンショ!で半年暮(く~ら)し、あとの半年
(はんとしゃ)寝て暮らす。
 よーい、よーい、デッカンショ!ほら、デッカンショ~。

 多分、「デ」はデカルト、「カン」はカント、そして「ショ」は
ショウペンハウエルの略で、いずれも高名な哲学者ですが・・・シ
ョウペンハウエルについては、正直に言って、私はあまり知りませ
んでした。

 ショックを受けた一文を紹介します。
「読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、
他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。習字の練習をする
生徒が、先生の鉛筆書きの線をペンでたどるようなものである。だ
から読書の際には、ものを考える苦労はほとんどない」(訳:斎藤
忍随 岩波文庫)

 本の表紙にも同じような文章がありました。
「『読書とは他人にものを考えてもらうことである。1日を多読に
費す勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく。』
一流の文章家であり箴言(しんげん)警句の大家であったショウペ
ンハウエル(1788-1860)が放つ読書をめぐる鋭利な寸言、
痛烈なアフォリズムの数々は、出版物の洪水にあえぐ現代の我われ
にとって驚くほど新鮮である」

 要は、他人の書いたものなど何の価値もない、自分で考えろ・・
・とショウペンハウエル先生はのたまっているのです。これはショ
ックでした。結局、自分で考えることが大切ということなのでしょ
うが、凡人にはその力はありません。他人の書いてくれた素晴らし
い文章で、楽しみ、自分の知識を増やし、人間性を高めている・・
・のでしょう。

 そして「読んだ本」の内容を、自分なりに納得できた本が、良い
本だと思ってしまう。そうでない本は、題名に引かれて購入して読
み始めても、すぐに飽きてしまって本棚の片隅に積んでおく(「積
読(つんどく)」というのだそうですが・・・)。私もご多分に漏
れず、随分無駄をやってきたものです。

 ただ、ショウペンハウエル先生だからあんなことが言えるのであ
って、われわれ凡人はそんなことはできません。彼の主張は無視し
て、他人の知恵で気に入ったものをどんどん使わせてもらいましょ
う(著作権については、ここでは触れません)。

 特に、市長という立場で発言するとき、自分独自の説を述べるだ
けでは、何となく権威や重みがないため、説得力に欠ける場合もあ
りますよね。そこで「著名な先生いわく・・・」というように書物
から引用すれば、大抵の人は納得するという便利さがあります。具
体的に申し上げると、よく使わせていただくフレーズは、藤原正彦
さんの「どんなに正しい論理でも、その論理をつきつめていくと社
会は崩壊する」というくだりです(著書「国家の品格」より)。

 素晴らしい言葉や考え方は、これからも大いに使わせていただく
つもりです。多くの皆さんにお伝えできて、そして共感してもらえ
れば幸いです。ショウペンハウエルの言葉を借りるなら、われわれ
凡人にとって、思わずペンでたどってみたくなるような魅力的な
「鉛筆書きの線」に巡り合えることは大きな喜びなのです。
 
 以下、思い付くままに、私の好きな作家を挙げさせていただきま
す。古い人、新しい人、ジャンルなどはいろいろです。
司馬遼太郎、寺田寅彦、山本七平、梅原猛、松下幸之助、童門冬二、
中谷巌、中西輝政、藤原正彦、山折哲雄、塩野七生、吉川英治、小
松左京、岸田秀(敬称略)
 まだまだいらっしゃいますが、このくらいで、私の発想法がお分
かりいただけると思います。来年も、良い本にたくさん出会えるこ
とを願っています。

 話は変わります。12月16日に衆議院議員総選挙が行われ、国
民の審判が下されました。自民党が単独過半数を大きく上回る議席
を獲得し、公明党との連立により、両党は参議院で否決された法案
を再可決できる3分の2以上の議席を確保しました。しかし、参議
院においては、自民・公明両党でも過半数の議席に満たない状態が
来年夏の参議院議員選挙まで続くため、ねじれ国会による政治の混
乱が続く可能性があります。安倍新政権には、衆議院で得た多数の
議席に慢心することなく、ねじれ国会における与野党の合意形成に
努め、政治の混乱を終結させること、また、国民の声、地方の声に
真摯(しんし)に耳を傾けながら、多面的、長期的視点に立って国
政運営に当たっていただくことを強く望みます。

2012年12月20日木曜日

長野市のものづくり産業


 このメールマガジンの配信は暮れも押し詰まった頃になるはずで
すので、少し前の話になりますが、今年も「産業フェアin善光寺
平2012」が11月2日、3日の2日間にわたり、ビッグハット
で盛大に開催されました。
 この産業フェアは、長野市、須坂市、千曲市、高山村の4自治体
と(社)長野法人会、長野商工会議所などの経済団体が実行委員会
を組織し、2006(平成18)年にスタートして、今年で7回目
の開催になります。年々規模を拡大し、内容も充実してきています。
今年は「明日へつなぐ出会いと発想」をテーマに、97もの企業・
団体がブースを出展し、実ににぎやかなフェアになったという印象
を受けました。関係の皆さんのご努力のたまものと感謝しています。
 今回のフェアでは「『航空宇宙産業が未来を拓(ひら)く』~地
域産業活性化のためのモノづくり・ひとづくり~」を特別企画とし
て掲げ、「航空宇宙ビジネスゾーン」の設置や元JAXA(宇宙航
空研究開発機構)宇宙飛行士の山崎直子さんを講師に迎えて講演会
を開催するなど、成長産業としての宇宙分野を意識した構成となっ
ていました。私もぜひ、山崎さんのお話を拝聴したいと思っていた
のですが、日程の都合でかなわず、本当に残念でした。
 入場者数は、2日間で10,907人と、1万人の大台を超え、
毎年、着実に結果を残しています。

 また、11月15日から17日にかけて、諏訪湖畔にある旧東洋
バルヴ(株)工場跡地で「諏訪圏工業メッセ2012」が開催され、
過去最多の337の企業・団体が出展し、こちらも大変盛大でした。
地方で開催される工業メッセ(見本市)としては最大級であると評
価が高いこのメッセを視察しようと、私も初日の15日にお邪魔し
ました。
 このメッセも「医療」「航空・宇宙」「環境・エネルギー」の成
長分野を強く意識した展示・技術紹介となっていました。会場が工
場跡地であるということ、またブースも比較的簡素であることから、
全体的に地味な印象を受けましたが、主な開催目的が企業のビジネ
スチャンスの拡大を図ることに置かれているとお聞きして納得しま
した。確かに会場のあちこちで商談会が行われていて、中には外国
人バイヤーの姿も見られました。
 このメッセの当初の開催理由・目的の一つに、隣同士の企業であ
っても何を製造し、どんな技術を有しているかを知らないという状
況があることから、地域の強みを相互に理解することで、地域内で
ある種の技術イノベーションを起こしていこうという意図があった
ようです。ご存じのとおり諏訪地方は、以前から「日本のスイス」
と呼ばれ、精密工業を中心にものづくりの一大エリアとして発展し
てきた地域です。リーマンショック、円高など、激しい逆風の中で、
個々の力だけでなく、地域としての総合力を結集して企業活動を盛
り上げていこうという試みは、的を射たものだと感じました。

八ケ岳型の産業構造」だと分析しています。つまり、一部の産業分
野が地域経済をけん引する「富士山型」ではなく、さまざまな産業
分野がそれぞれの固有資源や知識・情報を生かし、独自性を発揮す
ることで、地域の経済力を全体として底上げしているのです。
 工業製品出荷額を見ても、さまざまな産業分野がくまなく存在し
ている状況ですが、その中でも食品加工業が約2割を占める実績を
挙げています。また意外と知られていませんがソフトウェア産業が
健闘していることなどが、諏訪地方などの県内他地域とは若干異な
る、長野市の特色だろうと思います。
 産業フェアin善光寺平では、その特色をもう少し前面に出した
企画が立案できないか、あるいは現在、長野市を含む3市1村から
参加している企業・団体を東信地方を含めたもっと広いエリアから
募り、積極的なビジネスチャンスにつながるような展開ができない
のかなど、諏訪圏工業メッセを視察して、新たな課題が浮かび上が
ってきたように思いました。今後、関係の皆さんと検討していきた
いと考えています。

 せっかくの機会ですので、本年度から始めた「長野市企業コーデ
ィネート・サポートチーム」による企業支援制度について説明しま
す。
 現在、長野市ものづくり支援センター(UFO長野)と(公財)
長野県テクノ財団の「善光寺バレー地域センター」には、それぞれ
コーディネーターがおり、企業に技術的な支援を行っています。こ
の制度は、これらコーディネーターと(株)八十二銀行や長野信用
金庫が行っている企業の研究開発に対する支援活動を一つにまとめ、
「産学官金」のチームを編成することで、短時間で効果的な中小企
業支援を展開することを目的としています。特に、企業の研究開発
意欲を促進するための事業計画に対しては、市から利子補給を行い、
実質的な無利子融資として企業に利用いただけるようになっていま
す。市では当面、運転資金として上限500万円を、また設備投資
資金として1,000万円を限度に融資を行うこととしており、本
年度10月までに既に6企業がこの制度を利用しています。
 今後さらに利用する企業が増え、企業収益に貢献するような研究
開発が行われることを大いに期待しているところです。
 ものづくり企業を支援する制度としては、さまざまな目的に合わ
せた低利の制度資金や産業団地の造成などがありますが、企業の市
外流出を防ぐためにも、これからは特に長野市内に立地している既
存企業への支援活動に力を入れていくことが重要になっていると認
識しています。

 さて、2012(平成24)年も暮れようとしています。
 新しい年が、皆さまにとりまして希望の多い年となりますことを
ご祈念申し上げます。
 来年もよろしくお願いします。

2012年12月13日木曜日

晩秋から初冬の出来事


 「日本でいちばん美しい晩秋の花火」といえば、「えびす講の花
火!」と即答される人も結構いらっしゃることでしょう。それほど
長野えびす講の花火は、「花火は夏」というイメージを覆して、寒
さが厳しくなる11月の澄みきった夜空を見事に彩ることで有名で
す。11月23日に開催された「第107回長野えびす講煙火大会」
では、約1万発の花火が打ち上げられ、昨年を上回る約40万人の
観客(長野市の人口を超える人出ということになりますから驚きで
す)で、会場の犀川河川敷は身動きが取れないほどのにぎわいでし
た。この不景気にもかかわらず協賛いただいた企業、個人の皆さん、
そして何よりも主催した長野商工会議所と長野商店会連合会の皆さ
んに、毎年のことながら敬服します。それにしても、ミュージック
・スターマインはすごいですね。花火と音楽と光の共演で、その迫
力には圧倒されてしまいました。
 
 花火の元気なイメージで、最近の出来事を紹介します。
 まずは、毎年行っている長野市の新規採用職員との懇談会です。
4月から元気いっぱい、仕事に全力疾走しているフレッシャーズと
のこの懇談会は、私にとっても若い人の考えや意見を聴く貴重な機
会です。以前は朝7時30分から、朝食を取りながらブレックファ
スト・ミーティングとして行っていたこともありました。
 懇談会は、テーマを決めずにそれぞれが思い思いに関心のあるこ
となどを語る形式で行いました。中でも多く取り上げられたのは、
「市民とのコミュニケーションの大切さ、難しさ」「AC長野パル
セイロの観客数をいかに増やすか」「これからの農業をどう考える
か」の3点でしょうか。長野市の未来に向けた、真っすぐな気持ち
を聴くことができたと感じています。
 懇談会最終日には打ち上げとして有志が懇親会を企画し、招待を
受けて私も参加してきました。新規採用職員の中には、再就職した
職員や既に家庭を持っている職員も結構いて、プライベートな話題
など懇談会とは違った角度からのやりとりができ、楽しい時間でし
た。しかし、やはり年代の違いでしょうか、若い彼らの考えに、
「う~ん」とうなってしまうこともありました。

 先日、「ながのいのち 未来へつなげる ながのいのちの輪」と
題して、長野放送の取材がありました。長野放送では、2008
(平成20)年から毎年1回、「ながのいのち」をテーマとしたシ
リーズ番組を放送していて、大きな宣伝効果が期待できます。「え
ごまラスク」「あとひき豆」「まこもどうふ」といった長野市産の
農産物を使った加工品や、移動販売車「ひっぱりだこ号」、農産物
市「ザ・ぎんざ にぎわい市」などで、「ながのいのち」は、多く
の人に浸透してきたと感じています。新商品も順調に開発され、
「ながのいのち」のブランドマークも、いろいろな場所で見掛ける
ようになりました。大量生産とはいきませんが、一つ一つの商品が
深みのある、信頼されるブランドに成長していると確かな手応えを
感じています。
 今回の番組は5回目で、12月29日土曜日の正午から放送され
ます。ぜひご覧ください。

 長野オリンピックから15年がたとうとしています。国際都市長
野は、外国籍の皆さんからどのように見られているのでしょうか。
魅力あふれる元気なまちなのでしょうか。12月9日に、「国際交
流市民会議」を開催しました。毎年開催している市民会議ですが、
今年は趣を変えて各国の「文化」「食」「衣」「遊び」などを体験
できるイベント「おぉ!地球人 ワールドフェスタIN長野」の一
環として開催され、もんぜんぷら座の会場は外国籍の方を含めた多
くの皆さんで盛り上がりました。市民会議は、パネルディスカッシ
ョン形式で行われ、「外国人の目から見たNAGANO」をテーマ
に意見交換をしました。「外国人観光客が善光寺に参拝した後、長
野駅までの間を歩いて散策できる案内マップがない」「SNS(ソ
ーシャルネットワーキングサービス)を活用した海外への観光情報
発信が有効」といった提案などを頂き、私からは、「国際化」とい
うことでは、観光客と居住者との2つの視点から考えることが必要
であると申し上げました。また、私も含めて長野の人はシャイだと
以前から感じていて、いざ「外国の人と話しましょう」となると、
ちょっと苦手で、もっと積極的にならないと駄目なのかなあと感じ
ています。
 
 保育所や幼稚園に入園前の子どもたちの遊び場と親同士の交流の
場、また育児相談の場として、市内に、専用施設のこども広場が2
カ所、保育所に併設された地域子育て支援センターが14カ所、ま
た、ほぼ全ての保育所、幼稚園に園開放や育児相談などを行う「お
ひさま広場」を開設しています。こども広場の年間利用者数は、も
んぜんぷら座の「じゃん・けん・ぽん」が約6万人、篠ノ井の「こ
のゆびとまれ」が約3万人で、連日、大勢の子どもたちの元気な声
が響きわたっています。11月27日、私が市内各地へ出向き、市
民の皆さんと膝を交えて自由な意見交換を行う「みどりの移動市長
室」で、「このゆびとまれ」にお伺いしました。

 参加いただいた皆さんからは、家庭での保育が一時的に困難な場
合に子どもを保育所で預かる「一時預かり」や病後児保育の充実な
どの要望を頂いたほか、市政における子育て支援施策の位置付けな
どについて質問がありました。地域のつながりの希薄化や核家族化
の進行などにより、現在の育児を取り巻く環境は、私が子育てをし
たころと比べると大きく変わっています。育児に不安や悩みを抱え
る保護者が多いことも心配です。ぜひとも、こども広場などの施設
を大いにご利用いただき、他の親子との触れ合いの機会を増やして
ください。「子どもと過ごす時間をできるだけ長く取ってほしい」
というのが私の持論です。

 最後に、皆さんが、そして誰よりも私が元気になるスキーの話題
です。今年は順調に雪が降っていて、戸隠スキー場は予定どおり
12月15日にオープンします。私も当日、安全祈願祭に戸隠スキ
ー場に行きます。楽しみです。そういえば、先ほどの「おぉ!地球
人 ワールドフェスタIN長野」では、(社)長野市開発公社の提
供による戸隠スキー場の招待券などが当たる抽選会が盛り上がって
いました。スキー場の招待券が当たった人はもちろん、皆さんもぜ
ひ家族や友達をたくさん誘ってお出掛けください。

 スキー客の増加を目指す長野市開発公社の協力を得た抽選会は、
なかなか粋な企画です。持ちつ持たれつ、相乗効果が図れるアイデ
アをどんどん考えて、元気になる企画で長野をもっともっと盛り上
げましょう。

2012年12月6日木曜日

師走です。12月市議会定例会も始まりました


 早いもので今年もあと1カ月を切りました。師走という声を聞く
だけで何かと気ぜわしさを感じますね。国政においても、第46回
衆議院議員総選挙が4日に公示され、慌ただしさを極めています。
市選挙管理委員会事務局も目が回るほど多忙のようです。今回の総
選挙は、民主党が与党として国民の審判を受けるわけで、政権奪回
を目指す自民党など既成政党のほか、新党が乱立し、短期間での離
合集散もあったことから、有権者は各政党の主張を十分に理解する
ことは極めて難しいと思われますが、くれぐれも棄権することなく、
投票することで政権選択を問うにふさわしい選挙となることを期待
しています。

 市議会においても12月定例会が11月30日に開会し、本日か
ら一般質問が始まりました。開会のあいさつでは、現在の長野市の
動向として、都市内分権の推進、公共交通機関の整備、環境対策の
充実、エネルギーの適正利用、文化芸術活動への支援と文化の創造、
中山間地域の活性化、スポーツを軸としたまちづくりなどについて
説明しました。今回のかじとり通信では、この中から、最近の出来
事や具体的な施策、また、これまでかじとり通信でお伝えできなか
ったことについてお話ししたいと思います。

 まずは、公共交通機関の整備のうち長野電鉄旧屋代線の関連資産
の活用についてです。昨年10月に長野電鉄株式会社から「一括無
償譲渡」の申し出を受け、沿線地域の活性化のための活用策につい
て、沿線の松代地区、若穂地区の皆さんの要望などを踏まえて検討
してきました。10月に活用方針の素案である「基本構想案」を沿
線地区へ提示するとともに、須坂市、千曲市および長野電鉄株式会
社とも協議を重ねています。近々、「基本構想」をまとめた上で、
沿線地区の皆さんと協議しながら、事業実施時期、概算事業費、維
持管理方法などの具体的な内容を示した「整備計画」を作成し、次
年度から順次、事業に着手する予定です。

 中山間地域の活性化については、若穂地区において「若穂ジビエ
振興会」が、捕獲したイノシシなどを食肉として加工する施設の建
設に取り組んでいます。そのため、本定例会には、同施設の建設費
補助に係る補正予算案を提出しました。今後、同施設を活用するこ
とで、イノシシ肉などの有効活用による地域活性化や、捕獲促進に
よる有害鳥獣の被害防止を図り、有害鳥獣に負けない地域づくりを
目指します。

 観光交流の推進の一つとして、現在、茶臼山公園一帯の整備を進
めています。先月、動物園北口から最寄りの駐車場をつなぐモノレ
ールの設置工事に着手しており、年度内の完成を目指しています。
自然植物園は、「緑育」を実践する場として整備を進めるとともに、
チューリップの植栽イベントなどを開催し、市民と共につくる植物
園として新たな魅力の創出を図り、茶臼山エリア全体の活性化を目
指しています。

 スポーツを軸としたまちづくりのために、2010(平成22)
年に創設した「ながの夢応援基金」を活用し、冬季競技大会やオリ
ンピック記念イベントなどの開催に対して助成を行っています。今
月はスピードスケート競技のワールドカップや全日本スピードスケ
ート選手権大会、また、来年2月には、全国中学校スケート大会が
この基金を活用し開催されます。なお、全国中学校スケート大会に
ついては、2007(平成19)年度から10年連続での長野市開
催が決定しており、今回で6年目となります。11年目以降も、引
き続き長野市で開催できるよう、関係者と協議を進め、主催者に要
望していきたいと考えています。

 また、南長野運動公園総合球技場の整備事業については、設計・
施工一体型のプロポーザル方式により事業者の選定を進めています。
10月に第1回選定委員会を開催し、応募要領、要求水準書につい
て決定しました。

 中心市街地の活性化については、一つの取り組みとして権堂地区
で「10月、権堂、昭和のまち。」や「ごんバル」などの各種イベ
ントが開催されました。昭和の雰囲気を感じられる催しとして、映
画館で「ウルトラマン」が特別上映されたほか、射的などの懐かし
い遊びや食事が楽しめる「グルメ・縁日広場」などが開催されたそ
うです。これらは「権堂地区再生計画」に盛り込まれた提案事業の
実現のため地元組織である「権堂まちづくり協議会」との協働で実
施されたもので、多くの皆さんで街がにぎわいました。
 また、先月から、権堂アーケード通りの東側、権堂地区東街区で
再開発事業が始まりました。権堂B-1地区市街地再開発組合が権
利変換計画の県の認可を経て、建物の取り壊しに着手したものです。
完成は、2014(平成26)年12月を予定しています。

 保健福祉施策のうち高齢者福祉施策として、「おでかけパスポー
ト」のICカード化の手続きが始まっています。10月27日から
バス共通ICカード「KURURU(くるる)」の運用が始まり1
カ月が経過しましたが、おかげさまで順調なスタートを切ることが
できました。これまでご愛用いただいた「おでかけパスポート」は
ICカードに交換することになりますが、既に約4万人の申し込み
を頂いています。「引換交換会」は、来年の2月21日まで、市内
全域の62カ所で延べ101回開催します。実際にバス車内でのI
Cカードの読み取りを体験することもできますので、ぜひお出掛け
ください。私も、ICカードに交換しました。

 市民の皆さんの「生命、身体および財産」を守る消防救急体制に
ついては、11月1日に中央消防署東部分署がエムウェーブ西側の
第二東部工業団地に開署しました。化学消防車や大型水槽車などを
配置し、特殊災害にも対応できる防災拠点となります。また、中山
間地域における救命率向上のため、中央消防署七二会分署で医師の
指示の下で救急救命処置が可能な高規格救急車の運用を開始しまし
た。

 最後に、新市役所第一庁舎および新長野市民会館の建設について
です。両施設については、来年度の本体工事着工に向け、現在、実
施設計において詳細図面の作成などを進めています。本体工事に当
たっては、本年3月議会において、市内企業への発注および受注機
会に配慮した工区割りを求める請願が採択されたことなどを受け、
地域全体への経済効果を考慮し、市内企業の参画の機会を極力確保
できるよう方針を決定しました。具体的には、建築主体工事は2工
区に分割し、大ホールなど複雑な施工が求められる第1工区はJV
(建設企業共同体)の代表として一定の市内企業も応募できる形態
とし、庁舎棟となる第2工区は代表を含むJVの全てを市内企業へ
の発注としました。また、設備工事は適切な工種ごとに分離して市
内企業を含むJVなどに発注することとしました。
 今後、2014(平成26)年度の竣工(しゅんこう)に向けて
準備を進めていきますが、全体工期の関係から、本体工事(着工は
来年6~7月ごろ)前に施工する土留め壁工事については、本年度
中に準備を行い4月から着工できるよう、関連する補正予算案を本
定例会に提出しました。
 現在、玄関棟の解体工事が行われています。新しい建物の完成ま
での間、ご来庁の皆さんにご不便をお掛けすることのないよう、職
員が積極的な声掛けやご案内をするよう努めます。

 本定例会の会期は、12月18日までの19日間です。議員、市
民の皆さんに分かりやすい答弁を心掛けることはもちろんのこと、
市政発展のための議論の場となるよう、精力的に取り組もうと気持
ちを引き締めています。閉会日を迎えると、いよいよ年の瀬です。
忙しい中にも、私はスキーでリフレッシュするのが楽しみです。今
年は12月15日に戸隠スキー場が、22日には飯綱高原スキー場
がオープン予定です。雪に恵まれ、両スキー場が、まさに順調な
「滑り出し」となればいいなあと願っています。

2012年11月29日木曜日

緑育発祥の地


 11月4日、「ながの緑育協会(愛称:ながの花と緑そして人を
育てる学校)」が主催する「育種寺子屋表彰式」と「篠ノ井中央公
園管理棟完成記念講演会」に、主催者代表として出席しました。
 表彰式では、ペチュニアを交配させてオリジナルの花を育てる
「育種寺子屋」の授業で、素晴らしい花を咲かせた小学生の皆さん
を表彰しました。また、講演会では、盆栽家の山田香織さんが
「『生きた小宇宙』ともいわれる盆栽に、草花などを寄せ植えして、
日本の原風景を描いていく」という「彩花盆栽」などについて、興
味深いお話をされました。

 実は、私もペチュニアの交配方法を教えてもらって、濃いワイン
レッドと白の2種類のペチュニアを交配させてみました。その結果、
白地に赤い筋状の模様の入った、上品なペチュニアができました。
私はこれに「ここであなたに会おうとは」という名前を付けました。

 さて、その篠ノ井中央公園は、地域の皆さんの防災の拠点として
重要な場所であるとともに、長野市の緑化推進の柱である「緑育」
の拠点でもあります。
 公園内では、今年の春に寄付していただいたピンオークや、長野
市民会館の敷地から移植したイチョウが、この秋とても奇麗に色づ
きました。また、今週末の12月2日まで、公園の管理棟で「ビオ
ラ展2012」を開催しており、店頭などではなかなか見ることの
できない珍しい品種を含む約200種のビオラを展示しています。
さらに12月15日からは「シクラメン展」を開催する予定です。
ご家族で足を運んでみてはいかがでしょうか。

 「緑育」という言葉は、緑を育てるという単純な意味にとどまら
ず、緑を育てることで人も育つ、また地域も育つという、まちづく
りのキーワードでもあります。
 緑育の推進に当たっては、昨年4月に市内の緑化や造園に関わる
皆さんと協働して「ながの緑育協会」を設立し、NHKの「あさイ
チ」や「趣味の園芸」などのテレビ番組で活躍する矢澤秀成(やざ
わ ひでなる)さんを職員として招くなど、体制を整えてきました。

 篠ノ井の地が、花と緑によるまちづくりによって一層発展するこ
ことを願っています。

 10月20日には、茶臼山自然植物園に原種のチューリップとク
ロッカスの球根を植えるイベントを行いました。当日は天気にも恵
まれ、約100人の皆さんにお集まりいただき、約3万7千球を植
えることができました。
 このたび植えていただいた球根の花は、来年3月下旬から4月上
旬にかけてクロッカスが、その後、4月中旬から5月中旬にかけて
約10種類のチューリップがお楽しみいただける予定です。その後
茶臼山自然植物園では、5月下旬に藤棚やツツジが見頃を迎えます
し、6月にはユリが咲きます。この「花のリレー」も、皆さんに楽
しんでいただきたいと思います。
 昨年の10月に、約300人のボランティアの皆さんに植えてい
ただいたチューリップとクロッカスは、この春見事に開花しました。

 数カ月も前に植えた球根が、やがて花を咲かせ、植えた皆さんは
もちろん、多くの皆さんにも楽しんでいただける。まちづくりと、
花を育てることは、どこか重なるところがあるような気がします。

2012年11月22日木曜日

今年も、2つのサミット

 
 昨年11月のかじとり通信で、山口県宇部市で開催された野外彫
刻事業をテーマにした「彫刻のあるまちづくりサミット」と、和歌
山市で開催された「中核市サミット」の2つのサミットについて報
告しました。今年も同じ時期に「2つのサミット」に出席しました
ので、報告します。

 まずは、11月8日の北陸新幹線停車駅都市観光推進会議の「観
光サミット2012」です。このサミットは、新幹線の金沢延伸が
2015(平成27)年春に迫ってきた中で、より一層都市間の連
携を深め、誘客戦略を図ることを主な目的として2008(平成
20)年度から毎年開催されているもので、今回は長野市で開催し
ました。加盟都市は、金沢市、高岡市、富山市、黒部市、上越市、
上田市、高崎市、本年度から加入した糸魚川市と飯山市、そして長
野市の10市です。

 歴史を振り返れば、加盟都市は古くから「北国街道」で結ばれて
いた街です。北国街道は加賀藩前田家の参勤交代の道であったこと
から、今回のサミット会場には、参勤交代の際に大名が宿泊された
本陣である善光寺門前の旧旅館「藤屋御本陳(ごほんじん)」を選
びました。
 会場には、素晴らしい菊が飾られていました。皆さんご存じの
「巴(ともえ)の錦」で、この名は参勤交代の際にこの菊を見つけ
た加賀百万石の前田利常(としつね)侯が、名のないことを惜しん
で付けたといわれています。大豆島地区で昔から大切に育てられ、
今日まで受け継がれてきたもので、サミットにお越しになる方々を
もてなそうと、同地区保存会の皆さんが、一生懸命に飾り付けをし
てくれました。

 サミットでは、善光寺を参拝した後、シンポジウムを開催しまし
た。パネルディスカッションでは、参加市長がパネリストとなり、
新幹線金沢延伸を契機とした誘客対策などについて、プレゼンテー
ションソフトを使いながら、大いに議論しました。特に今回は、
2016(平成28)年度に加盟都市が連携して大きな誘客事業を
行うことなど、情報交換にとどまらず具体的な話をすることができ、
とても素晴らしいサミットになったと思います(2015(平成
27)年度は、新幹線の延伸により、それぞれ忙しいだろうから、
1年後に開催しようということになりました)。

 新幹線延伸により、人・物の流れは想像している以上に活発にな
り、国土軸も大きく変わるのではないでしょうか。「北信越」とい
う地域を一つの大きなまとまりとして、多くの人に認識してもらう
絶好の機会です。このビッグチャンスをどう生かすのか。新幹線沿
線地域全体の魅力を高めるとともに、各市もそれぞれの魅力を高め
る必要があると感じています。首都圏から観光客を呼び込むことは
もちろん、沿線都市間の市民同士の交流も大切だと思います。

 今回のサミットに合わせて作られたポスターもお披露目されまし
た。沿線10都市の観光地を並べた立派なポスターでしたが、やは
り「善光寺が一番目立っているかなあ」とひいき目で見てしまいま
した。

 もう一つのサミットは、11月1日、2日に青森市で開催された
「中核市サミット」です。このサミットは、年に1度、全国41中
核市の市長が一堂に会する会議で、地方分権の推進について地方か
ら声を発信するために1996(平成8)年から開催されています。
 本年度は、「市民と共につくる中核市~地域主権改革をリードす
る中核市を目指して~」をテーマに行われ、分科会では「災害対策」
「社会保障と財政運営」「地球温暖化対策」「市民協働によるまち
づくり」の4分野について、各市の事例発表と意見交換が行われま
した。長野市議会からも11人の議員さんが、調査・視察のために
参加されていました。

 私は、長野市で取り組んできた都市内分権を紹介して、意見交換
したいと考え、「市民協働によるまちづくり」の分科会に参加し、
その中で次のように説明しました。
〇人口が減少する中、地域社会を持続・発展させるためには、必ず
しも市内全域で一律の取り組みを行うのではなく、住民自らが地域
の個性や実情に応じた活動に取り組み、その活動を行政が積極的に
支援することが重要である。そのため、2006(平成18)年度
から「長野市版都市内分権」を推進し、現在は、市内32地区全て
に住民自治協議会(住自協)が設立されて3年度目を迎えている。
〇特徴は、市が主導して設置してきた各種団体の連合会組織を廃止
したこと。また、各種団体へ交付していた補助金を住自協へ一括交
付するという仕組みに転換し、使途は限定せず、区費と合わせて住
自協で自由に使えるようにした。
○住自協活動においても区長の役割は大きく、区長に集中している
負担を分散・軽減しつつも、区長のリーダーシップや地域を思う気
持ちが生かされることが重要である。
○住自協を中心に地域ビジネス的な活動が生まれることを期待して
いる。特に、中山間地域については、農林業でもうかる事業が実現
すれば、地域の魅力や活力が高まり、交流人口や定住人口も増える
のではないか。また、今後計画的にまちづくりを進めるためにも、
住自協に長期計画を策定してもらいたい。

 いずれにしても、それぞれの住自協が、特色ある興味深い活動を
始めていて、私が目指してきた住民自治の実現に向けた手応えを感
じていることはお伝えできたと思います。

 サミット終了後、青森市内の視察がありました。印象的だったの
が、JR青森駅に隣接する青森市文化観光交流施設「ねぶたの家 
ワ・ラッセ」で、ねぶた祭の様子や歴史が1年中体感できる近代的
な施設です。ねぶたは「ねぶた師」が製作しているとのことで、見
上げるほど大きく勇壮なねぶたが展示されていました。一番気にな
ったのは、こんな立派なねぶたを作る資金は、どこから出ているの
だろうということです。ご案内いただいた鹿内博(しかない ひろ
し)青森市長さんに聞いてみたところ、スポンサー企業からの出資
金が主だということでした。1台のねぶたを作るのに約2,500
万円掛かるそうで、台車は使い回しをするので、毎年新たに掛かる
費用は本体部分(勇ましい武者のようなあの部分です)の約500
万円。ねぶたの多くは台車を除いて1年限りで廃棄されるそうで、
素晴らしい作品であるが故に「惜しいなあ」と思いました。
 その他、青函連絡船メモリアルシップ「八甲田丸」、棟方志功記
念館、三内丸山遺跡も拝見しました。

 秋は、1年の活動の最盛期ということでしょうか。サミットのよ
うな大きな会議もあれば、住自協が中心になったイベントなど、い
ろいろな催しが市内各地で行われ、にぎわっています。
 若穂地区で開催されたマラソン大会「ながのとびっくランinわ
かほ」は、今回が第1回目でしたが、900人を超えるランナー、
450人を超える役員とボランティアの皆さんが参加されました。
また、トイーゴの生涯学習センターでは、「住民活動フォーラム
2012」として、住自協の皆さんの活動発表がありましたし、男
女共同参画をテーマに開催された「しなのき市民会議in信州新町」
では、女性団体が日頃の活動を発表しました。JFL(日本フット
ボールリーグ)のAC長野パルセイロは、昨年に続き今シーズンも
2位を確保し、AC長野パルセイロ・レディースも来シーズンのチ
ャレンジリーグ残留を勝ち取りました。住自協の活動が活発化して
地域コミュニティーが元気になったと感じられること、スポーツに
も明るい話題が多いこと・・・本当にみんなが元気に頑張っていま
す。
 そういえば、明日は、恒例の長野えびす講煙火大会、花火1万発
の競演ですね。

2012年11月15日木曜日

3期目の任期、残り1年(その3)


 前回、前々回の2回のかじとり通信では、昨年からの市政運営を
検証し、3期目の任期の残り1年間でやらなくてはならないことを
項目ごとに整理してみました。そして、今後について概括的に考え
てみると、新幹線が金沢まで延伸し、善光寺御開帳も開催される
「2015(平成27)年」が長野市にとってエポック(新しく画
期的な年)となる予感がします。現在、それに合わせ、長野駅善光
寺口駅前広場整備事業、中央通り歩行者優先道路化事業に取り組ん
でおり、さらには市役所新第一庁舎・新長野市民会館もその年に
しゅん工する予定です。

 冬季オリンピック開催以来の変革期を迎えて、長野市が大きく変
わろうと動き出している中、そのかじ取りを担う立場にあって、常
に留意すべきと考えている重大な課題があります。

 一つは、何といっても少子化問題です。日本の構造的な問題であ
るが故に、大変深刻です。社会の営みは、全て循環で成り立ってい
ます。これは、経済にしても環境にしても、全てに共通する原則で、
持続可能な社会は、循環なくしては成り立ちません。この循環が
滞ったり途切れたりすると、社会は衰退や破綻に向かいます。少子
化は、こうした社会の循環にブレーキをかける根本的な原因になる
大きな問題です。

 特に、少子化に伴う労働力人口の減少は、経済や国家・地方財政
の縮小につながり、社会も必然的に縮小せざるを得ません。今後も
出生率の上昇が見込めない中、労働力を確保するための対策として、
女性の社会進出促進や定年退職年齢引き上げ、高齢者の再雇用、外
国人労働者や移民の受け入れなどが考えられますが・・・。いずれ
にしても、これまで右肩上がりの経済を基調に構築してきたさまざ
まなシステムを見直さなければ、社会が成り立たなくなるのではな
いか。社会を将来にわたって持続可能な規模にまで、徐々に縮小し
ていかざるを得ないのではないかと心配です。

 加えて、国の社会福祉政策について、地方自治体を悩ますテーマ
があります。
 例えば、地方自治体が担っている社会保障給付サービスの中に、
子どもへの医療費給付があります。少子化対策・子育て支援の役割
も担うものとして、重要であることは事実ですが、地方自治体がそ
れぞれの判断により対象年齢の引き上げなど独自の施策を取り入れ
ています。こうした施策は、子育て家庭にとっては、経済的負担の
軽減につながりますが、これに伴う経費は地方自治体の負担になり
ます。社会保障給付サービスの上乗せは、地方自治体間での過度な
サービス競争や不均衡を生じさせる結果となっています。

 誰が責任を持って取り組む施策なのか、国なのか、地方自治体な
のか、そして、国民を含めた負担割合をどのようにするのか、本来
確立されるべきことが確立されていない。国は、適正な基準、そし
て地方との役割分担を明確にすべきだと考えています。私は、この
ことやその不条理さについて、これまでに中核市サミットや総務大
臣との懇談会において主張してきました。そして、今年の中核市サ
ミットでは、分科会のテーマの一つとして大いに議論されました。

 子どもへの医療費給付だけでなく社会保障給付サービス全般にい
えることですが、こうしたサービスの適正水準は、ナショナル・ミ
ニマムとして国がその責任において確保すべきであり、国の基準を
超える地方自治体の上乗せ給付は廃止すべきだというのが私の主張
です。早急に解決、是正しなければならない問題であると常日頃か
ら感じています。

 一方、国の規制緩和も必要です。例えば、保育所や幼稚園、学校
について言えば、国が子ども1人当たりの面積基準を決めていたり、
先生の配置基準を決めていたり・・・、基準の枠に縛られずに、保
育や教育環境を改善したいと意欲を持って取り組もうという人は、
随分不合理に思われるのではないでしょうか。先日の田中真紀子文
部科学大臣の3大学不認可騒動は、独断的かつ唐突で、批判は当然
ですが、大臣の頭の中には、学生数の減少により経営が成り立たな
くなることへの心配や大学の設置・規制は官僚支配の最たるものと
いう考えがあったとすれば、一概に否定できないなあと感じていま
す(長野県短期大学の4年制化については、県内の大学収容力(*)
が全国最低水準であることや、4年制化に対する地元高校生や企業
のニーズが高いことから、別の問題と考えています)。

 次の課題は、今後行政の重い足かせとなるであろう、既存インフ
ラについて膨らみ続ける維持管理費問題です。少子化は、行政活動
の規模、とりわけ公共施設の在り方についても影響を与え始めてい
ます。
 以前、かじとり通信でもお話ししましたが、1960年代の高度
経済成長期に次々と建設された都市基盤となる大型建築物、道路、
橋、水道などのインフラが老朽化し、今後膨大な維持費、更新費用
が掛かってくることが予想されます。景気の低迷が続き、今後大き
な税収増が見込めない中、こうしたインフラの維持・更新費用の増
大に自治体はどう対処すべきか、とても深刻な問題です。また、新
たに公共施設を建設する場合は、国の補助メニューがあるのですが、
建設後の維持管理費に対しては国の補助メニューがないことも地方
自治体にとっては痛い話です。

 そのため、現在、長野市の「公共施設白書」を作成しようと、全
部局長に指示をして、今ある公共施設の規模や建設年度、当時の建
設費用、耐用年数など全ての状況を洗い出す作業を始めています。
そして、それが出来上がった後は、「公共施設再配置計画」の作成
を検討することにしています。つまり、今後新たな施設を建設する
際には、それと競合、もしくは重複するような既存施設の統廃合を
義務付けるというものです。

 その結果、行政サービスを縮小、あるいはやめざるを得ない事態
も十分考えられるわけで、そうなった場合は市民の皆さんからの激
しい反発は自明の理です。行政側も、問題を解決するためにはもの
すごいエネルギーが必要になるでしょう。しかし、人口が減少する
時代を迎え、避けては通れない問題であり、市民の皆さんのご理解
がなければ解決できない問題であると考えています。
 持続可能な社会をつくるために、将来の維持費、建て替え費用な
どを検討する中で、「公共施設再配置計画」の作成が大切なのです。

 このように申し上げると、前回のかじとり通信では、ハード分野
として10を超える大型事業を示しておきながら、今回の内容は矛
盾するではないかとお叱りを受けそうです。それはごもっともなの
ですが、やはり、社会が循環していくためには、新たなニーズに応
じたインフラも並行して整備していかなければならないことも事実
です。何事もバランスが大切ということでしょう。
 
 全て廃止、縮小では、将来に何の夢も抱けません。まちづくりは
木や森を育てることと似ていると思っています。今ここにこんな木
がほしい、森がほしいと思っても、それを見越して、何十年も前に
種をまき、苗から少しずつ大きく育てていかなければ、その実現は
不可能でしょう。都市の文化や魅力は、じっくりと時間をかけてつ
くり上げていくものです。

 今整備しようとしているハード事業は、そうした将来への布石に
もなるものだと思っています。常に夢を持ちながら、将来に投資し
ていくことも必要です。
 3期目の任期残り1年を迎え、これからも、市民の皆さんと夢を
語り合いながら、市政のかじ取りをしていきたいと決意を新たにし
ています。

 (*)県内の大学収容力:県内大学入学者数を県内18歳人口で
除したもの。長野県の大学収容力は15.1%(平成22年)で全
国平均50.9%の3分の1以下であり、全国最低の水準(46位)
である。(出典:長野県短期大学の将来構想に関する報告書 平成
23年7月)

2012年11月8日木曜日

3期目の任期、残り1年(その2)


 前回のかじとり通信では、「3期目の任期、残り1年(その1)」
と題して、「1 ソフト分野(部門)」についてお話ししました。
今回はハード分野、そしてソフト・ハードの両方に関する分野につ
いてお話しします。

2 ハード分野
(1)市役所第一庁舎と長野市民会館の建て替え 
 旧長野市民会館については5月に解体工事が終了し、市役所第一
庁舎については10月から玄関棟の解体工事が始まりました。来年
度には本体の建設工事に着手し、2014(平成26)年度の完成
を目指します。新第一庁舎は本市の防災拠点としての機能を備えた
施設に、新長野市民会館は本市の文化芸術の拠点となる、質の高い、
使いやすい施設にすべく、一生懸命取り組んでいます。

(2)ごみ焼却施設の建設
 長野広域連合による環境アセスメントが3月に終了し、大豆島地
区の皆さんと合意形成に向けて協議を進めています。稼動時期につ
いては、2014(平成26)年度を目指していましたが、建設ま
でにはさらに時間を要することから見直しを行い、稼動目標を
2018(平成30)年度としました。市では、建設候補地の周辺
環境整備について、地元からの提案に配慮しながら、本市全体の発
展と活性化につながる事業として、「サンマリーンながの」に代わ
る新たな健康・レジャー施設などの整備計画をまとめた「ごみ焼却
施設周辺環境整備基本計画(案)」を策定し、11月6日に大豆島
地区と松岡区で説明会を開催しました。
 今後、大豆島地区の各区で13回、大豆島地区全体および市民を
対象として各1回の説明会を開催するとともに、パブリックコメン
トの実施により、広く市民の皆さんのご意見をお聴きしながら基本
計画をまとめ、ごみ焼却施設建設の合意形成につなげていきたいと
考えています。

(3)斎場2カ所の建て替え
 大峰新斎場は2014(平成26)年秋、松代新斎場は2015
(平成27)年3月の供用開始を予定していて、事業は順調に進ん
でいます。間もなく敷地造成工事が完了する大峰新斎場は、来年4
月から建築工事に着手する予定です。松代新斎場については、3月
に地元の東寺尾地区との間で建設合意書の調印を行い、現在は地権
者の皆さんと用地交渉を行うとともに、建築設計を進めています。

(4)市立小・中学校の耐震化対策 
 耐震化事業を前倒しして行った結果、耐震化率は10月1日現在
で83.1%、来年度末には93%に達する予定です。2019
(平成31)年度に耐震化工事の完了を目指していますが、少しで
も早く完了するように取り組んでいきます。

(5)JR長野駅東口周辺整備(土地区画整理事業)
 道路の築造工事が進むにつれて住宅の建築も進み、地区によって
は、本格的に新しい街並みが形成され始めています。公務の移動中
に自動車から眺めて、街の変貌ぶりに驚いています。地域の皆さん
とまちづくりについて話し合いながら、ピッチを上げて事業を進め
ています。

(6)中心市街地(JR長野駅善光寺口前・中央通り・権堂地区)
の活性化 
 長野駅善光寺口駅前広場の整備では、バスシェルターなどの撤去
が完了し、また広場のシンボルでもある如是姫(にょぜひめ)像も
善光寺に一時移転し、これから整備工事が本格化します。中央通り
の歩行者優先道路化事業も順調に進んでいて、石畳舗装工事は善光
寺前の大門交差点からトイーゴやもんぜんぷら座のある新田町交差
点までの全長700メートルのうち45%が完了しました。車道を
狭め、歩道を広げ、歩いて楽しいまちづくりを目指します。

 セントラル・スクゥエアでは、善光寺表参道に観光客を誘導する
方法や効果を検証するために大型バス専用駐車場の実証実験を、9
月から10月にかけて実施しました。「歩いても苦にならない距離
だった」「商店のおもてなしが良かった」などの感想を多く頂くな
ど、おおむね好評であったと受け止めています。
 実証実験での観光客へのアンケートを集計し、分析結果や課題を
まとめ、セントラル・スクゥエアの今後の利活用を含めた中心市街
地の活性化施策の参考にします。

(7)Jリーグ対応のスタジアム整備
 9月市議会定例会において、南長野運動公園総合球技場整備事業
として総工費80億円(財源内訳は国庫支出金38億円、市債32
億円、寄付金6億円、一般財源4億円)の債務負担行為を設定する
補正予算を可決していただきました。当初60億円程度と見込んで
いた建設費は、観客1万人収容のJ2仕様から1万5,000人収
容のJ1仕様への収容規模拡大のためのサイドスタンド建設や、J
リーグのクラブライセンス制度導入によるスタンドへの屋根の設置
などにより増額となりました。現時点では、2015(平成27)
年度中の完成、2016(平成28)年度シーズンからの供用開始
を予定しています。
 また、2019(平成31)年に日本開催が決定しているラグビ
ーワールドカップに向けた親善試合などでの活用も見込まれます。

 同議会の一般質問においては、1万5,000人収容のスタジア
ムの必要性について説明を求められましたが、私は、「『スポーツ
を軸としたまちづくり』を推進するための都市の核としてスタジア
ムは必要である」と答弁させていただきましたし、都市の品格とし
ても必要であると考えています。10月24日にはAC長野パルセ
イロを運営する(株)長野パルセイロ・アスレチッククラブと共同
で「長野市にJリーグを!『スポーツを軸としたまちづくり』市民
会議」を開催し、200人を超える皆さんに参加していただきまし
た。会議では、「子どもたちに夢を与え、将来に誇れるスタジアム
の建設を」「観客席全面に屋根の設置を」といったご要望や、80
億円の建設費に対するご質問などを頂きました。引き続き、市民の
皆さんへの丁寧な説明を行っていくことはもちろん、新たなスタジ
アムが必ずや長野市の元気の源の一つとなるよう、市民の皆さんと
一丸となって取り組んでいきたいと強く感じています。本市のサッ
カーが、スポーツを軸としたまちづくりの中心的な存在に成長して
くれそうだなあと期待しています。

 その一方で、今後の課題として考えられるのが、ホームゲームに
おける観客数の増加です。J2昇格条件の一つである平均
3,000人以上は最低限の人数で、この数字に満足していたらチ
ーム経営は成り立ちません。J2でチームを維持していくためには、
年間5億円程度の運営費が掛かると聞いていますし、J1を目指し
さらに強いチームにしていくためには、選手の補強などにさらなる
経費が必要になるでしょう。チームの安定経営という面からも、昇
格後には、毎試合1万人以上の集客を目指して頑張ってもらいたい
と思っています。

(8)茶臼山動物園・自然植物園の再整備とモノレール建設
 茶臼山一帯は、長野市の大きな観光資源であり、その魅力にもっ
と磨きを掛けたいと思っています。昨年設立した「ながの緑育協会」
には、NHK「趣味の園芸」などテレビで活躍している矢澤秀成さ
んを職員としてお迎えしました。4月には矢澤さんが校長を務める
「ながの花と緑そして人を育てる学校」が開設され、10月には篠
ノ井中央公園管理棟が完成し、同学校の活動拠点として活用してい
ただくようにしました。日頃、矢澤さんが言っている「人は花を育
てる、花は人を育てる」のコンセプトの下、茶臼山、そして篠ノ井
地区を花いっぱいのエリアにしたいと考えています。
 茶臼山動物園では、「レッサーパンダの森」などが大人気です。
また、北口駐車場から動物園北口までの急傾斜地の移動を容易にす
るためのモノレールの建設にも着手しました。

 以上申し上げましたことは、本市の大型プロジェクト事業として
位置付け推進を図っています。最近では、学校給食センターの新設
といった話も出てきており、こうした事業も含めるとその数は10
を超えます。

3 ソフト・ハード両面に関する分野
 前回、そして今回お話ししたソフト、ハード分野の両面に関係す
る事業としては、(1)全ての施設において再生可能エネルギーの
活用と省エネルギーを基本とする設計、(2)太陽光・小水力・木
質バイオマスなどの再生可能エネルギーの活用、(3)再生可能エ
ネルギーの研究と開発、といったものがあることは昨年と同様です。

 特に、(2)についてお話ししますと、太陽光発電システムの設
置補助については、一般住宅向けの補助に加え、2009(平成
21)年度からは事業所を対象とする補助も実施しています。本年
10月末までの補助件数は5,415件で、1,000キロワット
のメガソーラーシステム23基分に相当する規模となっています。
 小水力発電については、現在大岡地区で導入していて、大岡小・
中学校の電力の約3分の1を賄っています。また、奥裾花自然園で
進められていた小水力発電による電力確保計画については、当初の
計画を大幅に見直し、小水力、太陽光、バイオディーゼルの3種類
による発電と、電力の需給管理にIT技術を活用するミニ・スマー
トグリッドを導入する方向で計画を進めています。
 木質バイオマスエネルギーの活用としては、保科温泉への木質バ
イオマスボイラーの導入をはじめ、ペレットストーブを6カ所の市
有施設に導入しています。

 以上、昨年11月のかじとり通信「3期目の折り返し点を迎えて」
で列挙した項目を検証しました。その他には、冬季オリンピックを
通じた国際交流を考えており、2018(平成30)年の韓国平昌
(ピョンチャン)での冬季オリンピックの開催について、平昌と何
らかの提携ができないか、探っています。

 次回のかじとり通信では、こうした事業を推進していく上で、こ
れは留意しなければいけないなあと感じていることをお話ししたい
と思います。

2012年11月1日木曜日

3期目の任期、残り1年(その1)


 昨年この時期のかじとり通信に、3期目の任期の折り返し点とい
うことで、市長として残り2年でやりたいこと、またはめどは付け
ておきたいことを書かせていただきました。やりたいことと言うよ
りは、やらなくてはならないことと言った方が良かったかなと感じ
ています。
 あれから、1年があっという間に過ぎてしまい、3期目の任期も
残り1年になりました。そこで、今回のかじとり通信では、昨年申
し上げた項目を検証しながら、残りの1年間、どのように市政を運
営していくのか考えてみました。

1 ソフト部門
(1)都市内分権の着実な推進と市民の自立・自治意識の確立
 都市内分権の本格実施から3年目を迎えました。地区ごとの温度
差はあっても、市内32地区全ての住民自治協議会(住自協)が、
地域の特性を踏まえた活動に熱心に取り組んでいただいており、私
としては手応えを感じています。

 住自協のさらなる自立に向けた支援策として、本年度から、新た
に事務局長の人件費に対する財政支援を始めました。住自協は、地
域コミュニティー再生の中心として徐々に存在感を示し始めていま
す。住自協が「隣は何をする人ぞ」的な考えでなく、「自分たちの
町は自分たちでつくる」という意気込みで地域課題に取り組んでい
くためには、1、2年の短期で交代する役員さんだけでは運営や事
業の継続性に支障があるという声をお聴きし、住自協に思い切って
事務局長を雇用してもらい、頑張ってもらおうというものです。
 住自協会長さんをはじめ、区や自治会の代表者として地域のけん
引役になり、住自協の中枢部分を担っている区長さんなどが連携し
ながら、地区におけるまちづくりの長期計画を作ったり住自協の中
に法人をつくったりして、県や市などのさまざまな支援メニューを
活用しながら、「もうける」ことを目標の一つとし、前向きにトラ
イしてほしいと欲張りな期待を掛けています。

 地域活動の妨げとなる要因の一つは、過疎化の進行です。人口減
少は中山間地域だけでなく中心市街地の課題でもありますが、住自
協から具体的な提案を頂きながら、市としても元気が出るような活
動を、一生懸命支援していきたいと考えています。

(2)中山間地域の振興
 中山間地域が、若年層を中心とした住民の流出とそれに伴う高齢
化、農作物の野生鳥獣被害などの重く大きな課題を抱えていること
は、皆さんご承知のとおりです。
 
 前述した住自協の事務局長の雇用支援の件とも関連があるのです
が、中山間地域のある市内13地区の住自協には、地域活性化推進
員の雇用に対しても支援しています。地域活性化推進員は2009
(平成21)年度から配置していますが、各地区の課題解決に向け
て地域が主体となった取り組みや事業を行うために、本年度から各
住自協で雇用してもらうように変更したものです。人材については、
地区内に適任者がいれば、その人を採用してもよいし、場合によっ
ては地区外から採用してもよいのではないかと考えています(公募
もありです)。買い物弱者や農家民泊への支援など、各地区それぞ
れの課題解決に向けた具体的な活動が始まっているとのことですが、
今後は、中山間地域の振興を含めた新しい条例の設置も検討し、長
い目で中山間地域の活性化に取り組む必要性を感じています。

 中山間地域の活性化は、「副市長プロジェクト」の一つに位置付
け、「地域活性化の基盤整備」や「日常生活と地域コミュニティー
への支援」を中心に検討を進めています。
 地域活性化の基盤整備については、中山間地域で一定の収入を得
ながら安心して住み続けることができるように、来年度の新規事業
として、雇用の受け皿にもなり得る多角的なビジネスが展開できる
モデル事業の検討を進めています。中山間地域の活性化には、地域
の皆さんの「強い思い」が大切で、今必要なのは新しい「アイデア」
だと思っています。さらに、そこに「行政の支援」を加え、新たな
ビジネスの創出を目指すものです。

 本市では、中山間地域に限らず市内全域を対象に、国に先駆け昨
年度から「新規就農者支援事業」を実施して(国では本年度から
「新規就農総合支援事業」を開始)、新たな農業の担い手の確保・
育成に努めています。これらの事業により、昨年度は21名、本年
度はこれまでに国と市の支援事業を合わせて11名が、新規就農支
援対象者に決定しています。今後は、地域での受け入れ体制づくり
が大切と考えています。
    
 地域の特産品開発、ITを活用した販売促進、軽トラ市の開催、
直売所の整備、「(仮称)ながのマルシェ」の構築も意欲的に進め
られています。農業については、ぜひとも売れる、もうかる農業を
目指してほしいと思います。

 野生鳥獣被害は年々大きくなっています。その原因としては、農
地の耕作放棄により、野生獣の隠れ場所となる茂みが増えたことな
どが挙げられています。被害を防ぐためには、茂みをなくし緩衝帯
を整備するとともに防護柵を設置する必要があります。また、猟友
会員の高齢化による減少対策として、狩猟免許を所持していない人
でも、銃器を使わない網やわなによる捕獲に限り、猟友会員の指導
監督の下で、補助者として捕獲作業に携わることができる「集落等
捕獲隊」の結成を進めていければ、被害対策に効果がありそうです。
イノシシ肉を料理に活用しようというプロジェクトも進行していま
す。

(3)公共交通機関の再生
 バスや鉄道などの公共交通を新しい発想で再生・活性化させ、都
市のインフラとして将来にわたって維持していくことは、大変重要
です。バス交通の利便性向上に向け、10月27日からバス共通I
Cカード「KURURU(くるる)」の運用を開始しました。カー
ドの販売数は、10月31日現在で6,253枚となり、今後、利
用者が順調に伸びていくものと期待しています。将来は買い物時や、
図書館などの施設でも利用できるよう、利用範囲をどんどん広げて
いきたいと考えています。

 また、次世代型路面電車システム(LRT)を含めた新交通シス
テム導入の可能性について、調査を始めました。新交通システムの
導入は、大きな経費が掛かることや現在の道路利用などを考えると
一朝一夕にできるものではないと感じています。しかし、将来の市
の交通体系を見据え、新年度策定予定の交通ビジョンにつなげてい
くための大事な調査ですので、課題や問題点を整理して総合的に検
討していきたいと考えています。また、新幹線金沢延伸に伴いJR
からしなの鉄道株式会社に経営が移管される長野以北並行在来線の
利用促進を図るため、長野-豊野駅間における新駅の設置について
も基本調査を始めました。
 なお、3月に廃線となった長野電鉄旧屋代線の跡地については、
沿線地域の活性化を図るため、駅周辺および鉄道用地の跡地活用に
ついて基本構想案を作成し、地域での話し合いを進めています。

(4)長野市民病院の黒字化
 「長野市民病院中期経営健全化計画(公立病院改革プラン)」に
掲げる2013(平成25)年度の黒字化を前倒しして、昨年度決
算で黒字化を達成することができ、一つの「区切り」が付きました。
これは、一つには国の「病院の機能分化・強化と連携」というビジ
ョンに合わせて、がん、脳卒中の診療など高度な医療や、救急医療
へ積極的に対応してきたことの結果です。1995(平成7)年の
市民病院開設以来続けてきた病院の増床、充実、強化を図るための
投資が、ようやく実を結び始めてきたこともあります。
 まだ累積赤字もあり、先端医療を担う市民病院の役目を果たして
いくためには今後も投資が欠かせません。経営的には大変ですが、
市民病院でなければできないことに取り組み、診療水準の向上に努
めながら、この基調を維持できるように取り組んでいきたいと考え
ています。

(5)いいとき(飯綱・戸隠・鬼無里)構想の進展と戸隠・飯綱高
原スキー場の経営改善
 飯綱、戸隠、鬼無里の3つの地域が持つそれぞれの魅力をうまく
結び付けて、地域の観光を振興し、地域を市民の憩いの場にすべく
頑張っています。

 パワースポットブームで多くの観光客にお越しいただいている戸
隠では、7月に戸隠キャンプ場・戸隠牧場のリニューアル整備が完
成し、日本最大級のキャンプ場となりました。最盛期の夏休み期間
中には、3万人を超える利用者があり、連日、多くのキャンパーで
にぎわいました。また、新たな取り組みとして、乗馬を魅力の一つ
に加えた、戸隠・飯綱高原の一体的な振興策も考えており、来年度、
「全日本エンデュランス馬術大会」を開催したいと日本馬術連盟に
お願いしています。さらに、鬼無里には本州随一のミズバショウの
群生地として有名な奥裾花自然園があります。
 これらの地域には、豊かな自然、信仰、物語、トレッキング、マ
ラソンなどキーワードがたくさんあり、多くの可能性を秘めている
地域だと期待しています。

 スキー場事業についても、いいとき構想の中に入れて、大きな期
待を込めて取り組みを始めています。スキー場は長野市にとって冬
の重要な観光資源です。昨シーズンは誘客のために、女性をターゲ
ットにしたプロジェクト(戸隠スキー場)を実施したり、ファミリ
ー層を取り込むために動く歩道を設置(飯綱高原スキー場)したり
しました。今後も各スキー場の特色を生かした誘客に引き続き努力
します。

(7)歴史、文化、芸術を大切にするまちづくり
 地域の観光資源を生かした「地域ブランド化」を推進し、各地域
の魅力を高めようと2004(平成16)年度から実施してきた
「イヤーキャンペーン事業」や「エコール・ド・まつしろ」、また、
未来を担う子どもたちに文化芸術に親しんでもらうために、本年度
から実施している「子どもたちのための文化芸術プログラム事業」、
まちに潤いを与える「野外彫刻設置事業」など、歴史と文化、そし
て芸術の薫り漂うまちづくりは大切なことだと考えています。新市
民会館がオープンする2015(平成27)年春を目指して、長野
の文化・芸術活動を大きく進展させる基盤にしたいと考えています。

 以上、少し長くなりましたが、ソフト部門について説明しました。
次回のかじとり通信では、ハード部門とソフト・ハード部門の両方
に関する事項についてお話ししたいと思います。

2012年10月25日木曜日

中山間地域のこと


 「中山間地域」から連想される言葉にはどんなものがあるでしょ
うか。
 「里山」「風光明媚(めいび)」「農家民泊」というポジティブ
なイメージのものから「過疎化」「野生鳥獣対策」「空き古民家」
などといったものまで、多岐にわたりますが、そのいずれの言葉も
中山間地域の実態を表しています。
 現在、長野市は2度の平成の大合併により、森林エリアを含む中
山間地域の面積は、市域の4分の3を占めるまでになっています。
また、長野市全体の高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)が
約25%であるのに対し、中山間地域では約37%(いずれも平成
22年10月1日現在)となっており、いわゆる市街地と比較して
10年から15年ほど高齢化が先行していると考えられます。

 そのような状況の中、市では私が所管する副市長プロジェクトの
一つとして、「中山間地域活性化推進プロジェクト」と銘打って取
り組んでいるものがあり、二つのポイントから侃侃諤顎(かんかん
がくがく)と議論をしています。
 中山間地域の皆さんの声を直接お聴きする機会は、地区ごとに開
催する「元気なまちづくり市民会議」や「中山間地域市民会議」な
どがありますが、日頃から中山間地域にお住まいの皆さんと接して
いる職員から情報を得ることも大切だと考えています。私は、担当
する業務内容が異なる職員が寄り合って、それぞれが持つ情報を共
有し、そして互いの意識レベルをそろえていくことが、日頃の業務
の質を高める上でも重要だと考えています。関係部局が一堂に会す
る副市長プロジェクトはそうした側面も持っています。

 さて、一つ目のポイントは、文字通り地域活性化という視点から
の議論で、活性化するためには中山間地域の中で、ある程度の収入
が得られる手だてを用意することが重要だということです。
 住まいが中山間地域で勤め先が市街地ですと、日々の残業やお酒
の付き合いなどのことを考えると、次第に勤め先近くのアパートに
移り、やがては一戸建て住宅やマンションを購入するというケース
は容易に想像できることでしょう。若者を中心として中山間地域か
ら人々が離れていった事例には、こうしたケースが多いとお聞きし
ています。

 こうした中、全国的な中山間地域の活性化の成功例として有名な
のが、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」株式会社いろどりの活動
だろうと思います。この「葉っぱビジネス」とは、日本料理を美し
く彩る季節の葉や花、山菜など「つまもの」を販売する農業ビジネ
スです。テレビのCMでご存じの方もいらっしゃるでしょうが、四
国の小さな町で起きた奇跡の実話として「人生、いろどり」という
映画にまでなったというから正直驚きです。
 人口2千人弱、高齢化率約50%の町ですが、葉っぱの収穫に忙
しく、寝たきりの方が非常に少ないとお聞きしています。人生には
何よりもやりがい・生きがいが必要だということを語っている好例
でもあります。
 また、長野市でも、成功している事例として篠ノ井信里地区の有
限会社たんぽぽがあります。地元農家の女性たちが中心になって、
地産地消をテーマに地元農産物を加工・販売している会社で、国の
補助事業の導入をしているほか、市としても、資本金への出資とい
う形で支援しています。地元に雇用が生まれ、収入が得られる活動
は、本当に素晴らしいことだと感心しており、とにかく頑張ってほ
しいと思っています。
 こうした成功事例に共通しているのが人、すなわちリーダーの存
在です。いろどりにもたんぽぽにも素晴らしいリーダーがいらっし
ゃいます。
 そこで、何とかそうしたリーダー、やる気のある人の発掘も含め、
中山間地域の活性化に向けた来年度からの新規事業として、中山間
地域で起業する際の支援制度を創設できないかと検討を進めていま
す。
 この制度には二つの顔を持たせたいと考えています。一つは、中
山間地域に愛着を持ち、現に住んでいる住民の皆さん自らのやる気
とアイデアを支援するという面。
 そして、もう一つはIターンなどによる地域外からの皆さんを誘
導するための仕掛けという面です。
 里山の豊かな自然の中でゆったりとした人生を送りたいという価
値観を持つ人々の存在は、全国各地で語られ始めています。こうし
た人々に長野市の中山間地域に目を向けてもらえるきっかけになれ
ばと思います。
 また、市が昨年度から始めた「新規就農者支援事業」を活用され
た皆さんの中からも、中山間地域での営農に加え、農産物加工や農
家レストランなどの事業を起こそうとする方が出てくれればと期待
しています。さらに、現在盛んなIT技術を活用したビジネス起こ
しなどへの活用も大いに考えられると思います。

 支援を受けるための基本的な条件を挙げると、中山間地域に
 ・雇用が創出されること
 あるいは、
 ・農作物など地域資源を活用することで経済波及効果があること
 の二点です。
 
 具体的には、事業のアイデアと経営スキームを示していただき、
外部の専門家も加わった審査会で審査し、事業収支など財務計画か
ら現実性の高いものに対して財政支援を行うことを考えています。
中山間地域を元気にする魅力的な提案を楽しみにしています。

 もう一つ考えられる雇用創出と収入源確保の方法として、公共施
設の指定管理受託があります。特に、中山間地域には観光施設など
多くの市有施設があり、指定管理者制度を導入しています。
 以前から機会あるたびにお話しさせていただいていますが、市有
施設は中山間地域の安定した雇用の場となりますので、地元商工会
などが中心となって指定管理の受託に参加していただければと思っ
ています。

 議論の二つ目のポイントが生活支援です。
 前にお話ししたとおり、中山間地域は高齢化の進行が著しく、独
居高齢者の割合も比較的高い状況にあります。何かあったときに救
いの手が差し伸べられ、日常生活を安心して送ることができるよう
に、現在、庁内関係部局の間で打ち合わせを行っております。今後、
支所や消防署はもちろんのこと、警察署、郵便局などの公共機関の
ほか、電気・ガス・水道などの検針業務を行っている民間事業者な
どにも広く加わっていただいたネットワークが出来ればと思ってい
ます。
 また、買い物にも支障を来たしているとの住民の皆さんの声をお
聴きしており、このいわゆる「買い物弱者」対策も進めていく必要
性を感じています。ただし、この点については地域により事情が異
なっているため、地域ごとにきめ細やかな対応が必要になってくる
と考えています。
 現在、関係部局で事業者と意見交換を行っており、「民の力」を
生かし、行政がこれを支援することで、住民の皆さんが安心して生
活できる環境づくりを進めていきたいと考えています。

 中山間地域で課題となっている、高齢化に伴う買い物弱者問題な
どは、いずれ長野市全域で発生し得る課題でもあります。中山間地
域で実施した対策は、必ず今後に生きてくるものと確信しています。

 ところで、中山間地域の皆さんを悩ませている問題に野生鳥獣被
害があります。中山間地域の人口減少に加え、森林に手が入らなく
なったなどの複合的原因により、長野市ではイノシシやニホンジカ
を中心に被害が増加傾向にあります。現在、中山間地域に設置され
た「有害鳥獣対策協議会(委員会)」と猟友会の皆さんに、市街地
も含む長野市全体の安全を守るべく、防護柵設置や駆除対策などを
中心に懸命な努力をしていただいています。先日も長野市街地でク
マが目撃されたほか、全国的にも「札幌市街地でヒグマが続出」「
上越市高田市街地にイノシシ出没」というニュースがありました。
野生鳥獣対策は他人事ではなく、自らの課題であるという意識をも
って注目していただきたいと思います。

 また、中山間地域に根付いている食文化や伝統的な行事は、地域
ならではの多様性を持っています。「○○○らしさ」とは、必然の
中から生まれた文化に根差したものという考え方があります。中山
間地域を守っていくことは、すなわち「長野らしさ」を守っていく
ことであるとも思います。
 中山間地域では毎年、さまざまな行事や工夫に満ちたイベントが
開催されています。皆さんもぜひ足を運んでいただくようお願いし
ます。

2012年10月18日木曜日

秋ですね


 猛暑の8月、そして残暑厳しい9月も終わって10月に入り、よ
うやく過ごしやすい秋になったなあと思ったのもつかの間、ここ数
日は、朝夕めっきり寒くなってきましたね。日を追うごとに秋が深
まっているなあと感じていますが、今回はそんな10月の出来事を
紹介します。

 2日、富山市に出張し、同市と「集客プロモーションパートナー
都市協定」を締結してきました。これは、新幹線の金沢延伸を
2014(平成26)年度に控え、両市の観光交流を促進するとと
もに、他都市からも多くの観光客を呼び込むために協力し合いまし
ょうというものです。長野市はこれまでに、上越市、金沢市、甲府
市、そして静岡市と同協定を締結しています。海のある富山市、山
のある長野市は、お互いの市民にとって、とても魅力的に感じるこ
とでしょう。富山市民の皆さんには、ぜひとも長野市を訪れていた
だき、善光寺や真田十万石の城下町・松代、パワースポットで有名
な戸隠などを巡って、長野市の素晴らしさを堪能していただきたい
とPRしてきました。

 富山市には30年ほど前から何度も訪れていますが、市街地は初
めて訪れた頃と比べものにならないほど大きく変わっています。新
幹線開業を前にしたJR富山駅前の再開発、スタイリッシュな新型
車両が目を引くLRT(次世代型路面電車)など、近未来の都市を
イメージするほどです。戦災で市街地が焼け野原になったとのこと
ですが、そうした歴史と向き合いながら、見事な都市計画を行なっ
ています。富山市に比べて、長野市は幸い戦火が少なかったおかげ
で、古い町並みや小路が今に残っているのでしょう。

 10日の早朝、長野交通安全協会、ヤングドライバークラブ、長
野中央警察署などの皆さんに参加いただき、交通死亡事故抑止のた
めの緊急街頭指導を行いました。
 長野市における交通死亡事故は近年減少傾向でしたが、今年はこ
れまでに13人の方が尊い命を落とされました。これは、昨年の同
時期と比較して6人も多く、11人の方が亡くなられた昨年を早く
も上回る非常事態と判断し、急きょ、長野市独自で街頭指導を行っ
たものです。
 交通死亡事故で亡くなられた方のうち9人が65歳以上の高齢者
です。また、道路横断中や自転車を利用していて亡くなられた方が
7人、交差点付近における死亡事故が9件のほか、体調不良が原因
と思われる単独死亡事故も発生しています。

 実施した10月10日は「止まる、止まる」の語呂合わせがある
とのことで、交通死亡事故の発生がこれで「止まる」という期待も
込めた街頭指導でした。引き続き、交通安全意識の高揚と交通事故
の抑止を図りたいと考えています。

 同じ10日の午後7時から、AC長野パルセイロが、天皇杯全日
本サッカー選手権大会ベスト16進出を懸けて、JFL(日本フッ
トボールリーグ)に所属する横河武蔵野FCと札幌市で対戦しまし
た。試合は、延長を終えても0対0の均衡が破れずPK戦となりま
した。11人目のゴールキーパー同士の対戦までもつれ込んだ結果、
9対10で敗退してしまいました。試合終了は午後10時近くだっ
たと思います。天皇杯で勝ち上がるのは大変なことだと分かっては
いましたが、同じJFLのチームに負けたことが悔しくて、その日
の寝付きはあまりよくありませんでした。
 また、14日に行われたJFLのSAGAWA SHIGA 
FC戦では、優勝を狙うために勝ち点3を取ってほしかったのです
が、引き分けに終わりました。ただ、ロスタイムに、それも相手の
オウンゴールでの引き分けですから・・・うれしさ反面、こんなこ
ともあるのかと信じられませんでした。

 20日~22日には、いよいよアビリンピック2012(第33
回全国障害者技能競技大会)が開催されます。この大会は、障害の
ある方が職業技能を競い合う大会で、職業能力の向上を図るととも
に、広く障害者に対する社会の理解と認識を高め、障害者の雇用の
促進など、障害者の社会的な地位の向上に結び付けることを目的と
しています。
 長野県では初めての開催となり、競技会場はビッグハットとホワ
イトリングです。約300人の選手が、「ホームページ」「コンピ
ュータープログラミング」「建築CAD」「フラワーアレンジメン
ト」「喫茶サービス」など、23の競技種目で競い合います。

 5日には、アビリンピックと長野技能五輪に出場される長野市関
係の選手の皆さんをお招きして、壮行会を開催しました。選手の皆
さんは、大会に向けて日々の仕事後の時間などを利用し、厳しい練
習を重ねてきたとのことです。長野市の、そして長野県の代表とし
て頑張ってほしいと思います。

 また、前日の4日には、みどりの移動市長室として、アビリンピ
ックのホームページ種目に出場する瀧内さとみさんの勤務先である
社会福祉法人ながのコロニー長野福祉工場を訪問しました。瀧内さ
んを激励するとともに、そこで働く皆さんと、障害者の雇用の場の
充実を図ることの必要性などについて意見交換をしました。

 なお、例年若里公園で行っている「ふれあいまつり」は、今年は
アビリンピックの開催に併せて、今週末の21日にホワイトリング
で開催します。同時開催することで、それぞれの催しを盛り上げよ
うと企画しています。たくさんの皆さんにお出掛けいただきたいと
思います。

 そのホワイトリングでは、12日・13日に第2回関東甲信越フ
ロアホッケー競技大会が開催されました。フロアホッケーとは、知
的障害者のスポーツとしてスペシャルオリンピックスから生まれた
アイスホッケーに似たスポーツで、室内でスティックを使い、大き
なドーナツ型の柔らかいパックをゴールに入れて得点を競うもので、
22チームが熱戦を繰り広げました。

 この他、13日から14日にかけて城山公園ふれあい広場で、が
んの克服を願い、がん患者やがん克服者、家族などの支援者約
800人が交代で24時間歩いてリレーするチャリティーイベント
「リレー・フォー・ライフ信州in長野」が長野市で初めて開催さ
れました。
 また、松代藩真田十万石まつりの「松代藩真田十万石行列」、毎
年恒例の「長野市農業フェア」や「善光寺表参道秋まつり」などの
元気なイベントも多数開催されました。

 ご紹介した活動や大会、イベントなどは、いずれも長野市の魅力
を高め、安全・安心で、元気なまちづくりのためにとても大切な取
り組みです。特に10月は、これまで取り組んできたこと、準備を
してきたことが成果となって表れる、またはそれを発表するのに最
適な時期ではないでしょうか。皆さんにとって実りの秋となること
を願っています。

2012年10月11日木曜日

くるるカードセンター開所式と篠ノ井中央公園管理棟しゅん工式


 9月29日、トイーゴ広場を主会場として、くるるカードセンタ
ーの開所式、続いて新型ぐるりん号の出発式を行いました。
 くるるカードセンターは、市内バス交通の活性化を図るため
2009(平成21)年度から準備を進めてきたバス共通ICカー
ド「KURURU(くるる)」の取り扱い窓口で、10月27日か
らのカードの運用開始に先立ってトイーゴ2階に開設し、営業をス
タートしました。また、「KURURU」のデビューを記念して、
5千枚限定の記念カードも同時に発売しました。

 「KURURU」は、バスに乗るときと降りるときに、カードを
専用の読み取り機に軽くタッチするだけで自動的に運賃の精算がで
きる優れ物で(小銭を用意する煩わしさがありません)、大都市な
どで使われている「Suica(スイカ)」や「PASMO(パス
モ)」の地方版を目指しているものです。
 あらかじめカードにお金をチャージしておけば、1枚のカードで、
長電バス、アルピコ交通、ぐるりん号の路線バスに乗車することが
できます。今後は、市営バス、乗合タクシーへの利用の拡大はもち
ろん、買い物や有料駐車場など、生活のさまざまな場面で利用でき
るようにすることと同時に、利用回数に応じてサービスを付加する
ことなども検討したいと思います。さらに、図書館などの施設でも、
利用者証などとして使えるようにできたらいいなあと考えています。
 ぜひ多くの皆さんに「KURURU」をご購入いただき、市内公
共交通の中心的な存在である路線バスを、今まで以上に利用してい
ただきたいと思います。

 開所式に続いて、中心市街地循環バス「ぐるりん号」の新型車両
の出発式を行いました。
 ぐるりん号は、2000(平成12)年の運行開始から12年間、
中心市街地における市民の皆さんの「足」として親しまれ、実績も
上がり、他の地域で運行されている循環バスの先駆けにもなりまし
た。
 これまで小型バス3台で運行してきましたが、ノンステップバス
4台を導入することでバリアフリー化を図るとともに、運行間隔も
20分から15分に短縮しました。また、始発時間の繰り上げと終
発時間の繰り下げにより運行時間を延長し、1日の運行便数もこれ
までの27便から44便に大幅に増便して、より便利になりました。
ラッピングも新しくなりましたので、「KURURU」の普及と併
せて、一層市民の皆さんに愛されるバスにしたいと考えています。  

 10月1日、篠ノ井中央公園の管理棟がしゅん工し、完成記念式
典を行いました。
 式典には、関係市議会議員さん、地区の皆さん、工事を行ってい
ただいた皆さんなど、大勢の方々にご出席をいただきました。特に、
篠ノ井中央公園建設委員会の皆さんには、大変お忙しい中、公園の
建設開始当初から多くの貴重なご意見をいただき、当日もご臨席い
ただいたことに心から感謝しています。

 篠ノ井中央公園は、計画面積が約6ヘクタールの規模で、約3分
の1の区域の整備が完了し、残りの区域についても順次整備を進め
ています。本市の緑化推進の柱である「緑育」の拠点として位置付
けるとともに、地域の皆さんの防災の拠点としても重要な場所にな
るものです。このたび、管理棟がしゅん工したことで、実質的に利
用開始となりました。

 「緑育」という言葉は、緑を育てるという単純な意味にとどまら
ず、緑を育てることで人も育つ、また地域も育つという、まちづく
りのキーワードでもあります。
 緑育の推進に当たっては、昨年4月に市内の緑化や造園に関わる
皆さんと協働して「ながの緑育協会」を設立し、「NHK趣味の園
芸」などテレビで活躍する矢澤秀成(やざわ ひでなる)さんを職
員として招くなど、体制を整えてきました。
 協会の愛称を「ながの花と緑そして人を育てる学校」とし、今年
4月から緑育を担う人材を育成するために「ながの緑育マイスター」
養成講座をスタートしたところ、想定していた定員の80人をはる
かに上回る240人の方からご応募いただき、急きょ、講座数を増
やして全員を受け入れることにしました。遠くは兵庫県から受講さ
れる方もいるとのことで、うれしい限りです。

 当日は、講座を受講している皆さんにも、たくさんご参加いただ
きました。講義内容を生かし、本市の緑育の推進にぜひご協力いた
だきたいと思います。また、完成した管理棟では、今後ながの緑育
協会を主体に、さまざまな活動やイベントが企画されています。楽
しみにしていてください。

 なお、公園内には、長野市民会館や長野駅の善光寺口駅前広場に
あったイチョウやシナノキなどを移植しました。新しい場所で新た
な歴史をつくってくれることと思います。
 また、「NPO法人CO2バンク推進機構」さんから、公園内に
「ピンオーク」の木(耳慣れない名前ですが「アメリカガシワ」と
いう和名があり、奇麗な紅葉が楽しめるとのことです)をご寄付い
ただきましたので、式典の中で同機構理事の宮入賢一郎様に感謝状
を贈呈させていただきました。

 このように、篠ノ井中央公園の整備が着々と進む中、同じ篠ノ井
地区にある茶臼山自然植物園も矢澤さんの指導の下、ボランティア
の皆さんによる植栽イベントなどにより植栽の充実が図られ、新し
い魅力が加わり始めています。地元の株式会社中嶋製作所さんから
は、これまでに植栽整備費として2千万円の寄付をいただき、ツツ
ジを約4,700本、その他ハナモモなどを植栽しました。本年5
月に私が視察したときは、素晴らしいツツジの花が咲き乱れていま
した。

 篠ノ井の地が、花と緑によるまちづくりによって一層発展するこ
とで、「緑育発祥の地」として、広く全国にその名をとどろかせる
ことを願っています。

 話は少し変わりますが、新しい取り組みとして、中心市街地にお
ける「Wi-Fi(ワイファイ)」環境を利用した観光情報の配信
が9月27日から始まりました。市内では現在約250カ所にWi
-Fiスポットがあるということで、私も実際にそのスポットに行
って体験してみました。また、松代の観光情報を提供する「信州松
代まち歩きNavi(ナビ)」というスマートフォン用のアプリケ
ーションによるサービスも始まっています。

 市民の皆さんの生活がより便利に、より快適に、そして心豊かな
毎日となるための事業が、一つずつ確実に成果となって表れていま
す。

2012年10月4日木曜日

動物愛護~長野市の誇れる取り組み


 私としては、珍しいテーマなのですが、今回は動物愛護週間(9
月20日~26日)にちなんで、動物愛護に関する長野市の取り組
みを紹介します。

 ペットブームという言葉を聞いて久しくなります。ストレス社会
に生きる人間にとってペットは癒やしであり、家族同様の存在であ
るようです。わが家にも15年ぐらい前まで愛犬がいましたが、高
齢となってからは、白内障を患い、老いていく愛犬がかわいそうだ
ったのを思い出します。
 ペットはかわいいものです。しかし、その裏には、悲しい現実も
あります。「引っ越しなどにより手放さなければならない」「子犬、
子猫がたくさん生まれて飼えない」などの理由により、犬や猫を保
健所へ持ち込む飼い主が後を絶ちません。持ち込まれた犬や猫の多
くは、やむなく殺処分されるケースが一般的です。2008(平成
20)年度の殺処分数は全国で、犬が約8万2千匹、猫が約19万
4千匹で(環境省調べ)、長野市保健所においては、犬が97匹、
猫が265匹、またそれに係る経費は334万円でした。尊い命が、
飼い主の身勝手な都合によって失われる。こうした悲しい現状を改
善しようと、本市保健所では以下のような取り組みを積極的に行っ
ています。

(1)保健所で保護した犬や猫の写真をホームページに掲載して、
お知らせするとともに、犬の登録台帳から該当しそうな飼い主に電
話で確認をして、飼い主の所に返せるよう努める(返還率の向上)。
また、保護期間は設けず、保健所で新しい飼い主が見つかるまで飼
育しながら引き続き譲渡の機会を探す(保護期間を設けないのは、
本市独自のやり方で、大きな方針の転換でした。飼い主が見つかる
まで保健所で飼育するわけですから、飼育管理は以前より大変にな
ったそうです)。
(2)ボランティアの皆さんの協力を得て、月1回の定例譲渡会を
開催する(譲渡数を大幅に伸ばすことができました)。
(3)保健所で引き取る際には、飼い主と徹底的に話し合いをして、
本当に飼育が困難であること、譲渡先がないことをしっかりと精査
する。また、繰り返し子猫を持ち込む飼い主には、本市独自の「ね
この繁殖制限手術助成事業」(雌4,000円、雄2,500円を
助成)の活用を推奨し、不幸な猫を増やさないようにする。

 小さな命を救うため、職員がまだ目の開かない子猫を自宅に連れ
て帰り、授乳などの世話をすることもあるようです。こうした地道
な取り組みの結果、2010(平成22)年度は、犬の返還率は
73.5%、譲渡率は86.7%で、いずれも全国108の自治体
(都道府県、政令指定都市、中核市などで動物愛護管理行政を所管
する自治体)の中で1位、猫の譲渡率は50.2%で3位。この結
果、殺処分数は、犬が8匹、猫が107匹と合計数で平成20年度
の約32%にまで大幅に減少し、全国トップレベルになったとのう
れしい報告がありました。また、このことにより、殺処分に係る経
費も大幅に節減でき、平成22年度は平成20年度に比べ約229
万円の節減となりました。

 ペットの殺処分数を減らそうという機運が全国的に高まる中、各
地の動物愛護センターの取り組みがテレビで放送されたり、本で紹
介されたりするなどしています。また国においても、動物愛護の観
点から、生後56日を経過しない子犬や子猫は親から引き離すこと
を禁じる「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」
が成立しました。親から離れる時期が早すぎると、ほえる、かむな
どの問題行動を起こしがちで、結果的に殺処分されるケースにつな
がりやすいということです。本市には動物愛護センターはありませ
んが、保健所において毎月第1土曜日に動物愛護会の皆さんとの共
催で「犬のしつけ方教室」を開催して、優良な飼い主の育成にも努
めています。犬のしつけは、単に犬の問題行動を解決するだけでな
く、飼い主と犬の良好な関係を築き、地域でのマナーの向上にもつ
ながっていくものです。
 今後も現状に満足することなく、大切な命を一つでも多く救うた
め、関係機関、飼い主、そして市民の皆さんと協力して、殺処分数
ゼロを目指したいと思います。

 ペットの話題についてもう少し触れてみます。
 本市では、市が管理する約700カ所の公園のうち、4公園(長
野運動公園、八幡原史跡公園、真田公園、犀川第2緑地)の指定区
域を除く全ての公園で、犬の散歩を禁止しています。これは、長野
市都市公園条例で、動物を引き連れて入園することを禁止している
ためです。
 昨年度行った市民アンケートによると、公園で犬を散歩させるこ
とについて約62%の人が「マナーが良ければ、気にならない」と
回答しましたが、その反面、飼い主のマナーが「悪い」と答えた人
は約51%、今後の公園での犬の散歩をどうすべきかについては
「現状のままでよい」が約46%でした。こうした結果を受け、本
市では公園での犬の散歩を、当面は現状維持とする方針で考えてい
ます。

 また、本市では、清掃センターの専用炉でペットの火葬を行って
いますが、本年度、長野市廃棄物減量等推進審議会からペット火葬
費用の引き上げ(現在の3,600~12,000円を4,800
~16,500円に)について答申がありました。付帯意見として、
現在、市内や近隣市の6事業者がペット火葬を請け負っている現状
を踏まえ、将来的には同センターでの専用炉によるペット火葬の廃
止について検討することも求められました。

 以上のように、ペットに関わる本市の行政は多様化していますが、
少子化や高齢化、核家族化などの社会的背景から、今後もペットは
人にとって大切な存在であることは間違いないでしょう。ペットと
人はお互いが幸福であり、社会からも認知される良好な関係づくり
が不可欠です。野良猫対策や犬の散歩中のマナーなど、まだまだ問
題はありますが、動物愛護の原点である「おもいやり」の気持ちを
大切にして、ペットと共存できる潤い豊かな長野市を目指していき
たいと思います。

2012年9月27日木曜日

おもてなしの心


 前回は初めてのメールマガジンということで、私の思い描く長野
市の将来ビジョンについて、全体的な話をさせていただきました。
今回は、もう少しテーマを絞ったお話をしたいと思います。

 この4月に長野市の副市長に就任する前の、長野県職員であった
ころのことですが、民間企業に研修に行く機会があり、東京の丸の
内にある「タリーズコーヒー」で3カ月間働いたことがあります。
そこでは、今盛んに言われている、おもてなしとCS(顧客満足)
について多くを学ぶことができ、まさに民間感覚を肌で感じること
ができました。

 さて、そのタリーズコーヒーでは、初めのころはレジを担当し、
その後いわゆる「バリスタ」というコーヒー職人としての仕事に携
わりました。レジを担当していたときのことですが、毎朝7時に来
る女性のお客さんがいました。その人は、毎日ミルクティーを注文
し、たいていは温かいものを、たまに冷たいものを飲んでいました。
あるとき、「おはようございます。いつもと同じものでよろしいで
しょうか」と聞くと、「はい」とのこと。続けて、「あったかいの
にしますか、冷たいのにしますか」と聞きました。そのお客さんが
帰られた後、店長から「『あったかい』ではなく、『あたたかい』
または『ホット』という言葉を使ってください」と言われました。
「あったかい」では相手に近づきすぎだ、と言うのです。

 確かに、お客さんに対して親しみを込めることは大切だと思いま
すが、ある程度の距離を置いて、親しみを感じてもらうことが大切
なのです。これは、市役所においても全く同じで、庁舎内を歩いて
は職員が接客している姿を見るようにしています。職員には、市民
の皆さんに、適度な距離感を取るとともに親しみを感じてもらえる
ような対応を求めていきたいと考えています。

 また、タリーズコーヒーでは別の店舗に行く機会があり、そこで
店内のトイレを利用しました。鏡に曇りは無く、水滴も落ちていな
い、とても奇麗に清掃されていたのです。そして、数十分後にもう
一度同じトイレを見てみました。その間に、トイレを利用した人は
何人もいるはずです。しかし、奇麗になっているのです。どうやら
その店では、店員が定期的にトイレに入り、誰ともなく掃除をして
いたようなのです。食べる所が奇麗なのは当たり前で、トイレにま
で手入れが行き届いているのは、こんなに気持ちがいいものかと感
じました。
 ワンコインのコーヒー1杯のために、これだけのことをやってい
ます。

 当たり前の話ですが、人間は「食べ」れば、「出す」ものです。
になるのでしょう。
 私が副理事長を務める長野市開発公社が管理・運営するそれぞれ
の施設には、設備は新しくなくても、そのような場所の手入れを徹
底し、「一流」を目指してほしいと呼び掛けています。

 前回のメールマガジンでお話ししたように、長野市は平成27年
を境に大きく変貌を遂げます。その長野市をたまたま訪れた人が、
「街で道を尋ねたら適度に親しみのある心地よい対応をしてもらえ
た」「飲食店や宿泊施設を利用したら、トイレまでしっかり手入れ
が行き届いていて、気持ちのいい滞在ができた」となれば、今度は
家族を連れて訪れようと思うかもしれません。
 今や観光名所や食事、商品など形のあるものだけに対価を払う時
代ではなく、このようなガイドブックにも載っていない、「おもて
なし」や「ホスピタリティー」を買う時代が来ているのだと感じて
います。

2012年9月20日木曜日

本年度の地域審議会と大きな事案の一つの区切り


 本市では、2005(平成17)年に合併した豊野・戸隠・鬼無
里・大岡の4地区に、「市町村の合併の特例に関する法律」に基づ
く地域審議会を設置し、地域の重要課題の解決などについて審議し
ています(2010(平成22)年に合併した信州新町・中条地区
については、合併協議中に、住民自治協議会設立に向けての検討委
員会が既に立ち上がっていたので、同じような組織を2つ設置する
必要はないということになり、地域審議会を設置していません)。

 4地区の各地域審議会の委員の皆さんとは、年に1度、地域にお
ける課題や要望などについて意見交換をするため、懇談会を行って
います。8月29日に開催した本年度の懇談会では、豊野支所庁舎
の2階空きスペースの有効活用、戸隠地区の滞在型観光地づくり、
鬼無里地区の雇用の場を創出するために、長野森林組合の木質ペレ
ット燃料製造の推進や鬼無里小学校と鬼無里中学校を小中一貫校と
した場合の空き校舎を利用した高齢者向け福祉施設の誘致、大岡地
区の定住者増加策に関連する大岡保育園の存続など、それぞれの地
域に密着した話題について懇談しました。

 豊野支所庁舎の空きスペースについては、合併直後に金融機関か
ら入居の申し入れがあり、使用料を頂いて1階に入ってもらってい
ますが、最近になってようやく、空いている2階にも来年4月から
北信農業共済組合が入ることが決まりました。使用料はもとより、
会議室の改装や組合の公用車駐車場整備のための費用は、全額農業
共済組合に負担していただけるので、ありがたいことです。また、
さらに空きスペースになっている旧議場については、豊野地域審議
会の会長さんから、地域の皆さんの芸術文化活動・コミュニケーシ
ョンの場として使用したいと要望を頂きました。しかし、隣接する
公民館の利用率が低いため(5割程度)、今の段階で新たに整備す
ることは難しいと説明しご理解を求めるとともに、より広い観点か
ら有効活用できるかどうか検討していきたいと申し上げました。

 戸隠地区における滞在型観光地づくりの話題の一つとして、地域
の方から次のような話を頂きました。「38年ほど前に渡欧した時、
スイスのツェルマットという町では、地区外からマイカーを一切入
れず、タクシーや馬車、電気自動車で移動していた。本当に魅力的
な町で、戸隠に重ね合わせて見ていた。その場しのぎの計画ではな
く、何十年先はこうありたいという思い切った計画も大事。ドイツ
でも、環境に配慮し、自動車をシャットアウトした観光地があるが、
現在非常に多くのお客さんを集めている」といった内容でした。
 合併当時、戸隠地区の皆さんがそれまで検討を重ねてつくり上げ
てきた構想の中に、中社地区や宝光社地区をバイパス道路で結んで、
神社前の通りに自動車を入れないようにしたいというものがあった
ことを覚えています。地形的にはかなり難しいと思いましたが、実
現できれば素晴らしいと感じたことは事実です。

 鬼無里地区の木質ペレット燃料製造などによる雇用創出の話題は、
65歳以上の人口が地区全体の50%を超え、過疎化、高齢化が切
実な問題となっている実情が背景にあります。「山あいの地区では
70歳以上の高齢者世帯が占める割合が突出して高く、草刈りなど
の公益活動を続けていくことが難しい」「地区役員の選出などに大
変苦労している地区がある」「現在ある巡回販売や宅配サービスも、
採算面から廃止されることも想定され、買い物困難者の増加が危惧
(きぐ)される」「地元雇用の場が減って若者や子どもの数が減少
し、小学校への新入生は年に4~5人という状況が続く見込みであ
る」などのさまざまな課題が出されました。また、高額な通学費が
ネックとなり、子どもの高校進学を機に家族で地区外へ転出する例
があるなど、高校がない地域における通学に関して何らかの対策を
要望されました。
 なお、本市では、こうした状況を踏まえ、中山間地域を対象とし
た買い物困難者や草刈りなどの状況調査を始めました。調査結果に
基づき、中山間地域の支援策のさらなる検討を積極的に行いたいと
思います。

 大岡保育園の存続については、「若い定住者が困ることのないよ
う、大岡保育園を存続させてほしい」との要望を頂きました。私か
らは、「大岡保育園のように著しく園児が少ない保育園では、集団
保育の実施や効率的な施設の運営の観点から課題がある。住民自治
協議会や保護者の皆さんと園の存続について協議しているが、現在、
社会福祉審議会で審議している『長野市公立保育所の適正規模及び
民営化等基本計画』の結果を踏まえた上で、一定の結論を出したい」
と申し上げ、意見交換の結果、来年度については、本年度と同数の
園児が見込めることから、運営を継続することにしました。

 この4地区に限らず、また人口や面積の大小に関係なく、各地区
にはさまざまな課題や要望があり、地区の皆さんからは、要望活動
や元気なまちづくり市民会議などを通して、数え切れないほどの要
望を頂いています。行政としては、緊急性や地域性を十分考慮した
上で、できる限り対応するよう努めていますが、これからの地域づ
くりを進めていくためには、行政に「これをやってほしい」と要望
するだけではなく、今まで以上に「自分たちはこうした活動をやり
たい。そのために行政はこのような支援をしてほしい」という発想
を大切にしていただきたいと考えています。

 市の地域いきいき運営交付金、地域やる気支援補助金、やまざと
支援交付金や、県の地域発元気づくり支援金など、県も市も支援メ
ニューを用意し、地域のやる気を積極的に支援しています。草刈り
などの道路整備や遊休農地解消に向けた農作業支援でもいいのです。
そして、いずれは、こうした作業のために人を雇用すること(他の
地区から雇ってもらっても構いません)などにも範囲を広げたいと
考えています。「自分たちのまちは、自分たちがつくる」。主役は
地域の皆さんです。住民自治協議会が地域コミュニティーの核とし
て頑張ることを期待しています。

 話は変わります。昨日19日に浅川ダムの建設現場で定礎式が開
催され、出席しました。定礎式とは、ダム基礎部分の立ち上がりを
記念するとともに、清められた礎石をダム本体に納め、ダム工事の
安全と完成するダムが永久堅固で安泰であることを願うものです。

 1971(昭和46)年の予備調査から始まった浅川ダムの治水
対策は、実に40年余りの歳月を経て、ようやく大きな節目を迎え
ることができ、「一つの区切りだなあ」と感じました。
 「脱ダム宣言」による大混乱がなければ、浅川ダムは既に完成し
ていたはずで、振り返ってみると、「本当にいろいろなことがあっ
たなあ」というのが正直な感想です。
 行政の最も基本的な責務は、住民の生命と財産を守ることです。
今後は、一日も早くダムが完成することを願うとともに、浅川下流
域の内水対策をはじめ、中流域の堆積土砂撤去、上流域の土砂流出
対策など、残された事業が早期に進められ、浅川流域全体が一日も
早く、安全で安心して暮らせる地域となるよう、さらに気を引き締
めて取り組んでいかなければならないと思っています。

 もう一つ、新たな時代に向けて大きくかじを切ったと感じた出来
事は、政府が「2030年代の原発稼動ゼロ」という方針を打ち出
したことです。ただし、閣議決定の文言には「原発ゼロ」は盛り込
まれず、具体策を明記した文書(「革新的エネルギー・環境戦略」)
は参考扱いとされるようですから、何も変わっていないと感じてい
ます。
 原発については、いまだに議論が尽くされておらず、今後解決し
なければならないさまざまな課題があると思っています。再生可能
エネルギーについて、利用をどれだけ拡大できるのかまだ明確には
分かりませんが、本市としては、最大限利用できるよう努力してい
きたいと思っています。

2012年9月13日木曜日

農業を生かした地域づくり


 高齢化などによる農地の荒廃と遊休農地の増加は、長野市だけで
なく多くの自治体が抱える課題です。こうした中、若槻地区住民自
治協議会の「コミわかグリーン倶楽部」が、遊休農地の活用策とし
て取り組む市民菜園(約70アール)が人気だと聞きました。その
取り組み方法などについてぜひ話をお聞きしたいと思い、同倶楽部
元代表理事で長野市監査委員でもある轟光昌さんを市役所にお呼び
し、関係部局長も出席して勉強会を開きました。

 同倶楽部は、雑草が生い茂るまでに荒廃した農地を地権者から借
り受け、土壌を整備し、区画割りをして、市民菜園として市民に貸
し出すことを目的に発足しました。市民菜園「コミわか農園」は住
宅地に近接していることもあり、定員を超える申し込みがあるほど
順調とのことです。なお、同倶楽部は、指定管理者として近くにあ
る蚊里田市民農園(サラダパーク蚊里田)の管理・運営も行ってい
ます。

 しかし、轟さんによると、2010(平成22)年の倶楽部設立
から今日に至るまでには、さまざまな苦労があったそうです。
 当初は住民自治協議会の事業として行うことを考えていたそうで
すが、法人格を持たない住民自治協議会では市民農園の運営は不可
能ということが分かり、一般社団法人として同倶楽部を立ち上げま
した。水利用のために用水組合の許可を取ることや、元水田のため
新たに土を入れて畑用に改良するなどしなければなりませんでした。
また、区画の測量や区画割りは、地元の長野工業高等専門学校の生
徒さんにもお手伝いいただいたそうです。

 その後、利用者を募り、抽選を行い、契約する運びとなったわけ
ですが、利用者の約半数の皆さんが農業の素人ということで、倶楽
部が講習会を開催して野菜栽培の「いろは」を指導したり、定期的
にパトロールをして困り事などの相談に乗ったりもしているそうで
す。
 また、周辺住民から、堆肥が臭う、野焼きをしている、機械の音
や話し声がうるさい、路上駐車や駐輪が迷惑といった苦情もあった
そうで、モラル向上の啓発活動を行うなど、貸し出しを始めてから
もさまざまな対応が必要であったとのことです。

 小田切地区住民自治協議会でも、100万円の長野市地域やる気
支援補助金を受けて、5月下旬から新たな取り組みとなる農業塾
「小田切うんめえ塾」を立ち上げました。市街地の住民との交流を
促進し、農産物や地域の魅力を発信することを目的としています。
長野市農業委員の酒井昌之さんを塾長に、荒廃農地約37アールを
整備し、ソバや野沢菜、大根などの栽培に活用するとのことです。
初回のソバの種まきには、市街地などから定員の2倍近くに当たる
約40人が集まったそうです。

 2つの事業を紹介しましたが、轟さんの言葉をお借りすれば、住
民自治協議会という公的な組織の事業であることが、利用者にとっ
ては安心であり、信用できるのだそうです。私としては、各住民自
治協議会に一つずつ法人をつくり、「もうかる事業」を手掛けても
らいたいと思っています。住民自治協議会には、事業の規模が大き
くなればなるほど、経理などの専門知識を持った人が欠かせなくな
るでしょうが、やはり行動力あふれるリーダーが何よりも必要です。
良きリーダーとなる人を探すことが一番大変だなあと感じています。

 農業に関する元気な話題といえば、小・中学生農家民泊事業が本
年も好調です。
 この事業は、昨年度から急激に成長していて、芋井・信里・七二
会・信更・鬼無里・大岡・中条地区において実施されています。昨
年度は37校、4,139人もの小・中学生を受け入れました。本
年度はこれまで43校、6,816人と昨年度を大きく上回る人数
を受け入れています。なお、鬼無里地区では、東日本大震災で被災
した岩手県大槌町の吉里吉里(きりきり)中学校の1年生24人を
招待しました。
 中山間地域の活性化のための大きな事業として、より魅力的で、
かつ、安全な受け入れ体制を構築したいと考えています。

 遊休農地の活用や農家民泊事業といった取り組みは、地域の実情
や特性を生かし、自分たちの地域が元気になる素晴らしいものだと
思います。みんなで知恵を絞り、汗をかくことから、いろいろな可
能性が広がっていくのだと思います。小さな取り組みが、いずれは
地域色豊かな独自の事業に成長する。他の地域にはない「これこそ
自分たちの地域の誇るもの」を発信することが大事なのです。

2012年9月6日木曜日

AC長野パルセイロの頑張り


 8月が終わって、もう9月です。皆さん、お盆はどのようにお過
ごしになりましたか? 私は、秘書課が気を利かせてくれたのか日
程に少し余裕がありましたので、今年初めて飯綱の乗馬倶楽部に行
ったり、孫や家族と食事したり・・・数日の夏休みを過ごすことが
できました。

 JFL(日本フットボールリーグ)・AC長野パルセイロの快進
撃は素晴らしいですね。南長野運動公園総合競技場で開催されるホ
ームゲームには全て出掛けていますが、パルセイロが強いので、と
ても気分良く応援しています。リーグ戦では、現在トップを走って
いますし、天皇杯予選を兼ねた長野県サッカー選手権大会で優勝し、
長野県代表として天皇杯全日本サッカー選手権大会に出場を決めま
した。9月1日の1回戦では、北海道代表の札幌大学を3-0で破
り、いよいよあさって8日にJ1のコンサドーレ札幌と対戦します。

 天皇杯は、Jリーグと違って、プロ・アマチュア混合で行われる
トーナメント方式の大会ですから、負ければ終わり。甲子園球場で
行われる高校野球などと同じですが、勝ち上がっていくうちに、チ
ームがだんだん強くなって意外な成績を残すこともあるわけで、リ
ーグ戦とはかなり違うように思います。

 パルセイロにとっては、今年は残念ながらJ2への昇格はありま
せんので、目標は天皇杯で結果を残すことだと私はひそかに考えて
いました。格上のJ1、J2チームに挑戦するわけで、勝てるとは
言い切れませんが、今のパルセイロの実力ならば相手がJ1チーム
であっても絶対に善戦できると信じています。相手は勝って当たり
前ですから、きっと固くなってしまうのではないでしょうか・・・
勝機は絶対にあります。
 聞くところによると、多くのサポーターの皆さんが札幌まで応援
に駆け付けるそうです(交通費は高額になると思いますが・・・)。
こうしたサポーターの熱い思いに、選手の皆さんはぜひ応えてほし
いと思います。本当は私も札幌へ応援に行きたいのですが・・・ち
ょっと日程が取れません。インターネットの情報などを楽しみにし
ています。

 サッカーの話をしますと、スタジアムはどうなっているのかとい
うご意見が当然出てきます。新聞報道などでご存じのことと思いま
すが、一度整理しておきます。

 Jリーグでは、本年「クラブライセンス制度」なるものを発表し
ました。これは、Jリーグに昇格するために満たさせなくてはなら
ない「条件」の一つといえますが、なかなか厳しいものがあります。
 JリーグにはJ1、J2とあるのですが、その下にJFL(下部
組織ではないのですが、Jリーグへの昇格はJFLからですから、
まあ下部組織と言っても間違いないでしょう)があって、現在パル
セイロはこのJFLに所属しています。JFLは、一応アマチュア
リーグの扱いですが、この中からプロであるJ2に昇格するために
は、クラブライセンスを含め、いろいろな条件があります。私の知
っている範囲で書いてみますと、
○JFLで2位以上の成績(優勝チームは自動昇格、2位チームは
J2の下位チームとの入れ替え戦)
○チーム名に企業名が入らないこと(パルセイロは違いますが、J
FLには結構あります。Jリーグ昇格を目指すのではなく、企業の
宣伝を兼ねてJFLで頑張るということのようです。したがって、
前述の2位以上の成績を収めたとしても昇格できません)
○ホームゲームの1試合平均入場者数3千人以上
○スタジアムは、1万人以上(J1の場合は1万5千人以上)を収

○スタジアムの観客席は、3分の1以上が屋根で覆われていること
(観客の立場に立った整備が求められる)
○チーム経営が黒字でなくてはならない(経営がしっかりしていな
くてはならない)

 以上、主なものを6点挙げてみましたが、その他にも練習場に関
する条件などがいろいろとあります。パルセイロにとって、特にハ
ードルの高い問題は、スタジアムと入場者数の2点だと思います。

 スタジアムについては、南長野運動公園総合球技場を改修する予
定ですが、試算では設計や駐車場整備などを含め80億円掛かり、
民間の力だけでは難しいため、行政が主体となり民間にもお手伝い
をしてもらいながら整備を進めていきたいと考えています。

 入場者数の3千人というのはJ2に上がるための最低限の人数で、
この数字に満足していたらチーム経営は成り立ちません。J2でチ
ームを維持していくためには、年間5億円程度は掛かるとのことで
すし、J1を目指し強いチームにするためには、選手の補強などに
さらなる経費が必要になるのでしょう。
 収入の一番大切な部分は、入場料収入です。スポンサー収入やグ
ッズの売り上げなどもチームの安定経営には大切ですが、一番は観
客の皆さんがお支払いいただくチケット代金なのです。

 チームの安定した運営・経営のためには、(株)長野パルセイロ
・アスレチッククラブの努力はもとより、サポーターを含めた市民
の皆さんの協力が不可欠です。「パルセイロは、私たち長野市民の
チーム」を合言葉に、チームとサポーター、そして市民が一体とな
った大きなムーブメントになることが大切です。そしてそれは、安
定した入場料収入にもつながります。スタジアムの改修については、
市としてスピード感を持って取り組みますので、長野市の元気をさ
らにパワーアップさせるためにも、みんなで一丸となってパルセイ
ロを盛り上げていきましょう。

2012年8月30日木曜日

都市の目標・都市の夢


 長野市は増加著しいさまざまな行政課題に的確かつ迅速に対応す
るために、この4月から副市長2人制を敷くこととなり、その一人
として選任されました。
長野市の発展のため、精励してまいりますのでよろしくお願いしま
す。

 私は1954(昭和29)年1月生まれで現在58歳です。生ま
れた家のあった場所は、長野駅前にある現在の南千歳公園の辺りで
しょうか。当時はまさに映画「ALWAYS 三丁目の夕日」に出
てくるような雰囲気の街でしたが、その後の土地区画整理事業によ
り、随分と近代的な街に変貌を遂げたと感じています。現在はホク
ト文化ホールの近くで、妻と愛犬1匹と暮らしています。

 さて、思い起こしますと長野市役所に入庁して以来、さまざまな
経験をする中で、私に大きな影響を与えた事業に1998(平成1
0)年の長野冬季オリンピック大会の開催があります。
月日のたつのは誠に早いもので、大会の開催がイギリス・バーミン
ガムのIOC(国際オリンピック委員会)総会で決定してから20
年以上が経過し、大会そのものが終了してから、今年で14年とな
ります。
 大会の招致活動をしていた当時は、今とは異なり、IOC委員が
立候補都市を訪問することは比較的自由でした(アメリカ・ソルト
レークシティーのオリンピック招致に絡んだ買収事件などにより、
現在ではIOC委員の立候補都市訪問が禁止されるなど、委員の活
動は大変厳しく制限されています)。
 そのような中、市内の幼稚園・保育園の園児の皆さんや、「炎」
という文字を背中に染め抜いた法被を着た長野青年会議所の方々を
はじめとする市民の皆さんが、長野市を訪問した委員をにぎやかに
出迎えてくださった姿は、今でも強く印象に残っています。
 長野市民がオリンピック招致という具体的で大きな目標を共有し、
外に目を向けていた時代でした。市民の皆さんと共有できる価値の
ある目標を設定し、それに挑戦していくことは、都市に活気と一体
感とをもたらすということを実感できた機会でもありました。
 昨今は、2008(平成20)年のリーマンショックに続き、昨
年3月11日の東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事
故、欧州債務危機など、暗い話題が多く、どうしても内向き思考に
なりがちなことは否めませんが、逆にこういう混沌(こんとん)と
した時代であるからこそ、都市の明確な目標や夢を語り、挑んでい
くことの大切さをあらためて感じています。

 では、都市としての目標・夢とは具体的にはどんなイメージでし
ょうか。
 例えば、2015(平成27)年春には新幹線延伸により、長野
市と約1時間で結ばれる予定の金沢市。加賀百万石の城下町として
有名ですが、江戸時代初期から400年、金沢市に住んできた人々
の積み重ねてきたたゆまぬ努力と研鑽(けんさん)の結果、現在で
も「アートフル(降る、full)金沢」として、文化を軸とした
街づくりを続けていらっしゃいます。NHK大河ドラマ「利家とま
つ~加賀百万石物語~」の中でも、加賀藩の藩祖・前田利家公の正
室である「おまつさん」が、「戦では負けたけれども、金沢を文化
で日本一の街にしましょう」と言うシーンのあったことを記憶して
います。
 金沢市は、街の風情を守るために日本で最初に景観条例を制定さ
れ、城下町文化を保護・振興するために、芸妓(げいぎ)さんなど
の育成によって金沢の伝統芸能を普及されたり、職人大学校を創設
されるなど、文字通り市民の皆さんとの協働で積極的に文化行政を
展開されています。
 今後も文化を守り育てることを軸に街づくりに挑戦され、さらに
それを観光・工芸などの産業につなげていく取り組みを展開される
のだろうと思います。この姿勢こそが人々を引き付ける街の魅力と
なっているのではないかと考えています。
 なお、長野市は金沢市と2007(平成19)年、市民同士の交
流を促進する目的で「集客プロモーションパートナー都市協定」を
締結しています。長野市の皆さんも、ぜひ、「文化」というコンセ
プトで街づくりをされている金沢市の雰囲気を味わっていただけれ
ばと思います。
 私も先日、就任のあいさつを兼ねて、金沢市、富山市、上越市の
各市役所、商工会議所、観光協会を訪ね、観光連携を中心に平成2
7年春の新幹線金沢延伸を見据えての意見交換をしてまいりました。
機会がありましたら、このときの話を書きたいと思います。

 再び話題を「都市としての目標・夢」に戻します。
 昨年11月、大震災後の日本を訪問されたブータン国王ご夫妻の
ことをご記憶の方も多いと思います。その際に、国民の心理的幸福
などを指標とする「国民総幸福量(GNH)」という考え方が話題
になりました。ブータンでは国民へのアンケートに約9割の人々が
「幸福を感じている」と答えており、この結果は驚きです。
国民総生産(GNP)あるいは国内総生産(GDP)に代表される
経済的発展を求めるのではなく、国民が幸せを実感できることを全
てに優先させていくという国づくり。こういう国なら行ってみたい、
さらには暮らしてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。
 幸福大国・ブータンというコンセプトは、インドと中国とに挟ま
れた小国として、生き残りを懸けて考え抜いた、極めて戦略的なも
ののようにも感じています。

 このような50年、100年の長期で取り組んでいく都市として
の目標、あるいは志といった方がふさわしい価値観をどう設定して
いくか。
 長い時間軸を前提に、長野市が持つ都市としての魅力や特性をさ
らに磨き上げることのできる目標・志とは何かについて考えてみた
いと思っています。

 ところで、今回初めてメールマガジンなるものを書きました。こ
れを毎週書いてきた鷲澤市長にはあらためて脱帽です。副市長のメ
ールマガジン配信は、黒田副市長と月ごとの交代となっています。
従って、2カ月に一度、私に書くチャンス(!?)が巡ってきます
ので、本日はこのくらいにしておきます。

 これからも、よろしくお願いします。

2012年8月23日木曜日

ようこそ長野市へ~全国のアスリートの皆さま


 学校が夏休みだからということもあるのでしょう。この時期は、
小学生・中学生・高校生が参加するスポーツ大会が盛んです。長野
市を会場とした全国大会も開催され、私も開催地市長として開会式
などに駆け付けています。

 7月28日・29日、「文部科学大臣杯第55回小学生・中学生
全国空手道選手権大会」がエムウェーブで開催され、開会式に参加
しました。会場に入ると、あの広いエムウェーブのアリーナが、選
手や競技関係者などでほぼ埋め尽くされていて、大会の規模の大き
さに驚きました。まだあどけない顔をした小学校低学年から、高校
生かと思うほど大きな体格の中学生まで、選手だけで約3千人とい
うことですから驚きです。スタンドを見渡すと、保護者や応援団の
皆さんでほぼ満席。大きな横断幕も数え切れないほど掲げられてい
て、その熱気に圧倒されてしまいました。長野市からも団体戦に
16組、個人戦に72人が参加されました。優秀な成績を収められ、
先日、出場結果の報告にお越しいただきました。

 高校生のスポーツ全国大会といえばインターハイ(全国高等学校
総合体育大会)です。今年は、新潟、富山、石川、福井、長野の北
信越5県で「北信越かがやき総体」として、7月28日から8月
20日にかけて開催されました。そのうち、相撲と卓球の競技は長
野市を会場として開催されました。

 相撲競技では、エムウェーブのアリーナ中央に土俵が作られまし
た。8月5日、閉会式に出席しましたが、試合の進行が遅れていた
こともあり、団体戦準々決勝から観戦することができました。大相
撲は何度か見ていますが、高校生の相撲を見るのは初めてでした。
仕切りの際の緊迫感、ぶつかり合ったときの激しい音、大きな声援。
そして土俵に上がる前の選手の気合が入った掛け声がアリーナ中に
響き渡り、会場は熱気に包まれていました。自分のため、チームの
ため、母校のために戦う選手たちに私も見入ってしまい、大変感動
を覚えました。試合に負けて、大きな体を震わせて泣いている選手
の姿が痛々しかったです。よくプロ野球よりも高校野球の方が感動
すると言う人がいますが・・・正々堂々、ここ一番の大勝負に青春
の全てを懸ける高校生の真剣な姿勢がそう思わせるのでしょう。

 長野市からは団体戦に更級農業高校が出場し、予選を勝ち上がり
決勝トーナメントに進出しましたが、残念ながら1回戦敗退でした。
この悔しさ、経験をバネにしてこれからも頑張ってほしいと思いま
す。

 ちなみに、節電のために、私は積極的にクールビズを心掛けてい
ますが、相撲は国技ということもあり、開閉会式にはスーツにネク
タイ着用が基本とのことでした。また、試合に勝って、思わずガッ
ツポーズをする選手がいましたが、これも相撲道に反するというこ
とでしょうか、注意を受ける場面がありました。

 審判員の指示に従い土俵の砂を掃き整えていたのは、長野市少年
相撲クラブの中学生で、受付や会場案内などを担当していたのは市
立長野高校をはじめとする市内高校のバレーボール部やバスケット
ボール部などの皆さんでした。こうしたボランティアの皆さんの協
力もあり、大会は成功裏に幕を閉じました。

 卓球競技は、8月1日から5日までホワイトリングで開催され、
約千人の選手が参加しました。長野市からは、長野商業高校の男子
が出場。団体戦では2年連続での出場になりました。大会前に出場
報告に来ていただきましたが、トップレベルの成績を継続して収め
ることは、大変素晴らしいことで、地元の強みを生かしてぜひ頑張
ってほしいと激励しました。結果は、ダブルスでベスト16でした。
ベスト8が目標だったそうですが、素晴らしい成績です。今後さら
に飛躍してほしいと思います。
 
 長野市が会場ではありませんでしたが、陸上競技では女子400
メートルハードルに出場した県立長野高校の瀧澤彩さんが県・大会
新記録で見事2連覇を果たしました。昨年、かじとり通信でも世界
ユース陸上競技選手権大会に出場した瀧澤さんを紹介させていただ
きました。優勝の知らせを聞いて、世界ユース後も順調に成長して
いるんだなあと思いましたが、新聞記事によると、故障に苦しみ、
フォーム改造に取り組むなど、平坦な道のりではなかったようです。
今回の優勝は、とても意味のあるものだったに違いありません。大
きく成長されることを期待します。

 スポーツは青少年の健全な心と体を鍛え、スポーツを通して学ん
だことは将来の人生の糧となります。また、今回ご紹介した大会だ
けでも参加選手は4千人を超え、競技関係者や保護者、応援の人も
含めると、長野市を訪れた人は相当数に上ります。宿泊も伴います
から、経済的な効果は絶大です。株式会社エムウェーブでは、こう
した大きな大会を積極的に誘致し、ながの観光コンベンションビュ
ーローや長野市開発公社と連携した取り組みも行っています。世界
に誇るオリンピック施設がある長野市は、こうした全国規模の大会
を開催するのにうってつけの場所です。この強みを今後も最大限に
生かしていきたいと考えています。
 選手の皆さんが、長野市で思い出をつくり、またいつか「昔、こ
の会場で試合をやったなあ」と懐かしさを感じながら、長野市を訪
れてもらえればうれしいです。

2012年8月16日木曜日

戸隠キャンプ場と戸隠牧場がリニューアルオープン


 パワースポットとして一躍注目度が高まった戸隠高原には、今年
も全国から大勢の皆さんがお越しになっています。一昨年、県を主
体とする行政とJR各社、そして観光事業者が展開した「信州デス
ティネーションキャンペーン」では、戸隠神社奥社の杉並木を女優
の吉永小百合さんが歩くCMを放送したこともあり、その効果は絶
大なものがありました。昨年、今年も効果は継続しているようです。

 平成21年度から、国、県の財政的支援を得て、戸隠キャンプ場
と戸隠牧場の再整備事業を進めてきました。キャンプ場では老朽化
した施設を更新し、安全性と快適性を高めるとともに、キャンプサ
イトを拡張し、戸隠牧場を含むエリア全体の魅力を高めることを目
指しました。このたび3年にわたる工事が全て終了し、夏休みでキ
ャンプ場が最盛期に入る7月28日に、地元や関係機関などの多く
の皆さんにお集まりいただき、竣工(しゅんこう)式を開催しまし
た。私も子どものころからお世話になっているキャンプ場ですので、
見事に生まれ変わった姿を見て、本当にうれしかったです。

 遺憾なこととして、建設中の新管理棟において、これまで数回に
わたり不審な火災があり、地元の皆さんをはじめ、多くの市民の皆
さんにご心配をお掛けしました。工事が終わり、市が建物の引き渡
しを受けましたので、今後は施設を管理する市開発公社と協力して
厳重な警備態勢を取っていきます。ご安心ください。

 キャンプ場の再整備事業では、オートキャンプ区画サイト50区
画、トレーラーサイト8区画、ログキャビン33棟、トイレ、シャ
ワー棟それぞれ2棟を新設するなどしました。総面積も12.7ヘ
クタールから22.5ヘクタールにほぼ倍増し、日本最大級のキャ
ンプ場として生まれ変わりました。
 また、予約することなく好きな場所にテントを張ることができる
広大なオートキャンプエリア(350台以上の駐車が可能)があり、
これも大きな売りとなっています。

 隣接する戸隠牧場も視察しました。ゴルフ場から頂いたという、
ちょっと古い電動カートに乗って牧場の奥へ案内してもらい、行き
着いた場所は黒姫山の麓に広がる牧草地のど真ん中。その美しさと
雄大さに驚きました。牛や馬がのんびり草をはんだり、寝転がった
り、動き回ったり・・・。きれいでおいしい空気を体いっぱい吸い
ながら散策できる、素晴らしい場所です。
 
 おかげさまで、お盆のこの時期、キャンプ場は予約でほぼいっぱ
いだそうです。夏の楽しい思い出をたくさんつくってもらいたいと
思います。

 戸隠連峰の足元に位置する雄大なロケーションにあるキャンプ場
や牧場に多くの皆さんにお越しいただき、ここをベースにして戸隠
の自然豊かな風土や景観に接し、戸隠の魅力を堪能してほしいと思
います。
 そして、今回の整備により、戸隠神社の奥社に代表されるような
霊験あらたかで厳かなイメージや魅力に加え、若者や家族が集う、
にぎやかで活気あふれるパワーにより、戸隠がますます発展する予
感を強く持ちました。

 戸隠高原のお隣、飯綱高原では、7月21日に「飯綱ダービー」
が開催されました。飯綱高原乗馬倶楽部のメーン行事で、小さなお
子さんから年配の人まで、大勢の皆さんが参加される、なかなか素
晴らしい乗馬の競技会です。私もジムカーナという競技に出場する
ように誘われているのですが・・・いつのことになるのやら、分か
りません。
 9月8日には最長で80キロメートルもの距離を走るエンデュラ
ンスという競技も開催され、全国から馬とそのオーナーが集まるそ
うです。いずれは、100キロメートルの競技もやりたいと、クラ
ブの皆さんは頑張っています。乗馬も飯綱高原の有力な観光資源に
なればいいなあと期待しています。

 今、長野市では、観光資源の有効活用の一つとして、飯綱高原、
戸隠、鬼無里の3地域が連携し、お互いの魅力を高め合う「いいと
き(飯・戸・鬼)構想」を進めています。鬼無里には、本州随一の
ミズバショウの群生地として有名な奥裾花自然園があります。また
「伝説の里」といわれるほどたくさんの言い伝えが残る地域で、約
1400年前の白鳳年間に、天武天皇の遷都計画により鬼門の守護
神として創設されたという白髯(しらひげ)神社や、遷都計画を妨
げるために鬼が一晩で築き上げたといわれている一夜山、さらに鬼
女紅葉伝説にまつわる松巌寺などの史跡があります。

 それぞれの地域が持つ魅力を最大限に生かし、それらを発信し結
び付けることにより、新たな観光振興を展開していきたいと日々考
えています。

2012年8月9日木曜日

がんばれニッポン~ロンドンオリンピック開催中


 スポーツの祭典「ロンドンオリンピック」が真っ盛りです。金メ
ダルは幾つ取れるのか・・・。取れそうで取れない、取れなそうで
も取れる。いろいろでしょうね。

 大会前の7月10日、シンクロナイズドスイミングのチーム競技
に出場する長野市出身の箱山愛香(あいか)選手が、コーチの内山
まゆみさんと共に出場報告に来てくれました。
 箱山選手は、市立三陽中学校、長野日本大学高等学校を卒業され、
現在、日本体育大学3年生です。176センチメートルという長身
(シンクロ界のスカイツリーと呼ばれているそうです)を生かした、
海外選手にも負けないダイナミックな演技が持ち味で、水泳競技と
しては県内で初めてオリンピックに出場します。シンクロで日本代
表に選ばれるのは、これまで練習施設に恵まれた東京や大阪など大
都市圏出身の選手が中心で、地方からオリンピック出場を果たすの
は大変な快挙といわれています。箱山さんは、長野冬季オリンピッ
クではアイスホッケー会場として使われ、現在は屋内プールとして
人気のアクアウイングで練習を積み重ねてこられたそうです。
 また、コーチの内田さんも長野市出身で、高校まで長野を代表す
る選手として活躍され、現在は長野商工会議所に勤務しながら全日
本チームのコーチを務めています。箱山選手を小さいころから指導
されていて、まさに長野市の師弟コンビがオリンピックに出場する
わけです。
 試合は、日本時間の本日9日と明日10日の午後11時から行わ
れます。箱山選手をみんなで応援しましょう。

 長野市出身ではありませんが、長野市に関係のある選手もご紹介
します。総合馬術の佐藤賢希(けんき)選手は、小川村の出身で、
ご実家は代々続く曹洞宗のお寺です。7歳で出家し、長野日本大学
高等学校を卒業され、中条地区にあるお寺の住職を務められている
「僧侶騎手」としても話題を集めています。
 試合は、残念ながらまさかの落馬で失権(走行中止)。人馬一体
と言いますが、人間と馬の連携競技ですから、やはり難しいのでし
ょう。

 もう1人、カヌーの矢澤一輝(かずき)選手は、長野市にある山
田記念朝日病院に勤務され、北京オリンピックに続き2大会連続で
の出場です(出身は飯田市です)。スラローム男子カヤックシング
ルで決勝戦まで進み、歴代の日本勢では最高位となる9位に入りま
した。今後が期待されます。

 これまでの大会を振り返ると、体操男子個人総合で内村航平選手
が金メダル、競泳400メートルメドレーリレーで男子が銀メダル、
女子が銅メダル、バドミントン女子ダブルスが銀メダル、卓球女子
団体で銀メダルを獲得するなどの朗報もあれば、お家芸である柔道
では、男子がついに金メダルを取れず(残念でした・・・)、競泳
男子平泳ぎでも北島康介選手の3連覇の夢が絶たれるといったこと
もありました。また、サッカー女子は、準々決勝の好条件を得るた
め、1次リーグ最終戦を引き分けに持ち込むなど、そこにはさまざ
まなドラマがあるのでしょう。

 8日現在で日本のメダル獲得数は、金2個、銀12個、銅13個
です。金メダルまでもう一歩のところで勝ち切れない弱さが指摘さ
れる半面、銀と銅メダルはこれまでを上回る勢いだそうで、競技の
裾野が広がり、競技レベルが確実に上がっているといえるでしょう。
スポーツ界が盛り上がり、スポーツの話題が増えることは、素晴ら
しいことだと思います。

 いよいよロンドンオリンピックも終盤戦です。なでしこジャパン
が金メダルに王手をかけています。サッカー男子にも、なんとして
でも銅メダルを取ってほしい。バレーボール女子もメダル圏内で、
楽しみがたくさんあります。4年に一度の大舞台で繰り広げられる
感動のシーンに期待しています。

 スポーツの話題といえば、去る7月23日に開催されたJリーグ
理事会で、AC長野パルセイロのJリーグ準加盟が承認されました。
本年2月、いったん「審査継続」とされていたもので、約5カ月を
経て今回承認となりました。J2昇格の条件の1つ、Jリーグの基
準を満たすスタジアムの確保については、現在、南長野運動公園総
合球技場の改修に向けて、基本プランの検討業務を進めていて、8
月中には概要がまとまる予定です。   
 今後、できるだけ早く、スタジアム改修に要する事業費やその財
源、全体スケジュールなどを詰め、早期に実施設計に着手できるよ
う準備していきたいと考えています。

 そして現在、AC長野パルセイロはリーグ首位を快走しています。
6月下旬の試合から勝ち続け、7連勝を懸けて7月28日にアウェ
ーでホンダロックSCと対戦しました。結果は、残念ながら0-1
で負けてしまい、8月4日のツエーゲン金沢とのアウェー戦では2
-2の引き分けでしたが、それでも勝ち点45でリーグトップは変
わらずです。これからも勝ちを積み重ね、リーグ戦での優勝はもち
ろんのこと、パルセイロが力のあることを証明するためにも、Jリ
ーグのチームが出場する天皇杯で、今年はぜひ勝ち上がってほしい
と思います。スタジアムの改修やホームゲーム1試合平均観客数
3,000人の確保などJリーグ昇格には解決しなければならない
課題があるため、まだ昇格はできませんが、多くの皆さんにホーム
ゲームが行われる南長野運動公園総合球技場に足を運んでいただき、
パルセイロのJ2昇格に向けた盛り上がりを更に大きくしてほしい
と思います。私もホームゲームは全て応援に駆け付けています。

2012年8月2日木曜日

暑い夏~熱い祭りの季節です


 九州北部で、「これまでに経験したことのないような大雨」が降
り、甚大な被害が続いたと思いましたら、長野市(長野地方気象台
のある箱清水での観測)でも7月20日の夕方に3時間の降水量が
過去最高の73mmを記録する大雨が降りました。市街地である古牧
地区の一部に、長野市では今年初めての避難勧告を出したほどでし
た。幸いにも人的被害はありませんでしたが、床上浸水11棟、床
下浸水107棟の被害があり、4世帯6人の皆さんが近くの中学校
に避難されました。被害に遭われた皆さんにお見舞い申し上げると
ともに、出動いただいた消防団員や関係の皆さんに深く感謝します。
やはり気象が変化しているのでしょうか。地球温暖化が心配です。
さらに、30度を超える暑い日が続いていますので熱中症も心配で
す。自分は大丈夫と油断するなかれ。早め早めの水分補給など十分
注意し、この夏を乗り切りましょう。

 そんな暑い夏、今年も各地で夏祭りが開催されていて、長野市は
夏祭りシーズン真っ盛りです。私が出席させていただいた祭り、あ
るいは参加予定の祭りなどを紹介します。

 7月15日、中心市街地の各町の屋台が長野駅から善光寺までの
善光寺表参道などを練り歩く「ながの祇園祭 御祭礼屋台巡行」に
参加しました。かつては日本三大祇園祭の一つとも称された祭りで
したが、最近は善光寺御開帳の年にのみ行われていました。
2009(平成21)年の御開帳から3年ぶりに開催された今年は、
権堂町、南石堂町、新田町、元善町の屋台が引き出され、北石堂町
の置き屋台とともに、古式豊かに長野のまちを彩りました。絢爛
(けんらん)豪華な屋台行列とともに、おはやしに合わせた踊りや
勇壮な獅子舞なども披露され、門前町長野の良さを実感しました。
お先乗りを務めた小学校6年生の倉石佳長君も立派でした。権堂町
ほか年番町の皆さんは、来年以降も毎年開催したいと張り切ってい
ます。

 7月20日から8月7日までは、権堂アーケードで「長野七夕ま
つり」が開催されています。毎年行われている恒例行事ですが、今
年は市内の若手芸術家が七夕飾りの制作に参加するなど、新しい趣
向を凝らしているようです。皆さんも浴衣を着て、楽しみに出掛け
てみてはいかがでしょうか。

 7月28日の夕方から夜にかけて、「若穂ふれあい踊り」「篠ノ
井合戦まつり」そして「大豆島甚句まつり」に参加しました。私に
とって毎年恒例となった「夏祭り3連チャン」です。
 「若穂ふれあい踊り」は、湯島天満宮とその周辺道路で盛大に開
催され、毎年参加者が増えています。祭りでは、若穂中学校陸上競
技部や若穂ジュニアバレーボールクラブといったスポーツの全国大
会に出場した(出場する)若穂地区出身の選手の皆さんが表彰され、
素晴らしいことだと思いました。
 次は「篠ノ井合戦まつり」です。翌日まで続く「しののい祇園祭」
とともに開催される祭りで、夏の一大イベントとして定着しており、
踊り手の皆さんも、観客の皆さんも、毎年楽しみにしています。
「若穂ふれあい踊り」と「篠ノ井合戦まつり」は、長野びんずると
ともに1971(昭和46)年に始まり、今年で42回を数え、大
変な盛り上がりでした。
 最後に訪れたのは「大豆島甚句まつり」です。かつては善光寺平
一円でうたわれていた甚句ですが、現在甚句が残っているのは一部
の地区で、その中で大豆島地区は江戸時代の歌詞が完全な形でうた
い継がれており、民俗学的にも貴重であることから、1980(昭
和55)年に大豆島甚句を市の無形文化財に指定しました。
 この指定を記念して始められた「大豆島甚句まつり」ですが、今
年で33回を数えています。地区内の狭い道路から広い大豆島公園
に会場が移されて4回目の開催ですが、甚句踊りを継承してこられ
た皆さんに、心から敬意を表します。
 
 明日8月3日と明後日4日には、いよいよ「長野びんずる」が開
催されます。市内最大の祭りと言ってよいでしょう。市民総参加・
総和楽を掛け声に1971(昭和46)年に初めて開催され、その
時に初めて中央通りが歩行者天国になりました。私も祭りの創設に
携わったため、当時のことを懐かしく思い出しています。

 8月5日は「豊野ヨイショコまつり・サマーフェスティバル・納
涼大煙火大会」です。合併してから知った祭りですが、年々にぎや
かになっているように感じています。

 8月10日は「飯綱火まつり」で、今年で45回目を迎えます。
始めたころには主催者の皆さんが大変苦労されたようですが、大座
法師池の水面に華やかな花火が映えて、年を追うごとに素晴らしい
祭りになってきています。なお、大座法師池では、昨年、池の水を
全て抜いて外来魚のブラックバスを退治し、伝統のワカサギ釣りの
復活を目指しています。

 8月15日は、信州新町地区の「ろうかく湖とうろう流しと花火
大会」です。昨年初めて参加させていただきましたが、花火の美し
さはもちろんのこと、信州新町とうろうの会の皆さんが中心になっ
て一つ一つ手作りされた約千基のとうろうが、水の上にただ浮かん
でいるのではなく、文字通りゆったりと流れていく幻想的な光景は、
県内有数の美しさです。本当に奇麗で素晴らしいですよ。

 このほかにも、私の知らない祭りも含めて各地にはたくさんの祭
りがありそうです。
 大小の違いはあっても、祭りは地域に活力を与え、地域の連帯感
を深めます。皆さんも、ご家族、友人と一緒に、ぜひ夏祭りにお出
掛けください。

2012年7月26日木曜日

県都長野市の副市長として


 本年4月1日から、長野市の副市長を務めています黒田和彦です。
小学生の頃から、音楽と国語(特に作文)が苦手でした。長じて、
音楽嫌いはカラオケ好きに変わりましたが、作文嫌いは相変わらず
です。メールマガジンの執筆を通じて好きになれば良いのですが・
・・。努力していきます。

 さて、今の長野市は、平成27年の「新幹線金沢延伸」と「善光
寺御開帳」に向けて勢いよく、前に向かって動いています。その方
向性を見誤らず、また、その動きを加速させるためにも、共に就任
した樋口博副市長と協力し、しっかりと市政の一翼を担っていきま
す。

 私が長野市に期待しているのは、「気は優しくて力持ちな都市」
です。
 全ての市民が安心して暮らすことができる、若者からも、高齢者
からも選ばれる「気が優しい」まちと、地域にたくましい活力があ
る「力持ち」なまち。この2つを目指していくことで、長野市の将
来の姿が見えてくると考えています。「地域力」とは、この2つを
バランスよく両立させてこそ生まれます。また、行政の目的は、こ
の2つに収れんすると言ってよいでしょう。しかし、他の都市と同
じことをやっていたのでは、いわゆる「金太郎あめ」になってしま
い、魅力も特色も生まれません。長野市独自の知恵と工夫を、市民
の皆さんと共に考えていくことが必要です。

 安心して暮らすことができる、誰からも選ばれるまちという点で、
公共交通の利便性向上は欠くことのできない課題の1つです。平成
24年3月末をもって廃止となった長野電鉄屋代線は、代替バス運
行への順調な移行ができたと感じています。
 一方、廃止に伴う諸課題のほか、新交通システムの導入、新幹線
並行在来線、高齢者の買い物や通院など高齢社会に欠かせないバス
路線を含めた地域公共交通の在り方など、課題は多くあります。
 いずれの課題も、すでに検討・研究は始めていますが、現在、長
野県で策定している総合交通ビジョンとの整合や連携に配慮しなが
ら、喫緊に取り組むべき課題として考えています。

 また、長野県では現在、県短期大学を4年制大学にすることを目
指して検討が行われています。若者から選ばれるまちを目指すため
に、まずは若者に住んでもらい、愛着を持ってもらう。新しい長野
市の顔として、また活力の源づくりとしての意味合いが大きい出来
事であると注視しているところです。

 次に、地域にたくましい活力があるという点です。冒頭で述べま
したように、平成27年という年は、長野市が「変わる」一つのタ
ーニングポイントになります。本堂が国宝に指定されている善光寺
の御開帳が開催されるため、それに向けて長野駅から中央通りを経
て善光寺に通ずる善光寺表参道の整備が重要になります。新幹線の
金沢延伸により、新たなお客さまを迎えるJR長野駅ビルと長野駅
善光寺口駅前広場は、JR東日本や地域の皆さんと協力して整備を
進めていかなくてはなりません。また、中央通りの歩行者優先道路
化も着実に進め、再び歩きたくなるまちを目指します。もちろん、
このようなハード面の整備だけでなく、商店街をはじめ関係する皆
さんの「おもてなしの心」など、ソフト面での取り組みも必要なこ
とは言うまでもありません。

 金沢まで延伸する新幹線は、首都圏から、北陸から、さらには海
外からも「人」を運んできます。故に、それらの人に長野市に来て
いただくための動機付けが課題になります。そこで、この節目をま
ちづくりの大きなターニングポイントとして捉え、先ほど述べた善
光寺表参道の整備に加えて、これまで盛んに議論されてきている権
堂の活性化についても進めていきたいと考えています。さらに、長
野駅東口については、広域観光の拠点として、大型バス交通網のハ
ブ機能を持たせることもテーマです。そして、地域ぐるみでお客さ
まをお迎えすることが期待されます。

 また、サッカーでは、AC長野パルセイロがJFL(日本フット
ボールリーグ)の上位で活躍しています。そのホームグラウンドで
ある南長野運動公園総合球技場の整備も大変重要です。スポーツに
は地域を一体化させる力があります。戦後の占領軍による、日本軟
化政策とされる「3S政策」の一翼である「Sport」が、皮肉
にも日本の地域の一体性を育てる結果となっています。

 活力を生むエンジンは、観光だけではありません。長野冬季オリ
ンピック後に減少したビジネスオフィスを、もう一度長野市に呼び
込むことも必要です。長野市は、新幹線の延伸により金沢とは1時
間強で結ばれます。また、首都圏とはすでに1時間半ほどで結ばれ
ており、新潟とも高速道路で短時間の距離にあるため、まさに高速
交通網のハブ的な位置にあるといえます。このことはビジネス面に
とっても魅力です。このメリットをオフィスや工場の立地に生かす
ことが、「力持ち」の長野市をつくる大きな柱になります。

 この仕事は、派手さがない、効果が表れるまでに時間がかかる地
道なものですが、将来にわたって地域力を高めていくために力を尽
くしたいと考えています。そして、豊かで質の高い人生を送れる元
気なまちとして、全ての年齢層から選ばれるまちを目指していきま
す。

2012年7月19日木曜日

副市長メールマガジンを始めます


 4月から、副市長二人制を採用したことは、既に多くの皆さんが
ご存じのことでしょう。
 4カ月目に入っていますが、今のところ評判は上々のようです。
そこで私と副市長の3人で話し合って、長野市メールマガジンの中
で副市長メールマガジンを始めることにしました。
 どんな形で配信するか意見交換をした結果、当面は、2人の副市
長が月替わりで執筆し、毎月最終木曜日に交互に配信することにな
りました。まずは7月26日(木)に黒田副市長、続いて8月30
日(木)に樋口副市長のメールマガジンを配信する予定です。従っ
て、毎月最終木曜日は、私のメールマガジン「かじとり通信」はお
休みさせていただきます。
 副市長メールマガジンを増やしていくかどうかは、スタートして
から決めたいと思っていますが、少なくても毎月1回は配信したい
と考えています。

 もう一つ、これは私の宣言ですが、「市長のメールマガジンは、
どうも長くていけない」という声にお応えして、これからは従来の
半分以下の長さにします。
 私の性格のせいか、どうも説明が多くなり過ぎるようです。メー
ルマガジンを始めた当時は、小泉純一郎元首相のメールマガジンが
話題になっていたころで、小泉元首相の「ワンフレーズ・ポリティ
クス」が理想なのですが、あれは頭が良くないとできないですね。
ワンフレーズで言いたいことを表し、それが相手に伝わらないとい
けないわけですから、凡人には難しい・・・。どうしても、説明調
になってしまうのです。ともあれ、短い文章にするように訓練をし
ます。

 話は変わりますが、先月の6月市議会定例会で、「国旗と市旗が、
各支所に掲揚されているか」とのご質問がありました。調べたとこ
ろ、そもそも掲揚台のない支所がありました。うかつでした。そこ
で直ちに、国旗と市旗を掲揚する場を設けました。ちなみに市長室
には、今年2月から掲揚しています。その他の場所についても、適
宜考えていく予定です。
 また、小学校で国歌、県歌、市歌を教えているかどうかを教育委
員会に確認したいと思っています。

 また、少し前から検討していることですが、市職員が消防団活動
を経験することを義務化したい。義務化とまではいかなくても、研
修として一定期間参加させることとか、勤務評定に反映させること
ができないかと考えています。消防団員は崇高なボランティア精神
に基づいて、なりわいを持つ傍ら、住民の生命・財産を守る使命が
あり、市職員は必ず経験すべきだと考えています。一定の年齢以上
の職員は免除するとして、市職員である以上は、最低1年間は経験
すべきだと考えています。

 今回は早速メールマガジンを短くしてみました。これまでは、私
の考え、市政の近況、そして市内各地の出来事などを皆さんにしっ
かりお伝えしたいと思うあまり、それなりに読み応えのあるメール
マガジンになっていたと思います。今回執筆してみて、ちょっと物
足りない気もしますが、忙しい皆さんに読んでいただくには、ちょ
うど良い長さなのではないかとも思っています。
 簡潔で、そして分かりやすいメールマガジンとなるよう頑張りま
す。

2012年7月12日木曜日

三たび中谷巌さんに学ぶ~近代人が忘れた「贈与の精神」


 前回のかじとり通信は、「山本七平さんに学ぶ」でしたが、今回
は「中谷巌さんに学ぶ」です。中谷さんの本の示唆に富んだ考えは、
これまでもかじとり通信で紹介していますし、中谷さんの本を読む
たびに、「なるほど」とうなずいてしまうことが多いのです。
 今回紹介するのは、「資本主義以後の世界」(徳間書店)の一文
です。本年3月15日付けのかじとり通信でも触れましたが、今回
はもう少し踏み込んで紹介したいと思います。

 「われわれはどうやら『贈与』の精神を忘れていたらしい。われ
われの日常生活はあまりにも『交換』という考え方に偏っていた。
いや、『汚染』されていたといったほうがよいかもしれない。『交
換』には必ず見返りが必要である。なにかをしてもらったならば、
それと等価の交換物で返す。これが(略)近代社会の常識である。
(略)
 市場における取引というのはそのような交換の思想の上に成り立
っているのだ。実際、品物を受け取って代金を支払わない人は罪人
になる。(略)
 歴史を振り返るならば、人類は『交換』に加えて『贈与』という
行為を取り入れることで人間同士の結びつきを確認し、『社会』を
形成していたのである。功利主義的な『交換』だけでは、人間が互
いに依存し合うことができる『社会』が形成されず、人間はアトム
化し、孤立してしまうからである。(略)
 近代以前の人間は、人間が一人では生きていけないことをよく知
っていた。だから、『贈与』という行為を通じて人と人とのつなが
りを生み出す『社会』もしくは『共同体』をつくり上げ、そのうえ
に独自の文化をつくり上げてきた。現代人は『贈与』の精神を忘れ、
市場を通じた『交換』こそが人間を幸せにすると錯覚したのである。
だから『社会』が荒廃し、文化が廃れていく。それは、『贈与』を
忘れ、『交換』だけで世の中が運営できると錯覚したためであった。
 新自由主義とは、『可能なかぎり市場で取引できる商品の範囲を
拡大し、そこで実現される資源配分を尊重すべきだ』というイデオ
ロギーである。そのため、できるだけ政府の介入を避け(小さな政
府)、規制を撤廃し、市場における『交換』こそが人間活動の中心
になるべきだというのである。」

 そしてその結果、「経済学あるいは社会科学の正流から長く無視
された『偉大な』社会科学者」といわれるカール・ポランニーが
「商品にしてはいけない」と指摘した3つのこと、すなわち「お金」
「土地」「人(労働)」を商品にしてしまったのではないのでしょ
うか・・・。

 中谷さんの言われる「贈与」とは、言葉を変えれば「寄付」と同
じことだと私は理解しています。しかし、「贈与」だけでは社会が
成り立たないことは、当たり前のことです。「贈与」は、「贈る人
の善意・余裕」と「受ける人の善意・感謝」が原点です。

 「交換」「贈与(寄付)」「投資」「補助金・交付金」「貸付金」
「借入金」・・・。それぞれ関係があるようでないような言葉を並
べてみましたが、よく考えてみますと、こうした言葉の中にも、行
政と民間では発想が180度違うものがあります。たとえば「借入
金」について普通に考えれば、紛れもなく「借金」です。しかし行
政では、借金ではなく歳入になるのです。いずれ、私の考えを詳し
くかじとり通信に書いてみたいと思っています。

 また、私は「慈善」という言葉も、本来の意味が失われてしまっ
た言葉ではないかと感じています。「慈善」も贈与と同様、人間社
会の最も重要な要素です。しかし、福祉についていえば、「慈善」
をなくしてしまった「権利としての福祉」といった言葉を最近耳に
する機会が多くなりました。給付金などをもらうことが当たり前に
なって、感謝の気持ちをなくしてしまった・・・そんな論調です。
そして、給付する側も「義務としての福祉」になりつつある・・・。
こうしたことが表面化する社会に危機感を感じます。中谷さんの
「交換と贈与」の話に似ています。

 最近、不正受給が大きな問題になっている生活保護制度も、慈善
という精神が残されていれば、こんなことにはならなかったはずで
す。有名芸能人の話題が取りざたされていますが、こうした報道に
よって生活保護を受けている人の全てが同一視されることは非常に
危険なことだと感じています。また、受給要件に該当していても、
受給せずに努力している人がたくさんいることも忘れてはいけませ
ん。しかしながら、近年の厳しい経済状況などを反映し、受給申請
者がうなぎ上りに増えていることも事実です。受給者の中には、制
度の根底にある精神の部分が抜け落ちて、権利だけが一人歩きして
しまったがために、権利なのだからもらわなければ損だと誤解して
いる人がいるのかもしれません。果たしてそれが正当な申請である
のか。また、いったん認められた受給資格を継続するのかしないの
か。調査に当たる自治体職員も増員せざるを得ない状況です。現在、
長野市でも担当職員(ケースワーカー)1人が受け持つ受給世帯は
国が示す標準世帯数である80を超え、それらの調査に大変苦労を
しています。

 生活保護費が、年金受給額を上回る。また、都道府県によっては、
最低賃金額から社会保険料などを差し引いた労働者の手取り金額よ
りも多いといった逆転現象があることも問題を複雑にしています。
もう一度互いに支え合う社会の原点に戻り、例えば働くことができ
る人が受給する生活保護費は、最低年金額以下とするなど、社会の
セーフティーネットである生活保護制度の在り方を考え直す必要が
あると思っています。

 生活保護費を支給することは、当然のことながら行政にとって大
切な仕事ですが、それ以上に、生活の安定を図る中で自立に向けた
支援をしていくことが重要となります。それには、受給者自身の意
欲と努力が必要です。本人に自立する意欲、努力がどの程度あるの
か。そして行政は、それを手助けする具体的な手段を持っているの
か。多くの課題があります。

 私は、一つの提案をしたい。生活保護の受給者に仕事をしてもら
い、その対価を支払う制度の採用です。もちろん、高齢や障害など
で働けない人には配慮が必要です。
 行政は、若くて働く意欲がある失業中の人に、働く場を用意する
必要があります。昔、といっても戦後のことですが、行政直営の土
木工事(私の記憶では道路工事でした)に従事する失業者がいたこ
とを記憶していますし、こうした事業が昭和30年代まであったこ
とを覚えています。調べてみると国の失業対策事業として平成の初
めまであったようです。仕事をして報酬を受け取るという考えは、
大切なことでしょう。

 現代ではもう少し違う発想が必要でしょう。働くことに希望と誇
りを持てる仕事でなくてはなりませんし、希望者全員に仕事が行き
渡る、ある程度の仕事量も必要です。また、監督者がいなくても、
働く人それぞれの判断で進められる仕事が理想です。

 こうした中、農業や林業については、高齢化や採算性が厳しいと
いったことから、その従事者が減少し、不足している状況です。ま
た、中山間地域を中心に耕作放棄地が増えて困っています。そこで、
農林業の従事者不足を解決する一つの手段として、健康面などで問
題がなく屋外での労働が可能な生活保護の受給者を農林業にマッチ
ングさせることはできないでしょうか。農林業の魅力を伝え、本人
の自立への意欲を高めることが実現すれば、まさに、一挙両得です。
 もちろん、農林業に従事することは簡単なことではありません。
事前の研修などの課題もあります。また、都市部からは通えないと
いう話も出るでしょう。場合によっては、移動手段を支援すること
や、近くに移住してもらうことも考える必要があるかもしれません。

 ただ、一つ大事なポイントがあります。それは、現在の生活保護
制度では、受給者が就職して収入を得るようになると受給金額が減
額されることです。この制度の下では、働いて自立しようとする意
欲が湧いてこないのです。国でも検討しているようですが、受給金
額はそのままにして、働いて稼いだお金は公的機関が一時的に預か
り、生活保護制度の対象から外れる時に、割増金を付けて返してあ
げるというのはどうでしょうか。自立への意欲や頑張る気持ちを持
たない人は、何も生み出すことができないと思います。

 話の趣旨が中谷さんの本から全然違う方向にずれてしまいました。
そして、これらの提案は、あくまでも私案の域を出るものではあり
ません。いずれにしても、今のままでは福祉制度が破綻するかもし
れない。日本の活力が失われるかもしれない・・・。そんな心配か
らいろいろ考えてみました。

2012年7月5日木曜日

山本七平さんに学ぶ


 選挙や投票が、民主主義の代表的な制度であると思われている人
は多いと思いますが、最近、疑問を感じるようになりました。
 戦後の日本にとって、民主主義国家の象徴はアメリカであり、民
主主義の模範はアメリカでした。そのため、日本はアメリカの後を
追っているといわれた時代もあったわけです。しかし、そのアメリ
カについて、山本七平さんの「『常識』の研究」(文春文庫)の中
に「アメリカの不思議」と題してこんな一節があります。約20年
前(1987年発刊)のちょっと古い本ですが、今でも参考にさせ
てもらっています。少し長いので、多少省略してご紹介させていた
だくことをお許しください。

 「ニューヨークへ行ったところ、偶然の機会から、『戦後30年
のアメリカ』というビデオを(略)見せてもらった。トルーマンか
らアイク、ケネディ、ジョンソン、ニクソンと移り行くうちに、社
会がどのように変化し、悪化し、崩壊して行ったかを克明にたどっ
ているビデオである。少年ギャング、麻薬患者、児童虐待、街頭で
の殺人、少女売春等々が、これでもか、これでもかといった調子で
登場し、同時にベトナム反戦運動、公民権運動、徴兵令状焼却、
『人殺し』とホワイトハウスに向かって叫ぶデモ隊、警察隊の弾圧、
ケネディの暗殺、キング牧師の暗殺、ニクソン辞任等々の場面が入
ってくる。
 そしてそれを見ていると、少々不思議な気持ちになる。というの
はだれ一人、社会を悪くしようと努力しているわけでなく、人びと
の叫ぶスローガンはすべて立派であり、平和、人道、博愛、反戦、
人間の権利、差別撤廃、最低賃金制の確立、社会保証の充実が常に
口にされ、しかもある意味では確かにその一つ一つが達成されなが
ら、一方ではぐんぐんと社会は悪化していくのである。なぜであろ
うか。ビデオはそれを問いかけながら、何一つ解答は提示されてい
ない。
 15年ほど前(1970年ごろ)、全米を自転車旅行をした人の
話を聞いた。当時はすべての人が親切で、こんな良い国はないと思
い、さらに叫ばれるスローガンの内容から、もっともっと立派にな
ると思ったそうである。そこでもう一度自転車旅行をやろうとした
のだが、今ではそんなことは到底不可能だと思い知らされたという。
そしてその人は、一国がかくも短期間に、このような悪しき変化を
遂げたことの理由を何とか探りたいと思ったが、だれに聞いてもそ
れはわからなかったという。」
(なお、前述のスローガンにないのは、財政再建だけのようです。)

 つまり、民主主義国家として長い歴史を持つアメリカでさえ、国
民一人一人の高い理想や思いを正しく反映した国づくりが実現でき
ていないということです。どこに問題があるのかはよく分かりませ
んが、国が国民の思いとは別の方向に進んでいるとしたら、もはや
民主主義とは言えないのではないかという疑問を持ちます。

 また、山本さんは「人間集団における人望の研究 二人以上の部
下を持つ人のために」(祥伝社)の中で選挙についても言及してお
られます。私なりに要約すると「まさに能力があるかどうかではな
く、人望のあるなしがすべてを決める。ましてや若者が突然選挙に
出馬して、若さとその人物像の詳細が知られていないが故に、イメ
ージが先行して当選するというのは問題で、『人望』と『人気』を
混同している故であろう」ということです。

 公職選挙法にも疑問を持たざるを得ない部分があります。
 事前運動は禁止されているといいながら、何カ月も前から、極端
な例だと1年以上前から、選挙に出ようとする人のポスターが街に
あふれる。あれは事前運動ではないのでしょうか・・・。私も告示
前に室内用ポスターを掲示したことがありますから、あまり大きな
ことは言えないのですが・・・。それが許されているのは、あの大
きな顔写真ポスターの下に、「総決起大会のお知らせ」などと書か
れた細い紙が貼ってあるからだそうです。つまりは、政党あるいは
個人の『政治活動』の告知だということですが、実質は事前運動で
しょう・・・。

 そのほか、戸別訪問禁止についても、昔は住居を戸別に訪問して、
お金で票を買収する心配があったためだそうですが・・・、今どき、
お金で買収する候補者はいないと思います。文書図画の配布や掲示
などの規制についても形式だけのことと感じています。もし、イン
ターネットを利用した選挙運動が解禁された場合、インターネット
を24時間監視することは不可能ですし、第三者の「なりすまし」
や「改ざん」を防ぐことも技術的に難しいと思いますので、取り締
まりには限界があるでしょう(インターネットは選挙運動に利用で
きないので、候補者の公式ホームページは告示後変更できないそう
です)。候補者本人の知らないところで支援者が応援する、あるい
は悪口を言われることもありますしね。
 アメリカの大統領選挙でマスコミを使って展開するネガティブキ
ャンペーンもひどいですよね。自分が当選するためには相手のイメ
ージを落とす必要があるという発想なのかもしれませんが・・・。

 民主主義と選挙って何だろうと私が言いたくなるのも無理はない
でしょう。

 大阪ダブル選挙で当選した橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事
の関係もよく分かりません。
 ロシアのプーチン大統領とメドベージェフ首相の関係と似ている
のかもしれませんが、法的には問題なさそうです。知事を辞任して
市長選に出馬し同日選挙に持ち込む・・・こんな戦略ありなのかな
とびっくり。例えば、大阪市や堺市が加入する広域連合のような組
織があったとしたら(なければつくるという方法もあります)、そ
こに大阪府も加入して、広域連合長に大阪市長を選任し、その広域
連合の議員を住民が直接選挙で選べば、法律を改正しなくても大阪
府と大阪市は一本化され、実質的には「大阪都」になりそうな気が
するのですが(善しあしは別にしてですが・・・)。

 選挙により人が代わる(交代する)ことは大切ですが、行政の一
貫性も必要です。また、特に今の時代、市民の皆さんに喜ばれるこ
とをするときにも、市民合意が必要であると、つくづく感じていま
す。

 「ドイツのナチス党はクーデターで権力を奪ったのではない。極
めて民主的と評されていたワイマール憲法の下で選挙に勝ち、全権
委任法を議会で制定して総統ヒトラーが誕生し、独裁者になった」
ということを本年2月9日付けのかじとり通信でも触れましたが、
なぜ全権委任法が民主的な体制の中で議決されたのかは分かりませ
ん。 
 市民意見、民意とはなんでしょうか。「声の大きい少数意見」や
「声の小さい多数意見(サイレントマジョリティー)」をどう解釈
すればよいのでしょうか。

 民主主義の歴史は、日本の長い歴史の中では、極めて短いもので
あり、異例のシステムといえるのだそうです。
 平安時代は貴族の時代、鎌倉時代以降は武士の時代、江戸時代は
政治的に武士の時代(経済的には町人の時代だったのでしょう)、
明治維新以降は中央集権国家体制の下、外国に追い付け追い越せと
いう維新の功労者(元老院)、選挙で選ばれた政治家および軍人の
時代。そして、戦後になって民主主義の時代・・・。こうして並べ
てみると、国民が一番幸せを感じるのはどの時代なのか、全く分か
らなくなってしまいました。

 しかし、いくら欠陥があり、悪い面があっても、現時点で民主主
義を超える制度はないと言われていることも事実でしょう。では、
どうすれば、この制度を維持しながら、機能不全に陥るような事態
から逃れることができるのでしょうか。このことについては、文藝
春秋2012年7月号の、作家・塩野七生(ななみ)さんと学習院
大学教授・佐々木毅(たけし)さんの対談「世界史に学ぶ 日本は
なぜ改革できないのか」に、こんな記載がありました。
 「人間が持っている基本的人権という概念に適合する政治の仕組
みは、民主政しかないのです。つまり民主政は「道義的」に圧倒的
な強みを持っています。しかし、そのことが様々な現実の問題を解
決する能力を保証するわけではありません。直面する課題を解決で
きなければ信用を失ってしまいますし、実際に歴史を見ると、ファ
シズムが台頭したり、クーデターが起きたりしています。道義的に
強みがあり、しかも諸問題の解決でも信頼できる民主政治を持つこ
とが出来れば非常に幸せなことです。
 民主政を運用するには、状況に応じて制度を変化させていかなけ
ればならないし、あるいは様々な仕組みを組み合わせて運用してい
くことも必要です。」

 少なくとも日本の民主主義は、まだまだ歴史が浅く改善すべき点
がたくさんあると感じています。今後の民主主義の在り方について
は、選挙制度も含め、私たち一人一人が、その主人公としてしっか
りと考えていかなければならない課題だと思っています。
 以上、いろいろ書いてみましたが、現実の問題を解決するには、
さらに具体的な議論が必要ですね・・・。

2012年6月28日木曜日

6月市議会定例会で申し上げたこと


 新年度が始まり、3カ月が過ぎようとしています。各種事業も軌
道に乗り、順調に進んでいます。特に、複数の部局にまたがる政策
課題へ対応するために立ち上げた副市長プロジェクトは、成果を意
識したスピーディーな対応と、着実な進展を図ることにより、政策
課題の解決に向け動き始めています。多様な課題に的確かつ迅速に
対応するため、トップマネジメントの強化を図った副市長2人体制
の効果を強く感じています。

 こうした中、本年度最初の市議会となる6月市議会定例会が、6
月7日から22日まで開催されました。「平成24年度長野市一般
会計補正予算」などを議決いただき、また本会議や委員会において
出された貴重な質問、意見、提案を今後の市政運営に反映したいと
考えています。
 今回は、開会および閉会のあいさつで申し上げたことや、一般質
問で出された事項などを中心にお話しします。

 最初に、平成23年度一般会計決算見込みについてです。
 基幹収入である市税は、東日本大震災の影響などにより対前年度
比4億円減の約575億円となる見通しですが、特別交付税などの
確保が図られたほか、国・県財源の有効活用や、経費節減に努めた
ことなどから、当初予算で予定していた26億円の基金の取り崩し
が、最終的に10億円にとどまる見通しです。なお、基金について
は、合併特例債を原資とする「地域振興基金」に10億円を積み増
すことなどから、全体の基金残高は約376億円と対前年度比約
2.5億円の増を確保し、今後の財政需要に備えた対応が図られ、
また、市債については、年度末残高が約1,338億円と対前年度
比42億円ほどを縮減できそうです。

 次に、本年度の主な施策・事業の動向についてです。
(1)都市内分権の推進について
 住民自治協議会が本格的に活動を開始して3年目となる本年度、
役員の皆さんの負担を軽減し、安定した活動ができるよう、地区か
ら要望のあった事務局長を雇用するための経費に対する補助制度を
創設しました。32地区のうち既に25地区において事務局長が雇
用され、新たな体制の下で本年度の活動がスタートしています。

(2)公共交通機関の整備について
 4月1日に運行を開始した長野電鉄屋代線廃止に伴う代替バスは、
大きなダイヤの乱れや乗り残しもなく、4月に行った調査では、平
日の平均乗車人数は朝夕の中学生・高校生を中心とする935人で、
順調な滑り出しです。今後は、長野電鉄活性化協議会で設定した年
間利用者目標値の達成に向け、地元の皆さんと連携しながら利用促
進を図っていきます。
 また、長野電鉄屋代線の跡地利用については、松代地区と若穂地
区の検討組織による活用方法に関する検討状況や、用地・鉄道施設
の現況を踏まえ、また、沿線の千曲市、須坂市、そして長野電鉄と
も協議を重ね、この秋をめどに方向性を決めたいと考えています。
 なお、次世代型路面電車システム(LRT)を含めた新交通シス
テム導入や新幹線金沢延伸に伴う長野以北並行在来線の新駅設置の
可能性についての調査も実施します。

(3)環境対策の充実、エネルギーの適正利用について
 太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーにより発電した電
力の固定価格買い取り制度の施行を来月に控え、買い取りの価格や
期間が決定するなど、普及促進に向けた環境が整いつつあり、今後、
発電事業への新規参入が増え、再生可能エネルギーの導入が一層進
むことが期待されます。長野市においても引き続き、公共施設への
導入や補助制度などを積極的に推進していくとともに、普及促進策
についても研究していきます。

 また、長野広域連合が大豆島地区松岡に計画しているごみ焼却施
設については、本年3月、環境影響評価書の縦覧が終了し、長野県
環境影響評価条例に基づく事前の手続きが完了しました。今後、長
野市としても、地元の皆さんのご意見を十分お聴きしながら、建設
の同意が頂けるよう鋭意努力していきます。

(4)市役所新第一庁舎および新長野市民会館の建設と文化芸術活
動への支援・文化の創造について
 7月下旬まで、両施設全体の施設配置や平面プランなどの基本設
計案についてパブリックコメントを実施し、市民の皆さんや議会、
市民ワークショップなどのご意見をお聴きするとともに、7月9日、
11日には、全市を対象に市内2カ所で市民説明会を開催します。
 また、事業について一層ご理解を深めていただくために、各地区
で開催される元気なまちづくり市民会議においても、広く市民の皆
さんに説明し、本年度中をめどに実施設計を進めていきます。
 新市民会館の運営などのソフト面については、昨年度、パブリッ
クコメントなどで寄せられたさまざまなご意見を反映し、運営管理
基本計画を策定しました。本年度は運営管理実施計画を策定し、新
市民会館が文化芸術拠点施設としての機能を最大限発揮できるよう、
事業計画、組織体制、収支計画などの具体化を図ります。

(5)中山間地域の活性化について
 農業者の法人化を積極的に支援するとともに、マーケティングの
強化、ブランド化対策および6次産業化の推進など「攻めの農業政
策」を進めます。
 新規就農者の育成対策については、本年度から、国が実施する
「新規就農総合支援事業」が始まりました。この事業の給付対象と
なるには、地域ごとに「人・農地プラン」の作成が義務付けられて
いるため、現在、新規就農者のいる市内十数地区について同プラン
作成の準備がされており、その他の地区についても順次作成される
予定です。また、国の事業の対象とならない新規就農者については、
できる限り長野市の「新規就農者支援事業」の給付対象とするなど、
引き続き農業の担い手の確保・育成に努めます。

(6)スポーツを軸としたまちの活性化について
 サッカー・AC長野パルセイロのJリーグ準加盟申請については、
本年2月のJリーグ理事会において「審査継続」となりましたが、
パルセイロが5月31日付けで提出した再申請書類が受理され、6
月27日、Jリーグによる現地ヒアリング審査が実施されました。
パルセイロのJリーグ準加盟が承認されることを期待するとともに、
今後もパルセイロと十分連携を図りながら対応します。

 南長野運動公園総合球技場の再整備については、現在、基本プラ
ンの検討を進めています。施設規模は、当初J2仕様の1万人収容
で考えていましたが、ゴール裏のスペースが広く収容規模の拡大が
可能であることから、J1仕様の1万5,000人収容を前提とし
て検討を行い、1万人収容の場合と比較検討した上で、基本プラン
を決定したいと考えています。これは、本会議一般質問において、
サッカースタジアムの規模についての質問に対して答弁したもので
す。市民の皆さんの機運も高まっていますので、スピード感を持っ
て取り組みます。

(7)国旗・市旗の掲揚について
 本会議一般質問で、支所における国旗・市旗の掲揚の状況につい
ての質問を頂きました。現在は、本庁のほか、掲揚台のない5支所
を除く22支所で常時掲揚を行っています。わが国の伝統と文化を
尊重し、それらを育んできた郷土を愛する心を抱くことはとても重
要なことだと考えています。全支所で、国旗・市旗を掲揚できるよ
う、早期に対応したいと考えています。

 以上、主な項目についてお話しさせていただきました。この他、
平成27年の新幹線金沢延伸に向けての長野駅善光寺口駅前広場の
整備状況、中小企業の新技術・新製品の研究開発を支援するため、
長野県テクノ財団、八十二銀行、長野信用金庫と立ち上げた「長野
市企業コーディネート・サポートチーム」、4月にスタートした長
野市教育振興基本計画に基づく「次世代を担う子どもたちの生きる
力の育成」、観光交流を推進する「四季の彩りキャンペーン」、本
年10月診療分から福祉医療費給付事業における乳幼児等の対象年
齢の「小学校3年生まで」から「小学校6年生まで」への拡大、
「新あんしんいきいきプラン21」に基づく高齢者福祉施策、「人
権同和政策推進基本方針」の策定などについても申し上げました。

 閉会のあいさつの最後に、本市職員も含めた公務員の不祥事が最
近立て続けに発生していることに対し、本市職員へ猛省を促す意味
も込め、あらためて行政への信頼を揺るがす深刻な問題であると語
気を強めて述べました。職員一人一人が自らの行動を再確認すると
ともに、公務員として常に襟を正し、全体の奉仕者であることをあ
らためて自覚するよう強く促し、一日も早く信頼を回復することが
できるよう取り組んでいきます。

 これまで、議会の際には、議員、市民の皆さんに分かりやすい答
弁を心掛けるように、答弁者となる部局長に指示してきました。今
回このことをあらためて徹底した結果、より簡潔で分かりやすい答
弁ができたと感じています。市長就任以来、私が掲げてきた5原則
のうちの一つ「簡素で分かりやすい市政運営」に、さらに磨きをか
けていきたいと思っています。

2012年6月21日木曜日

全国市長会議のために上京しました


 6月5日、6日、東京で全国市長会議が開催されました。この会
議では、関東、北信越、東海といった全国9支部から提出された国
の施策に対する要望などの議題を各市長が審議し、全国市長会の要
望としてまとめています。まずは総会に先立ち、各支部から提出さ
れた87の要望事項について、各市長が4つの分科会(地方行政関
係、地方税財政関係、厚生労働・環境・文教関係、国土交通・農林
水産関係)に分かれて審議し、その結果を総会において報告し、ま
とめました。

 ただ、この種の会議で審議される議題は、各市から出されたさま
ざまな意見を県単位でまとめ、さらに支部単位でまとめたものです。
そのため、一般的に極めて常識的なテーマ、あるいはほとんど全て
の市に共通したテーマとなり、正面切って賛成・反対するような議
論には、なかなかなりません。具体例としては、昨年、和歌山市で
開催された中核市サミットにおいて私から「市町村が行う福祉施策
は、他市町村より手厚い支援を独自に設定する事態が生じている。
このため、地方自治体間のサービス競争を引き起こし、福祉関連の
予算が増えていく一つの要因である。これを是正するためには、国
・地方が行う社会保障の範囲および水準を国がしっかり決める必要
がある」と申し上げました。しかし、国が統一基準を定めることは
地方分権の趣旨に反するという考えもあり、議論すべき事項として
取り上げることは難しいのでしょう。その結果、当たり前のことを、
当たり前のように決議して国に要望することになってしまいます。
もちろん、それぞれの要望事項は重要なテーマであることは間違い
ありませんし、個々の意見を取り上げていたら、収拾が付かなくな
ることも事実です。

 全国市長会議のもう一つの目的は、最新の国会の状況や国の施策、
動向について研修会を開催し、各市長と省庁の担当者が直接意見交
換をすることです。財政に関するテーマが多く、今後の方向性は示
されるのですが、政治主導の流れの中、国がまだ決定していない事
項が大半で、あまり参考にならないことも多々あると感じています。
研修会は分科会ごとに開催され、今回私が参加した地方行政関係の
分科会では、総務省自治行政局長から「当面の地方自治制度の課題」
として、高齢化、人口減少などの社会構造が変化する中、大都市が
抱える課題解決に向けた大都市制度見直しの検討状況、個人を識別
するためのマイナンバー法案などについて説明がありました。参加
した市長からいくつか質問が出ましたが、時間が限られていて、踏
み込んだ議論までには発展しませんでした。

 参加市長が一堂に会す総会には、来賓として野田佳彦内閣総理大
臣や川端達夫総務大臣も出席され、それぞれ方針を述べられていま
したが、新聞・テレビなどで報道されている範囲を出るものではな
く、正直退屈でした。政局が微妙な折、仕方ないことではあります
が・・・。総会では、各分科会において審議された「地方分権・地
域主権改革の推進」「医療保険制度の抜本改革」「防災・災害・危
機管理対策、環境施策、都市基盤施策、農林水産業、経済・雇用施
策の充実強化」など、次々と議案が報告され、全て全国市長会の要
望としてまとめられました。

 全国市長会議終了後、「現場から国を変える首長の会」主催の勉
強会に参加しました。東洋大学の根本祐二教授が講師で、題目は
「朽ちるインフラ 崩壊を避ける知恵 シティ・マネジメント」で
した。根本さんの著書「朽ちるインフラ」はベストセラーになりま
したし、先日NHKの番組「シリーズ日本新生 橋が道路が壊れて
いく・・・ インフラ危機を乗り越えろ」にも出演されていました。

 1960年代、日本は高度経済成長の真っただ中で、今の都市基
盤となる大型建築物、道路、橋、水道などのインフラが次々と建設
されました。しかし、あれから50年がたち、当時建設したインフ
ラは老朽化し、今後膨大な維持費、更新費用が掛かってきます。景
気の低迷が続き、今後大きな税収増が見込めない中、こうしたイン
フラの維持・更新費用の増大に自治体はどう対処すべきかという内
容でした(実は先月、長野市の全部課長が集まる会議の中で、先ほ
どのNHKの番組を例に取り、今後インフラの維持・更新費用がか
なりの負担増となることをしっかり認識して業務に当たるように私
から話をしたところでした)。

 根本教授は、学校や公営住宅などの「公共施設」と、道路、橋、
上下水道などの「インフラ」とを区分し、「シティ・マネジメント
(自治体経営)」の観点からその解決策を紹介されました。
 まず、老朽化した公共施設の更新に当たっては、それぞれを建て
替えるという発想ではなく、比較的大きなコミュニティー施設を建
設し、学校や保育所、公民館、図書館などをテナントとして入れる。
これにより、各施設に必要な駐車場やトイレ、階段などを共用でき、
施設面積を20%削減できる。
 また、集会所や公営住宅については、民間でも同じようなストッ
クを十分持ち合わせているので、更新したり新設するのではなく、
民間施設の活用に切り替えていく。例えば、稼働率が全国平均で約
20%といわれる集会所は、民間の学習塾を空き時間に借りて、使
用料を支払う。また、公営住宅事業はやめ、利用対象者に家賃を補
助して民間アパートに住んでもらう。これにより、民間に仕事を回
すことができ、新たな雇用が生まれる。前々回のかじとり通信でも、
こうした民間活力の導入による地域経済・社会への好影響について
述べさせていただきました。共通することは、とにかく民間ストッ
クを利用し、自治体は独自の資産を持たないということです。海外
では民間施設に公共施設がテナントとして入ることは常識のようで
す。

 しかし、それよりも深刻なのがインフラの維持・更新費用です。
その解決策として根本教授は、「インフラ包括マネジメント」を紹
介されました。これは個々のインフラをそれぞれ管理するのではな
く、包括的に管理せよというものです。例えば、道路や橋の維持管
理業務を細かく分けて民間事業者に委託するのではなく、道路と橋
を一括管理するような広い範囲で管理を委託する。これにより事業
者はトータルでコスト削減を考えるようになる。さらには、道路に
穴があいてから補修するのではなく、穴があく前に対応するという
発想になり、いわゆる対症療法から予防療法に変わるというのです。
包括的に管理することで、知恵がいっぱい出てくると話されました。

 また、将来の更新費用を算出する独自の計算ソフトを紹介され、
まずは時系列的に費用がどれだけ掛かるのかを分析することが必要
だと話されていました。これはまさに、かじとり通信でも申し上げ
てきた「行政にも減価償却の手法を取り入れるべきだ」という私の
考えに共通するものです。長野市としても、少し前から財政部長な
どと具体的に研究を始めたばかりでしたので、この話も興味深くお
聴きしました。
  
 さて、全国市長会議には、長野県内19市の市長も出席しました
ので、この機会を利用して、長野県市長会も開催されました。この
中で今、社会問題になっているAIJ投資顧問に資産運用を委託し
ている県内厚生年金加入企業への支援についての話がありました。
この件は、各基金の私的な問題なので、行政による支援はなかなか
難しいとは思います。ただ、長野県内にある10基金のうち8基金
が被害に遭い、いまだ解決策が見えていないということです。この
ままでは、多くの中小企業が打撃を受けますし、地域経済に深刻な
影響を及ぼす問題に発展する可能性があります。県市長会としても
問題意識を共有しながら最善の対応を考える必要があるとの結論に
達しました(19日の新聞報道によると、国も赤字の厚生年金基金
が解散しやすいよう、国に返済しなければならない積立金を減額す
る方針を打ち出しました)。

 今回の東京出張の際に、ぜひお会いしたい方がいました。川中島
地区ご出身で株式会社商船三井常務執行役員の横田健二さんです。
樋口副市長の高校の同級生ということで、このたび、ふるさとNA
GANO応援団への新規加入をお願いするために伺ったわけですが、
ご快諾を頂きました。これまでの豊かな経験や広い人脈などにより、
市政全般にご協力いただくようお願いしました。
 
 以上、東京出張の2日間について報告させていただきました。
 最近感じることは、情報化が進み、インターネットなどを通じて、
国内はもとより世界各地からさまざまな情報をリアルタイムで入手
できる時代に、全国からわざわざ市長が集まるこうした会議は、も
っと踏み込んだ議論の場となるべきだということです。しかし、そ
うした議論も、他市の政策や決定にまでは踏み込むことはできませ
んし、してはいけないことだと思っています。地方自治体は全て平
等で、お互い干渉することができない不可侵の約束事があるのです。
こうしたジレンマは感じますが、せっかく全国から市長が集まって
いるのです。お互いの立場を尊重しつつ、共通する課題の解決に向
けたより実のある会議にするために、その内容や手法を再考する必
要があると感じています。

2012年6月14日木曜日

ちょっと立ち止まって、見てください


 「善光寺表参道に灯籠を復元建立する会(会長・加藤久雄長野商
工会議所会頭)」が48基の灯籠を建立され、5月24日に長野市
への引き渡し式が開催されました。長野駅から善光寺までの中央通
り(善光寺表参道)に、また一つ名物が生まれました。

 善光寺表参道には、戦後まで木製灯籠(春日灯籠)があったので
すが、中央通りにアーケードができた時に、取り払われてしまいま
した。しかし、時代の流れとともに、まちの構造も変わるものです。
アーケードが造られた当時は、雨や雪にぬれないで買い物ができる
方が良いと考えられていたのでしょうが、その後アーケードが老朽
化したこともあって、アーケードがない方がまちの景観が良いとい
うことになったのでしょう、また、市民の皆さんの考えが変わって
きたこともあるのでしょう・・・、その後アーケードは撤去されま
した。そして今は、車道幅を狭めることにより歩道幅を広げ、歩行
者を優先する道路工事(舗装も石畳化しています)を行っています。
まちの在り方も、大きな時代の流れに乗っているのだなあと思いま
す。

 その後、善光寺表参道ににぎわいを創出しようと、まちの皆さん
やボランティアの皆さんなどが、いろいろなイベントに取り組んで
こられました。善光寺花回廊、長野びんずる、長野灯明まつりなど
の大きな恒例行事の他、さまざまな行事が企画され、トイーゴやも
んぜんぷら座、セントラル・スクゥエア、ぱてぃお大門蔵楽庭など、
街並みも徐々に整備されてきているように思います。長野オリンピ
ックの時の表彰式会場のすごい人波は、忘れられない思い出です。

 こうした中、「善光寺まで歩いて参詣してほしい」「中央通りを
少しでもにぎやかにしよう」・・・。そんな思いが多くの皆さんの
共感を呼び、善光寺も協力して、表参道に灯籠を建てようという事
業がスタートしました。
  
 1口1万円の寄付を募り、約5,600人の皆さんから約
6,000万円の資金が集まったそうです。2008(平成20)
年8月に、1基目の灯籠が長野駅前に建立されて以来、徐々に資金
を増やしながら、この春48基目の灯籠が完成しました。寄付にご
協力いただいた皆さん、地元の皆さん、善光寺の皆さん、本当にあ
りがとうございました。

 なぜ48基かというと、善光寺のご本尊である阿弥陀(あみだ)
如来様が、私たちを救うために、48の誓願を立てられたことに由
来しているとのことで、灯籠一つ一つに誓願が刻み込まれています。
また、灯籠の火袋には、長野灯明まつりで入選した切り絵が飾られ
ていて、毎年入れ替えるそうです。灯籠に灯明まつりのエッセンス
を取り入れるところは、なかなか粋なアイデアだと思いました。

 灯籠の屋根部分にはソーラーパネルが取り付けられていて、夜は
LED(発光ダイオード)電球で明かりをともしますので、環境に
も配慮されています。今後の維持管理は長野市が行いますが、経費
は、ソーラーパネルの修繕費やLED電球の交換費用などわずかと
のことです。

 もう一つ、街角の話題、市街地の新たな魅力を紹介します。
 長野市は、文化芸術活動による潤いのあるまちづくりを推進して
います。故夏目忠雄元市長の発案で市内全域を彫刻美術館になぞら
えた「野外彫刻ながのミュージアム構想」により、1973(昭和
48)年から毎年、長野市野外彫刻賞受賞作品を市内各地に設置し
ています。その数は2011(平成23)年度末で141点となり
ました。
 皆さんもご存じのとおり、市内には長野市が設置した野外彫刻以
外にも企業や個人の皆さんが設置したたくさんの作品があり、そう
したものも合わせると230点は超えると思います。

 今回の長野市野外彫刻賞受賞作家である村中保彦さんの作品は、
「工事現場」という作品です。「カバ」と「ゾウ」と「キリン」に
それぞれ工事現場の「足場」が掛かっているとてもユニークな作品
で、3体がワンセットとなっています。長野駅善光寺口から北へ約
100メートル進んだ長野大通り東側の歩道の植樹帯に設置されて
おり、このちょっと変わった野外彫刻に既にお気付きの方もいらっ
しゃるかと思います。

 村中さんは学生時代、工芸を専攻されていたとのことですが、今
から15年前に、山口県宇部市で開催された現代彫刻展で見た野外
彫刻に感動され、それが転機となり、野外彫刻の道に進まれたそう
です。「野外彫刻のスケールの大きさに、心の底を打ち抜かれた」
と村中さんはおっしゃっていました。宇部市の野外彫刻と言えば、
昨年同市で開催された「彫刻のあるまちづくりサミット」に出席し、
その素晴らしさについては、かじとり通信でも皆さんに報告させて
いただきました。

 村中さんの作品は、ステンレスを素材としています。試行錯誤し
ていろいろな作品に取り組まれましたが、ご本人自身「工芸家が作
った屋外に設置されただけの彫刻」と感じていて、「何かが違う」
と後ろめたさ、劣等感があったそうです。また、今回の作品を制作
する前に長野市の野外彫刻を1日かけて見て回られた時、そのほと
んどが日本の彫刻史を飾る有名な彫刻家の作品ばかりだと知って、
かなりのプレッシャーを感じられたとのことでした。

 村中さんは、動物の中でなぜ「カバ」を選ばれたのかとの質問に、
「好きな動物は、カバ。有機的なカバに、無機的な工事現場の足場
を掛けてみた」とのことでした。そして、カバ、ゾウ、キリンが乗
っている板のようなものは「雲」で、雲の上に「桃源郷」をつくり
たいという「自分の夢」を表現した作品になったそうです。自分の
好きな形を組み合わせたら、楽しく、そして自分の気持ちに素直に
作ることができたとおっしゃっていました。
 ちなみに村中さんは、サイも好きで、本当はカバとゾウとサイの
作品を作りたかったそうですが、3体が同じような形にならないよ
うにバランスを考え、キリンに決めたそうです。設置場所が歩道と
いうこともあり、作品の高さは鑑賞のしやすさや小さな子どもや多
くの通行人の安全性も考慮して、高すぎず、低すぎないようにする
ことに気を配ったそうです。動物は子どもたちに人気のあるモチー
フでもありますので、ぜひたくさんの子どもたちに見てほしいと思
います。
 野外彫刻のいいところは、絵画などとは違って、じかに手で触れ
られることだと思います。すべすべ感やざらざら感、ごつごつ感な
どを、見るだけでなく触って感じてみてください。作品に込められ
た作者の思いを感じることができるかもしれません。

 実は今回、村中さんの作品がもう一つ、「工事現場」の隣に設置
されました。椅子に8羽のハトが止まったり、飛んだりしている作
品で、作品名は「希望」です。こちらは、長野ライオンズクラブの
皆さんが、クラブ結成50周年記念事業として村中さんに制作を依
頼し、完成後長野市に寄付していただいたものです。村中さんは、
制作に当たって同クラブから、東日本大震災、長野県北部の地震災
害からの復興の祈りと、社会の平和、人々の心の安らぎへの思いが
込められた作品をと依頼され、その時すぐに「ハト」をイメージさ
れたそうです。この場をお借りして、長野ライオンズクラブの皆さ
んにお礼を申し上げます。

 歴史を積み重ね、長野市が日本有数の野外彫刻都市となったこと
を大変誇りに思っています。本年度の優先施策に「文化芸術活動へ
の支援と文化の創造」を位置付け、積極的に取り組んでいるわけで
すが、今後は、長野駅から文化芸術の拠点となる新市民会館までの
プロムナードになる長野大通り沿いに野外彫刻の設置を進め、身近
に作品を鑑賞しながら散策も楽しめるコース作りも目指したいと考
えています。そして、この貴重な財産を、一人でも多くの皆さんに
鑑賞していただけるよう、今年も野外彫刻めぐり事業を6回開催す
るほか、子どもたちに鑑賞の機会を提供する「キッズツアーズ」事
業を行うなど、さらにソフト面の工夫と充実を目指していきたいと
思います。

 今回紹介した、灯籠や野外彫刻は、まちに彩りを添えてくれます。
善光寺表参道、そして長野大通りを歩く時は、ちょっと足を止めて、
ぜひご覧ください。

2012年6月7日木曜日

民間活力導入の状況


 民間企業や地域住民、NPOなどの「民間活力の導入」は、私の
歴史的使命であることを、市長就任以来、このかじとり通信でも機
会を捉えて申し上げてきました。「行政がやれば安心」という考え
は神話にすぎず、むしろ民間の発想や競争原理によって、市民の皆
さんに多様で満足度の高いサービスを提供できると考えてきました。

 民間活力の導入といっても、その手法はさまざまです。突き詰め
れば、行政の監督の下に、民間が一定の権限と工夫で事業を行うか、
原則として行政から離れて民間の責任で事業を行うかの違いで、両
者の間にはさまざまなレベル、程度の違いがあり、具体的には行政
と民間事業者とが、協定などで決めることになるのでしょう。大き
くは、次の2つに分けられます。
(1)行政の事務、事業、公共施設を民間へ移管する「完全民営化」。
この場合、民間が責任を持って事業を行うことになります。
(2)行政がその業務や公共施設の管理に責任を持ちつつ、業務や
施設管理の一部を民間へ委託する「民間委託」。このうち、公共施
設の管理運営を民間などへ包括的に委託するのが「指定管理者制度」
です。この場合、事業自体は行政の責任で実施されますから、民間
は与えられた権限の範囲で運営することになり、したがって、あま
り自由度はないかもしれません。

 公共事業について、計画から資金調達、建設、運営に至るまでを
民間に委ねるのが「PFI事業」です。この事業は、民間資本を導
入して公共施設を建設し、例えば最初の10年間その施設を民間が
経営して利益をあげ、その後、行政が引き取り運営を継続するとい
ったもので、民間が経営する期間は(1)に近いのですが、その後
は(2)に近い状況も出てきそうです。

 そして、民間活力の導入を進める対象事業の要件には、「住民サ
ービスの質が落ちないこと」「市場における競争原理が働くこと」
「行政コストが削減できること」の3つがあり、この要件に当ては
まる事業は、全て民営化、民間委託などの対象だと考え取り組んで
きました。

 これまでの主な取り組みは、
・斎場(火葬業務)の民間委託
・第二学校給食センターの民間委託
・上下水道料金徴収・収納業務の民間委託
・東部浄化センター、犀川浄水場の管理業務の民間委託
・PFI手法による温泉施設「湯~ぱれあ」の建設
・市有施設の管理運営に「指定管理者制度」を導入(333施設:
本年4月1日現在)
・公立保育所の民営化
などですが、もちろん十分ではありません。いくつか難しい課題も
あり、簡単には民営化といかないのです。

 第1に、公立保育所の民営化について言えば、保護者の皆さんの
ご理解を頂くためには、十分な説明と時間が必要になることです。
行政がやっていれば安心という「神話」は、行政の責任者としては
ありがたいのですが、実際は民間が工夫した取り組みには素晴らし
いものがありますし、行政ではできないことにもどんどん挑戦して
いただくことにより、新しいサービスなども生まれてくるでしょう。

 第2は、職員の雇用という課題です。例えば第二学校給食センタ
ーの民営化が行えた理由の一つは、正規職員全員が、他の市営給食
センターに異動することができたことにあります。非常勤職員は運
営受託会社に紹介し、雇用を継続していただきました。
 しかし、今後さらに民間委託を進めようとした場合に、同じよう
に正規職員が異動できる職場があるとは限らないのです。地方公務
員法には、同法で定める事由による場合でなければ、職員の意に反
して、免職などができないという、いわゆる身分保障の規定があり
ます。法解釈によっては、こうした組織の改廃の場合に職員の免職
(リストラなど)ができるとも聞いており、法的には可能なのかも
しれませんが、雇用を守ることは道義的にも当然のことですし、今
の良好な労使関係をあえて覆すようなことをやるべきではないと感
じています。民間活力の導入に当たっては、雇用の継続も重要なポ
イントです。

 最近の出来事としては、公立保育所の民間委託の一環として、本
年4月に川田保育園の運営を民間に委託(民営化)しました。
 川田保育園の民営化については、2003(平成15)年度に保
護者の皆さんに説明し、その後、長年にわたり話し合いを行ってき
ましたが、いよいよ民間への運営委託という形でスタートしました。
民営化するに当たっては、保護者の皆さんからのご意見、ご要望を
お聴きするとともに、保護者、有識者などで構成する「長野市立保
育園委託・移管先選考委員会」での選考を経て、市内で認定こども
園を運営する「学校法人朝陽学園」が委託先として決定されました。
 昨年4月からは、朝陽学園と市の保育士が合同で引き継ぎ保育を
実施するとともに、保護者、朝陽学園、長野市による「3者懇談会」
を定期的に開催し、保護者の皆さんの民営化に対する不安の軽減に
努めるとともに、民営化後の川田保育園の目指す保育についても話
し合いをしてきました。

 川田保育園の民営化は、私が市長に就任以降、公立保育所では3
例目となります。2009(平成21)年4月の三輪保育園が最初
の民営化保育所となり、その後昨年4月に、城東保育園を閉園し、
運営を隣接する済生会長野保育園に移管・統合しました。来年度に
は、下氷鉋保育園を民営化する予定で、現在準備を進めています。
 公立保育所の民営化は、長野市の基本的な方針の一つです。保護
者や地域の皆さんのご理解とご協力を頂きながら、少しずつ進めて
います。

 また、公立保育所の民営化については、2005(平成17)年
度に、長野市のこれからの幼稚園・保育所および幼保一体化のあり
方を検討するため、「長野市保育所等のあり方懇話会」で審議をし、
提言をいただきました。当初に計画した3つの公立保育所の民営化
にめどが付いたことから、この提言に基づいて、本年度から新たな
計画の策定に着手し、2013(平成25)年度から2022(平
成34)年度までの10年間における公立保育所の統廃合などを含
む適正規模および民営化などの基本的事項を定めることにしました。
 
 計画の策定に当たっては、市民各層の皆さんから広くご意見をお
聴きするため、6月4日の長野市社会福祉審議会に私から諮問しま
した。今後、同審議会の児童福祉専門分科会でご審議いただき、来
年の2月ごろに答申を頂く予定となっています。

 市長就任以来、私が掲げてきた5原則「入りを量りて、出ずるを
為す」「市民とのパートナーシップ」「簡素で分かりやすい市政運
営」「民間活力の導入」「無私・利他の精神」は皆さんご承知のこ
とと思います。しかし、就任から10年が過ぎ、各項目を検討して
みますと、「民間活力の導入」が一番遅れているのではないかと感
じています。時間がかかっても、市民の皆さんのご理解とご協力を
第一に考え、皆さんの合意の下で一歩一歩進めていくことが重要で
あると考えてきましたし、これからもこの考えを基本とし、推進し
ていきたいと思っています。

 前回のかじとり通信で、私が長野市開発公社の理事長に就任した
ことを報告し、市長が他団体の長を兼ねることは望ましくないとお
伝えしましたが、まさに長野市開発公社のような組織の長には、民
間出身の方を登用すべきだと考えています。同様のことは市民病院
の理事長職についても言えそうです。ただこれらの職に民間出身者
を登用する場合には、それ相当の報酬を保証する必要があります。
一方、市長が当て職で就任する場合は当然無給ですから、組織運営
上は安上がりです。もちろん、民間出身の方に、報酬以上の素晴ら
しい成果を挙げていただくことが理想でしょうが・・・。株式会社
エムウェーブの社長については、民間出身の土橋文行前社長がお亡
くなりになった後、しばらく空席でしたが、ようやく民間出身の素
晴らしい土屋龍一郎氏をお迎えすることができました。

 これからも、「民間でできることは民間に」という流れはどんど
ん進むはずです。民間活力の導入により、高度経済成長期以降肥大
化した行政のスリム化が図られ、小さな政府に一歩ずつ近づき、
「お任せ民主主義」の時代から脱却が図られてくるでしょう。そし
て、私が申し上げてきた「市民の皆さんとのパートナーシップによ
るまちづくり」のとおり、市民の皆さんが主役となり、コミュニテ
ィーの再生、「自分たちの地域は自分たちでつくる」といった都市
内分権が発展するのです。

 さらに、行政が担ってきた事業を民間事業者が実施することで、
民間に新たな仕事、ビジネスチャンスが生まれ、工夫によって新た
な産業に発展する可能性も出てきます。産業が活性化し、企業誘致
の促進、そして何より雇用の拡大といった効果が期待できます。行
政にとっても税収が上がり、社会全体が好循環し、元気なまちが実
現するのです。ただ民間組織のやり方によっては、例えば倒産のよ
うな失敗もあり得ます。
 引き続き民間活力の導入を可能な限り進めるよう、今後も大いに
頑張っていきたいと考えています。